日本のクルマ文化を見直すべき時期? 安東弘樹がマツダと考える

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第7回

日本のクルマ文化を見直すべき時期? 安東弘樹がマツダと考える

2018.10.10

日本のクルマ文化と高度経済成長期の関係

大変革の自動車業界で重要性を増すブランド力

クルマ離れを止めるにはクルマを知ってもらうこと

初代「ロードスター」のレストア事業に関する話から始まった安東さんとマツダ・梅下隆一執行役員の対談。日本で古いクルマを楽しむためには何が必要かというテーマから、最終的にはクルマそのものの楽しみ方について、話題は移っていった。

※文はNewsInsight編集部・藤田が担当しました

クルマ文化の東西比較

編集部:日本で古いクルマを楽しむ文化が育たなかったのって、どうしてなんでしょうか。日本にも、古いモノを愛でる土壌はあると思うんですけど……

安東さん(以下、安):でも、家電とかになると……

梅下さん(以下、梅):そうなんですよ。工業製品における古いモノっていうのは、日本では難しいですね。十把一絡げにはいえませんけど。

安:例えば冷蔵庫ですら、アメリカでは古いモノを気に入って使ってる人が結構、いますからね。まあ日本人にはいない。流行を取り入れたものがどんどん出てくるし。

梅:高度経済成長期に、欧米に追いつけ追い越せで、庶民でも色んなものが買える状態にしなきゃいけないというのが、国民みんなの目標だったわけですよね。だから、家電もクルマも、少しでも安く、高機能なモノをたくさん作って、お届けするというのが多分、僕たちの使命だったし、それが国を豊かにしてきたはずなんですよ。少なくともバブルまでは、そうやってきたと。一部の裕福な人に向けて、趣味性の高いクルマをお届けするよりも、むしろ当時は、なるべく安くて高機能なクルマを競って作るという時代だったわけですよね。

バブル崩壊の後、もしかすると、どこへ向かうのかという明確な方向性がないままに今を迎えたのかもしれないですね。時計だってオーディオだって、クルマだって、高級で趣味性の高いものは結構、海外製になった。だけど、1980~90年代までは、おそらく時計だって、趣味性の高いものが死に絶えそうになっていたところに、日本の高機能で、まったく狂わない時計が、全てを席巻するがごとき勢いになった。オーディオだって、日本の高機能なメーカーはすごく元気がよくて、クルマもそうだった。だけど、いろんな業界が、次のステップをなかなか見出せない状態で、今に至っているのかもしれない。

マツダ執行役員 カスタマーサービス担当 ブランド推進・グローバルマーケティング担当補佐の梅下隆一さん(対談風景の撮影:安藤康之)

安:根本的に日本って、終戦で何もなくなって、財閥も解体になって、良くも悪くも、本当に豊かな人って一回、いなくなりましたもんね。豊かな文化がゼロになった。それで、物質に豊かさを感じるようになったのかも。

梅:ヨーロッパだと、一部の貴族がクルマであれ、食であれ、文化を作ってきた側面はありますものね。近代になって、別の文化が米国にも生まれていますけど、米国というのは何をするにも、極めて安上がりの国なので、庶民でもさまざまなゆとりを持っているし、欧州とは違う形で文化が芽生えた。庶民レベルでの文化的な趣味は非常に豊かなものがある。だけど、アメリカとヨーロッパでは、クルマの文化がだいぶ違いますけど。趣がね。

安:そういう意味では、「ロールスロイス」って日米では生まれようがないのかもしれませんね。そこは永遠に追いつけないところかもしれない。クルマ文化を大切にしていけば追いつけるのかもしれないですけど、残念ながら今は、反対の方向に向かっている感じがします。便利で、自動ブレーキが付いてて、みたいに、何が付いているかということが豊かさの象徴、というところから脱却できない。

「ロールスロイス」は英国で生まれた(画像は1934年に作られたロールスロイスの「ファントムⅡ」。「AUTOMOBILE COUNCIL 2018」にて編集部撮影)

梅:作る側は一生懸命にそれを作っているんですが、お客様は、もうそこに魅力を感じなくなっているのかもしれませんね。だから、買ってもらえない。そういうところで、作り手側も悩んじゃっている。

安:ジレンマあるでしょうねー。

大変革のクルマ業界、生き残りの鍵はブランド力?

編集部:でも結局、自動運転の電気自動車ばかりが走る世の中になったら、そのクルマは、どこのメーカーが作ったものでも関係なくなってしまうという怖さはないですか?

梅:そうなったら、うちも大変だ(笑)

安:どうなっても、電気でも自動でも、ロールスロイスというブランドは磐石だと思いますよ。自動運転の電気自動車であっても、ロールスロイスを買うお客さんはいる。そこの部分って、逆にすごく大事になりますよね。そうなると、ブランドが逆に問われると思う。

梅:まさにそう。自動でもEV(電気自動車)でも、みんながクルマをシェアリングする時代になっても、「フェラーリ」を買う人は絶対に買う。

安:絶対に買う。運転しなくても買うと思います(笑)

梅:それはやっぱり、そこに文化的、あるいは資産として、あるいは商品の魅力として、際立ったものがフェラーリにあるからで。

安:日本メーカーは、そこを危機だと思って欲しいです。だから、マツダの方向性はすごく正しいと思うんですよ。ヘリテージを大事にすることとか。「アテンザ」の方向性も、ミニバンをやめたことも含めて。

※編集部注:安東さんがマツダ「アテンザ」に試乗した。その模様はこちら

マツダのフラッグシップモデル「アテンザ」のセダン

安:私は今、輸入車しか基本、興味なくて、日本メーカーには少し失望しているというか、なんでコストでしか戦わないのか、価値を高めようとしないのかって思ってるんですけど、ミニバンをやめると聞いたとき、マツダは本気で考えているのかもって感じました。例えば、ディーラーでCI(コーポレート・アイデンティティ)の刷新も進めてますよね。

※編集部注:マツダはブランド価値向上に向けて販売店の改装を進めている。詳しくはこちら!

安:やっぱり、クルマを買う時は私、個人的には、のぼりが立ってる所に行きたくないって気持ちがあるんで。もちろん、ハードルが高くなったという人もいると思いますよ、マツダが急に、高級路線で入りにくくなったと。だけど、僕はそれでいいと思ってるんですよ、そういう思い切りが今まで、日本メーカーにはなかったと感じてるんで。だからアテンザも、もう100万円、高くてもいいと思ってるくらい。

サーキットの敷居を低くしたい2人

梅:クルマは何より、楽しいですけどね。僕なんか、リフレッシュに使ってますよ、行き帰りの通勤で。

安:全く同じです。今、私は千葉市に住んでいるので、(東京都内に通勤すると)往復で100キロなんですけど、楽しくて仕方がないです。仕事に向かうときは集中力が高まるし、帰りはクールダウンになるし、100キロは何の苦にもならない。日本人には、もっとたくさんクルマに乗って欲しいですよ。長い時間を乗ることになれば、より運転が楽しいクルマの方がよくなるでしょうし。クルマに触れる時間が短すぎるんですよね、ショッピングセンターに行くとか、乗る距離も短い。

梅:僕は思うんですけど、クルマってやっぱり、通勤で往復していてもリフレッシュできて楽しいですし、そこから先、足として使う以外にも、色んな趣味性が広がっていくものですよ。レストアまでいかなくても、何かアクセサリーを買ってきて付けるだけでも“自分のクルマ”になる。あるいはモータースポーツも、もっとお客様に楽しんでもらえるようにしたいし。

安:そうそう! サーキットのハードルって、もうちょっと下がらないんですかね?

梅:下げたいんですよ!

安:「ボウリング場」のレベルになればいいんですけど。

梅:そうなんですよ!

安:ニュル(ニュルブルクリンク、ドイツにある有名なサーキット)の20キロのコースでさえ、向こうではチケットさえ買えば、コースインですから。日本だと面倒だからなー! もちろん、旗の色とか、最低限の知識は必要ですけど、なんでこんなにハードルが高いのかな。やったらはまりますよ、絶対。信号もないし、人も飛び出してこないから危なくないし。

梅:手間も時間もお金も掛かるんで大変なんですけど、なんとかできればね。

安:持論なんですけど、サーキット教習を、教習所でやったらいいと思うんですけどね。サーキットって、実は日本に沢山あるし、希望者だけでもいいので。サーキットで思い切り走ってみてくださいよと。初めて免許を取る時、最初に高速教習とセットでサーキット教習をやったら、ほとんどの人がはまると思うんですけど。だからサーキット教習は是非やって欲しいんですけど、誰に言ったらいいんだろう?

免許取得時のサーキット教習を検討して欲しいと安東さん

梅:僕も思い当たることがあって、マツダは主催じゃなくて協賛なんですけど、「ドライビングアカデミー」というのがあります。初めてクルマをお買い上げになったお客様から、そうじゃない人まで、多くの場合はサーキットでやるんですけど。でも、いきなり走るのではなく、クルマというのは、こういう状況になったら、こんなことが起こりますよというのを体験してもらうんですよ、わざと滑らせたりとか。

安:普通の人って、フルブレーキもフルアクセルも経験したことないですからね。

梅:そうそう。で、最後はサーキットも少し走っていただく。年間二百数十枠しかないんですけど、募集すると、瞬く間に一杯になる。

安:だから、興味はあるんですよね。

梅:今から僕らは、そういうことの枠も広げていくべきかもしれない。200万円で買ったクルマを、そこで使い切れると。

安:いいと思います。安全上もいいですよね。子供を乗せてミニバンでかっ飛ばしているお父さんもいるわけじゃないですか。「この人、ここでフルブレーキをかけたらどういう挙動になるのか、分かってるのかな」と思うと恐怖で。サーキットでも、飛行場でもいいと思うんですけど、一回でも、クローズドコースで、とりあえず思いっきり踏んでみて、急ブレーキをかけるとクルマがどう動くのか、経験するだけでも変わってくると思うんですけどね。そういう教習ってすごく必要だと思う。僕は山形の合宿免許だったんですけど……

梅:山形の合宿免許? ぼくもそうでした!

「山形の合宿免許」という共通点が発覚した両者

安:2月だったんですけど、夜に水を張って、氷路教習みたいのがあったんですよ。

梅:そんなのあったんですか?

安:スタッドレスが出たばっかりの頃で。40キロくらい出してツーって、ブレーキが全く効かないような状態を経験させてもらったんで、それはすごくよかった。そういう経験をしておいた方がいいじゃないですか。

梅:その方が絶対、安全ですよね。知っている方が。

安:たかだか40キロでも、フルブレーキ踏んでロックしちゃったら、どうにもなんないと体で感じることができた。それをクローズドコースとかサーキットでやるのが、必修くらいになれば……。クルマって“凶器”であり“棺おけ”でもあるわけじゃないですか。

梅:だけど、正しく使えばね。

サーキットで1度、クルマの能力を極限まで試してみることは、確かにためになる経験かもしれない。画像はマツダの美祢自動車試験場(山口)にあるサーキット(画像提供:マツダ)

安:クルマって「魔法の絨毯」じゃないですか。しかも、「どこでもドア」と違うのは、行程も楽しめるところ。その楽しさは、ぜひ知ってほしいですよね。

梅:駅もないところに、自分の意思で行ける。だけど一方で、普及させることに重きが置かれたのもあると思いますけど、危険性もある乗り物なのに、専門的な知識なしで乗れるようにしなきゃいけないものって、クルマしかないですよ、考えてみれば。

安:場合によっては、自分のクルマのことも本当に知らない。ガソリンかディーゼルかも知らないし、気筒の数も分からない。僕なんか運転しながら、ピストンが上下しているのを想像して悦に入っているタイプなので、そういうのを分かって運転しているから危険も、整備の具合も分かりますし。運転スキルには自信ないですけど、スキルを過信しない自信はあります。

エンジンが動いているさまを想像しながらクルマを運転しているという安東さん(「アテンザ」試乗時に編集部撮影)

安:ヨーロッパには、国自体がクルマ好きって感じのところもあるじゃないですか。でも日本は……

梅:それはでも、マツダでも少しやってますと申し上げましたけど、もっと僕らが努力して、数を増やしていって、たくさんのお客様が体験して、クルマとはこういうものだと理解して頂いて、中にはサーキットを走って見たいと思う人がいるかもしれないし、そういう(機会を増やす)努力を僕らはしうるわけで。そういう人が増えていくと、国に「やっぱりこっちだよね」と思ってもらえるかもしれない。国の仕組みと僕らの努力って、鶏と卵なので。僕らとしては、国がやってくれない、変わってくれないといって待っているよりも、自分達で、こうあればいいなということを少しずつ、実現できればいい。

安:例えば、全てのマツダオーナーに、そういうドライビングアカデミーみたいなものを勧めるとか、そういうところから始めるのがいいんじゃないですか? 新車を買う人に勧めてみる。もちろん任意で、興味ある人だけでいいんですけど、全てのお客さんに働きかけることって、メーカーさんができることなのでは。

梅:がんばろう! がんばります。

安:そういう提案もありかなと今、思いましたね。

梅:現時点でそういう状況にはなくて、もちろん、それなりのインストラクターも必要ですし、フルフルでやって年間、二百数十人という状況なんで、道は長いですけど、頑張らなきゃいけない。

もう少しキャパが増えるといいですよね。この間、鈴鹿でやったアカデミーを視察に行ったのですが、お客様とお昼を食べた時、これに参加するのに2回も有給休暇を取ったと。一回は今日で、もう一回は予約を取る時だと。それを聞いて嬉しい反面、ものすごく申し訳なくて。今はインストラクターも足りないし、サーキットが中々、空いてないってのもあるのですが、もう少し多くのお客様を受け入れられれば。せっかくクルマを買ったのだから。

転換点を迎えたマツダの今後、「FD」復活も視野?

編集部:マツダは先日、今後のクルマづくりに「ラージ」と「スモール」という考え方を導入すると発表されました(詳しくはこちら)。そういう意味で転換点にあると思うんですが、ロードスターに限らず、今後もマツダは、お客さんに長く乗ってもらいたいと考えてクルマを作っていくんですか?

梅:そういうことなんでしょうね。うちのクルマは、自分でいうのもなんですけど、哲学と情熱に満ちてると思いますよ。

安:「FC」とか「FD」(「RX-7」というクルマの型式で、「FC3S」と「FD3S」のこと)なんて、もう伝説になっているじゃないですか。「頭文字D」を読んでない人でも。

※編集部注:漫画「頭文字D」には、「FC」と「FD」を操る高橋兄弟というキャラクターが登場する。

「RX-7」。これは「FC」と呼ばれるモデル(画像提供:マツダ)
こちらは「FD」(画像提供:マツダ)

梅:ええ。ただ、本当に申し訳ないんですけど、そういうクルマってだんだん、車検が通らなくなってきていて。次は、ロータリーをお持ちのお客様をどうするかなんですよ。自動車会社として、これは次の非常に大きな責任なので、頑張んなきゃ。

安:FCとFDって、規制を通るように作り変えてでも、復活させて欲しいなと思いますよ。FDなんて、デザインは今だに本当に格好いい。欲しかったなー! でも、あのフォルムはロータリーエンジンじゃないとできないですよね。

梅:難しいですね。あのボンネットの高さ、できないですよ。

安:マツダって、漫画にクルマが登場したりする、数少ないメーカーであることは間違いないので。FDは乗りたいですけど、今は難しいんでしょうね、あのままロータリーでというのは。排ガスも燃費も。

梅:いや、でも、「やります」とお約束はできないですが、うちの会社はあきらめてないので(笑)

安:あのまんまで乗りたいですね!

ロータリーエンジン搭載スポーツカーの復活に期待をにじませた安東さんと含みを持たせた梅下さん

「日本で古いクルマを楽しむには?」というテーマを設定していた今回の対談。話題は初代「ロードスター」のレストアから、ロータリーエンジン搭載スポーツカー復活の可能性まで多岐にわたった。自動車メーカーにとって、これまでにどんなクルマを作ってきたかという歴史は、その会社のブランドイメージに直結する部分。マツダのように自社のヘリテージを大切にしようとする姿勢は、そのブランド力が生き残りの鍵になるかもしれない今の時代に、ますます重要になるのではないかと感じた。

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大盤振る舞いのPayPay、「200億円還元」が導いたビジネスの勝機とは

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2019.05.18

PayPayの100億円キャンペーンが終了

「〇〇ペイ」が乱立する中、PayPayの立ち位置は?

6月には新キャンペーンを実施、「決済No.1」への道筋とは

前代未聞の「20%還元」で話題を呼んだPayPayが、第2弾の100億円キャンペーンを5月13日に終了した。だが6月以降には新たなキャンペーンが始まり、まだまだその熱は冷めそうにない。

ソフトバンクグループの資本参加など、PayPayを取り巻く環境は急速に変化している

派手な還元策が注目されるPayPay。今後のビジョンとして打ち出したのは「決済No.1プラットフォーム」を目指すことだ。最近のPayPayを取り巻く状況を振り返りながら、次の展開を予想してみたい。

PayPayは「認知No.1の維持が重要」

4月25日のヤフーによる決算説明会では、PayPayに関する最新の数字として、登録者数は600万人、加盟店は50万店、決済回数は累計2,500万回を突破したことが明らかになった。さらに登録者数は10連休後には700万人に達するなど、順調にその数を伸ばし続けている。

PayPayの累計登録者数が700万人を突破(5月8日のソフトバンク決算説明会にて)

現状、名称認知やサービス理解ではPayPayがNo.1を維持している(PayPay調べ)。これから先、スマホ決済がマジョリティ層に広がっていくにつれ、まずはNo.1のサービスから始めようと考えるユーザーは増えていく。とにかく、認知度No.1を維持していくことが重要というわけだ。

PayPayによる調査では認知度No.1をキープ

100億円キャンペーンの第2弾は終了したが、同社は新たに「次の20%還元」として、6月からはドラッグストアで最大20%を還元するなど、月ごとにジャンルを限定して実施するという。またキャンペーンとは別に、通常の還元率も最大3%に引き上げている。

まだまだPayPayの大盤振る舞いは続きそうだが、店舗側が払う決済手数料は場合によっては0%であるほか、売上金の入金手数料も無料期間を延長している。こうした間にもユーザーへの還元は続いており、PayPayが使われるたびに損失は膨らむ計算になる。

そこで改めて注目されるのが、「どうやって儲けにつなげていくのか?」というビジネスモデルの視点だ。ヤフーやソフトバンクの決算説明会からは、その将来像が明らかになってきた。

PayPayが「プラットフォーム」として本格始動?

ヤフーが決算説明会で示したPayPayのビジネスモデルとは、決済データやPayPay残高の活用だ。蓄積された決済データから個人の消費行動を分析すれば、店舗への送客や広告に利用できる。PayPay残高を利用すればさまざまな金融商品の販売が可能だ。

PayPayのビジネスモデル(4月25日のヤフーの決算説明会資料より)

近未来を描いたイメージビデオでは、PayPay残高が足りないときに利用できる「後払い」、近隣店舗の商品在庫の表示や送客、PayPay残高による投資信託や保険の購入、デリバリーやレンタカーといったサービスを利用する様子が描かれていた。

最近では、楽天やLINEに続き、KDDIもアプリを入り口としてコード払いや資産運用、ショッピングやサービス利用にポイントを循環させていく構想を打ち出している。PayPayが目指すビジネスモデルは、そこに真っ向勝負を挑むものとみて間違いなさそうだ。

続々と強化されるPayPayアプリ。今後は金融サービス連携も?

ヤフーはPayPayのオンライン対応を進めており、6月以降にYahoo!ショッピングとヤフオクに対応する予定だ。特にヤフオクの売上金をPayPayで受け取れるようになる機能は、メルカリの売上金を利用できるメルペイに対抗する動きといえる。

また、ソフトバンクはガラケーからの移行にPayPayを活用する。ガラケー利用者向けの「スマホデビュープラン」では合計6,000円相当のPayPayボーナスを付与すると発表している。PayPayに関心を持ち始めたガラケー利用者に向けて、スマホに移行させつつPayPayユーザーとして取り込む、一石二鳥のアプローチだ。

PayPayを取り巻く体制も変化している。ソフトバンクグループはPayPayに460億円を出資する一方、ソフトバンクはヤフーを子会社化することで効率化を図るなど、グループ全体でのシナジーを追求していく構えだ。

PayPayを中心にソフトバンクグループ全体とのシナジーを追求

スマホ決済の中でも飛び抜けて勢いのあるPayPayだが、アプリ起動やコード読み取りの手間を嫌う声は多い。還元キャンペーンの間だけ盛り上がる一過性のものと考えていた人も少なくないだろう。だがここに来て、ソフトバンクとヤフーはPayPayを本気で「No.1」にする戦略に着手したといえそうだ。

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チームの環境はどう変わったか? 代表者4人が語る「eスポーツ2018-19」

チームの環境はどう変わったか? 代表者4人が語る「eスポーツ2018-19」

2019.05.17

2018年に大きく飛躍したeスポーツ業界

選手や大会だけでなく「eスポーツチーム」にも影響を及ぼした

eスポーツチーム運営に携わる4人に集まっていただき座談会を実施

チームに起きた変化や現在の環境について話し合ってもらった

2018年に大きく飛躍したeスポーツ業界。選手や大会運営だけでなく、プロ選手の所属する「eスポーツチーム」にも影響があったようだ。そこで、eスポーツチームを運営する4名に、チームの変化やeスポーツの現状、これからの展望について語ってもらった。

今回、集まっていただいたのは「よしもとゲーミング」「SCARZ」「SunSister」「DetonatioN Gaming」の4チームの代表者だ。

流入する資本。eスポーツのマネーゲーム化を懸念

――昨年からeスポーツを取り巻く環境が大きく変わったと思います。みなさんのチームにはどのような変化がありましたか? 昨年その波に飛び込んだよしもとクリエイティブエージェンシーさんは、eスポーツへの参入意図について教えてください。

よしもとスポーツ 代表取締役社長 星久幸氏(以下、星):巷で言われているのと同様に、弊社にとっても2018年は“eスポーツ元年”でした。よしもとクリエイティブエージェンシーはエンターテインメントの総合商社として、タレントに仕事を持ってくることがメインの会社です。内容は時代によって変化しますが、eスポーツはまさにこれからタレントの活躍の場の1つとなると考えたため、参入することにしました。

ただ、「よしもとゲーミング」として、eスポーツ事業に乗り出したはいいものの、右も左もわからない状態だったので、まずはすでにeスポーツチームを運営しているところにパートナーとして参加しました。プロeスポーツチームの「よしもとLibalent」がそうですね。

また、よしもとはイベント運営も行っている会社なので、興行としてのeスポーツにも注目しています。2019年からは『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の国内リーグの「League of Legends Japan League(LJL)」の運営に参加しています。

よしもとスポーツ 代表取締役社長 星久幸氏

XENOZ 代表取締役CEO・SCARZ オーナー 友利洋一氏(以下、友利):これまでは、チームのスポンサーを探しに行った際、いつも「eスポーツとは」という説明からスタートしていましたが、昨年あたりからその説明が不要になりました。

また、認知度が高まっているので、プロゲーマーを目指す人も確実に増えてきていますね。ちょっと前だとYouTuberの影響などもあり、ゲームで稼ぐというとストリーマーを目指す人が多かったのですが、最近は選手志望の人が増えている印象です。20歳以下の選手も増えてきたのではないでしょうか。なので、チームとしては、資金も選手も厚みが出てきました。

XENOZ 代表取締役CEO・SCARZ オーナー 友利洋一氏

SST-GAMES 代表社員CEO・SunSister オーナー 太田桂氏(以下、太田):チーム設立当初は、ゲーム好きが集まる、いわばコミュニティの延長のようなものでした。なので、ゲームで日本一になりたい、世界に行きたいという気持ちは強かったのですが、「お金を稼ごう」とはあまり考えていませんでしたね。しかし、次第に企業から協賛の話をいただくようになり、「ビジネスとしてしっかりやっていかなければならない」と思うようになりました。

企業側も、資金提供されるようになってからは、eスポーツについて勉強されるので、選手やチームの状態なども細かく見られます。そのため、いまは「スポンサーされるチーム」と「されないチーム」がふるいにかけられているでしょう。協賛の数も増え、ご提供いただく資金も増えるなかで、昔ほど緩い感じではなくなりました。業態としても、これまでのようなPCメーカーやPC周辺機器メーカーだけでなく、PC関連以外の企業の参入も増えています。

あと、eスポーツが普及して感じる変化ではもう1つ、ファンの存在が挙げられると思います。最近では、試合後に選手を出待ちするファンを見かけるようになりました。プロゲーマーがアイドル化してきたなと思いますね。

SST-GAMES 代表社員CEO・SunSister オーナー 太田桂氏

Sun-Gence 代表取締役社長 DetonatioN Gaming オーナー 梅崎伸幸氏(以下、梅崎):最近は、Twitterのアカウントをスポンサーさんに見張られている気がします(笑)。打ち合わせのときに「梅崎さんこの前~していましたよね」と言われて、「どうして知っているんですか?」と聞いたら「Twitterで見ました」って。選手も私も下手な発言はできなくなったと感じましたね。

チームとしては、やはり2018年に大きく変わりました。以前の年と比較すると、グッズ販売などの売上が2倍以上も違うんです。数千万円クラスですね。イベントだと選手のサインがもらえることもあり、現場でグッズを購入する人が増えている印象です。

選手の給料も上がってますし、確実に市場価値は高まっているでしょう。ただ、主要タイトルではマネーゲームが始まっている感じがして、それがちょっと気がかりですね。

Sun-Gence 代表取締役社長 DetonatioN Gaming オーナー 梅崎伸幸氏

友利:大資本が入ってくるということですよね。それはまずいことなんですか?

梅崎:たとえば、中国資本が入ってきて、選手を多額の資金で集め出すと、市場はあっという間に吹き飛んでしまうでしょう。「選手1人に3000万円払います」「予算は10億あります」って言われたら、DetonatioNなんか消し飛んでしまいますよ。リアルスポーツのプロチームもeスポーツに参戦していますし、経営基盤がしっかりしているところと勝負して勝てるのかなという不安はありますね。

太田:ちょうどこの前、友利さんと話をしていたときに「数年後には、SunSisterないから」と言ったのを覚えています。「なんでそんなこと言うんですか」って言われましたけど、バックに銀行のような大資本が付いている企業と札束ゲームをしても絶対に勝てないじゃないですか。「SunSister、強くなったよね。君、いくらもらっているの? そう、じゃあ月100万出すよ」って言われたら、太刀打ちできません。

星:eスポーツの運営ノウハウがないところは、チームごと買うケースも出てくるでしょうね。

梅崎:そうですね。チーム売却まで行かず、資金力のあるところとパートナーを組んでいければいいのですが。

選手の意識は“ファンの存在”で変わる

――TwitterなどのSNSについて話が出ましたが、選手は特に注目されていると思います。そのような状況に慣れていない選手も多いと思いますが、チームとしてはどう対応していますか。また、ファン対応についてもお聞かせください。

星:うちはマネジメントの会社なので、コンプライアンスに関してはしっかりと時間をとって教育していますね。弁護士や警察OBの方に来ていただき、一人ひとりに説明します。

メディア対応についてもレクリエーションを実施しています。全員に行き渡っているとはまだ言えませんが、eスポーツ選手でも目立つ存在のジョビンには特にたたき込んでいますよ。

リーグ運営という側面からほかのチームを見ていると、そのようなことができているチームとできていないチームがはっきりとわかりますね。

友利:ファンサービスは力を入れていきたいと考えています。eスポーツの場合、会場に行けば選手に会えるという「身近さ」も魅力の1つでしょう。

実はSCARZには、「元アイドル」をしていた選手も在籍しているんですが、アイドル時代よりも、eスポーツ選手になった今のほうがファンとの距離感が近くなって、彼自身も喜んでいますね。最初はeスポーツに興味がなかった彼のファンにも、eスポーツを身近に感じてもらえるようになりました。

太田:選手の教育自体は、それこそチームの発足時からしっかり行っています。ただ、なかなか浸透するまでに時間がかかりますね。選手にコンプライアンスの大事さを説明すると、その場では素直に話を聞きますし、「わかりました」って言ってくれて。やんちゃなタイプの人は少ないのですが、それでも、トラブルを起こしてしまうことがあるんです。

そのときに「SunSister、ちゃんと教育しろよ」って言われるんですが、実際は丁寧にやっているんです。たぶん、どのチームも教育はしていると思いますが、やらかす人はやらかしてしまいますね。

ただ、ファンが増えて「自分が注目されている」と認識できれば、そこで態度が一変することが多いですね。「これは下手なことはできないな」と思うようです。コンプライアンスを説明するよりも、ファンに見られているという意識を持つほうが、大事なのかもしれません。

梅崎:チームのメンバーと焼き鳥屋さんに行ったとき、店員さんからうちのチームのファンだって声をかけていただいたことがありました。すぐに「下手なこと言うなよ」選手たちに伝えましたね(笑)。太田さんがおっしゃったように、「いつどこで誰が見ているかわからない」ことを実感しました。

DetonatioNは大所帯なので、教育自体はマネージャーに任せています。なので、その教育者、教育内容を間違ってしまうと、選手が勘違いしてしまうことはありますね。僕らの考えていることをマネージャーに伝え、それをマネージャーから選手たちにきっちり伝えられる座組を作っていかないといけないと考えています。

太田:ファン対応については、定期的にファンミーティングを実施しています。実施し始めた頃は「僕にファンなんていません」とか「そんなことやって意味あるんですか」とか、ファンとの触れ合いを怖がる選手もいましたが、実際にファンミーティングをやってみると、思いのほか人が集まって「いつも動画見ています」「試合に行きました」って言ってもらえるんです。そうすると、うれしくなるんでしょうね。ファンの存在を実感して、イベントへの参加も楽しくなってきて、ファンから見られていることに対してもポジティブに感じられるようになったはずです。

梅崎:DetonatioNでは以前、ファンが離れぎみになってしまったことがあったんです。そのときに私も含めて意識改革を行って、今まで以上にファンを大事にするようにしました。

選手も昨年の「Worlds」で、わざわざ韓国まで応援に来てくださったファンがいたことがすごくうれしかったようで、意識が変わったように思います。

友利:教育という意味でいうと、有名になって、成績も残せるようになると、選手が迷子になってしまうことがありますよね。チームではなく自分の力で勝っているとか、自分だけに人気が集中しているとか、イベントのオファーは自分に来ているとか。もちろん、選手個人の強さもあると思いますが、チームゲームの場合は1人では勝てません。目立つプレイの裏には支えてるチームメイトがいます。そうなるとチームを離れても、オファーがもらえるのではないかと思ってしまうんです。

梅崎:たしかにあります。でも実際は違うんですよね。よしもとさんは、特にそのあたり詳しいのではないでしょうか。多くの芸人さんが在籍していて、よしもとの看板で仕事がくることも多いわけですから。

星:永遠の課題ですね。オファーをいただくのは、「芸人の人気」か「よしもとの存在」か。私はどちらもあると思います。もし、芸人の力だったとしても、そこまで育てたのはよしもとですし、eスポーツであればチームなわけです。

友利:実際にチームを離れてから、チームの人気に支えられていたと気づくこともあるようです。もちろん、チームの人気は個々の選手の人気あってのこと。あと、チームは強いことで人気が出るのですが、強すぎてしまうのも弊害はありますね。

星:リアルスポーツでも一緒ですよね。1チームだけが強すぎてしまうと、試合にならないですし、実は集客もトータルでは減ってしまうんですよね。NBAなどのアメリカのスポーツリーグでは、各チームが選手に支払える給料の総額に上限を設けて、戦力のバランスを取っていますが、eスポーツでは、まだそういうレギュレーションがありません。勝つことで集客を見込めるようになったのに、勝ち続けてしまうことでお客さんが離れるというジレンマですね。「観に行かなくても、どうせ勝つんだから」って、なるんです。

梅崎:そうか! 負けるように言わなきゃ(笑)。

ドライな関係が増えた「選手」と「チーム」

――賞金やプロゲーマーという職業が話題になることも増えました。もともとゲームタイトルが好きでコミュニティからプロになった選手と、eスポーツが確立されてからプロになることを目的に始めた選手では、ゲームに対する向かい方は違うのでしょうか。

太田:特に違いはないと思います。チームのなかには、ゲームを楽しみたいと思っている人もいれば、トップを目指したいと取り組んでいる人もいます。それでも、ゲームや大会への熱量はそんなに変わらないでしょう。ただ、結果が出たときに、以前の選手は「よっしゃー、勝ったー」で終わっていたところ、今では「よっしゃー、勝ったー。結果出したからお金ください」ってなるだけだと思います。

梅崎:昔からいる人はお金を求めないことが多いですね。「強さ」や「世界での活躍」が先にきます。今の選手はお金をもらえるのが当たり前という印象です。もちろん、お金の話は重要なんですけど。面接のひと言めから「いくら出します?」はちょっと……。

友利:うちも似たような感じですね。強い選手は勝つことを最重要に考えています。「勝ちたい」「結果を出したい」と頑張っている人には、こちらからサポートしたいと思うもの。そこは情の部分になってしまいますけどね。

梅崎:情は大事です。なかなか結果を出せない選手がいると「うちと契約続けるのは難しいな」とならざるを得ないのですが、本人とその話をするときに「もう少しだけ頑張らせてください!」と懇願されてしまうと「そうかぁ」って判子を押してしまうんですよね。

太田:たぶん、梅崎さんも長いことやっていらっしゃるので、どうしても選手を切らなきゃならない場面に遭遇して、涙を流しながら契約解除した経験ってあるんじゃないですか?

梅崎:そりゃありますよ! 泣きましたね。

太田:そうですよね。私も経験があります。選手と泣きながらお別れしたことがありました。できることなら契約継続したかったですし、選手もSunSisterで続けたいって思いがあったわけですから。

もちろん、今もそのようなケースはゼロではないですけど、契約に関してはわりとドライな関係が多いですね。内容に不満があったら辞めますし、こちらから切らざるを得ない場合でもあっさりと辞めていきます。

ただ、プロとしてお金をもらえることが当たり前になった時代に生まれたので、対価を求めること自体は悪ではありません。

――今年LJLは大きくレギュレーションを変え、売上が5000万円必要であったり、資本金が1000万円以上であったりと、リーグに参加できるチームの条件も変わりました。また、2部リーグを廃止し、1部リーグのチーム数を8に増やすなど、さまざまな改革を行っています。ほかのタイトルでも一定数の資本金額や売上額を満たしていないと、リーグへの参加申請ができなくなっていますが、この状況についてどう感じますか。

梅崎:LJLに関して言えば、6チーム制から8チーム制にしたのは大賛成ですね。ただ、2部制をなくしたのは早すぎたと思います。現状でも地域密着のフランチャイズ体制がまともに機能していないなかで、2部制をなくしてしまうと、東京の一極集中になりますし、これからLJLを目指そうとする若者の活躍の場が少なくなってしまいます。

リーグとしても2部との入れ替え戦があるからこそ、成績下位チームも最後まで緊張感を持って試合できるわけです。今の状態だと優勝を見込めなくなったチーム同士の試合はただの消化試合になってしまいますから、観る方もつまらなくなるのではないでしょうか。

友利:うちのチームは1部と2部を行ったり来たりしていたので、落ちたときの悔しさ、昇格したときの感動が得られなくなったのは残念ですね。

梅崎:リーグ側からすれば、資金不足が原因でチームが解散してしまうリスクを懸念して、ある程度資金力、実力のあるチームを選定していると思います。なので、2部リーグに関しては、その売上や資本金の規定を1部よりも低く設定するなどの処置で継続していただければうれしいですね。

友利:チームの売上を求めるのであれば、エコシステムも同時に作ってほしいですね。放映権を作って、チームに分配するとか。もちろんチーム自体が考える必要もありますが、さまざまな面でリーグに協力していただけるとうれしいですね。

たとえば、海外から有力選手を招聘すると、入国管理局から「厳しい」と言われることがあるんです。なぜかというと、プロリーグとしてのシステムが確立していないケースが多いためです。LJLはそこをクリアしているので、ガンガン海外の選手が入ってきています。日本の『LoL』が飛躍的に伸びたのは、韓国人選手が入ってきたことが大きいんです。「実力がはるかに上の韓国人選手がこれだけ練習しているのに、日本人選手はそれでいいのか」という雰囲気になって、日本人選手の意識が変わってきました。

選手としての実力の高さが国内のリーグのレベルを引き上げてくれるだけでなく、海外の常識、特にeスポーツ先進国の韓国のやり方が入ると、国内の選手やチームの意識改革ができるんです。Jリーグの関係者も同じことを話していましたね。

星:LJLの2部廃止は我々の決定というわけではないのですが、まず1部リーグに注力してLJL自体を広めることが目的だと思います。もっと競技人口が増えてから、2部リーグの話が再び出てくるのではないでしょうか。

梅崎:若手発掘という位置づけであれば、参加希望者によるトライアウトの「スカウティング・グラウンズ」がありますけど、狭き門のうえ、参加するのは選手単位。即席チームでのプレイを数試合観ただけで選手の実力を判断することは無理ですよ。

友利:スカウティング・グラウンズで新しい選手を獲得したとき、現存の選手の誰かを切る必要が出てきます。2部があれば、そこでの活躍次第で1部への復帰も見込めますが、現状だと1度1部を離れてしまうと、復帰は難しいでしょうね。

2019年1月に開催された「LJL 2019 SPRING SPLIT」の様子。試合会場が中野の「Redbull Gaming Sphere Tokyo」から「よしもと∞ホール」に変更された

太田:主催者側の観点から考えると、チームが安定して運営されているかどうかの担保は必要だと思います。ただ、それをされるとうちは辛いかな。まあ、レギュレーションで出られないのであれば、それは仕方ないこと。こちらはあくまでも出させていただいている立場なので。

友利:大会自体もっと増やしてもらえればうれしいですね。せめて年間スケジュールは早めに出してほしい。スポンサーさんからスケジュールを聞かれるんですけど、決まってないから言えないんです。下手すると1カ月前にならないと出ないところもあって。

太田:IPホルダーが簡単に大会を主催させてくれない点も、なんとかしてほしいところです。権利を持っているところほど何もやらず、お金も出してくれない。それでいて、大会を開こうとしても許諾が降りないのでは、タイトルが盛り上がるわけがありません。

友利:そういう点で『カウンターストライク:GO』はすごいですね。さまざまなところが開催できるので、年間700回くらい大会がありますし。選手は休むヒマがないんですけど、今の日本のように「大会がない!」という状況よりはいいのではないでしょうか。

――今後eスポーツに求めることやチームとしての目標は何でしょうか。

星:リーグ運営はもっとしっかりしたいと思っています。選手に還元できるエコシステムの構築やスタッフの育成、また、セカンドキャリアの構築なども進めていきたいですね。よしもとクリエイティブエージェンシーはスポーツ選手のセカンドキャリアを支援しているので、eスポーツ選手にも対応できると思います。

友利:日本チームが世界を取るところを見てみたいですね。そのためにも、チームとして、選手はもちろん、スタッフの育成をしていくことが重要だと思っています。フィジカルやメンタルのケアができる環境も整えていきたいですね。ファンの方々にも選手を見て喜んでいただくためにも、大会で活躍できるだけでなく、人としてしっかりとした選手を輩出していきたいと思います。

太田:せっかく多くの人にファンになっていただいたので、もっと喜んでもらいたい。見ていて、「このチームおもしろいね」って言ってもらえるようなチーム作りをしたいと考えています。ファンが増えれば、それだけチームや選手にも還元されるわけですから。チームとしては、世界中から「SunSisterすげえな」と言われるようになりたい考えています。それが一番ファンも喜んでくれると思うので。選手の意識改革をし、ファン重視で運営していきたいですね。

梅崎:今、チームの主要タイトルは『LoL』なので、昨年以上の成績を残していきたい。また、実行するまでにしばらく時間がかかりそうですが、地方に根付いたチームにしていきたいと思っています。地盤を築き、その土地のファンや地元の企業と一緒に何かやっていければいいですね。選手中心での運営するスタンスは変わりませんが、ファンのための施策もいろいろ考えていきます。ファンクラブを作ったり、グッズを増やしていったり、そんな感じですね。

――ありがとうございました!

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