出るか日本発のヒット商品! 海外クラウドファンディングで広がる可能性

出るか日本発のヒット商品! 海外クラウドファンディングで広がる可能性

2016.06.09

DMM.comが海外展開に意欲的な日本企業をサポートする新サービス「DMM Starter」を立ち上げた。キックスターターやインディーゴーゴーなど、海外のクラウドファンディングに挑戦する日本企業に対し、DMMと連携企業は案件の登録代行や資金調達成功後の販路拡大といった手厚い支援を行う。エッジの効いた新製品・作品を抱えていても、海外展開はハードルが高いと感じている日本企業には朗報となりうる同サービス。日本から世界的なヒット商品が生まれる可能性は高まるのだろうか。

PR会社のバリュープレスやCerevoなど、様々な業種の企業が参加。申請予定企業は楽器アプリ「KAGURA」を手掛けるしくみデザインら4社だ

アート系からプロダクト系まで幅広く対応

DMM StarterにはDMMを含む8社が参加。もともと海外クラウドファンディングの申請支援を行っていたAWESOME JAPANのほか、ベンチャーキャピタルやメーカーなど、連携企業には多様な業種の企業が顔を揃える。

連携企業の機能を活用し、DMM Starterでは海外クラウドファンディングプロジェクトの申請代行、ページ更新の代行、過去の事例にもとづく資金調達計画の作成支援、翻訳・通訳などのサービスを提供する。DMMの主な収益源は資金調達に挑戦する企業からのコンサルティング料金だ。DMMは徐々に取り扱い企業を増やし、1年後には1カ月あたり20社レベルまで事業を拡大する目標を掲げている。

DMM Starterではキックスターターとインディーゴーゴーに絞って案件を申請していく予定だが、クラウドファンディング市場の盛り上がりをみつつ、他サイトへの登録についても柔軟に検討していく。案件の種類についてはプロダクト系に限らず幅広く対応する方針。DMM創業者で同社会長の亀山敬司氏は、「(プロダクト系でもアート系でも)何でも持ってきて」とDMM Starterの活用を呼びかけた。

海外クラウドファンディングへの参入障壁に解決策を提示するDMM Starter

多様な企業が参加するDMM Starterだが、連携企業のなかに、日本国内でクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営するサイバーエージェント・クラウドファンディングが名を連ねているのは一見すると不思議だ。優良案件が海外のクラウドファンディング市場に流れてしまう可能性がある以上、DMM StarterはMakuakeにとって競合相手ともなりうる存在だからだ。両社が新サービスで組んだ狙いはどのあたりにあるのだろうか。

日本と比べると海外、特に米国のクラウドファンディング市場は遥かに規模が大きい。より大きな市場にリーチしたい日本企業が、Makuakeら国内のサイトをスルーし、DMM Starter経由で最初から海外での資金調達に挑むこともありえる話だ。

国内と海外、2段階で資金調達を実施可能な体制

「海外でクラウドファンディングに挑む日本企業には、ステップアップとして国内での資金調達に成功し、ノウハウを蓄積してもらいたい」。サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈氏は、同社がDMM Starterに参画した思いをこのように語る。まずは日本で資金調達を行う企業が増えれば、当然ながら国内のクラウドファンディング市場は活性化する。DMM Starterとの連携では、国内から海外へと日本企業が資金調達のステージを上げていくような流れを作れるか検討しているようだ。

DMMの村中氏

DMMがサイバーエージェント・クラウドファンディングと組んだ狙いは、案件の掘り起こしにあるようだ。DMM StarterではMakuakeで資金調達を実施した企業にも積極的に声を掛けていく方針だという。DMM取締役の村中悠介氏は、「Makuakeで(資金調達に)失敗した人であっても、(製品を)ブラッシュアップしている可能性がある」との考えを示した。

日本では受けなくても、海外市場に挑戦することで人気に火が付く製品は確かにありそう。DMM Starterでは、国内と海外の双方で時期をずらして資金調達を行うこともありうるという。クラウドファンディングはプロモーションやマーケティングなどにも使えるため、国内外で製品をPRしたい日本企業にとってみれば、Makuakeも使えるDMM Starterという枠組みは魅力的なサービスに映るかもしれない。

DMM Starterの事業性は

これまで様々な新規事業に取り組んできたDMMだが、新サービスの事業性についてはどのようにみているのだろうか。コンサルティング料金が主な収入源となるので、DMM Starterを使う企業が増えれば増えるほど収入は伸びていくわけだが、問題は40万円という同サービスの月額利用料金が、海外で資金調達に挑む人々にとって高いと映るか、安いと映るかだ。

新製品のアイデアはあっても、量産の資金が工面できないという企業または個人が、利用料金を払えないためにDMM Starterの活用を断念するような事態はDMMらも避けたいところだろう。そこでDMM Starterが用意したのが、政府系機関や自治体などの補助金・助成金を組み込んだ特別な料金プランだ。

助成金で利用料金が無料になるケースも

DMM Starterの料金プランは「基本サポート」と「研修パックプラン」の2種類。研修パックプランは連携企業の1社であるライトアップの助成金取得支援サービス「Jマッチ」と連動している。助成金を受けることができた申請企業は、その資金をDMM Starterの利用料金に充当することができる。ライトアップ代表取締役社長の白石崇氏によると、DMM StarterとJマッチが連動することで、「(条件に合う企業であれば)無料で海外のクラウドファンディングに挑戦できる」ケースもありうるという。

月額40万円という料金設定だが、助成金の活用で無料になる可能性もある

DMMグループ内のリソースも活用

DMMはグループ内のリソースも活用し、日本のモノづくり企業を支援していく。米国のクラウドファンディングを活用する企業には、同社米国法人のアカウントを貸して申請の代行を実施する。資金調達に成功し、海外で製品を販売するフェーズに移行する企業には、DMMの海外ネットワークを活用した販路拡大支援を行う方針だ。

製品の完成度が低いなど、資金調達成功の可能性が低い案件が持ち込まれた場合はどうするのか。DMMの村中氏は、申請者にDMM.makeを紹介し、製品をブラッシュアップしてもらう方法もあると話す。案件の錬度により、DMM.makeとDMM Starterを使い分けるという方法が確立すれば、DMMにはシード段階も含めた幅広い案件が集まることになりそうだ。初期段階の案件を持ち込んだ企業にアドバイスを行う場合は、DMM Starterに参加しているベンチャーキャピタルのノウハウも役に立つだろう。

DMMの亀山会長は「儲かるかどうかは正直分からない」と認めつつも、DMM Starterを中長期的な視点で見ていく姿勢を示している。このサービスが軌道に乗るかどうかは未知数だが、日本のモノづくり企業が海外に乗り出す際に感じる難しさを、まるごと請け合おうというDMMの取り組みには今後も注目したい。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。