ネックだった上野~大宮間で速度向上に取り組む東北・北海道新幹線

ネックだった上野~大宮間で速度向上に取り組む東北・北海道新幹線

2018.08.17

騒音対策工事を実施で上野~大宮間速度アップ

青函トンネル区間も制限速度を上げて時間短縮

札幌まで延伸させて飛行機との競争力を高める

ここのところ、一体的な列車体系となっている東北新幹線と北海道新幹線の「スピードアップ」の具体策がいくつか打ち出されており、近い将来に実現しそうだ。

両新幹線を通して走る主力列車である「はやぶさ」の最高運転速度は320km/h。日本一の高速列車ではあるが、その速度で走れる区間は、実は宇都宮~盛岡間だけである。

その他の区間はというと、東京~大宮間は110km/h、大宮~宇都宮間は275km/h。そして、盛岡~新函館北斗間は、青函トンネルと前後の在来線(海峡線)との共用区間を除いて260km/h。その在来線共用区間は140km/hに制限されている。

全国新幹線鉄道整備法では、新幹線鉄道を「その主たる区間を列車が200km/以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と定義している。東京~大宮間31.3km(実際のキロ数。運賃計算上の営業キロとは異なる場合がある。以下、同じ)と、青函トンネル部分の82km、合計100km以上も在来線と変わらない速度でしか走行できない区間が介在するのは、いささか厳しい。

上野~大宮間で騒音対策を実施

JR東日本は、2018年5月16日のプレスリリースで、東北新幹線上野~大宮間(荒川橋梁以北の約12kmの区間)の最高運転速度を110km/hから130km/hに引き上げるべく、騒音対策工事を実施すると発表した。主な内容は吸音板の設置、防音壁のかさ上げである。

騒音対策強化によるスピードアップが実施される、東北新幹線の上野~大宮間

スピードアップの方策が騒音防止とは奇異に感じられるかもしれない。だが、この区間は市街地を通るため、計画当時から地元との間で速度、ひいては騒音を抑えることが約束され、建設への同意を得たという経緯がある。それゆえ、騒音は現状程度にしつつ速度を向上させるために、吸音板や防音壁の改良を行うのだ。工事完成は2020年頃が予定されている。

なお、この対策により短縮される所要時間は1分程度。同じ線路を走る上越新幹線や北陸新幹線の列車のスピードアップにも資するとはいえ、「大規模投資は抑えつつ、できるところから細かく対策を施してゆく」という感がある。

上野~大宮間のスピードアップは、上越新幹線や北陸新幹線の所要時間短縮にも資することになる

青函トンネル区間は160km/h運転へ

一方、140km/h制限がある青函トンネルも、最高運転速度向上へと動き出した。

そもそも、在来線特急時代の最高運転速度も140km/hであり、新幹線が開業してもそれが変わらなかったことが問題とされていた。速度が抑えられていた主な原因は、線路を共用している在来線貨物列車とのすれ違いの際、新幹線側が従来以上の速度で走っては、悪影響を及ぼすのではないかと考えられたことだ。

本州最北端の新幹線駅、奥津軽いまべつ駅。すでに140km/h区間となっており、新幹線らしからぬ速度で通過する「はやぶさ」
奥津軽いまべつ駅は、乗降客は少ないが、万が一の避難駅という役割も持つ
しかし、国内の在来線では、すでに北越急行や京成電鉄が160km/h運転の実績を有しており、大きなトラブルはないこと、また青函トンネル内では、両鉄道以上の管理レベルで軌道の整備を行っていることなどから、20km/hのスピードアップは差し支えないと国交省も見ていた。

9月に走行試験を実施

検討の結果、すれ違いそのものには問題ないことがわかった。また、懸念された地震発生時の貨物列車の挙動も研究され、脱線は発生しないと確認されたことから、安全が確保されたとゴーサインが出されている。

これを受けて、青函トンネルを所有する鉄道・運輸機構では、2018年9月2~19日に160km/h~210km/hでの新幹線電車の走行試験を実施する。160km/h運転については2018年度末、210km/h運転については遅くとも2020年度内までに、下り列車に限って特定の時期と時間帯において実現させる方針である。

所要時間短縮が課題の東北・北海道新幹線

国交省の鉄道統計年報によると、2015年度の実績で、東北新幹線の輸送実績は東海道新幹線の1/4以下で、需要に大きな差がある。東北・北海道新幹線は、それだけ「小さなパイ」を、ライバルである飛行機と奪い合っていることになる。

東京~新青森間は674.9 km、東京~新函館北斗間は823.7kmあり、東海道・山陽新幹線に当てはめると、それぞれ東京~岡山間、東京~広島間にほぼ等しい。「はやぶさ」の平均的な所要時間はそれぞれ約3時間10分、約4時間15分。このタイムは、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」とも同等である。

一般的に、鉄道の所要時間が3時間台だと飛行機に対して互角以上の"勝負"ができるとされ、3時間を切れるようだと、かなり優位に立てる。東京との間で新幹線が有利になるのは対青森市まで。対函館市となると、新函館北斗駅が市街地から離れていることもあって、少々苦しいところだ。しかも需要のボリュームが、東京~岡山・広島間とは大きく違う。

新函館北斗まで4時間以下が目標

東海道・山陽新幹線でも、N700Aの投入により、東京~新大阪間の最高運転速度が270km/hから285km/hに引き上げられた。これは全体の“底上げ”の意味合いが強いが、東北・北海道新幹線では、特定の列車だけでもよいから、目に見える形でのスピードアップ、所要時間短縮が求められている。巨大都市が連なり、旅客の流れが複雑に交錯する東海道・山陽新幹線とは違い、東北・北海道新幹線は「対東京輸送」がほとんど全てと言ってよいからである。

当面は東京~新青森間で3時間、東京~新函館北斗間で4時間を切ることが目標だ。そして2031年度には、新函館北斗~札幌間の延伸開業も予定されている。

東京~札幌間は1035.2kmとなる。これは東京~博多間(1069.1km)より、若干短い。現在、同区間を「のぞみ」は約4時間50分で走破しているが、やはり、飛行機の利用の方がずっと多く、JR西日本が公表しているデータだと、新幹線のシェアは7.5%(2016年度)にすぎない。ちなみに、東京~岡山間は62.3%(同)、東京~広島間は62.7%(同)と新幹線が優位である。

北海道新幹線札幌延伸も睨む

北海道新幹線札幌駅予定地(現在は駐車場など)を俯瞰する。在来線の右(南)側。現・札幌駅の東側に隣接して建設される

こういう事実がある以上、5時間程度が見込まれる東京~札幌間を、4時間30分程度にまで短縮したいと考えるのも当然だ。そうなれば、現在は圧倒的なシェアを持つ、飛行機に対する競争力も持てるだろう。

実現のための次のネックは、260km/hに制限されている盛岡~新青森間や、新函館北斗~札幌間(予定)になってくる。設備的な問題は少ないと見られることから、この区間の320km/hやそれ以上へのスピードアップも、すでに視野に入っている。

JR東日本は2019年春に新型試験車「ALFA-X」を完成させ、360km/h運転をにらんだ走行テストを実施する計画である。新幹線が札幌まで延びた時、どのような列車がどの程度の所要時間で走るのか、大いに楽しみだ。
 

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

2018.10.23

フィリップ モリスが加熱式たばこの新型「IQOS 3」2機種を発表

ライバルひしめく日本市場で世界初公開、ユーザーの声を活かし改良

本体を小型軽量化し充電時間も短縮、待望の連続吸いにも対応

フィリップ モリス ジャパンは、加熱式たばこ「アイコス」の新型モデルとして、「IQOS 3」と「IQOS 3 MULTI」の2機種を11月15日に発売すると発表した。従来型では1本吸う毎に充電を必要としていたが、新型では連続吸いに対応し、本体も小型軽量化した。商品力を強化した新型を、競争の激しい日本市場へ先行投入することで、シェア獲得を狙う。

新型は正統進化の「IQOS 3」と、一体型の「IQOS 3 MULTI」

新型は2機種で、現行の「IQOS 2.4 Plus」を置き換える「IQOS 3」(価格は10,980円)と、新たにオールイン型へ本体形状を変更し連続吸いに対応した「IQOS 3 MULTI」(価格は8,980円)。ともに11月15日から、全国のIQOSストアおよびIQOSオンラインストアで発売する。

「IQOS 3」は従来のIQOSを踏襲する機種で、たばこを吸うためのIQOSホルダーを、充電バッテリーのIQOSポケットチャージャーに収めて充電し、1本吸う毎に充電が必要。IQOS 2.4 Plusと比較して充電時間を40秒短縮したほか、本体を軽量化し、壊れにくいよう設計と素材も見直した。

「IQOS 3」は従来のIQOSの使い勝手を踏襲した改良版。チャージャーの蓋は横開きになった

「IQOS 3 MULTI」は、IQOSホルダーに充電バッテリーを内蔵したオールインワン型。こちらは1回の充電で加熱式たばこ10本分の連続吸いに対応する。本体はポケットに入るスリムなスティック形状で、重量も約50グラムと軽い。

「IQOS 3 MULTI」はデザイン一新のオールイン型。こちらは連続吸いもできる

シェア争いはさらに激しく、喫煙そのものへの風当たりも課題

日本の加熱たばこ市場においてフィリップモリスは、アイコスを他社に先駆けて全国販売したことで多くのユーザーを獲得していた。同社によれば日本のアイコス利用者は500万人を越えており、国内たばこ市場全体におけるシェアは2018年上半期で15.6%(出荷ベース)だったという。

日本市場では、JT(日本たばこ産業)の「プルームテック」や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」など、ライバル大手も相次いで製品を投入していることから、競争が年々激しくなっている。機能面では特に、1本吸う毎に充電が必要であったアイコスに対し、後発のライバルは連続吸いに対応していたことから、ユーザーの乗り換えも発生していたとみられる。

今後は、加熱式たばこの市場は拡大傾向にあるとはいえ、現在でも紙巻たばこに残り続けるユーザーに対する効果的な訴求や、喫煙そのものへの忌避感が高まる中で、その要因となっている健康面の懸念を払しょくできるかが、各社とも課題になってくるだろう。

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

阿久津良和のITビジネス超前線 第6回

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

2018.10.23

ポストビッグデータ時代に注目したい米Teradata社

Teradataの戦略やソリューションを紹介するイベントを取材

Teradata(テラデータ)という企業をご存じだろうか。1979年に米国で創業し、現在ではクラウドベースのデータおよびアナリティクス(分析)に特化したエンタープライズ企業である。

日本法人は日本テラデータとして活躍しているが、日本マイクロソフトなどグローバルIT企業と比較すると、日本での知名度はさほど高くはない。だが、Teradataが持つ潜在能力は実に高く、ポストビッグデータの時代を迎えた現在こそ注目すべき企業の1つに数えるべきだ。

今回は、米国日時の2018年10月14~18日にラスベガスで開催された「Teradata Analytics Universe 2018」を中心に、同社の戦略やソリューションをご報告したい。

データウェアハウスからデータインテリジェンスへ

イベント初日の基調講演では、50カ国3,000人以上が集まった会場の聴講者に対して、Teradataのビジョンが語られた。現在同社は1,200万ユーザーを抱えつつ、11兆のクエリを通じて840EB(エクサバイト)のデータが使われる状況下にある。そのようななか、講演ではTeradata COO, Oliver Ratzesberger氏が「パーベイシブデータインテリジェンスの新時代を切り開いていく」と述べた。

Teradata COO, Oliver Ratzesberger氏

抄訳すれば『意思決定者のために加工・分析したデータの普及』。これが新たなTeradataを象徴するキーワードだ。同社は従来のDWH(データウェアハウス)企業から、ユビキタスなデータインテリジェンスを届ける企業に生まれ変わるという。イベント開催直前に発表した新たなコーポレートロゴにも同様のメッセージが込められており、その意思は登壇時の発言「アナリティクスを買うのはやめよう」(Ratzesberger氏)にも通じる。

新たなTeradataロゴ

Ratzesberger氏の発言は過去の自社を含めた旧態依然としたアナリティクスツールを否定するものだった。その理由は、パーベイシブデータインテリジェンスを実現するソリューション「Teradata Vantage(以下、Vantage)」の存在が核にあるからだ。Vantageの導入事例として、オーストラリアのQantas Airways Limited(カンタス航空)が成し得た燃料消費率1.5%の改善や、米通信キャリアのVerizon Communications(ベライゾンコミュニケーションズ)の月間解約率を1.2%で抑制したことを紹介。また、米国の非営利民間医療保険の最大手であるKaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)は、Vantageを活用することで、年間に亡くなる12万5,000人の10%を救い、3,000億ドルの経費削減に成功したという。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏は「現在のビジネスで求められるのは、保有するデータを容易に取り出して活用できる仕組み」だと述べる。多くの企業は蓄積したデータを古いシステムで管理し、データアナリストはデータコネクターを通じて分析前の処理を行うだろう。TeradataはVantageについて、「常にすべてのデータを管理するため、分析プロセスや展開先、分析による洞察を容易に得られる」と説明する。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏

Teradata Vantageで何ができるのか

TeradataはVantageのメリットとして「好みの言語やツールが使用できる」「分析関数とエンジンを単一化」「複数のデータセットをサポート」の3要素を得られると語る。「皆さんに適切なツールを使って頂きたい。Vantageは『適切なツールを適切な仕事に使う』という概念が背景にあり、データの形状や分析内容に応じて言語やエンジン、4D Analyticsなどを用いて、広範なビジネス課題を解決できる」(Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏)という。具体的なSQLやPython、Rなどの開発言語、各種BIツールに加えて、SASやJupyter、RStudioといったプラットフォームで、JSONやBSON、AVRO、CSV、XMLといったデータを扱える。

Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏

また、すべてのデータをいつでも活用できるのがVantageが備える特徴の1つ。データをスピンアップし、必要な場面でダイナミックに分析できる場面が増えているが、従来のデータを読み込んで変換する過程はトラブルを引き起こす要因に数えられる。この課題に対してVantageはデータを1つのクエリで取得し、そのまま分析を実行するNative Object Storeの実現を2019年リリース予定の次期Vantageで容易にするという。データサイエンティストやビジネスアナリストはAmazon S3やAzure Blob上のデータをシームレスに処理できる。

Native Object Storeのイメージ図
Teradata President of Teradata Labs, Oliver Ratzesberger氏(左)とMicrosoft General Manager of Azure Media and Entertainment, Azure Storage and Azure Stack, Tad Brockway氏(右)による対談も行い、良好な関係性をアピールした

データ分析の前のデータ準備に課題、全自動化で解決へ

イベントではほかにも著名な登壇者により、企業のデジタル化に向けた施策など多くの話題が語られたが、最後はTeradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏の発言に注目したい。同士は長年スタンフォード大学に在籍していたが、Teradataに席を移した理由の1つとして、「顧客視点でエンタープライズの仕事に携わっている。技術や分析エンジンに取り組み、具体的なソリューションを実現できる」と述べた。

Teradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏

Becla氏は主に研究的視点から技術に携わっているが、「データラングリング(飼育)とスキーマ設計に7割の時間が費やされる」と、分析に至るまでのデータ準備に多様な課題があると指摘した。その上で「速さや最適性といった議論ではなく、すべてを自動化する」(Becla氏)のがVantageの意義であると語る。前述したTwogood氏が述べたようにNative Object Storeの実装は来年以降だが、「単なるビジョンではなく、研究所には試作機もある。1つのクエリにデータを割り当て、PB(ペタバイト)級のクエリを実行できる」(Becla氏)と多様な分析に集中できることを強調した。合わせて機械学習に用いるGPUのマルチスケジューリングについて、解決策を検討しているとして、現在取り組んでいる研究成果もいくつか披露した。

今後の機能については実装後に機会があれば紹介したいが、強いて昨今のバズワードを用いれば、現在は「ポストビッグデータ時代」に突入している。大量のデータを処理するビッグデータプラットフォームは普遍化し、利用する企業側はもちろん分析ソリューションの提供側でも、データの集積方法や更新の容易性、アクセスの最適化が課題として挙げられてきた。これらの諸条件を解決するには我々の意識変革も伴うが、基盤となるデータ・分析プラットフォームの躍進は、課題解決の大きな近道となり得るだろう。

阿久津良和(Cactus)