アナログとデジタルが融合した次世代の腕時計「wena wrist」(前編)

モノのデザイン 第8回

アナログとデジタルが融合した次世代の腕時計「wena wrist」(前編)

2016.08.23

ソニーが6月30日に正式発売を開始した「wena wrist」。ヘッド部分はアナログ時計でありながら、バンド部分に電子マネーや通知、ログといったいわゆる"スマートウォッチ"的な機能を持たせた製品だ。

本製品は、社内からビジネスアイディアを募るソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」から誕生した製品。2015年秋には、ソニーの運営するクラウドファンディングとEコマースのサイト「First Flight」において、国内で実施されたクラウドファンディングとしては初めて1億円以上の支援を集めたことでも話題を呼んだ。今回は同製品のデザイン面を中心に、設計開発を担当したチームに話を聞いた。

いかにして持ち物を減らすか、というアプローチ

wena projectの事業責任者・對馬哲平氏

いわゆるスマートウォッチ的な製品であるwena wristが他の製品と決定的に違う点は、デジタルな機能性と、従来のアナログ時計的なデザインを両立させていることだ。(wena projectの)事業責任者である、ソニー 新規事業創出部wena事業室統括課長の對馬哲平氏によると、本製品でコンセプトとして掲げられていたのは「いかに持ち物を減らせるか?」だと話す。

「『wena wrist』1つで何か持ち物がマイナスにできること、そういうイメージで考えていきました。まず、財布の機能があれば、ポケットから都度出さなくてもいいですし、スマートフォンの着信を通知してくれれば、カバンの中に入れておけばいい。そして、ログの機能があれば、手首に活動量計と時計を2個付けしなくてもよくなります。こうして、3つの機能に絞り込みました」と對馬氏。

大学時代のアイデアをカタチに

wena wristの大元のアイディアは、実は對馬氏がソニー入社前の大学生時代から温めていたものだ。

對馬氏が描いた構想段階のスケッチ

「その段階での構想は、バンドに何か入るといいなとか、そこにどんな機能を入れようかとか単純なアイディアにすぎませんでした。そしてソニーに入社した直後の研修の時に作りたいものとして最初に絵を描いたのがwena wristの原型。バンド部分にLEDが入っていたり、振動モーターが入っていたりと、完全に夢物語みたいな絵でした。どこにバックルを付けるとかなんて一切考えていませんでした」と語る。

しかし、その後にこのアイディアをもとに同期を中心とした有志が集まり、水面下でプロジェクトを進めていった。そして社内の新規事業創出プログラムに応募して見事採用され、事業化に向けて動き出した。

時計としてのルックスをそのままに

一般的にこの手の製品は多機能性を求める傾向にあるのに対し、wena wristは真逆の方向性を追求したというのが面白い。そして、結果、厳選された機能性と同様に、デザインの方向性も自ずとシンプルさを求めていったと明かす。

「wena wrist」の製品バリエーション。ストップウォッチ機能を備える「クロノグラフ」シリーズと、最もシンプルな「スリーハンズ」シリーズの2パターンを展開し、それぞれにカラーバリエーションがある

「もともとシンプルな機能しか入っていなかったので、デザイナーとの間でもシンプルにやりたいと話していました。wena wristのいいところは、ふつうの腕時計に見えるところなので、奇をてらったデザインにしようとかは全く考えませんでした。パッと見はふつうの腕時計なのに、よく見るとこだわりが随所に見られるみたいなものをデザインコンセプトに設定したので、(配色も)モノトーンの極力シンプルなものにしました」(對馬氏)

その結果、国内の時計メーカーが設計・製造したヘッド部分を採用。クロノグラフと3針の2モデルで、色はプレミアムブラックとシルバー、限定カラーのホワイトを展開し、美しい円筒形のケースと精密なヘアライン加工など、長年培われてきたアナログ腕時計の美しい佇まいをそのまま取り入れた。

腕時計としてはスタンダードなデザインとも言えるが、對馬氏によるとこれは“リファレンスモデル”とのこと。「今後、服飾ブランドなどさまざまなところとコラボしていきたいと思ってるので、第一弾はできるだけシンプルなデザインとし、配色もモノトーンに統一しました。Android端末で言うと、Nexusみたいなイメージですね。これをもとに機能拡張やアレンジをしていこうと思っています」(對馬氏)

時計を意識したUIデザイン

また、本体と連携するスマートフォンアプリは時計をモチーフに作られている。アプリの開発設計を担当した中村尚太氏は次のように語る。

「wena wrist」と連携するアプリの画面。製品同様、モノトーンの落ち着いた色味とすっきりしたデザインでまとめられている

「シンプルというのが製品のコンセプトにあったので、アプリもシンプルにこだわりました。でも、実はUIは新規事業創出プログラムの応募の際のデモで使ったものからは2回変更していて、だいぶ変わっています。ただ、時計のモチーフというのは当初から変えておらず、歩数やバッテリー残量を表示するダッシュボードや、スイッチのオン/オフのボタンなどを丸の時計をモチーフとしたデザインに統一しました」

アプリの開発設計を担当した中村尚太氏
アイコンなどのUIやロゴのデザインを担当した松原明香氏

wena wristの現在の購入者層は30~40代の男性がほとんどだという。しかし、アイコンなどのUIやロゴのデザインを担当した松原明香氏は、デザイン上は男女を問わず身に付けられる、ニュートラルなものを目指したと説明する。

「現在はサイズの問題でどうしても男性向けになってしまっていますが、今後は女性版にも展開していきたいという狙いがあります。UIのデザインコンセプトとしてプロジェクトのメンバーで共有していたのは、"男女ともに使えること"。アイコン1つで、女性っぽくなりすぎたり、思わぬ印象を与えてしまったりするので、周りの意見を聞きながらRを調整したり、全体的に男女両用を意識してデザインを詰めていきました」

次回は、同製品の技術面に迫っていく。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。