空気の潤いを「光」と「ミスト」で可視化 - cadoの加湿器「HM-C610S」

モノのデザイン 第5回

空気の潤いを「光」と「ミスト」で可視化 - cadoの加湿器「HM-C610S」

2016.06.23

デザイン性の高い製品を多数手がけることで知られる家電ブランド"cado(カドー)"が2015年10月に発売した加湿器「HM-C610S」。煙突のような2本の円筒で構成された独特なデザインで、店頭でもひと際目立つ商品だ。日本発の家電ベンチャーとして、既成の概念に捉われない製品を送り出し続けているブランドの本製品に込めた思いや秘話を、デザインを担当した副社長 兼 クリエイティブディレクター 鈴木 健氏に伺った。

家電ブランド・cadoの加湿器「HM-C610S」

潤いを可視化する

本製品を語る上で外すことのできないデザインの哲学は"可視化"だ。加湿器という効果が見えにくい空調家電の効果をなんとかしてわかりやすく伝えたいとの思いが製品のデザインに込められているという。

「まず最初に"すべてを視覚化したい"という思いがありました。加湿器というのは空間を潤すことを目的とした家電ですが、その効果を目に見える形で表現できないかと考えました」と鈴木氏。

そこで、加湿器による"潤い"を見えるかたちで表すために選ばれた加湿方式が"超音波式"だ。加湿器の方式にはこれ以外にも大きく分けて"気化式"と"スチーム式"があるが、潤いを目で見て感じることができるのがスチームやミストだ。そして最終的には湯気が熱くならないという安全性とランニングコストの安さから超音波式が採用されたのだという。

蒸気で潤いを可視化するため、超音波式が採用された
水量がすぐに分かるよう、タンクには透明の素材が使われている

潤いを可視化した次のポイントが水タンクだ。加湿に不可欠な水を入れるための容器だが、透明な筒状のパーツを採用している。鈴木氏によると、タンクを透明にした第一の理由はもちろん水の量が瞬時にわかるという機能面でのメリット。しかし、それだけでなく「水が見えるということも"潤い"を見せるための演出になっています」と説明する。

タンクの下にはLEDライトも備えている。本製品ではこの部分の色の変化で部屋の"潤い"の状態を把握できる。一般的な加湿器では湿度を数字やアイコンの数で示すことが多いが、本製品ではLEDのカラーでそれを表現するという異例のスタイルだ。

タンクの根元の部分が光り、部屋の状態を表示。青→緑→黄→赤の順で乾燥の度合いをLEDの光の色で可視化している

「LEDの色はイエローは乾燥を表し、カラカラのサハラ砂漠のイメージです。グリーンはやや乾燥を表し、草原のイメージに由来しています。ブルーは青々とした海からのイメージで充分な湿度であることを示します。水が空になった状態はアラートの意味を持たせるため、赤で表現しました。この部分の仕様も、一目見て部屋の状況がわかるものにしたいという思いからの発想です」

「手間のかかる家電」だからこそ、質感にこだわる

本製品の水タンクには他にも一風変わったギミックが施されている。水タンクのフタの部分が、桐箪笥、茶筒を開ける時のような手の動きでスライドして開閉するしくみになっているのだ。こうした方式を取り入れられた理由にも実はブランドならではの思いが込められている。

鉢植えに水をやるような感覚を目指してデザインされた専用の給水容器

「どのメーカーの製品でも共通して言えることなのですが、加湿器というのは実は非常に手がかかる家電なんです。水がなくなれば注ぎ足さなければならないですし、数週間に一度は中を洗って手入れしなければなりません。つまり、手に触れる機会をなくすことができない家電なんです。だからこそその触れる場所の動きや触れた質感にこだわりました」

加湿器のタンクのフタやキャップというのは、通常は取り外すことが多い。しかし「据え付けにすることで開閉もスムーズになり、スッと小気味よい動きになんとなく愛着が湧いてくるもの。毎朝、鉢植えに水をやるような感覚でタンクに水を足してもらえたらという思いです」と鈴木氏。

カドーの加湿器は、ミストの吹き出し口が煙突のように高い位置にあるのも特徴的だ。これは高い位置からミストを吹き出すことにより空気の対流に乗せて効率よく拡散させるという狙いもあるが、これもまたユーザーに潤いを実感してもらうために考え出された構造だという。鈴木氏は「人が生活する上で基本となる姿勢が"立つ"と"座る"の2つです。この日常的な基本動作においてミストによる潤いを感じるのにはこの高さが理想的なんです」と話す。

部屋に置いたイメージ。立った時、座った時という日常の動作に合わせた吹き出し口の高さになっている

このように、カドーの加湿器のデザインに徹底して貫かれているのは、加湿器がもたらす"潤い"の実感。そしてそれと同時にもちろん設置された空間における調和も大事にされている。鈴木氏は次のように説明する。

「加湿器に真に求められる状況はどういうことか?を考えた時、生活シーンに最適な位置で加湿させなければならないということであの高さが生まれました。本体の土台部分は実はわずかA4用紙1枚程度の設置面積なんですが、背が高いぶん圧迫感が出てしまいます。そこで2つの円筒部分にすき間や透明パーツを採用することで抜け感のある軽やかな印象にしました。水タンクをスケルトンにしたのは単に可視化だけが理由ではないのです。周囲の家具やインテリアと調和させやすいデザインでもあります」

カドーの加湿器は独特な形状でありながらも全体的にはシンプルなデザインでもある。これは操作部にも言えることで、パネルにはボタンが4つしかない。鈴木氏によると、これはカドーの製品全般に共通した"アイデンティティー"だそうだ。

「操作性をシンプルにするというもカドーのプロダクト全般に言える共通項。これに加えて、パネル部分を極力フラットにすることでお手入れのストレスをなくしたいとも考えました。他にもお手入れしやすいように、内部構造の部分もすべて外せる仕様にしています。水タンクのフタ同様に、めんどうに感じそうな部分をそう思わせないための工夫なんです」

メーターや表示モニタなどはなく、パネルにはボタンが2つのみ

本製品が3代目のモデルにあたるカドーの加湿器。デザイン性の高さを追求しながらも、加湿器そのものとしての機能や性能、手入れのしやすさを両立させることを目指す上で最も苦労したのは、従来機種からの基本デザインを変えることなく機能美を高めていったことだという。

家電ブランド・cadoの加湿器「HM-C610S」

「初期のモデルでは、上から水を注いで給水することができなかったんです。これを給水が非常に負担であるという声を受けて上から注げる仕様にするなど細やかな改良をモデルごとに続けています。さらに今回は、加湿器としての真の能力と衛生面を追求し、超音波を発生させる素子には業務用を改良したものが採用されています。カドーでは、1つの製品を作ったら終わりというのではなく、真にお客様の使い勝手のよい製品を目指し、より良くなる工夫を常に惜しまずに考えています。カドーではこれを"深化"と表現しているんです」と鈴木氏。

最近は"見せ家電"、"魅せ家電"という言葉があるほどに、機能や性能だけでなく、持っているだけで悦びを感じる"所有欲"をも満たすことが家電製品にも求められている。カドーの加湿器はまさに機能が"美"として昇華されたかのような製品。次モデルでの"深化"にも目が離せない。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu