人に見せたくなる

モノのデザイン 第2回

人に見せたくなる"つなぎ目のない"洗濯機 - ドラム式洗濯機「Cuble」(後編)

2016.04.15

パナソニックが昨年11月に発売したドラム式洗濯機「Cuble」。表面に凸凹がない、洗練されたデザインで注目を集めている。洗濯機というのは、これまでドラム式に限らず機能性訴求が優先で、デザイン性は二の次といったイメージがあった中、この傾向に一石を投じたのが本製品だと言えよう。

ドラム式洗濯機「Cuble」

冷蔵庫で得たノウハウが突破口に

前編では、これまで丸かったドラム式洗濯機の扉に四角い形状を採用し、さらに家事を楽しくするため、透明な丸窓をつけたというデザインの理由が明かされた。しかし、この丸窓の部分の構造は、設計・開発上最も苦労した部分でもあるとのこと。というのも、「アクリル板の透明度を高くすれば、本体との嵌合部分が見えてしまってデザイン性を損ねてしまい、資材のコストのほうも上がってしまう」(太田氏)からだという。

さらに、設計開発担当者からは、振動や熱によりアクリル板が外れてしまうおそれがあるため、額縁のようなフレームを付ける必要があると指摘を受けたそうだ。しかし、それでは"段差がない構造にする"というそもそもの根底部分が崩れてしまうことから、両者を成り立たせるために試行錯誤が続いたとのこと。

そこでヒントになったのが、同社が2013年に発売した"フルフラットガラスドア"を採用した冷蔵庫。ガラスを支える周囲のフレームをなくして段差のないフラットな形状を実現した製品で、冷蔵庫のヒットが、フレームレス構造を実現する後押しになったという。「冷蔵庫の例を伝えたり、構造をデザインから設計に粘り強く提案することで、ようやく品質を確保できる手段が見つかり、実現したんです」

パナソニック アプライアンス社 デザインセンター 太田耕介氏

また、クリアウィンドウの周りを囲むリング部分にもユーザーが気付きにくいデザイン上の工夫が密かに施されている。というのも、10度斜めに傾いているはずのCubleのドラム槽は外から見ると真っ直ぐなように見える。太田氏によると、これには実は次のようなトリックが隠されているのだ。

「ドラム槽が斜めになっているので、前から見るとその切り口の部分は楕円形になるはずなんです。でもリングの部分のデザインでその誤差をちょっとずつ吸収しています。よく見ると、左右上下で微妙に傾斜が変わって深さが違うことがわかると思うのですが、正面から見た時にキレイな円に見えるように、実は細かいところも微調整しているんです」

ON・OFFのある操作パネル

Cubleのデザイン面でのもう1つの大きな特徴はドア側の天面部分に配備された操作パネルだ。ドラム式洗濯機の操作パネルは本体天面に取り付けられているのが一般的だが、全面的なパネルタイプのドアを採用したことにより、この独自のデザインが可能になった。操作部がドア側に取り付けられていることにより、本体の上はよりスッキリしたデザインに仕上がっている。

「洗濯機の天板に取り出した衣類を仮置きしたい、という声を多く伺います。そこで操作部をドア側に移し、天板スペースを広く取るデザインにしました。しかし、操作部をドア側に持ってきたことで、基板や配線もドア側に移動させる必要があり、技術的にはそこが難しかった部分です」

また、操作パネルは静電式のタッチパネルが採用されている。電源オフ時には表示がすべて消灯する仕組みで、極力空間に溶け込むことを意識してデザインされたという。操作パネルのカラーにはシルバーが採用されているが、現在の色合いに行きつくまでには200個もの試作品が製作されたという。

操作パネルはタッチパネルを採用しており、オフ時には一切見えなくなる

シルバーが選ばれたのは、サニタリー空間によく使われる色であるから。光をうまく透過させるのが難しかったというが、それでもなおシルバーを選んだ理由について、太田氏はこう語る。

「こういった光を透過させて表示するパネルの場合、本当は黒がいちばん作りやすいのですが、黒だとスマートフォンみたいなイメージで機械っぽさが強く、ハイテク過ぎる印象になってしまうんです。シルバーのインクというのは金属の粉末からできているので、光を通すと乱反射してしまって透過しづらいという性質があります。そうは言っても、金属の粉末を減らすと金属らしい雰囲気がなくなってしまうので、透過具合を見ながら、金属感を出しつつもキレイに透過するために、1パーセント単位で配合技術などを変えました」

洗濯機は日の当たる明るい場所に置かれることが多いため、実験棟の屋上の日当たりが良いところで試験をしたり、明るさを調整したりと、実際の使用時を念頭に置いた確認工程が多かったという。「これなら大丈夫というところまでとにかく試作を繰り返しました」と笑うその顔には、機能と審美性を両立させた充実感が浮かんでいた。

個別に開閉部の設けられることが多い排水フィルターだが、Cubleでは「継ぎ目」を隠すため、ドア同様全面が開閉可能なドアを設けている

洗濯を『嫌々する家事』から『楽しい体験』に

デザイン性の高いドラム式洗濯機として誕生したCuble。だが、あくまでこだわったのは空間との調和だ。そのため、これまでのデザイン家電にありがちなカラフルなカラー展開ではなく、白とシルバーを基調にした定番のカラーで清潔感を重視した色遣いが徹底されたという。

「当初から新しい洗濯機として発売したかったCubleですが、目立たせるのではなく"調和"を大事にしました。そのため、質感も壁になじむようなマットなものを選びました。とはいえ、空間との調和だけを最優先で考えると真っ白なデザインになるのですが、機能性を視覚的に訴える側面もデザインに持たせたかったので、ギリギリのバランス感覚を保つのが大変でした」と太田氏。

パナソニックでは、Cubleの発売をドラム式洗濯機の普及に向けた底上げを目指した"起爆剤"と位置付ける。そのため、太田氏はCubleが空間に置かれた状態をイメージしたデザインスケッチも多数用意された。

太田氏が描いたイメージスケッチ。製品単体でなく、置かれた状態を想定した内容だ

  「『新しいライフスタイルを提案したい』と思ってデザインしました。洗濯機自体がスッキリしたデザインなので、空間に置かれた時に周りに植物を置いてみるなど、コーディネートしやすいですし、レイアウト自体も楽しんでいただけると思います。キューブルが心地よい空間作りのきっかけとなり、洗濯を『嫌々する家事』から『楽しい体験』に変えられるかもしれない。そういった思いを込めています」(太田氏)

この他、Cubleでは"バランサー"と呼ばれる洗濯槽の上部にある振動を抑えるための装置を新たに専用で設計・開発。これにより、投入口の直径を従来の350ミリから420ミリに広げ、面積比では138%も拡大した。また、ドラム槽の投入口の位置自体も83ミリ高くして、使い勝手が向上されている。

洗濯機に限らず、昨今の家電製品は機能性にプラスしてデザイン性訴求へとトレンドがシフトしつつある。また、"モノ"から"コト"への提案というのも潮流になっているなか登場したCubleは、まさにその象徴的な製品。これまでのドラム式洗濯機とは一線を画したコンセプトと稀有なデザイン性で、市場をけん引する存在として今後も注目したい。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。