「キモカワ」ルックスに反した実直なものづくり - ルルド ソニックヘッドスパ エイリラン

モノのデザイン 第42回

「キモカワ」ルックスに反した実直なものづくり - ルルド ソニックヘッドスパ エイリラン

2018.07.17

マッサージ器具メーカーのATEX(アテックス)から今年4月に発売された「ルルド ソニックヘッドスパ エイリラン AX-KXL3500」(以下、エイリラン)。タコのようなオブジェを頭にかぶせて使用するという、強烈にインパクトのある商品だ。

2018年4月に発売された、ATEX「ルルド ソニックヘッドスパ エイリラン AX-KXL3500」。見た目のインパクトだけでなく、機能性も企画開発者のこだわりが詰まったマッサージ器具だ

しかし、ユーモアのある見た目に反して、製品の中身自体は想像以上に真摯に開発に取り組まれている。今回は、同製品の企画・開発にあたった、同社商品企画本部企画部・次長の田代晶子さんに、同製品の発売に至るまでの経緯や裏話を伺った。

マッサージ器具だが「競合は健康器具ではない」

アテックス商品企画本部企画部・次長の田代晶子氏

本製品に限らず、アテックスでは商品全体を通してインテリア性が重視されている。というのも、メインターゲットは20~40代の女性。「ルルドの競合商品は、マッサージ器や健康器具などの機能的なものではなく、コスメやアクセサリーなど“女性がときめきを求めて買うもの”だと考えている」と田代氏。それだけに、商品のデザインというのは、機能性や性能と同等レベルの重要な要素として捉えているとのことだ。

エイリランは、タコのようなモチーフの頭の部分が本体で、"音波振動"によって頭皮をマッサージし、リラクゼーションや睡眠効果を促すという仕組み。内部はオーディオスピーカーと同じ機構を採用し、プログラムによって音波を微調整することで、心地よい振動を伝える。異なるプログラムが設定された「うとうとモード(眠りに誘導する)」と「リラックスモード(気分を切り替える)」の2種類が用意されている。

美しいモデルさんの頭上に乗ったタコ!? そのシュールな絵面だけでも関心を集める

製品の開発にあたっては、大阪体育大学体育大学部スポーツ科学研究科の石川昌紀教授が協力。"筋肉博士"の異名を持つ研究者で、EMS(電気刺激)の検証実験でアドバイスにあたってもらったことが縁となり、同社の美顔器も共同開発している。

「石川先生は、以前、EMSによるエクササイズ商品の開発の際に監修していただいたことから関係が始まり、今回も頭皮への音波振動によるリラックス効果のエビデンスを取る際にご協力をお願いしました」(田代氏)

半年に1回のペースで20アイテム以上の新商品を発売しているというアテックスだが、エイリラン発売までの道のりは、構想自体はおよそ1年前からで、商品化までには実質半年程度。ここ最近の同社のマッサージ製品の中では特にバスグッズが人気で、次に目を付けたのが"頭用"の商品。そうした中、音波振動でα波を出すというコンセプトが決まったという。

コンセプトが固まって以降は、「頭に乗せるもので、モーター機構のスペースを要しながら手に馴染みやすく、持ちやすいもの」と考えるうちに、商品は自ずとタコのような現在の原型のような形状にたどり着いたという。「この形に迷いはなかった」、と田代氏。

機能性のため、本体の上半身と下半身で大きく異なる素材感の色合わせや、色味自体のセレクトなど、特にカラーに関してはユーモラスな見た目からは想像できないほどの苦労があったとのこと

一方、アテックスでは、これまでに「アニマルシリーズ」としてマッサージグッズを展開している。ネコやウサギ、ハリネズミなど動物をモチーフとしたデザインが特徴で、新製品をそのシリーズとして考えた時に、すぐに結びついたのがタコのイメージだった。

そして、アニマルシリーズの商品のネーミングは、商品が持つ機能と動物の名前を掛け合わせていることも特徴。しかし、"タコ"や英語の"オクトパス"よりも"エイリアン"のほうがゴロ合わせがしやすいこともあり、最終的には"リラックス"という言葉と掛け合わせた「エイリラン」にたどり着いたとのことだ。「他にも足の部分をドレスのスカートに見立てたりなど別のデザイン案もあったのですが、存在感のある意匠にしたいというのもあって、うさぎやハリネズミのように生物のかたちに落ち着きました」と明かす。

頭にかぶせる足の部分は実は10本足。柔軟性がありながらもしっかりと固定できる素材を用い、どんな頭のサイズや形でも装着できるように設計されている

「使っていない」時にも愛着のわくデザイン

さらに、ルルドの商品には「使っていない時にも愛着を持ってもらいたい」という共通した思いがあるという。「しばらくすると使われなくなってしまう商品ではなく、ずっとかわいがってもらえるような機能とデザインにしたいんです。だから、家の中でも存在感がありながらも飽きの来ないシンプルなデザインというのを大事にしています。ご自身でデコレーションするためのシールも付属しているのですが、これも自分のものにしてもらいたいという思いからなんです。この取り組みでSNSの投稿も増えました」と田代氏。

手ごろな価格でギフト用にも人気が高いことから、パッケージにもこだわるルルドの商品。エイリランは、ギフト用に適したパッケージでありながら、マッサージ器としての機能や効果の有効性も同時に訴求できるように、4つの側面をフルに活用したデザインを採用したとのこと
「より愛着を持ってほしい」という思いで、オリジナルにデザインできるように同梱されているデコレーション用のシール

前述のとおり、同社の製品がターゲットとしているのは20~40代の女性。しかし、マッサージ製品に関しては、少し高めの30~40代との女性を想定しているそうだ。

そこで大事なのがカラー。エイリランは、シリーズの他の製品と同様に、ピンクとブラックの2色のカラバリを展開している。ピンクというのは、もちろん女性が好む色だが、「女性でもピンクが好きな人ばかりではないですよね。だから、他の選択肢も必要ということでもう1色用意しています。毎回、グレーとか、ブルーとか、ブラウンとか。同じブルーでもネイビーがよいのかなどさまざまな選択肢を検討していますが、今回は自然とブラックの流れに。"キモカワ"系の風貌を有するエイリランは、男女を選ばず、幅広い方にお使いいただけるというのも大正解でした」と話す。

とはいえ、ひと言でピンクと言っても、実はとても難しい色。さまざまな色合いがあり、その印象は大きく異なる。エイリランに関しては、「大人の女性を意識しているので、かわいくなりすぎないことが大事」と、多数のサンプルの中から現在の色味のピンクが選ばれたそうだ。

カラーはピンク以外にもブラックも用意。毒っ毛のあるデザインに見事にハマっている

だが、「悩ましかったのは色味だけではありませんでした」と打ち明ける。というのも、エイリランは上と下で異なる素材が用いられているためだ。「下側は頭にフィットするようにしなりが必要ですので、ゴムのような柔軟性のある素材を採用しています。それに対して頭の部分にあたる上側は、モーターと電池が収められている部分。硬質かつ中に水が入らないような防水成型で造られているため、上と下で質感がかなり違うんです」と田代氏。そこで、上側の部分にパール加工を施し、全体的な調和を図り、この問題を解消したとのことだ。

音波振動のプログラミングもとても苦労したことの1つ。前述のとおり、エイリランは、スピーカーで振動を起こすリアルな音波振動の機構を採用しており、音階により細かく周波数を設定ができるというのも特徴だ。石川教授の監修のデータをもとにプログラミングで再現を行い、エビデンスを確立するために、実際に人が装着した際の脳波のα波とβ波、Θ波に加えて、心拍数などを測定するモニター試験を重ねていったものの、理論どおりの結果が出ないケースもあり、これを調整する工程が想像以上に難しかったと話す。

田代氏が述べたように、女性にとって"欲しいもの"は多岐にわたる。ファッションもグルメもレジャーも、すべてのカテゴリーの選択肢がある中で選ばれるアイテム。ライバルはマッサージ機器や家電製品ではないのだ。エイリランに限らず、アテックスの商品に対してどれも女性目線で「そうそう、わかってる! 」と感じるのは、そうした考えが根底にあるからだと今回のインタビューを通じて納得した。そしてエイリランに関しては、"毒っ気"もあり、ラブリーすぎるものに抵抗を感じるアンチ派の女性の心も掴むことができる"ハイブリッド"なデザインに改めて脱帽する。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu