縦型洗濯機でも

モノのデザイン 第40回

縦型洗濯機でも"空間価値"を追求 - パナソニック「NA-FA120V1」(後編)

2018.06.22

パナソニックとしては、ドラム式の「Cuble」に次ぎ、縦型としてもデザイン性の高い洗濯機として6月1日に発売された「NA-FA120V1」。同製品の発売経緯や意匠としてのデザインのポイントと構造上の工夫などについて2人の担当者に語っていただいた前編に続き、今回は縦型洗濯機ならではのデザインのこだわりや、海外のチームとの議論を通して得られた日本と海外を比較した際のデザイン志向の違いなどについて、エピソードをご紹介したい。

縦型ユーザーのニーズに応じた「道具感」

6月1日発売のパナソニックの縦型洗濯機「NA-FA120V1」。洗濯機としての性能や機能を損ねることなく、縦型の長所も活かしてデザインが考えられた新製品だ

ボディをデザインするにあたり、最も意識されたのは"道具感"だという。ユーザーのアンケート調査などから「たっぷりの水でしっかり洗う縦型洗濯機は、ドラム式以上に道具としてしっかりと使いこなしたいというユーザーが多い」(阿部氏)ことが理由の1つだ。

製品の開発に携わった、パナソニック アプライアンス社デザインセンターの村上浩司氏(左)と同社コンシューマーマーケティングジャパン本部洗濯機商品課の阿部彩氏(右)

道具感を表現するために、本体上部の周囲にフレーム形状を配することで道具としての堅牢さと信頼感を演出したとのこと。だが、よく見るとフレーム構成は全面にではなく、奥側には付けられていない。その理由やデザインの狙いを村上氏は次のように語った。

「たっぷりの水で洗えるという縦型洗濯機の特長も表現するために、あえて奥の側はフレームを付けずに、リゾートホテルなどにある奥に縁のないインフィニティ・プールのようなイメージを出しました。ボディ正面は面積が広い部分なので、半光沢で落ち着いた雰囲気の質感にし、フレーム部分は印象的な高輝度のメタリックに仕上げています」

全体の外観は、たっぷりの水でしっかりと洗える機械であることと、道具としての堅牢性や信頼性が感じられることを目指してデザインされている

天板部分にはスモークの入った半透明のクリアな素材が採用されている。ドラム式のCuble同様に、洗濯中の中の様子が見たいというユーザーは多く、その要望に応えつつも、生活のノイズにはならない程度のバランスが配慮されたという。

真ん中で折れる構造ながらもできるだけ段差を抑えてストレートにつなげるように意識された天面。フラットにすることで見た目の美しさとお手入れのしやすさを兼ね備える。中の様子がうっすらと確認できるものの、丸見えにならない程度にスモークのかかった半透明の素材が用いられている

さまざまなこだわりが詰まった同製品のデザインにおいて、特筆すべき点は"大容量"という製品特長をデザイン上でいかに表現するかを目指したというところだ。空間調和を意識した場合、通常その2つはセオリー上相反する要素となりうるものだが、それらを成立させるために、デザインの方向性はどのように考えられていったのだろうか。

「空間との調和を考えると、スリムさやコンパクトに見せるというのが一般的なセオリーです。しかし、同製品が目標とする大容量は実現できません。その長所を活かすために、正面は使いやすい高さをキープしつつ後方へ向かって伸びやかに広がるデザインを用い、限られた中でできるだけ広く見せようという方向になりました」 (村上氏)

操作パネルや表示部といったインタフェースも家電製品のデザインを左右する重要な要素だ。同製品では操作・表示部が後方に移動している以外にも、デザイン性を意識してディスプレーに大きめのホワイト液晶を採用するなど多数のこだわりが詰め込まれている。

「見た目をスッキリさせるためにボタン類に関しては最小限に絞り込みました。そのぶん液晶側でコース選択ができるように機能を集約していているのですが、大きな液晶を採用しているので周囲の明るさで明暗が変わってしまうため、コントラストが均一になるようにバックライトを微妙に調整しているんです。直観的で動線よく操作ができるように"スタート"ボタンと各選択キーの配置も一直線になるように揃えています」(阿部氏)

ボタン類を最小限に抑え、一直線に配置することで操作性も見た目もスッキリとさせられている。電源ボタンやスタートボタンは外枠だけで色分けされている他、ディスプレーにもホワイト液晶を採用するなど周囲から浮かないように全体的な調和を意識してデザインされている

日本と海外、洗濯機に求める「デザインの違い」

今回の洗濯機の開発にあたっては、日本に加えて、上海、マレーシアのデザインセンターのメンバーとも議論が行われたとのこと。「以前はそれぞれの地域でバラバラにデザインをしている感じでしたが、同じパナソニックブランドの商品として、デザインアイデンティティをどう創っていくか、そしてグローバルで事業を展開している企業として、ひと目見てパナソニックの製品とわかるにはどうすべきかを話し合いました。地域ごとで価値観は多少異なりますが、"洗濯機=洗うもの"という本質的な価値は共通しており、しっかりと押さえていかなければいけない要素だと確認しました」と村上氏。

海外のデザイン担当者と議論を重ねる中で、浮き彫りになったのは、空間価値にへのこだわりは日本のユーザーが特に高いということ。日本以外の国で、デザインに強く求められるのは堅牢感。というのも「そもそも洗濯機が置かれる場所や環境が異なる」のが理由だ。

裏を返せば、海外のユーザーに比べると、日本の消費者にとって家電製品は丈夫で長持ちすることは大前提ということだろう。それゆえに、一歩進んだより成熟した商品価値が求められているのだとも言える。

以前の日本では、洗濯機が庭やベランダなど、屋外に設置されているケースが多かった。それがいまやサニタリールームが主流となり、室内へ入り込んだ。昨今、洗濯機にも家具やインテリアとしてのデザイン性が求められるようになったのはそうした生活スタイルの変化が一因にある。

そんな中、「洗濯機は大きい商品だからデザインもよいものであるべき」「見せるものにしたい」と語る、今回お話を伺ったパナソニックの両氏。人々のライフスタイルに合わせて求められるニーズが変化していくのは必然。家電の"家具化"はもはや機能の一部になりつつあることを、今回のインタビューを通じて実感した。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu