縦型洗濯機でも

モノのデザイン 第39回

縦型洗濯機でも"空間価値"を追求 - パナソニック「NA-FA120V1」(前編)

2018.06.21

パナソニックから6月1日に発売された縦型洗濯機の新製品「NA-FA120V1」。家電製品に対する消費者のデザインへの意識が高まる中、2016年に同社が発売したドラム式洗濯機「Cuble」に続いて、縦型洗濯機においてもデザイン性を追求した新製品だ。

同製品でデザインの見直しが図られた経緯や背景、開発秘話などを、パナソニック アプライアンス社デザインセンターの村上浩司氏と同社コンシューマーマーケティングジャパン本部洗濯機商品課の阿部彩氏に伺った。

ドラム式の「Cuble」に続いて、縦型にもデザイン性を重視した製品として登場したパナソニックの「NA-FA120V1」。"見せたくなる洗濯機"としてデザインされた

ドラム型から縦型へ、空間価値を追求

前述のとおり、パナソニックではデザイン訴求の洗濯機としてすでに発売された「Cuble」が好評を博している。同社としてはドラム式に続いて、空間調和を意識したラインナップを縦型洗濯機においても広げたかたちだが、Cubleで得られた手応えや知見は縦型洗濯機へも活かされているのだろうか。

「Cuble発売時の洗濯機市場は、すでにコモディティ化が進んでいて、できるだけ安ければいいというニーズがある一方で、空間に対しての価値を求める消費者も増え始めていました。そしてその当時、パナソニックとしてはドラム式洗濯機に注力していこうという時期だったこともあり、まずはCubleの開発に至りました。結果、消費者の方からの反応も上々で、洗濯機に対するニーズが変わってきているという手応えをしっかりと感じ取ることができました。そこで、空間に対する価値について、縦型では提供できないのだろうか? という原点に立ち返り、今回の商品につながっていきました」

空間に対する価値に応えるとはいえ、縦型洗濯機としての機能、性能を十分に満たしていなければ意味はない。老舗電機メーカーであるパナソニックとしては、「電化製品としても完成度の高い商品を送り出さなければなりません」と村上氏。

週末のまとめ洗いや毛布などの大物洗いへのニーズに応えるため、「NA-FA120V1」は、洗濯容量を従来の10kgから12kgに増量したというのが新製品としての大きな特長の1つである。もちろん、設置スペースの制限を考慮した中での大型化が図られた。

2つの相反する要素の両立を実現したのは、洗濯槽の上部に備えられる"バランサー"という部品の改良にある。バランサーとは、脱水時に洗濯槽内の偏りを調整し、振動を抑えるためのパーツだが、内部に収められた液体の流動性を保ちながらも従来よりも厚みを約11ミリも薄型化することで、洗濯槽の内径を広げることに成功した。これにより、洗濯槽の投入口の幅は従来の381ミリから437ミリにまで拡大している。そのため、本体のフタを開けると思わず「大きい! 」と感嘆の声が漏れてしまうほどのインパクトがある。

左側が旧機種。設置スペースはあまりかわらないものの、投入口幅がこれだけ広くなっている
新製品「NA-FA120V1」のバランサー(右)。容量10キロタイプのものよりも直径が広がっているが、機能を損ねずに約1センチほど薄型化されている

新製品の外観をデザインするにあたっては、まずはその特長である大きな投入口を"機能美"として際立たせることを意識したそうだ。「フタを開けた時に、大容量で大きいと感じられるようなデザインを考えました」と村上氏。

具体的なところでは、洗濯槽を手前に配置し、操作部が後方に配置されている点が目を引く。阿部氏は「まずは使いやすさを見せたいというのがありました。それと同時に、洗濯槽と人との距離が近くなるため、洗濯物の出し入れの負担が軽減されます。槽内も見渡しやすくなりますし、小さな洗濯物の取り残しも防ぐことができます。操作部が手元から遠くなってしまうということも当然ありますが、濡れて重たい洗濯物を引き上げることと、どちらが身体にかかる負担は大きいのか? を比較した結果、このスタイルが採用されました。小さなお子さんの手が届かなくなったり、本体手前の操作パネルに身体や洗濯かごが当たって誤作動するのを防止できたり、というメリットもありますしね」と説明する。

洗濯物の出し入れのしやすさが最優先と考え、投入口を手前に、操作部は後方に配置された

大きく丸い投入口へのこだわり

村上氏によると、大きな投入口を"円"で表現するというのもこだわりの1つだったという。「大投入口という新製品の技術とデザインの特長を表すアイコニックな形として、円にはこだわりがありました。投入口の周辺には洗剤ケースや給水口のレイアウトといった設計上の制約がありましたが、できる限りより広く見える円を描きました。また、洗濯槽へ向かって傾斜を設けることで、衣類の出し入れもしやすくなっています」

投入口はよく見ると、上方に向かって広がるように傾斜が付いている。投入口を大きく見せる視覚的効果と洗濯物の出し入れのしやすさの両方を兼ねてデザインされた

ドラム式のCubleと同様に、洗濯機と空間との調和を考えた時には、フラットで凸凹が少ないデザインというのは重要な要素だという。「デザインのセオリーから言うと、凹凸が少ないほうが当然スッキリとキレイに見えます。フラットなデザインはお手入れもしやすいという長所もありますし」と村上氏。

ただし、ドラム式と違って縦型洗濯機の場合には、上から洗濯物を出し入れする構造だ。そのため、フタは本体上面に備え付けられるのが一般的だが、この構造が今回の製品デザインにあたって苦労した点の1つだと明かす。

上面にフタを備える縦型洗濯機の場合は、設置の関係上、フタは真ん中で畳める機構が必須。フラットにしたいという思いに反して避けられない要素でもある

「日本の家庭の洗濯機の上の空間は棚などが備えつけられているケースが多いです。そのため、当社の縦型洗濯機のフタは高さを抑えるよう真ん中で折れる形状になっています。フタの分割がないほうが見た目はスッキリしますが、お客様にとっての使いやすさは無視できません。フタの部分を横方向に観音開きにするような考え方もありますが、洗濯する上での一連の操作や空間での視線の流れを考慮し現在の構成にしています。ただ、中折れの形状にしつつも、継ぎ目部分に極力段差が出ないようストレートにつなぎ、スッキリとしたデザインにしています」(村上氏)

製品の企画・設計・デザインを担当した、パナソニック アプライアンス社デザインセンターの村上浩司氏(右)と同社コンシューマーマーケティングジャパン本部洗濯機商品課の阿部彩氏(左)

ドラム式のCubleに続き、デザイン性を強く意識したラインナップとして登場したパナソニックの縦型洗濯機の新製品。前編では、開発経緯や"機能美"に対するこだわりについて話してもらった。

次回、後編では縦型洗濯機ならではのデザインのこだわりや、海外のチームとも話し合われたというデザイン志向の海外と日本との違いなどの開発秘話をご紹介していく。

中国スマホメーカー・OPPOのハイエンド機「Find X」に見る

中国スマホメーカー・OPPOのハイエンド機「Find X」に見る"変化"と"野心"

2018.10.22

日本では新顔だが、30カ国以上に進出しているスマホメーカー・OPPO

OPPOの日本戦略は「ローカライズ最優先」

既存戦略と異なるアグレッシブな最新機種「Find X」を日本にも投入

“世界一”の全画面スマートフォン、「Find X」の日本発売が決まった。

画面占有率93.8%、正面部のほぼすべてがディスプレイというインパクトあるデザインが印象的だ。処理能力を決めるSoC(システムオンチップ)はクアルコムの最上位モデルであるスナップドラゴン845。8GBのメモリと256GBのストレージを積んだハイエンド機種となる。

Find Xの日本投入、その背後に世界スマートフォン市場の変化と中国大手スマホメーカーOPPOの野心が透けて見える。

世界4位のスマホメーカー・OPPO

OPPOの日本市場参入は今春から。まだ、ニューフェイスだけにご存知の方は少ないかもしれない。だが、中国や東南アジアに旅行経験がある人ならば、一度はOPPOの広告を目にしたことがあるのではないか。空港や繁華街など目立つ場所に大々的な広告を展開している。実はOPPO、アジアのシェアはナンバーワンという大企業だ(2017年出荷台数ベース、Counterpoint調べ)。

OPPOは中国情報家電メーカー大手のBBK(歩歩高電子)のAV部門がスピンアウトし、2004年に誕生した。iPhoneと張り合うようなハイエンドでも、価格勝負のローエンドでもなく、コストパフォーマンスのバランスで勝負のミドルレンジを開拓したこと。「カメラフォン」を名乗りカメラ、特にセルフィー(自撮り)の強化と高速充電という機能面。大物芸能人を大量起用した宣伝戦略。中国の地方、農村部まで抑えた路面店展開などの戦略で着実に成長を続けた。2016年にはOPPO R9、OPPO R9sが大ヒット。中国では「国民携帯」と呼ばれるほどの人気機種となり、一気にトップメーカーの仲間入りを果たした。

鄧宇辰・OPPO Japan株式会社代表取締役

さらに海外展開も強化。アジアや欧州など世界30カ国以上で事業を展開するグローバル企業へと成長している。2017年には世界スマートフォン市場で4位の座を保持している(出荷台数ベース、IDC調べ)。

世界のスマートフォン企業といえば、米国のアップル、韓国のサムスンが知られているが、他の上位メーカーはほぼすべて中国勢だ。ファーウェイ、OPPO、シャオミ、VIVO、ZTEなどの企業がひしめきあう。ただし、通信機器メーカーとして1990年代からグローバル企業として活躍してきたファーウェイをのぞいて、先進国での展開には消極的な企業が多い。市場が成熟した先進国ではなく、大きな伸びが見込める東南アジアや南アジアなどの途上国市場を中心に進出してきた。

この状況に異変が生じている。背景にあるのが世界スマートフォン市場の構造転換だ。

スマートフォンというジャンルを切り開いたiPhoneが登場したのが2007年。それから約10年間の時代は世界にスマートフォンが普及し、また年々革新的な機種が登場しては買い換えが促されるという、勃興期ならではの急成長の時代だった。ところが2017年の世界スマートフォン出荷台数は前年比0.1ポイントの減少となった(IDC調べ)。誕生以来10年間、一貫して成長を続けてきたスマートフォン市場が、ついに天井を打つ頃合いにさしかかったことを意味している。

成熟市場でも成長を続けるためには、今まで手を付けていなかったマーケットに進出し、ライバル企業からシェアを奪うしかない。かくして中国勢も先進国市場でシェアを“奪う”必要性に迫られた。

「あなた色に染まります」 OPPOの日本戦略

こうしてOPPOは2018年、日本市場に乗り込んできた。2月に「OPPO R11s」を発売。8月に「P15 Neo」、9月に「R15 Pro」。そしてこの11月下旬にFind Xと、日本進出から10カ月間で4機種を矢継ぎ早に投入するという積極的な動きを見せている。

筆者はそのすべての発表会に出席しているが、印象的なのは「徹底的にローカリゼーションを進める」(鄧宇辰・OPPO Japan株式会社代表取締役)との姿勢が貫かれている点だ。

最初に投入されたR11sは国民携帯R9の後継機としてヒットした人気機種だが、発表会で鄧氏は「2018年、2019年の2年間をかけて日本市場のニーズを理解していく」と控えめな発言に終始した。

次回発表会ではおサイフケータイと防水機能という日本向け機能を搭載したR15 Pro、2万円代という低価格が目玉のR15 Neoが紹介された。日本市場を研究した結果、「おサイフケータイと防水機能がある携帯」と「3万円以下で購入できる携帯」に訴求力があると分かったため、この2機種を投入したという。それでも「まだ日本のユーザーニーズを集め切れていない。今後も研究して日本の顧客の要望に応えていく」と低姿勢を貫いた。

また現時点ではすべてSIMフリー機としての提供だが、NTTドコモ、au、ソフトバンクの三大携帯キャリアに採用されるよう交渉を続けると明言。そのために「キャリアの要望があれば、それに応えていく」と強調した。消費者ニーズにもキャリアの要望にも全力で答えていくと再三にわたり表明し、「あなた色に染まります」と猛烈にアピールしている。

売れるかは関係ない?技術力誇示のフラッグシップ機投入

そうした中、ついにフラッグシップ機であるFind Xの日本発売が決まったが、「日本市場のニーズをくみとります」とひたすら低姿勢だったOPPOとは姿勢が違うのが面白い。

画面占有比の説明(OPPO Japan プロダクトマネージャー 中川裕也氏)

Find Xは今年6月、フランス・ルーブル美術館で発表会が行われ、その後中国と欧州で同時展開している。ミドルレンジで戦ってきたOPPOがハイエンドに食い込む戦略機だ。画面占有率93.8%の全画面ディスプレイが印象的だが、中国テックメディア・雷科技によると世界一を誇るという。最近ありがちなノッチ(切り欠き)もない。カメラは本体内部に収納されており、カメラ機能が必要な場面になると、本体上部がスライドしてカメラが露出する仕組みだ。

スライド機構の説明 (OPPO Japan プロダクトマネージャー 中川裕也氏)

全画面ディスプレイとスライド機構が印象的だが、冒頭で紹介したとおり基本スペックも充実、アンドロイド携帯ではトップクラスの性能を誇る。カメラと並んでOPPOの売りとなる高速充電システムは新システムの「Super VOOC」が採用され、35分で充電が完了するという。

このスペックだけに値段も相当なものだ。市場想定価格は11万1880円(税別)。消費税込みで12万円を超える。日本ではハイエンド機のほとんどは割引き、分割払いのあるキャリア契約で販売されている。OPPOによると、SIMフリー市場の端末はほとんどが低価格機で、5万円を超える機種は3%程度しかないという。ましてや10万円を超える機種ではユーザーは皆無に近い。

それでも投入した理由は、鄧氏の以下の言葉に集約される。

「OPPOは安いだけのブランドではありません。日本市場でブランドを確立するには、ハイエンドモデルも投入していかなければなりません。日本のお客様にどのくらい手に取っていただけるかはわかりませんが、それでもOPPOが目指す「アートとテクノロジーの融合」をお伝えしたいと考えています」

今までひたすら日本のニーズをくみ上げようとしてきたOPPOだが、Find Xでは「私たちの実力を理解して欲しい」と訴えてきているわけだ。実際、Find XはOPPOの技術水準を示す存在であり、同時に今後のスマートフォン・トレンドをいち早く捉えた先駆的機体でもある。気軽に購入できる価格帯ではないが、興味のある方はぜひ一度店頭で触ってみて欲しい。11月上旬以降、ビッグカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダ電機、ノジマの家電量販店で販売される。
 

決済端末で国内トップ、キャッシュレス社会のカギ握るパナソニック佐賀工場

決済端末で国内トップ、キャッシュレス社会のカギ握るパナソニック佐賀工場

2018.10.22

圧倒的シェアを誇る決済端末はパナソニック佐賀工場で生産

パナソニックは事業の垣根を越えノウハウの活用を始めた

グローバルの流れ読みキャッシュレス社会の実現を支援

クレジット決済端末やICカードリーダーなどを生産する、佐賀県鳥栖市のパナソニック コネクティッドソリューションズ社佐賀工場が、このほど報道関係者に公開された。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社佐賀工場

パナソニック コネクティッドソリューションズ社佐賀工場は、1964年に、九州松下電器の佐賀事業部の工場として発足。6万1000平方メートルの敷地に4万3000平方メートルの建物面積を持ち、約230人が勤務。同じ敷地内にあるパナソニック補聴器社や品質革新本部などにいる人を含めて、グループの佐賀拠点全体では約400人が在勤している。

佐賀工場では、同社が取り扱う国内シェアナンバーワンのICカードライターや決済端末のほか、ネットワークカメラ、ネットワークディスクレコーダー、液体冷却機器などを生産。加えてマイクや受信機などの音響機器、スキャナーなどのドキュメント機器、非常放送設備、多言語翻訳用スピーカーマイクやメガホンヤク、光IDソリューション、さらには、パナソニック アプライアンス社が取り扱っているグローバルシェアナンバーワンのコードレス電話機の生産も、この佐賀工場が担う。

佐賀工場で生産されている決算端末
補聴器も佐賀工場で生産されている
POS接続型マルチ決済端末では、ユニット型のJT-R600CRシリーズを生産している
各種クレジットカードの決済に利用
メガホンを兼ねた翻訳機のメガホンヤクも佐賀工場で生産
グローバルでトップシェアのコードレス電話

生産の実証実験を行う場にもなっている佐賀工場

パナソニック コネクティッドソリューションズ社佐賀工場の高橋俊也工場長は、「パナソニックには、事業部ごとに生産を行う商品特化の工場が多いなか、佐賀工場は2カンパニー、6事業、17カテゴリーに渡る商品を生産する特殊な工場である。そして事業部直轄工場ではなく、コネクティッドソリューションズ社直轄工場だ」と紹介する。この背景には、直近10年間で生産集約を繰り返し、様々なノウハウが入り交じった拠点として発展してきた経緯がある。事業部が持つ生産ノウハウを、別の事業部の商品に生かすといったことが頻繁に行われている。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社佐賀工場の高橋俊也工場長

また、「老朽化した棟を、2012年に建て直したⅠ棟は、パナソニックの国内製造拠点としては最新のものになっている。1フロアでの一貫生産体制を取り、導線を短くしている。年間生産機種の半分は年3回以下の生産品目であり、100台以下の生産品目が70%を占める異品種少量生産に対応できる拠点でもある。10年前の商品を1台だけでも生産する『お久しぶり生産』と呼ぶ取り組みも行っている。顧客の要望にあわせたカスタマイズ対応、セキュアなモノづくりも実現した、BtoBの生産に最適化した生産拠点であり、日本生産ならではの品質にこだわり、そのノウハウを生かして、様々な商品を生産している」(高橋工場長)という特徴も説明する。

360度カメラで作業者の手元まで映し出すデジドン(デジタルアンドン)の採用などにより、生産活動での工程状態をリアルタイムに可視化。工程パソコンや作業者入力、梱包最終チェックでのデータを収集するなど、パナソニクッグループのなかではいち早くトレーサビリティの仕組みを採用したのも特徴だ。これらのデータを活用して、これまでに蓄積した6億3000万件のデータから、必要なレポートを簡単に作成し、生産活動に反映させているという。

さらに、ロボットの手前ともいえる、自動化を活用したローコストオペレーションにも取り組んでいる。高橋工場長は、「組立の自動化による工数削減や、検査設備のロボット化で省人化と確実な品質確認を実現している。また、音声による保守作業のアシストや、作業者の身体データの活用、深度カメラを利用した動作の定量化、設備の予兆管理など、様々な新規要素やソリューション案の実証実験を工場内で実施している」と説明する。

これらの現場カイゼンとテストベッドの組み合わせによって、体験の場を提供することも可能だ。顧客の困り事を解決できるコア商材をパッケージ化するとともに、パナソニックグループ以外の顧客とつながり、カイゼン活動などのコンサルティングを中心として提案、それを実現するデバイスの販売に貢献するショールーム工場でもある。「顧客の現場に近づき、お役立ちするインテグレーターを目指す」という。

音声による保守作業のアシスト。チェックシートが不要でハンズフリーで点検ができる。時間短縮のほか、記入ミス、検査ミスをなくすことに成功
天井に設置したモーションセンサーを活用して作業者の手順をチェックし、人的ミスの防止につなげる取り組み
USBカメラを利用した検査設備のロボット化で、省人化と品質を確保
HG-PLCを活用した電力線通信技術の検証も行っている

事業の垣根を越えノウハウ活用を始めたパナソニック

佐賀工場は、これまでの生い立ちから、様々な事業部の商品を生産するユニークな製造拠点であるが、こうした事業部やカンパニーをまたいだ形で、お互いのノウハウを活用する取り組みは、佐賀工場に限らずパナソニックグループ全体で始まっているという。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社モノづくりイノベーション推進室の一力知一課長は、「パナソニックには、グローバルに327の生産拠点があり、これらの工場は1つの指標で管理される一方で、それぞれが持つ文化、テクノロジー、ノウハウという3つの要素を共有する取り組みを進めている」と話す。

たとえば、家電製品は誰もが使えることを前提に開発されるが、そうしたノウハウを工場の生産設備にも応用するといった考え方は、家電メーカーであるパナソニックならではのものだ。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社モノづくりイノベーション推進室の一力知一課長

また、製造現場では、通常作業者と熟練者とでは設備の稼働率に差があることをデータから導きだし、その動線の特徴を可視化することで、ノウハウを共有化している。梱包材の設計の際も、シミュレーションデータを元にして、人に負荷がかからないように箱の上半分に手をかけられるようにデザインし、腰部への負担を軽減するといった工夫が凝らされ、これが共有されている。

「基板製造ラインにおいては、検査画像やカメラ映像、設備データを含めて約3TBのデータが発生しているが、このうち記録できているデータは100分の1となる26GB程度。しかも、それから活用されているデータは、300分の1となる0.8GB程度に留まる。こうした多くのデータを活用して、意味があるものや、価値があるものに、どう変えるかを考えていかなくてはならない」とデータ活用の現状を説明する。

こうした生産現場で蓄積したノウハウは、今後、パナソニッグループでの活用だけでなく、パナソニックグループ以外にも提供していくことになるという。

「約60年に渡るパナソニックのカイゼンノウハウと、社内で培った豊富な経営効果実績に基づき、経営課題の抽出や課題解決に貢献したい」と展望を語った。

国内で圧倒的シェアだがガラパゴス事業にしたくない

佐賀工場で生産しているパナソニックの決済端末は、国内シェア7割という高い実績を持つ。

パナソニックでは、1974年に磁気式カードリーダーの生産を開始。小売店などで利用するクレジット決済端末は、1986年の発売以来、188万台を出荷。SuiCaやおサイフケータイなどに対応した非接触型ICカードリーダーは、2003年の発売から累計で155万台の出荷実績を持つという。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部マーケティングセンター法人営業3部総括の田中康仁氏は、「パナソニックはこの分野では老舗企業の1つであり、30年以上の歴史を持つ。自販機、外食、流通、物流のほか、鉄道やタクシーなどの交通、ガソリンスタンドなどのエネルギー分野などにも幅広く導入されており、キャッシュレュ社会の実現に向けて、クレジット決済端末、非接触ICカードリーダー/ライターを提供している」と話す。

コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部マーケティングセンター法人営業3部総括の田中康仁氏

歴史があるというだけではなく、市場の変化やグローバルの流れを捉え、Apple Payなどの新たなサービスにもいち早く対応しているという。「国内市場が中心のビジネスであるが、技術面では、決して、ガラパゴスの事業ではない」と技術の対応力の高さを説明する。

Apple Watchを使って、交通系カードやApple Payでも利用できる

決済システムは、セキュリティの強化とともに、オムニチャネルにおける連携、セルフチェックアウト、無人店舗といったように利用現場の変化や進化に対応する必要がある。

パナソニックでは、そうした新たなニーズに対応するために、国際ブランドの非接触IC決済に対応した「決済端末のICカード対応」や、国際基準であるPCI PTSのセキュリティ要件「SRED」に対応した「POS接続型マルチ決済端末」の提案に力を注ぐ姿勢を示し、具体的な製品として、POS接続型マルチ決済端末では、ユニット型の「JT-R600CRシリーズ」を投入した。さらに、組み込み型の「JT-R610CRシリーズ」を戦略製品として、力を注ぐという。

また、「多様な決済ニーズへの対応とともに、スマホ設計で培った技術や、組み込み技術、アナログ技術などの特徴を生かすこともできる。スキャンする距離を長く取って、確実に読みとれるようにしたり、スピーカーを大きな音で鳴らしたりといったことも、家電で培ったノウハウなどを活用している」と強みを語る。

「佐賀工場では、PCI P2PEで求められる高度なセキュリティ要件に対応した専用設備、運用が可能になっている。この設備を持っていることも差別化になる」と付け加えた。

キャッシュレス社会の早期実現に積極関与へ

現在、国内のキャッシュレス決済の比率は約20%。今後、これは40%にまで引き上げられるとの見通しもある。政府の方針や外国人観光客の増加とともに、キャッショレス化の進展は加速していくだろう。

田中氏は、「多彩な決済手段に対応した次世代プラットフォームを採用した商品、サービスを順次展開することで、キャッシュレス社会の早期実現を支援する」と話す。

パナソニックでは、クレジット決済端末で2020年度に累計出荷200万台、非接触型ICカードリーダー/ライターも同様に2020年度に累計出荷200万台を目標にしているというが、「今後はこれら製品の融合も進んでいくことになる」と田中氏が展望を語る。

決済端末やICカードリーダーは、組み込み型で提供されたり、POSの横に設置されたりすることが多いため、パナソニックブランドの強い勢力が目立ちにくい製品だ。しかし、パナソニックは現状で国内シェア7割という圧倒的シェアを持ち、その上に、これから新たな決済方式への対応などを背景に、市場は2桁成長が見込まれている。

目には見えにくいが注目しておくべき、パナソニックの隠れた有力事業の1つだといえる。