縦型洗濯機でも

モノのデザイン 第39回

縦型洗濯機でも"空間価値"を追求 - パナソニック「NA-FA120V1」(前編)

2018.06.21

パナソニックから6月1日に発売された縦型洗濯機の新製品「NA-FA120V1」。家電製品に対する消費者のデザインへの意識が高まる中、2016年に同社が発売したドラム式洗濯機「Cuble」に続いて、縦型洗濯機においてもデザイン性を追求した新製品だ。

同製品でデザインの見直しが図られた経緯や背景、開発秘話などを、パナソニック アプライアンス社デザインセンターの村上浩司氏と同社コンシューマーマーケティングジャパン本部洗濯機商品課の阿部彩氏に伺った。

ドラム式の「Cuble」に続いて、縦型にもデザイン性を重視した製品として登場したパナソニックの「NA-FA120V1」。"見せたくなる洗濯機"としてデザインされた

ドラム型から縦型へ、空間価値を追求

前述のとおり、パナソニックではデザイン訴求の洗濯機としてすでに発売された「Cuble」が好評を博している。同社としてはドラム式に続いて、空間調和を意識したラインナップを縦型洗濯機においても広げたかたちだが、Cubleで得られた手応えや知見は縦型洗濯機へも活かされているのだろうか。

「Cuble発売時の洗濯機市場は、すでにコモディティ化が進んでいて、できるだけ安ければいいというニーズがある一方で、空間に対しての価値を求める消費者も増え始めていました。そしてその当時、パナソニックとしてはドラム式洗濯機に注力していこうという時期だったこともあり、まずはCubleの開発に至りました。結果、消費者の方からの反応も上々で、洗濯機に対するニーズが変わってきているという手応えをしっかりと感じ取ることができました。そこで、空間に対する価値について、縦型では提供できないのだろうか? という原点に立ち返り、今回の商品につながっていきました」

空間に対する価値に応えるとはいえ、縦型洗濯機としての機能、性能を十分に満たしていなければ意味はない。老舗電機メーカーであるパナソニックとしては、「電化製品としても完成度の高い商品を送り出さなければなりません」と村上氏。

週末のまとめ洗いや毛布などの大物洗いへのニーズに応えるため、「NA-FA120V1」は、洗濯容量を従来の10kgから12kgに増量したというのが新製品としての大きな特長の1つである。もちろん、設置スペースの制限を考慮した中での大型化が図られた。

2つの相反する要素の両立を実現したのは、洗濯槽の上部に備えられる"バランサー"という部品の改良にある。バランサーとは、脱水時に洗濯槽内の偏りを調整し、振動を抑えるためのパーツだが、内部に収められた液体の流動性を保ちながらも従来よりも厚みを約11ミリも薄型化することで、洗濯槽の内径を広げることに成功した。これにより、洗濯槽の投入口の幅は従来の381ミリから437ミリにまで拡大している。そのため、本体のフタを開けると思わず「大きい! 」と感嘆の声が漏れてしまうほどのインパクトがある。

左側が旧機種。設置スペースはあまりかわらないものの、投入口幅がこれだけ広くなっている
新製品「NA-FA120V1」のバランサー(右)。容量10キロタイプのものよりも直径が広がっているが、機能を損ねずに約1センチほど薄型化されている

新製品の外観をデザインするにあたっては、まずはその特長である大きな投入口を"機能美"として際立たせることを意識したそうだ。「フタを開けた時に、大容量で大きいと感じられるようなデザインを考えました」と村上氏。

具体的なところでは、洗濯槽を手前に配置し、操作部が後方に配置されている点が目を引く。阿部氏は「まずは使いやすさを見せたいというのがありました。それと同時に、洗濯槽と人との距離が近くなるため、洗濯物の出し入れの負担が軽減されます。槽内も見渡しやすくなりますし、小さな洗濯物の取り残しも防ぐことができます。操作部が手元から遠くなってしまうということも当然ありますが、濡れて重たい洗濯物を引き上げることと、どちらが身体にかかる負担は大きいのか? を比較した結果、このスタイルが採用されました。小さなお子さんの手が届かなくなったり、本体手前の操作パネルに身体や洗濯かごが当たって誤作動するのを防止できたり、というメリットもありますしね」と説明する。

洗濯物の出し入れのしやすさが最優先と考え、投入口を手前に、操作部は後方に配置された

大きく丸い投入口へのこだわり

村上氏によると、大きな投入口を"円"で表現するというのもこだわりの1つだったという。「大投入口という新製品の技術とデザインの特長を表すアイコニックな形として、円にはこだわりがありました。投入口の周辺には洗剤ケースや給水口のレイアウトといった設計上の制約がありましたが、できる限りより広く見える円を描きました。また、洗濯槽へ向かって傾斜を設けることで、衣類の出し入れもしやすくなっています」

投入口はよく見ると、上方に向かって広がるように傾斜が付いている。投入口を大きく見せる視覚的効果と洗濯物の出し入れのしやすさの両方を兼ねてデザインされた

ドラム式のCubleと同様に、洗濯機と空間との調和を考えた時には、フラットで凸凹が少ないデザインというのは重要な要素だという。「デザインのセオリーから言うと、凹凸が少ないほうが当然スッキリとキレイに見えます。フラットなデザインはお手入れもしやすいという長所もありますし」と村上氏。

ただし、ドラム式と違って縦型洗濯機の場合には、上から洗濯物を出し入れする構造だ。そのため、フタは本体上面に備え付けられるのが一般的だが、この構造が今回の製品デザインにあたって苦労した点の1つだと明かす。

上面にフタを備える縦型洗濯機の場合は、設置の関係上、フタは真ん中で畳める機構が必須。フラットにしたいという思いに反して避けられない要素でもある

「日本の家庭の洗濯機の上の空間は棚などが備えつけられているケースが多いです。そのため、当社の縦型洗濯機のフタは高さを抑えるよう真ん中で折れる形状になっています。フタの分割がないほうが見た目はスッキリしますが、お客様にとっての使いやすさは無視できません。フタの部分を横方向に観音開きにするような考え方もありますが、洗濯する上での一連の操作や空間での視線の流れを考慮し現在の構成にしています。ただ、中折れの形状にしつつも、継ぎ目部分に極力段差が出ないようストレートにつなぎ、スッキリとしたデザインにしています」(村上氏)

製品の企画・設計・デザインを担当した、パナソニック アプライアンス社デザインセンターの村上浩司氏(右)と同社コンシューマーマーケティングジャパン本部洗濯機商品課の阿部彩氏(左)

ドラム式のCubleに続き、デザイン性を強く意識したラインナップとして登場したパナソニックの縦型洗濯機の新製品。前編では、開発経緯や"機能美"に対するこだわりについて話してもらった。

次回、後編では縦型洗濯機ならではのデザインのこだわりや、海外のチームとも話し合われたというデザイン志向の海外と日本との違いなどの開発秘話をご紹介していく。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。