機能と審美性を追求した

モノのデザイン 第33回

機能と審美性を追求した"デザインエアコン" - ダイキン「risora」(前編)

2018.02.19

ダイキン工業から3月下旬に発売される、家庭用ルームエアコン「risora」。インテリア性を重視したエアコンのシリーズとして新たに投入されたラインナップだ。今回は、デザイン担当チームの1人である、同社テクノロジー・イノベーションセンター先端デザイングループの中森大樹氏に、製品の開発の経緯やコンセプト、製品化までのプロセスについて伺った。

3月下旬発売のダイキン工業のルームエアコン「risora」

デザイン性を追求したルームエアコンの発売は、ダイキン工業では実は今回が初めてではない。「UXシリーズ」として2016年秋にも発売されている。 2014年に「Daikin Emura」の名で欧州で先行発売された。日本へはそれから1年半後になり、いわば"逆輸入"というかたちで発売されたが、中森氏はその経緯を次のように振り返った。

ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター先端デザイングループの中森大樹氏

「弊社では当時からインテリアに調和するエアコンの必要性を感じていながら、実際に日本市場でその需要がどれほどあるのかは未知数といった状態でした。そのため、新製品の開発に踏み込む前に一度、まずはUXシリーズを日本でも発売してみて、その反響によって検討しようということになりました」

2014年に欧州で発売された「Daikin Emura」。その後2016年秋に日本でも「UXシリーズ」として展開された

その結果、日本の消費者からの声は「かっこいい」と概ねポジティブなものが多かったとのこと。しかし、デザイン性は受け入れられた一方で、「部屋に合うかどうか」といった躊躇の声もあったという。つまりUXシリーズの発売により日本市場での展開を検討する上で得られた知見は、日本の住宅環境にマッチした製品を作り出す必要性だ。

そこで、2年ほど前にプロジェクトが発足した「risora」では、外形寸法を決めるところから始まった。特に日本市場においては、建築設計上無視できないエアコンの課題があるためだ。

というのも、日本の木造住宅では"半間幅"と呼ばれる柱間の標準仕様がある。エアコンの室内機が壁に取り付けられる際にはこの幅に収まるサイズであることが求められることが多い。そのため、「risora」では日本の一般的な建築仕様の住宅に取り付けられるよう、縦横サイズは同社のフラッグシップモデルと同じ寸法に設定された。

しかし、空間に違和感なく溶け込めるよう、UXシリーズと同様、奥行きは極力"薄い"ものが目指された。とはいえ、近年、省エネ性能が求められる家庭用エアコンは、内部の熱交換器が大型化する傾向にある。また、多機能化によっても容積が増している。つまり、「スリム化を図ること」と「性能や機能性の維持」は相反する要素でもある。

「UXシリーズ」の日本での発売を経て、第2弾となる「risora」に求められたのは、住宅事情に合わせた小型・スリム化だった

中森氏によると、スリムな製品の開発を進める上で最初に検討されたのは省くべき機能の選定だ。そしてその際の出発点となったのは、"空気を愛されるものにする"という、「risora」の製品コンセプトだった。

「エアコンの性能を追求した結果、空気そのものが快適になったとしても、その機器自体の形状が圧迫感があって室内で浮いていたなら、製品コンセプトから言えば快適とは言えません。そこで、外観と性能という別個のものを両立させるという考え方をせずに、それぞれを出発点として、"空調機器"として快適な姿を突き詰めていくことにしました」

次に、「risora」を求めるターゲット層を"インテリアにこだわる人"と明確に設定。そこを起点に、最新技術をすべて搭載したフラッグシップ機から間引いたとしても、性能面とデザイン面での快適性に影響が少ない機能として、「フィルターの自動清掃機能」が絞り込まれた。

他方、エアコンの性能とデザインの両面で欠かすことのできない機能としては、"垂直気流"と呼ばれる、ダイキン独自の制御技術が選ばれた。独自の機構設計のフラップにより風を真下に吹きつけることができるというもので、冬は暖かい空気を床に這わせて床暖房のような暖かさをもたらし、夏はサーキュレーション型の気流と組み合わせることで室内における温度ムラを解消し効率よく快適な冷房環境に寄与する。

スリム化を図るために機能の取捨選択が行われた結果、"垂直気流"というフラップを垂直にして風を真下に送る独自の機能は引き継がれた

しかし、前述のとおり室内機の薄型化を図りつつもこの技術を実現するには、フラッグシップの技術をそのまま転用しただけでは難しい。そこでフラップ部分もrisora仕様に一から検討し直されたそうだが、一筋縄ではいかない多くの課題を克服する必要があったという。

「筺体室内機の小型化に伴って、フラップも小さくしなければなりません。しかし、フラップが小さいと気流を遠くまで届けることは難しいのです。さらに、フラップ部分は稼動中の外観を損ねてしまう要因でもあります。十分な性能を出しながらも、美観を損ねないようにどの程度まで反らせるかといったことも考慮しなければならず、内側に羽根を設けて隠すなど設計担当者からもアイディアを提案してもらいながら検討を重ねました」

美観を損ねず、遠くまで気流を届けることのできる薄いフラップの開発は最も労力を要した1つ

薄型化を図るために、「risora」では"多連結ソウエッジクロスフローファン"と呼ばれる新たなファンも開発された。空気抵抗を低減するために、従来のファンよりも連結部分を増やし、ファンの各翼部分にスリットが施されているのが特徴だ。中森氏はその検討過程を次のように説明した。

「ファンというのは単に小さくしただけだと性能が出せず、大きいままで内部部品が近接すると音がうるさくなってしまいます。そこでまずは目標とするファンの直径を決めた上で、サイドの形状や部品の配置の仕方などが検証され、最終的に辿り着いたのがこの形です」

従来のファン(上)と「risora」のために開発されたファンの比較
各翼部分にスリットを設けることにより、ファンを小型化したことにより発生する騒音が抑えられた

欧州で最初に発売された後に、日本には逆輸入という形で市場投入された「UXシリーズ」に次ぐダイキンのデザインエアコン第2弾として登場した「risora」。"日本発"としては第一陣となる製品としては日本の住宅事情が大いに加味され、薄さと小型化が第一の至上命題とされる中、機能・性能を極力上位機種のスペックに近づけるため、エアコンの構造や機構設計がさまざまに見直され、技術イノベーションにもつながった。次回後編では、特徴的なカラーバリエーションの話や、視覚的効果など外観上のこだわりや工夫について紹介したい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu