ルックスはそのままに機能を再設計 - パナソニック ロボット掃除機「RULO(ルーロ) MC-RS800」(後編)

モノのデザイン 第25回

ルックスはそのままに機能を再設計 - パナソニック ロボット掃除機「RULO(ルーロ) MC-RS800」(後編)

2017.10.19

2015年3月に初代が発売されたパナソニックのロボット掃除機「RULO(ルーロ)」。ロボット掃除機市場においては、2016年秋にロボット掃除機市場に参入した日立アプライアンスを除いて、大手家電メーカーの中では遅い参入となったが、"三角形"という他のロボット掃除機にはない前代未聞の形状が、当時非常に注目を集めた。

そして3代目となる今回の新製品でも、その形が変わることはない。今回は前編に引き続き、ルーロのデザインを含め、製品開発に関わった担当者に、旧製品も含めた誕生までの秘話を伺った。

パナソニックのロボット掃除機「RULO MC-RS800」(ルーロ)

「ルーロの三角形は、掃除性能にこだわり続けた結果の形なんです」と語るのは、パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業 クリーナー商品企画課の川島抽里氏だ。しかし、それはもちろん決して見た目の上でのインパクトを狙ったのではなく、あくまで掃除機としての役割を追求した先に辿り着いた形だったという。

「ルーロが発売される以前、世の中のロボット掃除機は技術的な面ばかりに注目が集まり、作る側もどちらかと言うと掃除機の"動き"に注力している傾向がありました。しかし、掃除機を作っている家電メーカーである弊社としては、"清掃性能"をしっかりと満たすべきであると考えていました。そこで市場調査を行ったところ、ロボット掃除機は部屋の隅や壁際のゴミの除去に難点があるというユーザーからの不満点が浮かび上がり、これを解決するにはどうすべきか? ということでまずは議論が進められました」(川島氏)

一方、家電メーカーとしてすでにロボット掃除機以外の多くの掃除機を発売してきた実績を持つパナソニックでは、キャニスタータイプの掃除機の担当者の間で、部屋の隅のゴミを除去しやすくするためにヘッドブラシの形状を三角形にするというアイディアが存在していたとのこと。そしてそのアイディアが隅のゴミが取りづらいというロボット掃除機の開発手段としてルーロの本体の形状につながっていったという。

とはいえ、ロボット掃除機を三角形にすると言っても、そう単純な話ではない。世の中にあるロボット掃除機の形状は円形が中心だが、形を三角形にするだけで、機構設計上のハードルは消費者が想像している以上に高いのだという。

「丸に比べて、まずは単純に面積が小さくなってしまいます。その狭い空間に内部の部品をいかに収めていくかというのは至難の業。それから最新機種で搭載したレーザーセンサー同様に、初代から搭載している赤外線、超音波センサーの位置をどのようにするかというのも多くの検証が必要でした」

ルーロの裏側。吸込み口を長くとれる場所に設置してから、その他のセンサー類を配置していった

「センサー自体は小さな物ですが、それを制御するための基盤が必要で、さらにはバッテリーもあり、内部は本当にひしめき合った状態です。それから掃除性能を上げるために吸込み口はできるだけ幅を長く取りたいところですが、円形に比べると三角形は単純にはいきません。吸込み口の位置と幅をまず決めてから、他のものがすべて収まるように設計していきました」

さらに、ロボット掃除機の場合、通常の掃除機に比べると外装部品の成形自体にも高い技術が要求されるのだという。その大きな理由は、やはりセンサーの存在だという。

「キャニスター型など一般的な掃除機の場合は、手作りの試作品で性能を確定した上で、金型を作成していきます。しかしロボット掃除機の場合には、センサーの位置がほんの少し違うだけでも性能を大きく左右してしまいます。そのため、ロボット掃除機の場合には、まずは外観金型を最終品形状に仕上げてから性能確認を何度も実施し作り上げるという、これまでにはない方法を行いました」と川島氏。

パナソニック アプライアンス社 デザインセンター リビングデザイン部の岡部健作氏

サイズや形状は従来製品の意匠がしっかりと引き継がれたルーロの新製品だが、外観上のデザインは少し変化している。従来の機種に比べると、本体カラーはホワイトとシルバーを基調としたデザインになり、ボタンなどの操作部も控えめなインタフェースで、表面全体に施されたグラフィックなど装飾的な要素が抑えられ、よりシンプルかつ洗練された大人っぽい印象のデザインに変わった。

デザイン担当者である、同社 デザインセンター リビングデザイン部の岡部健作氏は、新製品におけるデザイン上の変化を次のように説明した。

「ロボット掃除機=丸いというイメージが定着した後に発売することになったルーロは、隅を掃除するための三角形という形自体が、商品を表わす強いアイコンになってもいます。そこで、今までのルーロでは、ロボット掃除機が暮らしになじんでいってほしいという思いも込めて、親しみやすさやインテリアとの調和という要素を優先し、少し丸みを帯びたフォルムを強調しました」

「これに対し、今回の新しい製品では、そのフレンドリーな印象は維持したままで、"知能の進化"という要素も外観上で同時に表現したいということになりました。そこで外観に関しては清潔感のある白を基調とし、進化したルーロの"賢さ"を表わすものとして、クリアトップの採用や金属的な要素など表面仕上げや質感の違いで表現しているんです」(岡部氏)

本体中央の三角形の部分は、クリア樹脂で質感を付与
先代のルーロは、上面パネルの表面に模様が入れられていた

確かに新しいルーロをじっくりと見ると、本体中央の成形部品はクリア樹脂となっている。

岡部氏によると、「3代目のルーロは価格もそれ相応の製品です。先進感と同時に、高品位な外観というのも表現しなければなりません。しかし、清潔感を表わすための白色というのは、他方で高級感が出しにくい色でもあるんです。そこで素材感により、品位を出すという方法に至りました」

「製品の印象というのは、色味以外に質感や素材感によっても見た目の"品"を上げることができます。素材感というのは、ふだんあまり意識していなくても実は潜在的に結構感じているものなんです。ロボット掃除機としての機能や性能がもちろん第一ですが、デザイン全般においても消費者に納得して買ってもらえるように、細部にまでこだわる必要があると考えています」

ロボット掃除機の部品に不可欠な、"パンパー"と呼ばれる周囲をガードする部分を注目して見ると、分割のない一体部品となっていることが分かる。通常、この部分は複数の部品の組み合わせであることが多い。

銀色の部分が全周バンパー。複数パーツの組み合わせではなく、一体部品だ

「この全周バンパーが、実は本体設計を難しくしています。開発当初は、分割する構想もありました。しかし、三角形を大きく分断するのは、美しさもありますが、シンプルにすることで三角の記号性を際立たせてきたRULOの良さを損なうと考え、全周バンパーにこだわりました。そこに設計・製造チームが見事に応えてくれました」と岡部氏。

前編・後編の2回にわたって紹介した、パナソニックのロボット掃除機「ルーロ」のデザイン上の秘話。三角形の特徴的な形状に、現在のロボット掃除機の最先端の技術がすべて盛り込まれたと現状の"最高峰"とも呼べる製品だが、外観上のデザインも含めた、想像を超えるそのこだわりの強さに、製品にかける同社の意気込みを改めて感じた。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。