App Storeのルールが変更、アプリビジネスは月額課金が主体となるか

App Storeのルールが変更、アプリビジネスは月額課金が主体となるか

2016.06.10

アップルは米国時間6月8日に、アプリストアの「App Store」に関する複数の変更を発表した。選ばれたメディアに対して、App Storeを担当する上級副社長、フィル・シラー氏がインタビューに答える形で発表された。

App Storeの変更点は?

その中でも注目されるのは、サブスクリプション型アプリ(月額課金型アプリ)の奨励策だ。これを含むApp Storeに施される変更は、以下の通りだ。

  • App Store審査の迅速化。これまで5日から1週間を要していた、アプリの提出から公開までの時間を、50%のアプリで24時間以内、90%のアプリを48時間以内に短縮。これはすでに実行されており、筆者がアップデートを提出したアプリも1日を待たずに公開された。

  • アプリのサブスクリプション型課金を一般の開発者にも公開。

  • より柔軟な金額設定。サブスクリプション型アプリに限り、有料アプリの価格帯を現在の86から200に増加、細かい価格のチューニングに対応。また国別の金額設定も可能に。

  • 複数の有料サービスを設定可能。サブスクリプション型アプリにおいて、複数の料金設定ができ、金額に応じたサービスを提供できるようになる。

  • 開発者の収益比率を優遇。サブスクリプション型アプリで、1年以上継続課金をしているユーザーからの収益について、開発者の取り分をこれまでの配分比率70%から85%に引き上げる。この変更は過去の購読開始に遡って適用される。

  • アプリの検索性の向上。すでに持っているアプリを表示させないようにする機能を実装。またカテゴリを復活させる。加えて、3D Touchでアプリを共有できるようにした。

  • 検索広告の導入。

App Storeのルール変更については開発者向けサイト「iOS Developer」で告知

アプリストアでの競争とユーザーの変化

アップルはグーグルとスマートフォンアプリのマーケットで競合している。デバイス全体の数はグーグルのAndroidが85%程度を占め、アップルのiPhoneを圧倒している。アプリストアのアプリ数についても、App Storeが約160万本、Google Playストアが約170万本と、グーグルがアップルを追い抜いたところだ。

Google Playストア

一方で、アプリストアから得られる収益は、アップルが大幅に優位性を保ってきた。アップアニーによると、2016年第1四半期において、App Storeの収益はGoogle Playよりも90%多かったと分析する。とはいえ、App Storeの優位性が圧倒的だったというのは、すでに過去の話だ。

スマートフォンが普及するにつれて、積極的にアプリに購入するユーザーがすべてではなくなってきた。価格の高いアプリに一度にお金を使うよりも、普段使うサービスをアプリ経由で課金したい。そんなニーズに対して、Google Playストアは敏感に答えてきた。

iPhoneは先進国で強く、その結果アプリストアでの収益も大きかったが、グーグルがGoogle Playストアからの収益を伸ばしているということは、先進国内外でより安いスマートフォンを利用しているユーザーからの収益の芽が出始めたことを示唆する。そのGoogle Playストアが積極的に取り組んできたのが、サブスクリプション型の課金モデルだった。

アプリストアとして先進さを見せつけるGoogle

グーグルで、ゲーム・アプリケーションディレクターを務めるパニマ・コチカー氏にインタビューすると、競争力を高める施策に取り組んできたという。「Google Playストアは2015年10月にリニューアルしました。ストアとアプリでは、マテリアルデザインを横断的に採用して体験性を高めています。また、支払い方法をより簡単にするプラットホームを整備してきました。アプリ開発者がアプリの開発とビジネスモデル作りに注力すべきだと考えるからです」(コチカー氏)。

Google Playストアでは、日本のケータイコンテンツの事例を参考にし、ダウンロード課金、アプリ内課金に加えて、サブスクリプション型の課金の柔軟性高く整備してきた。

その理由について、コチカー氏は2点を指摘する。「例えば、小さい子供が知育アプリで遊ぶ際、課金しなければ先に進めない、という制限を設けるべきではありません。ユーザー体験を制限しないために、定期購読は有効です。また開発者は、ユーザーと継続的で長い関係を築きながらビジネスを持続的に行うことが重要です」(同氏)。

金額と期間において柔軟性も高い。「例えば雑誌のアプリであれば、100ドルの年間購読がふさわしいでしょう。その一方で、デートアプリの場合、出会いがないのに年中課金されるのはおかしい。例えば3カ月、6カ月という期間を設けた課金で集中してもらうほうが、ユーザーの満足度は高まるはずです」(同氏)。

グーグルは、アップルを追いかける立場として、開発者のニーズやビジネスの継続性をサポートする姿勢を強く打ち出している。そこには、かつての日本のケータイコンテンツのノウハウもふんだんに取り入れているほか、アプリ開発者のビジネスのサポートや海外進出についても、アドバイスを行っているのだ。

ビジネスプラットホームとして進化できるか?

先進性の高い取り組みを行うGoogle Playストアだが、App Storeの影響力は、今もなお絶大だ。スタートアップは、少ない資金でアプリ開発を行い、効果的にユーザーを集め、次の投資を狙う「iPhoneファースト」戦略を未だに実践している。

アップルは、新興市場への進出を図る戦略を崩していない。中国への進出に続いて、インドに対して、トップ渉外も含む積極的なアプローチを行っているところだ。

ただし、アップルはデバイスメーカーとして、デバイスからの収益を確保する一方で、サービスでの収益の拡大を狙う必要にも迫られている。iPhoneの販売量は、2016年第1四半期でブレーキ、第2四半期で下落し、右肩あがりの成長が踊り場を迎えている点から、新規ユーザーを膨大に獲得することによる自律的なアプリストア収益成長のフェイズは終わったとみても良いだろう。そのために、iCloudやApple Music、App Storeの持続的な成長を描いていくことが重要になっているのだ。

iPhoneの販売量の推移。2016年題2四半期で前年同期を下回った

今回のアップルによるApp Storeのビジネスモデル変更は、ストア開設から8年目の大きな転換点となり、開発者の持続的な成長を支えるビジネスプラットホームとして、より一段と開発者に対する傾聴を深める必要があるだろう。

開発とユーザー獲得の効率性がポイントに

筆者は、今回のApp Storeの変更をポジティブに受け止めている一方で、依然として、ビジネス設計の柔軟性の面でグーグルには追いついていないと評価している。

しかし、アップルが開発者に提供している強みは、アプリ開発とユーザー獲得の効率性だ。この点をより拡大させていくことは、Googleへの対抗策として有効であると考えている。

アップルは、iPhone、iPad、Apple Watch、Apple TVといった異なるデバイス向けのアプリを束ねて開発できる。iPhone・iPadアプリはユニバーサルアプリとして、どちらでも動作するアプリを実現してきたし、Apple Watch向けアプリはiPhoneアプリに内包される。異なるデバイスながら、開発の効率性を高めることができるだろう。

また、スマートフォンと同じブランドのアプリをスマートウォッチやセットトップボックスで利用する、といった異なるプラットホームでのユーザー獲得も効率的だ。

ここにMac向けのアプリを加えるべきだが、同じアプリを複数のデバイスで活用するスタイルを提案することは、開発者に対しても一貫した体験のデザインを促し、よりサブスクリプション型のビジネスモデルを描きやすくする。

iPhone単体で業績を牽引する時代から、複数のデバイスで構成する"ライフスタイル"を提供するプラットホームでの成長の時代へ。今回のストアのビジネスモデルの変更は、アップルと開発者にとって大きな転換点となる。

アップルは、開発者向けの年次イベント「WWDC16」を米国時間6月13日から開催する。年次更新されている各種OSや開発環境、新たなAPI、そしていくつかのハードウェアの発表も含まれるとみられている。特に注目したいのは、前述の通り、複数のデバイスで構成する"ライフスタイル"を、いかに開発者に活用してもらえるようにお膳立てするか、だ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu