モノのデザイン 第16回

"まだ買ったことがない人"に向けたデザインを追求 - ダイキン「ストリーマ空気清浄機 MCK70T / MCK55T」(前編)

2017.01.23

空調総合メーカーとして、エアコン、空気清浄機などをグローバルに展開しているダイキン工業。業務用の空調機器のシェアが高いこともあり、性能面においては業界内で高い信頼と実績を獲得してきたものの、家庭向けの商材においてはデザイン面で他社に少し引けを取る……という印象を持っていた人も多いのではないだろうか。

しかし、そんな同社が2015年に発売した当時の新商品「ストリーマ空気清浄機 MCK55S」(以下MCK55S)では、加湿空気清浄機としては目新しいスリムタワー型という機構を採用し、省スペース性やポップなカラー展開などで消費者の注目を集めた。そして、同社は今秋市場に新商品「ストリーマ空気清浄機 MCK70T」(以下MCK70T」)と、「ストリーマ空気清浄機 MCK55T」(以下MCK55T)の2製品を投入した。

ダイキン工業「ストリーマ空気清浄機 MCK55T」。個室向けの加湿空清として、同社が昨年初めて発売したスリムタワー型加湿空気清浄機の2016年モデル
「ストリーマ空気清浄機 MCK70T」(以下MCK70T」。デザインが刷新されたリビング向けの加湿空清の新モデルだ

そこで今回は、このように近年空気清浄機のデザイン性の向上に力を入れるダイキン工業の取り組みや、新モデルにおけるデザイン上のこだわりについて、同社テクノロジー・イノベーションセンター 先端デザイングループの吉川千尋氏に話を伺った。

空間に合わせて選ぶ「楽しさ」を追求

MCK70Tは前年モデルの「MCK70S」の後継機にあたり、空清時の適用床面積最大31畳のリビング向けの加湿空気清浄機で、このほどデザインが一新された。他方のMCK55Tは前述のMCK55Sの後継機。空清単独運転時の適用床面積最大25畳の個室などパーソナル空間向けのラインナップで、新製品では外装の一部とカラーバリエーションが変更されている。

まずは、同社の空気清浄機の新たなラインナップとして昨年登場したスリムタワー型のMCK55Sが生まれた背景について尋ねた。

ダイキン工業で空気清浄機のデザインを担当している、同社テクノロジー・イノベーションセンター 先端デザイングループの吉川千尋氏

「ここ数年で空気清浄機が家庭にある程度普及したことで、そもそもの構造から見直そうという動きが当時の社内でありました。そうした中、2台目やワンルームなど狭い空間にも設置していただけ、加湿機能も備えた空気清浄機を社内で突き詰めていった結果、辿り着いたのがタワー型だったんです」

既存製品と形状が変わったことについては、「タワー型にすることで、設置面積が小さくなり、狭い場所にもスッと収まります。従来からあったリビング向けのモデルに対して、縦横27センチ四方、高さ70センチというスリムタワー型を用意し、それぞれの空間で空気清浄機を選ぶ楽しさを感じてもらいたいというのが、当時新しく生まれたMCK55の位置付けだったんです」と語った。

目新しいカラーとセレクトの理由

2015年に発売されたMCK55Sには、ホワイト、ディープブラウンに加えて、ブライトオレンジ、ミッドナイトブルーという4色のカラーバリエーションも人目を惹いた。

2015年発売の初代MCK55S。部屋のインテリアに合わせて選べるように、ホワイト、ディープブラウン、ブライトオレンジ、ミッドナイトブルーの4色がラインナップしていた
2016年モデルでコンセプトカラーとして採用されたのはマルサラレッド。「30代の女性ユーザーに響く色を」と、部屋のアクセントになりつつも、落ち着きのあるレッド系カラーが選ばれた

しかし、後継機として発売された2016年のMCK55Tでは、ブライトオレンジ、ミッドナイトブルーがラインナップから消え、代わりに新色として登場したのがマルサラレッドだ。吉川氏によると、その理由は新たなユーザー層を狙ったためだという。

「ホワイトとブラウンは、他の製品同様に多くの人に支持されるスタンダードカラーとして用意しています。それに加えて、その年のトレンドやムードを反映したコンセプトカラーを展開しています。初登場の2015年はオレンジとネイビー、そして2年目となる今年のモデルでは、まだ空清を買ったことがないという方にアプローチするカラーとして、マルサラレッドを採用しました」

新色として赤を選んだ理由を聞くと、「主に30代の女性ユーザーを想定した選択です。インテリアトレンドを調査し、ダークトーンの床や木目調の部屋に調和しながらも、ちょっとだけ華やかな印象を添えられるカラーを選びました」と説明した。

MCK70Tをタワー型にしなかったのはなぜ?

"インテリア・フィット"をコンセプトにデザインされた、リビング向けの新商品MCK70T。ホワイトとブラウン系の2色のラインナップだが、あらゆるインテリアに調和する色調と質感が選ばれている

一方、今回デザインが大幅に刷新されたのはMCK70Tだ。丸みを帯びたデザインの従来機種に比べると、全体的に直線的かつ平面的な形状が特徴だ。外装を大きく変えたのは、どういった理由からなのだろうか。

「スリムタワー型が消費者やメディアから大変好評で、空気清浄機市場においてデザインへの追い風を感じました。そこで、リビング向けのフラッグシップ機も一新することに。タワー構造も検討してみたのですが、気流解析を行った結果、リビングのような大空間には現行の機構の方が適しているとわかったため、継承しています。インテリアの水平・垂直との調和を狙ったMCK55Sがご好評いただけたことから、MCK70Tもフラットでシンプルなデザインになりました」(吉川氏)

新モデルのMCK70Tでは、"パワーモニター"を廃し、ユーザーが知りたい部屋の状況のみをシンプルに表示するに留め、空間になじむことが優先された

また、MCK70Tの全体的な形状以外の部分では、操作部や表示部において大きなデザインの刷新が図られた。その1つは"パワーモニター"と呼ばれていた正面のLEDインジゲーターを失くしたことだ。これは、空気清浄機の風量に合わせてLEDランプが点灯するというモニター機能の1つだったが、今回デザイン性を見直すにあたり、「空気清浄機の出力をユーザーが知る必要があるのだろうか?」という疑問が浮かび上がったのだという。

「空気清浄機がある程度家庭に浸透し、その効果が信頼されるようになった今、ユーザーが知りたいのは空気清浄機のパワーよりも、今の部屋の状況ではないかと考えました。そこでMCK70Tでは、ホコリ、PM2.5、ニオイの3つのセンサーで検知した室内の状況をLEDの色の変化で伝えるのみに変更しました」

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。