小型冷蔵庫にも「家具」の質感を - シャープ 冷蔵庫「SJ-GD14C」

モノのデザイン 第15回

小型冷蔵庫にも「家具」の質感を - シャープ 冷蔵庫「SJ-GD14C」

2017.01.19

1月19日発売のシャープのプラズマクラスター冷蔵庫「SJ-GD14C」。"「家具」のような冷蔵庫"をデザインコンセプトに企画・開発された定格内容積137Lの小型冷凍冷蔵庫だ

日本の冷蔵庫市場ではここ数年、ドアパネルの素材の主流が鋼板からガラス素材へと移り、機能や性能面だけでなく、デザイン性を打ち出した製品が増えつつある。しかし、そのほとんどが定格内容積351L以上の大型クラスの製品で、それ以下の小型・中型クラスの商品はまだまだラインナップが乏しいのが現状だ。

そんな中、シャープは単身者や少人数家族世帯向けの小型・中型クラスで、デザイン性にも重きを置いた新たな冷蔵庫を1月19日より発売する。そこで今回は、同製品のデザイン担当者であるシャープ 健康・環境システム事業本部 デザインスタジオの一色純氏に、新製品における取り組みや狙いについて訊ねた。

多様化する社会と小型冷蔵庫のニーズ

製品のデザインを担当した、シャープ 健康・環境システム事業部 デザインスタジオの一色純氏

このほどシャープから発売されるのは、プラズマクラスター冷蔵庫「SJ-GD14C」(以下GD14C)と「SJ-GW35C」(以下GW35C)の2製品で、定格内容積はそれぞれ137L、350Lとなっている。

このうちGD14Cは、幅48センチ、奥行60センチ、高さ112.5センチの2ドアタイプの冷蔵庫で、1人暮らしのユーザーや、オフィスやカフェ等店頭での設置、2台目のサブ機としての需要を見込む。

シャープは11月に行った記者向け内覧会の席で、「小型・中型の冷蔵庫はこれまで他社も含めて選択肢が非常に限られてきた。しかし、多様化する昨今の社会において、インテリア志向の高い消費者が増えており、小型の冷蔵庫にもデザイン性が求められるようになってきた」と説明。こうした新たな消費者需要に応えるべく、今回の2つの新商品を企画した旨を明かしていた。

小型冷蔵庫のラインナップであるGD14Cにおいて掲げられたデザインコンセプトは"「家具」のような冷蔵庫"だったという。製品全体を通して直線的かつ平面的なデザインが貫かれ、まるでオーディオ製品のような見映えで、リビングに置かれていても違和感がない。

SJ-GD14Cのカラーは、クリアホワイト、メタリックベージュ、ピュアブラックの3色を展開。ナチュラル、モダンテイストをはじめ、昨今のトレンドである"塩系"インテリアにもマッチする色や質感が選ばれたという

一色氏によると、本製品をデザインする上で最も大切にしたのは、"周囲のインテリアに溶けこむような佇まい"とのこと。そして具体的に意識された要素としては次のように語った。

「水平、垂直のすっきりとした直線と、フラットな面で構成することを第一にしました。さらに、その上でハンドル部の見せ方や、ドアとドアとの隙間の見え方、ドアとトップテーブル(天板)の隙間の位置などにも細かく配慮して極力凹凸をなくし、隙間を見せないようにしました。要素を整理することで、すっきりとしたスクエアなデザインにすることを目指しました」

SJ-GD14Cの下段の引き出しはシルバーの板形状のデザインを採用。本体のデザイン上のアクセントにするとともに操作性を両立させたとのことだ
従来の小型冷蔵庫の引き出し部分。指の引っかかりを設けるために、上方向に凹を設けていた

また、デザインにおいて小型冷蔵庫ならではの課題もあったようだ。

「小型冷蔵庫は、ドア面積に対してハンドルの比率が大きくなります。しかし、ハンドル部分はサイズによって操作性が決まるので、大型でも小型でもほぼ同じサイズが必要なんです。ただ、小型冷蔵庫の場合はガラス面に対してハンドル部の比率が大きくなってしまうため、小型モデルの全体の大きさから見た比率で美しく見えるデザインを考えることが必要となってくるんです」(一色氏)

新製品の引き出し部は下方向に凹を設け、凸凹が視界から入らないように配慮されている

GD14Cのデザイン面で特に目を奪われるのは、薄い一枚板のハンドルだ。一色氏の説明のとおり、手前、上面、側面の外側から見える部分はほとんど凸凹がなくフラットで美しい。だが、開発現場ではこうした形状にすることには、反対意見も多かったのだという。

引き出した際にも凹凸がなく、フラットで美しいデザインが保たれている
引き出し部分のパネルは上からは見えないとはいえ、横から見た際にはでっぱりが目立つ部分でもある。複数の形状のサンプルが作成され、デザイン性を損ねない仕様が比較検討されたという

その他にも、トップテーブルとドアのすき間の段差をより目立たせないようにするために、トップテーブルが手前側に向かってなだらかな傾斜をつけるなどの、見えないところで細かな工夫が秘かに施されているのだと明かす。更に、GD14Cにはドアを開け閉めする際のハンドルの存在感を感じさせないデザインになっている。

引き出しドアのハンドルの裏側は、指を引っかかりやすくする操作性も確保しなければならないため、角の付け方や深さなどもさまざまなパターンが用意された
サイドから見た際もエッジが際立つデザインで、直線的かつ平面的にすることにより、周囲のインテリアとの調和が図られた

また、GD14Cにはドアを開け閉めする際のハンドルの存在感を感じさせないデザインになっている。

「強度の問題で、ドアフレームを薄くするというのは実はとても難しいことなんです。さらにこの製品では、ドアを左右どちら側からも開くことができる"つけかえどっちもドア"という構造を採用していて、この機構のために必要なヒンジ部分の強度を保ちながらも目立たなくして、デザイン性と両立させるのに大変苦労しました」と一色氏。

全体的に角の立ったシャープなフォルムのGD14Cだが、見た目に美しい反面、安全面との折り合いも工業デザインにおいては外せないポイントだ。

「全体的に小さなRサイズにすることでシャキッとした直線的な印象にしながら、安全面のポイントになる角にのみ必要なRを確保することでスクエアなデザインを実現しました。GD14Cのアクセントにもなっている引き出しドアハンドルの左右の角の部分は、ガラスドア面と飛び出し量のバランスと安全面の印象も配慮しながら最もなじみのいいRサイズにしました」と話す。

小型冷蔵庫のデザイン上で大型冷蔵庫とのもう1つ大きな違いは、「天面が見えていること」と一色氏。「トップテーブル(天板)とドアの上面、トップテーブルとドアの隙間というのは、大型モデルでは見えない部分であるのに対して、小型冷蔵庫では一番目につく箇所でもあるんです。それゆえ、正面、天面のつながりの見え方や構成もデザインする上での大きなポイントになるんです」

SJ-GD14Cの高さは112.5センチ。天面が人の目に触れる高さなので、「上から見た際の美しさには特にこだわる必要があった」と一色氏。ドア上部のフレームの薄さは上から見るとよくわかる
従来の小型モデルの冷蔵庫。機能性を重視したデザインとなっていた

GD14Cでは、外観だけでなく、庫内のデザインにもこだわりが取り入れられているのも従来の冷蔵庫にはなかったユニークなポイントだ。扉を開いた正面にはグレーの背面パネルを設けることで奥行感を演出し、シルバーをアクセントにしたガラス棚や透明の樹脂ケースを用いるなど、明るくて上質な印象の庫内は白い樹脂素材一色の無機質なこれまでの小型冷蔵庫とはひと味違う。一色氏によるとこれには次のような思いが込められているという。

外観だけでなく、庫内のデザインもこだわったというSJ-GD14C。大型モデル同様のガラス棚やクリアケースなどが採用されている。「扉を開けた際にも食材が美味しく見えるように」(一色氏)とのこと。ちょっとしたことだが、確かにちょっとテンションが上がる

「食材を取り出す時に食材が素敵にディスプレーされていることでおいしそうに見え、うれしくなり、幸せな気分を感じるような庫内にしたいと思い、デザインしました」

住まいにフィットする中型機「GW35C」

定格内容積350Lの中型サイズの冷凍冷蔵庫の新商品である「SJ-GW35C」。ガラスモデルにしたことでインテリア性も意識され、よりスッキリとしたデザインになっている

一方、中型モデルであるGW35Cでデザインコンセプトとして掲げられたのは、"住まいにフィットする"。同製品は、大容量の冷凍庫を備える「メガフリーザー」シリーズでもあり、既に展開している大型モデルからも次のようなデザイン上のポイントを継承しているという。

「正面をスッキリと見せるために、上下の樹脂パーツを見せないようにしたり、ガラスの端面を見せないようにするなど、ガラスと樹脂フレームの基本的な構成を継承しています。カラーバリエーションに関しても、大型モデルで展開しているホワイト、メタリックブラウンの2色を継承しました」

しかしこれに対し、既存のモデルやGD14CとGW35Cが異なる点は、ハンドル部分だ。空間に溶け込ませるデザインという意味では、同色にしてスッキリまとめるという選択肢も考えられるところだが、本体のメインカラーとは異なる配色をあえて採用した理由を次のように語った。

"どっちもドア"と呼ばれる左右両開きのドアが特徴の1つだが、従来製品(右)と比べると、ハンドル部分のエッジが際立ちよりフラットでスッキリとした印象になった

「単調にならないようにするためのデザインアクセントとしました。シンプルな中にも、全体を引き締めるポイントを作ることで、大きな冷蔵庫をインテリア空間に置いた際に、間延びしないようにしたデザインです。ガラスと金属感の質感、およびカラーの対比が美しく映える配色として各色を選びました」

カラー展開に関しては、両製品ともにホワイト系、ブラウン系を持ち、GD14Cのみブラック系を揃える。しかし、ブラウン系に関してはGW35Cがメタリックブラウン、GD14Cはメタリックベージュとトーンが違う2色となっている。ひとつに統一せずにサイズごとに微妙に色を変えた理由は「置かれる空間の質の違いや広さの違いから色を変えました」とのこと。

本体カラーは複数のサンプルを用いて色調や光沢、質感も比較検討されたとのこと。これはGD14開発で使われた物

「GW35Cは家のパブリックスペースであるダイニングキッチン、GD14CはプライベートスペースなどGW35Cよりも狭い空間への設置を想定し、圧迫感を感じないように明るめのカラーを採用しました」(一色氏)

SJ-GW35Cの内部。サイズがバラバラで整理しにくい調味料類を収納する、移動可能な"どこでもスパイスポケット"など、大型モデルで好評の機能を取り入れた

ライフスタイルの多様化により、近年、家庭内におけるパブリックスペース的存在となったキッチン。それに伴い、冷蔵庫も人の目に触れる表舞台へ置かれるようになってきた。しかし狭い場所や居住空間に置かれることを考えると、本来は小型・中型冷蔵庫こそよりデザイン性が重要視されるべきであったことを改めて実感する、今回のシャープの新製品の登場と開発秘話ではないだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。