歯磨きを「やりたい」行為に変換するガジェット - サンスター「G・U・M PLAY(ガムプレイ)」(前編)

モノのデザイン 第11回

歯磨きを「やりたい」行為に変換するガジェット - サンスター「G・U・M PLAY(ガムプレイ)」(前編)

2016.11.21

サンスターが今年4月に発売した「G・U・M PLAY(ガムプレイ)」。歯ブラシにBluetoothと加速度センサーを内蔵したシリコン製のアタッチメントを取り付けることでスマホと接続し、検知したデータをもとにアプリ上でブラッシングの採点やゲームなどが楽しめるというガジェットだ。

サンスター「G・U・M PLAY(ガムプレイ)」。アタッチメントを装着することでマニュアルの歯ブラシに通信機能と位置情報を検知する機能をアドオンすることを可能にした

古くから存在している身近でアナログな製品をIoT(モノのインターネット)化することにより新たな価値を付与した代表的な例として、「2016年度グッドデザイン賞」をはじめ、「コードアワード2016」のベスト・イノベーション賞などに選出されている。

そんな画期的な本製品が生み出されることになった経緯や狙いについて、商品開発担当者であるサンスターグループ オーラルケアカンパニー 日本ブロックマーケティング部の松富信治氏に話を聞いた。

オーラルケアの向上を「デジタル」で実現

「G・U・M PLAY」の開発には、消費者のオーラルケア全般の質の向上という目標が前提にあったという。1980年代から30年あまり続くオーラルケアブランドとして、歯周病ケアや正しいブラッシングの啓発活動と、ユーザーの新たなブランド体験の提供をデジタルテクノロジーで何かできないだろうかと考え、たどり着いたのが本製品とのことだ。

ガムプレイは、アタッチメントと歯ブラシをパッケージにして販売。子ども用と大人用があり、それぞれ対応する歯ブラシが異なる

松富氏によると、このプロジェクトが始まったのは2014年。クリエイティブ・ラボ「PARTY」と共同で、オーラルケアに対する意識が上がる新しい体験の提供を目指してアイデアを出し合った。

「歯科業界で推奨している歯磨きのブラッシング時間は3分以上ですが、実際に調査をしてみると、多くの人が3分以下であることがわかりました。正しいブラッシングの習慣化や、磨き残しというのが長年の課題。そのような課題に関して、デジタルを活用しながら、これをどうにかできないだろうかということでプロジェクトが立ち上がりました」(松富氏)

電動歯ブラシではなく、「手磨き+アタッチメント」にした理由

アタッチメントはシリコン製のカバーと通信・位置情報の検知機能を持つ本体で構成される。電力は中に格納されたボタン電池から共有する仕組みだ

時代のトレンドに合わせて、デジタル化を意識してプロジェクトがスタートしたというG・U・M PLAYだが、実際に商品化されたのはマニュアルの歯ブラシにアドオンするかたちのアタッチメントだ。その理由を松富氏は次のように明かした。

サンスターグループ オーラルケアカンパニー 日本ブロックマーケティング部の松富信治氏

「デジタル化するなら、はじめから電化されている電動歯ブラシのほうが簡単なのですが、市場全体で言うと85%が手磨き派なんです。電動歯ブラシはどうしても価格が高くなってしまいますし、広く普及することを考え、このようなかたちになりました」

また、歯ブラシは同社のものを使う想定だがあくまで推奨となっており、シリコン製の伸びる素材を使っているため、本体の穴よりも大きければどんなブラシでも使用できる。「消費者それぞれにお気に入りの歯ブラシがあると思いますので、広く使えるようなかたちを採用しました」と松富氏。消費者の利便を第一に考えた仕様を語った。

アタッチメントは歯ブラシの持ち手の下側を挿し込んで装着。カバーは伸縮性のあるシリコンのゴムでできているため、穴の大きさより大きければどんな歯ブラシにも取り付けられる。防水性能も備え、松富氏によれば「水深1メートルに沈めて、24時間経過しても浸水がないというレベルで評価しています。現在の形は、ほとんど完全防水に近い仕様ですね」という

さらに、ハードウェアとしてのアタッチメントの開発においては「常にデザインと機能性のせめぎ合いだった」と振り返る。

「G・U・M PLAYは、普通の歯ブラシで使えるようにシリコンゴムを採用しているのですが、高いレベルでの防水性をクリアするというのが大きな壁のひとつでした。本体をコンパクトにしながら水の浸入を抑え、歯ブラシが外れないようにするため、数十回やり直しをしました。なおかつG・U・M PLAYは歯ブラシ立てとしても使えるものなので、持ち手の長さやブラシの重さ、重量など異なるさまざまな歯ブラシで共通して使うことができる上、洗面所に置いたときに違和感のないデザインなど機能美をいかに追求するかで、ミリ単位でプロトタイプを多数つくって検討しました」

次回は、「G・U・M PLAY」のソフト面であるゲームなど、歯磨きを義務的な行為から楽しい遊びに変えるための試行錯誤について語っていただいた。こうご期待。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu