パナソニックのミャンマー事業展開、地道な活動がいよいよ結実か

パナソニックのミャンマー事業展開、地道な活動がいよいよ結実か

2018.08.24

一度は撤退したミャンマー市場でパナソニックが反転攻勢

過去の実績が功を奏しミャンマーでのパナの知名度は高い

将来、ベトナムと同等規模の売上になると強い期待を抱く

パナソニックが、ミャンマーでの事業拡大に力を注いでいる。2015年3月に、ヤンゴン市内にショールームをオープン。さらに、ミャンマー最大の量販店であるWai Yanや、ミャンマー第2の都市であるマンダレーを中心に積極的な販売活動をするMYO THEIN Electronics、スーパーマーケットのOceanを展開するシティマートといった販売店との連携を強化している。

パナソニックがヤンゴンに開設しているショールーム兼サービスセンター
ヤンゴンにあるパナソニックのショールームの様子

ヤンゴンのショールームは、2フロア構成となっており、1階にはテレビや冷蔵庫、洗濯機、調理家電などのBtoC商品を展示。修理を行うサービスセンターも設置している。また、2階には太陽光パネルや蓄電池、セキュリティソリューションなどのBtoB商品を展示。小売やホテル、オフィスなどのシーン展示を行っているのが特徴だ。そして、ショールームには、ミャンマー支店も併設している。

一方で、BtoBに関しても、ODAを活用した大型プロジェクトに連動した提案活動を加速させるという。パナソニック アジアパシフィック ミャンマー支店の前田恒和支店長は、「2035年には、ベトナムと同等規模となる売上高5億米ドル(約560億円)を目指す。それに向けて、いまはブランディングを強化していくフェーズにある」と話す。

2階にはミャンマー支店が入っている
セキュリティソリューションの展示コーナー
エアコンの修理などに出向く専用車
壊れた電子レンジを修理に持ち込む女性
パナソニック アジアパシフィック ミャンマー支店の前田恒和支店長

前田支店長は、「(ヤンゴンのショールームは)BtoCおよびBtoBの双方を展示するとともに、サービスセンターの役割を持ち、さらに支店機能も同じ場所にあるのが特徴。パナソニックのミャンマーにおけるビジネス拡大の重要な拠点になる」と語る。

パナソニックは2013年、ミャンマー市場に再参入し、今年で5年目の節目を迎える。前田支店長は、再参入時から参画していたメンバーだ。

「この5年でミャンマーの経済や生活は大きく変化した。5年前を知っていても役には立たないほど変化したが、5年間の変化を知っていることが、私自身の強みになる」と前田支店長は語る。市場変化が速いミャンマーにおいて、変化にあわせた手を打ち続けてきた。

「ミャンマー流のビジネスを徹底的に学び、パートナーとも緊密な関係を築いた結果、現在では、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジといった商品で、ナンバーワンの市場シェアを獲得している。また、直営のサービスセンターでは、48時間以内での修理比率が70%を超えている。代理店に運営委託しているサービスセンターでも、一定数量の修理用パーツを確保することを義務づけており、今後、48時間以内での対応率を高めていきたい」と話す。

ミャンマーでの売上高は非公表だが、セキュリティカメラやPBX、デジタルサイネージなどを中心としたBtoB事業の構成比は約2割。残りの8割が、エアコン、冷蔵庫、炊飯器、テレビといった家電を中心としたBtoC事業で占める。

パナソニックが高いシェアを持つエアコン
BtoBの展示コーナーでは小売りやホテルなどのシーン別展示を行っている 
洗濯機の需要も上向いているという
調理家電は必需品になってきている

なぜミャンマーでのパナの認知度は高いのか

ミャンマーにおけるパナソニックの認知度は、意外にも高い。

それは、パナソニックが過去に、いくつもの工場をミャンマー国内で稼働させていた経緯があるからだ。

「パナソニックは、1964年に、ラングーン(現在のヤンゴン)に、ラジオ工場を建設。その後、配線器具や照明、冷蔵庫、炊飯器などを国内で生産。最大時には5つの工場を稼働させていた。2007年に、旧松下電工の配線器具工場を閉鎖してから、ミャンマー国内にパナソニックの工場はなくなったが、長年にわたる工場の稼働によって、パナソニックのブランドは広く浸透している」(前田氏)

今回のミャンマー取材では、ヤンゴン市から、クルマと船を乗り継いで片道5時間の無電化村を訪れる機会を得たが、その村で暮らす16歳の男の子も、「電気が届いていない自分の家ではパナソニックの製品を使う機会はない。だが、日本のメーカーであり、品質がいいことは知っている」と語ったのには驚いた。

この村には、このほど、パナソニックが、同社の創業100周年記念事業のひとつとして、HIT太陽光電池パネルと蓄電システムを組み合わせた「パワーサプライステーション」1基と、太陽電池パネルとニッケル水素電池、直管形および電球形LEDランプで構成する「エネループソーラーストレージ」を100台寄贈。男の子は、「パナソニックが電気を持ってきてくれたことはうれしい。夜遅くまで集中して勉強ができる」と喜んでいた。

パナソニックが無電化村に寄贈した「パワーサプライステーション」
明かりの下で、勉強する無電化村の子供たち。パナソニックの名前は知っていた

すでに、1万5000台以上のソーラーランタンをミャンマー国内の無電化地域に寄付したり、タイ王国のMFL財団や三井物産のプロジェクトでも、無電化村にパワーサプライステーションを提供したりといったような動きがある。

こうした活動も、パナソニックのブランド認知が高い理由のひとつになっている。

エアコンシェアトップの中国企業に対し巻き返せるか

市場シェアという観点でみれば、普及に加速がつき始めたエアコンでは、中国のチゴが4割強のシェアを獲得しており、パナソニックと三菱電機が、15%以下のシェアで2位と3位を争っている。また、普及率が15%程度まで高まってきた冷蔵庫では、主力となる1ドア冷蔵庫でパナソニックが7割以上という圧倒的シェアを獲得し、冷蔵庫市場全体でも約25%のシェアを獲得しているという。また、電子レンジや洗濯機でもトップシェアを獲得。乾電池市場においても圧倒的シェアを獲得している状況にある。

「エアコンは生活必需品になりつつあるが、国内の普及率はまだ20%程度。巻き返せる余地はある。また、電子レンジではトップシェアを獲得しているが普及率はまだ低い。電子レンジをどうやって活用するのか、これによってどんな調理ができるのかといった啓蒙活動から始めていく必要がある」とする。

マンダレーに本拠を持ち、マンダレーおよびヤンゴンにそれぞれ2店舗ずつを展開する家電量販店のMYO THEIN Electronicsでも、啓蒙活動の必要性を訴える。

MYOは、マンダレーの電気街にある主力店舗の近くに、8階建てのビルを建設。1階~5階までを売り場として、2019年初めには、グランドオープンする予定だ。 

新店舗では、高価格帯の家電製品の展示を行う一方で、売り場を利用して、週に1回のペースで家電の使い方を教える場を用意。さらに、6~8階フロアには、事務所エリアのほか、社員向け研修センターを設置。来店客に対して、家電の使い方やメリットを説明できる店員を増やし、市場に向けた啓蒙活動を行う体制を作ることになる。

「新店舗は、プレミアム家電を中心にした展示を行う。販売の対象になるのは富裕層だが、まだ家電を買うことができない人にも数多く来店してもらい、家電とはどういうものかを知ってもらいたい。その点では、販売店というだけでなく、博物館といえるような役割があるともいえる。それによって家電による憧れの生活を想起してもらうことも大切な要素だと考えている」と、MYO THEIN Electronicsのミョウ・ティンCEOは語る。

MYO THEIN Electronicsのミョウ・ティン(MYO THEIN)氏
MYO THEIN Electronicsが来年初めにオープンする予定の新店舗。高級家電を販売するという

パナソニックの前田支店長も、「ミャンマーでは多くの店舗がダンボールの箱に入ったままで家電を販売しているが、見えたり、触ったりできる商品を買いたいという消費者が増えている。しっかりと説明できるスタッフを育成し、商品を見てもらいながら、機能や使い方を説明できる環境を増やすことで、家電の販売に弾みをつけることができるだろう」とする。

家電の普及に向けた啓蒙活動は、これからますます重視されそうだ。

パナソニックにとっては、VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)+タイが、ASEANおよびアジア、オセアニアにおける重点市場になっており、ここにミャンマーは含まれていない。

だが、前田支店長は「将来の成長性を捉えると、ミャンマーは、次代の重点市場になることは明らかで、パナソニックにとって、いまから力を入れるべき市場のひとつに位置づけられている」とする。

電化地域が遅れているのがどう影響するか

現在、ミャンマーにおける1人あたりのGDPは約1300米ドルであり、経済の中心であるヤンゴンだけでみても2000~2500米ドルという水準だ。だが、2023年~2024年にかけて、1人あたりのGDPは3000米ドルに到達するといわれており、これをきっかけに家電の普及率が高まるとみられる。

前田支店長は「ベトナムでは、1人あたりのGDPが3000米ドルに達した時点で、自動車が一気に普及し、家電ブームが訪れた。それと同じことが起こる可能性がある」と予測する。

だが、ベトナムとミャンマーとの違いは、電化地域の比率だ。

ミャンマーは最も電化が遅れている国で、ヤンゴン管区でも、電気が通っているエリアは75%以下。ミャンマー全土ではわずか35%に留まる。

「家電ブームの到来には、どこまで電化地域が広がるかにかかっている」と前田支店長が語るのもうなずける。

パナソニックでは、2035年には、現在のベトナムと同等規模となる売上高5億米ドル(約560億円)を目指しており、そこにおいては、BtoCの成長が牽引役になるとみている。調査会社によると、2017年のミャンマーの家電市場全体で約1億4000万米ドルの市場規模である。パナソニックは、2035年度の目標とはいえ、それを大きく上回る目標を立てており、数値目標がいかに意欲的なものかがわかる。

パナソニックは、そうした高い成長を遂げると予測される市場において、代理店との連携を強化していく考えだ。

現在、家電製品を取り扱うルートは、一般家電店ルート、スーパーマーケットおよび量販店ルート、ショールームによる販売に分かれる。パナソニック製品の場合、一般家電店ルートが約65%を占め、スーパーマーケットおよび量販店ルートが約30%、ショールームが約5%という構成比だ。

だが、一般家電店ルートでは、ミャンマー支店を通さずに、タイや中国から輸入されたパナソニック製品の販売が主流になっており、正規ルートよりも安く販売されている。

タイや中国から輸入された製品については、国内における保証が受けられないこと、修理費用は正規品の2倍の設定となっているにも関わらず、製品価格の安さで選んでしまう購入者が多いのが実情だ。

前田支店長は、「サービスに価値を感じるユーザーが少しずつ増えているのは明らか。また、パナソニックと手を組んで、ビジネスを拡大したいという代理店が増えてきている。現在、約20社の代理店があるが、カテゴリーによってはまだ増やしていきたい。とくに、スーパーマーケットおよび量販店ルートとの連携を強化したいと考えており、3年後には、この販売比率を5割程度にまで引き上げたい」とする。

正規代理店を通した健全な販売ルートを目指す

ミャンマー最大手の量販店であるWai Yanを展開するTMWグループのカイン・テッ・ルイン(Khine Thit Lwin)エグゼクティブディレクターは、「パナソニックの強みは、テレビから洗濯機、冷蔵庫、小物家電まで、さらに、高価格から低価格まで幅広い製品ラインアップを揃えているのが特徴であり、加えて、認知度も高い。品質が高いというイメージも強く、多くの人が手に入れたいと考えている。家電の購入層が広がっていくのに伴い、パナソニックの家電を取り扱うことは重要な戦略になる」と語る。

TMWグループのカイン・テッ・ルイン(Khine Thit Lwin)エグゼクティブディレクター
WAI YANの店舗内の様子

ただ、その一方で、タイや中国から輸入される低価格のパナソニック製品を減らさなければ、正規販売店において、健全なビジネスが成り立たないとも指摘する。これはパナソニック製品だけに限定した話ではないが、今後、解決していくべき課題のひとつであるのは確かだ。

前田支店長は、これからのパナソニックが連携を強化する代理店の条件として、資金力があること、ミャンマー全土に商品を届けることができるディストリビューション力があること、付加価値を提供できるエンジニアリング力が持つことを挙げているが、「最近になって、経営トップが持つハングリー精神や、ミャンマーを発展させたいという強い意識も重視したいと考えるようになった」とも語る。

さらに、前田支店長は、ブランディングの強化にも取り組む姿勢をみせる。

「いまはブランディングを強化していくフェーズにある。2023年以降に訪れる家電ブームに向けて、販売網の整備と強化、そして、安心して利用できる家電製品として、国内におけるパナソニックの認知度を高めたい」とする。

ミャンマーにおいてパナソニックは、中長期的な視点で地盤を固めることが、今後の爆発的な成長につながるとみており、すでにそれに向けた準備を進めようとしている。まず注目なのは5年後の2023年、パナソニックはミャンマー家電ブームの中心にいるだろうか。

あらゆる面で様変わり!  新型「デリカ D:5」試乗で感じた格段の進歩

あらゆる面で様変わり! 新型「デリカ D:5」試乗で感じた格段の進歩

2019.03.26

三菱自動車の新型「デリカD:5」に試乗

顔つきの変化に目を奪われがちだが中身もすごかった

本質を追求する三菱自動車の着実な技術開発が奏功

三菱自動車工業が2019年2月に発売した新型「デリカD:5」は、印象をガラッと変えたフロントマスク(顔)に注目が集まりがちだが、注目すべきはその中身だ。三菱自動車らしく本質を追求した改良により、クルマの性能は先代に比べ格段に進歩している。その出来栄えを試乗で確かめてきた。

三菱自動車の新型「デリカD:5」

12回目の改良で大幅に進化した「デリカD:5」

三菱自動車工業の「デリカ」が誕生したのは1968年のこと。その車名は「デリバリーカー」に由来しており、目的地まで人や物を運ぶクルマとして当初は商用を主体としていたが、翌1969年には9人乗りの「デリカコーチ」という乗用の車種が登場した。そして一昨年、デリカは誕生から50周年を迎えた。

左が初代「デリカ」、右は改良前の「デリカD:5」

現在の「デリカD:5」はデリカの5代目ということで、この名が付いた。50年を超える歴史の中では、1982年の2代目で早くも4輪駆動車を設定し、ディーゼルエンジンを搭載した。この2つは、今日もD:5を特徴づける要素となっている。

3代目までは「キャブオーバー」といって、エンジンを運転席下に搭載するワンボックス車の形態だったが、4代目からは客室の前にエンジンを搭載するミニバンとなった。そしてデリカD:5は、2007年のモデルチェンジによって登場し、すでに12年の歳月を経ようとしている。この間、三菱自動車は11回も一部改良を実施していて、今回が12回目となる。歴代デリカは1つの車型を長く継承する傾向にあったが、ことに今回の改良では、大きな進化を遂げたと感じる。

2019年2月に発売となった最新のデリカD:5は、外観の輪郭は従来のままだが、ことに顔つきが大きく変わり、押し出しの強い造形となった。その効果は、例えば今回の試乗で、大型トラックがやや無理な車線変更をしようとした際、ミラーに映るデリカD:5の顔を認識し、一瞬、動きを躊躇した様子にも見てとれた。この造形は、三菱が2015年の「アウトランダー」以降、フロントの共通性として各車で採用している「ダイナミックシールド」の概念に基づいた変更である。

改良を経て大幅に変わった「デリカD:5」の顔つき

またフロントの造形は、主に市街地などでの利用が多い顧客向けに新しく車種設定した「アーバンギア」と、標準仕様といえる「D:5」とで異なる意匠を採用している。

こちらが「デリカD:5 URBAN GEAR(アーバンギア)」。「D:5」には4つ、「アーバンギア」には2つのグレードがあり、価格は384万2,640円~421万6,320円となっている

いずれにしても、この大胆な顔つきの変更が注目されがちだが、それ以上に今回の改良は、走行性能や上質さといった面での進化が大きく、格段の進歩と驚かされるほどであった。なかでも、ディーゼルターボエンジンの改良と、変速段数を6速から8速へと増やしたオートマチックトランスミッション(8速AT)の効果は絶大だ。

SUV顔負けの悪路走破性に上質な乗り心地をプラス

エンジンの基本は変わらないが、新たに「尿素SCR」と呼ばれる排ガス浄化装置が取り付けられ、その精度が高まった。走行のための燃料である軽油のほかに、排ガス浄化用の尿素水溶液を補給する手間は増えるが、いまやディーゼルの排ガス浄化は尿素SCRなしでは語れない時代となっている。

その上で、エンジン内部の摩擦損失を減らしたり、燃焼室の改良や新型燃料噴射装置を採用したりするなどの改良により、最大トルクを増大し、アイドリングストップ後の再始動性を改善している。

2.2Lコモンレール式DI-D(ダイレクト・インジェクション・ディーゼル)クリーンディーゼルターボエンジンを搭載

8速ATは発進で使う1速のギア比を大きくして力強さを上げ、それ以後のギア比は従来の6速に比べ小さくすることで、滑らかかつ燃費に効果的な変速を可能にしている。

車体は、もともとデリカD:5の特徴であった「リブボーンフレーム」と呼ばれる骨格構造に加え、車体前部の剛性を上げる改良が施された。4輪駆動による悪路走破で、SUVの「アウトランダー」や「パジェロ」などに引けを取らない性能を発揮するデリカD:5は、強靭な骨格構造により、大きな凹凸のこぶ路面で、前後のタイヤが対角線上で持ち上げられ、車体にねじれが加わった状態でも、後ろのスライドドアを開閉できる車体剛性を持つ。それが他では真似できない特徴の1つだった。そこに車体前部の剛性の強化が加わり、舗装路での走りの上質さが改善されたのである。

試乗をしてみると、それらの改善が、D:5の走りを格段に進歩させていた。

新型「デリカD:5」および「アーバンギア」のボディサイズは、全長4,800mm、全幅1,795mm、全高1,875mm、ホイールベース2,850mm、最低地上高185mm。車両重量はグレードによって違うが1,930キロ~1,960キロだ

試乗で実感、性能は「様変わり」

ディーゼルターボエンジンは、始動後にディーゼルらしい音を発生させるが、軽やかに聞こえるので嫌な気分にならない。1,900キロを超える重い車体であるにもかかわらず、4輪駆動車であることから、発進時の動き出しは軽やかだ。その際もエンジンはうなることなく、ほぼアイドリング回転に近いところで走り出した。

エンジン内部の摩擦損失が軽減されたこと、同時にトルクが増大されたこと、さらには8速ATの1速ギア比が大きくなり、ギア比の力でエンジンを助ける効果などにより、このスムーズな発進が実現できたのであろう。

また今回、パワーステアリングが電動化されたので、発進してすぐに曲がる場面でも、クルマは軽やかに進路を変えた。

パワーステアリングは油圧式から電動に変わった

この走り出しの時点で、すでにデリカD:5の大きな進化を実感した。さらに、アクセルペダルを踏み込んで加速させていくと、わずかなペダルの踏み込みで速度を増していく。しかも、速度が上がるに従って、ディーゼル音は気にならなくなるほど静かになり、快適だった。8速ATの効果でエンジン回転を上げ過ぎないこともあるし、防音や吸音を増した車体の効果も静粛性に効いている。

高速道路に入っても、エンジンやトランスミッションの効果、また快適な室内の様子は変わらない。時速100キロで走行中のエンジン回転数は、アイドリングから少し上の毎分1,500回転ほどでしかない。従来のディーゼルエンジン車では、この速度で巡行するには騒音が大きく、音に疲れる印象があったが、様変わりである。

走り出しでも高速道路でも改良の効果が感じられた新型「デリカD:5」

乗り心地も、車体前部が強化されたことにより、路面の凹凸を乗り越えた際の衝撃が緩和され、改善されたことを実感した。走行感覚も乗り心地も、明らかに上質なミニバンとなった。この快適性であれば、D:5でもっと遠出をしたい気持ちにさせられるはずだ。

「様変わりした」というのが、まさしく適切な評価だろう。そこには、モデルチェンジによらず、実績を踏まえて一歩ずつ改良を加えていく三菱自動車のよさが現れている。

先進的だが着実、三菱自動車の技術開発

三菱自動車は2000年のリコール問題や2016年の燃費不正などを経験し、今日に至る。社内の隠蔽や規律違反などを抱えながら、一方で、技術開発においては先進的な取り組みを続けてきた側面がある。

1996年の直噴ガソリンエンジンの量産化や、同年の電子制御を活用した4輪駆動力制御などで、三菱自動車は先駆的な技術開発力を発揮してきた。同時に、1970年代からのラリー競技への出場や、1980年代からの「ダカールラリー」(パリダカ)出場などにより、悪路走破性のみならず、舗装路での俊足の走りを追求してきた歴史がある。

今日、三菱自動車は電動化とSUVに的を絞った商品展開で、存在感を発揮しようとしている。その両方の技術を合わせた象徴的な商品が「アウトランダーPHEV」だ。同車は世界で最も売れているプラグインハイブリッド車である。

電動化とSUVにフォーカスする三菱自動車の象徴的な商品が「アウトランダーPHEV」だ

三菱自動車が力を注いできた4輪駆動についてはデリカの歴史の中で触れたが、電動化に関しても同社は、1966年に電気自動車(EV)の開発を開始し、2009年には世界初の量産EV「i-MiEV」の市販にこぎつけるなど、先駆的な歩みを進めてきた。

いずれの技術も世界の主要自動車メーカーが開発に取り組んでいるものだが、それを量産化し、一般へ市販して世に問うことを、三菱自動車は長年にわたり粘り強く続けている。さらに、その技術を一時的な流行で終わらせることなく、磨き続けるのが同社の特徴にもなっている。それを可能としているのは、そもそも同社が、本質的な原理原則を追求した技術開発にこだわってきたからなのであろう。

世界初の量産EVとなった「i-MiEV」の現行モデル

デリカD:5においても、例えば「車体剛性」のような、一見しただけでは消費者には分かりづらい部分において、「リブボーンフレーム」という本質的な剛性構造を採用することで、ミニバンとしては悪路走破性で抜きん出た性能に仕上げている。そこが土台となり、乗り心地が格段に改善しているのだ。

技術革新といっても、目新しさをやみくもに追うのではなく、本質的な課題解決の道を探ることが、長年にわたり技術を進化させ、磨き続けることを可能にする。今度のデリカD:5においても、まさにそうした三菱自動車の開発姿勢が発揮されたと実感した。すでにD:5を所有している人でも、今回の改善には驚き、食指が動くことだろう。

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iPad、iMac、AirPods…アップルが3日連続で新製品

一見地味な製品アップデートだが、その狙いは?

メインストリーム需要の受け皿としては充実

3月18日からの3日間は、アップルの新製品ラッシュとなった。「iPad Air」と「iPad mini」の新型を皮切りに、19日には「iMac」、20日には「AirPods」を立て続けに発表し、世界的に話題を巻き起こした。

iPad製品群に「iPad Air」と「iPad mini」の新モデルを追加

個々の製品はいずれも既存モデルのアップデートにとどまっており、見た目の変化も少なく地味な印象だ。果たしてアップルの狙いはどこにあるのだろうか。

目立ったわりにアップデートは地味

今回アップルが発表した製品に共通しているのが、見た目に大きな変化はなく、中身のアップデートにとどまっている点だ。

新しいiPad AirとiPad miniは、いずれも既存モデルとサイズや画面の大きさがほとんど同じだ。最新世代のiPad Proはデザインを一新したのに対し、2つの新製品は既存モデルの金型や部品を流用しやすい構造となっている。

新型「iPad Air」の見た目はiPad Pro 10.5とほとんど同じだ

専用ペンの「Apple Pencil」も第1世代の対応にとどまっている。第2世代のペンは無線充電方式になっており、これに対応させるとなればiPadのフルモデルチェンジは避けられなかっただろう。

プロセッサーはiPhone XSやXR世代の「A12 Bionic」を搭載した。この点についても、スマホ需要が伸び悩む中、販売不振が指摘されるiPhone XRのプロセッサーを流用したのではないかと邪推したくなるところだ。

新しいiMacは最新の第9世代Coreプロセッサーを搭載したものの、基本デザインは従来モデルから変わっていない。AirPodsの再生時間は最大5時間のままだが、新チップの搭載で接続性が高まり、ワイヤレス充電のケースが加わった。

ディスプレイ一体型「iMac」の新モデル

 

新しい「AirPods」はワイヤレス充電対応モデルも

いずれも既存モデルの順当なアップデートだが、3日連続という異例の発表スタイルを採ることで、発表会の中に埋もれることなく注目を浴びることに成功したと言えるだろう。

新生活には朗報、ビジネス利用もお手軽に

新しいiPad AirとiPad miniに期待されるのが、ペン入力への対応や低価格化によるビジネス利用の拡大だ。

小型タブレットのiPad miniは、主にコンテンツの再生用途に使われてきた。だがスマホが大画面化する中で、再生用途だけでは買い換え需要が伸び悩んでおり、2015年のiPad mini 4を最後に製品投入が途絶えていた。

これに対して、第5世代となる新モデルは専用ペンの「Apple Pencil」に対応したことで、ビジネス利用の可能性が広がっている。メモ用途に最適なサイズとして、iPad miniの対応を待っていた人も多いのではないだろうか。

 

第5世代のiPad miniはペン入力に対応した

新iPad Airは、専用キーボードの「Smart Keyboard」に対応した最も安価なモデルになる。ペンとキーボードを合わせて購入しても10万円に収まるようになり、ビジネスパーソンや学生に訴求する価格帯に降りてきたといえる。

iPadのビジネス利用にあたっては、iOSの機能やアプリ対応の面で課題が多い。だが、低価格帯のiPadが登場したことは、春からの新生活に合わせてiPadの購入を検討していた人には朗報だろう。

2018年に登場した最新のiPad Proは、プロのクリエイター用途などハイエンド寄りになっていた。その中で登場した新しいiPad AirとiPad miniは、ビジネス用途をカバーするメインストリームの製品として売れ行きに注目したい。

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