パナソニックのミャンマー事業展開、地道な活動がいよいよ結実か

パナソニックのミャンマー事業展開、地道な活動がいよいよ結実か

2018.08.24

一度は撤退したミャンマー市場でパナソニックが反転攻勢

過去の実績が功を奏しミャンマーでのパナの知名度は高い

将来、ベトナムと同等規模の売上になると強い期待を抱く

パナソニックが、ミャンマーでの事業拡大に力を注いでいる。2015年3月に、ヤンゴン市内にショールームをオープン。さらに、ミャンマー最大の量販店であるWai Yanや、ミャンマー第2の都市であるマンダレーを中心に積極的な販売活動をするMYO THEIN Electronics、スーパーマーケットのOceanを展開するシティマートといった販売店との連携を強化している。

パナソニックがヤンゴンに開設しているショールーム兼サービスセンター
ヤンゴンにあるパナソニックのショールームの様子

ヤンゴンのショールームは、2フロア構成となっており、1階にはテレビや冷蔵庫、洗濯機、調理家電などのBtoC商品を展示。修理を行うサービスセンターも設置している。また、2階には太陽光パネルや蓄電池、セキュリティソリューションなどのBtoB商品を展示。小売やホテル、オフィスなどのシーン展示を行っているのが特徴だ。そして、ショールームには、ミャンマー支店も併設している。

一方で、BtoBに関しても、ODAを活用した大型プロジェクトに連動した提案活動を加速させるという。パナソニック アジアパシフィック ミャンマー支店の前田恒和支店長は、「2035年には、ベトナムと同等規模となる売上高5億米ドル(約560億円)を目指す。それに向けて、いまはブランディングを強化していくフェーズにある」と話す。

2階にはミャンマー支店が入っている
セキュリティソリューションの展示コーナー
エアコンの修理などに出向く専用車
壊れた電子レンジを修理に持ち込む女性
パナソニック アジアパシフィック ミャンマー支店の前田恒和支店長

前田支店長は、「(ヤンゴンのショールームは)BtoCおよびBtoBの双方を展示するとともに、サービスセンターの役割を持ち、さらに支店機能も同じ場所にあるのが特徴。パナソニックのミャンマーにおけるビジネス拡大の重要な拠点になる」と語る。

パナソニックは2013年、ミャンマー市場に再参入し、今年で5年目の節目を迎える。前田支店長は、再参入時から参画していたメンバーだ。

「この5年でミャンマーの経済や生活は大きく変化した。5年前を知っていても役には立たないほど変化したが、5年間の変化を知っていることが、私自身の強みになる」と前田支店長は語る。市場変化が速いミャンマーにおいて、変化にあわせた手を打ち続けてきた。

「ミャンマー流のビジネスを徹底的に学び、パートナーとも緊密な関係を築いた結果、現在では、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジといった商品で、ナンバーワンの市場シェアを獲得している。また、直営のサービスセンターでは、48時間以内での修理比率が70%を超えている。代理店に運営委託しているサービスセンターでも、一定数量の修理用パーツを確保することを義務づけており、今後、48時間以内での対応率を高めていきたい」と話す。

ミャンマーでの売上高は非公表だが、セキュリティカメラやPBX、デジタルサイネージなどを中心としたBtoB事業の構成比は約2割。残りの8割が、エアコン、冷蔵庫、炊飯器、テレビといった家電を中心としたBtoC事業で占める。

パナソニックが高いシェアを持つエアコン
BtoBの展示コーナーでは小売りやホテルなどのシーン別展示を行っている 
洗濯機の需要も上向いているという
調理家電は必需品になってきている

なぜミャンマーでのパナの認知度は高いのか

ミャンマーにおけるパナソニックの認知度は、意外にも高い。

それは、パナソニックが過去に、いくつもの工場をミャンマー国内で稼働させていた経緯があるからだ。

「パナソニックは、1964年に、ラングーン(現在のヤンゴン)に、ラジオ工場を建設。その後、配線器具や照明、冷蔵庫、炊飯器などを国内で生産。最大時には5つの工場を稼働させていた。2007年に、旧松下電工の配線器具工場を閉鎖してから、ミャンマー国内にパナソニックの工場はなくなったが、長年にわたる工場の稼働によって、パナソニックのブランドは広く浸透している」(前田氏)

今回のミャンマー取材では、ヤンゴン市から、クルマと船を乗り継いで片道5時間の無電化村を訪れる機会を得たが、その村で暮らす16歳の男の子も、「電気が届いていない自分の家ではパナソニックの製品を使う機会はない。だが、日本のメーカーであり、品質がいいことは知っている」と語ったのには驚いた。

この村には、このほど、パナソニックが、同社の創業100周年記念事業のひとつとして、HIT太陽光電池パネルと蓄電システムを組み合わせた「パワーサプライステーション」1基と、太陽電池パネルとニッケル水素電池、直管形および電球形LEDランプで構成する「エネループソーラーストレージ」を100台寄贈。男の子は、「パナソニックが電気を持ってきてくれたことはうれしい。夜遅くまで集中して勉強ができる」と喜んでいた。

パナソニックが無電化村に寄贈した「パワーサプライステーション」
明かりの下で、勉強する無電化村の子供たち。パナソニックの名前は知っていた

すでに、1万5000台以上のソーラーランタンをミャンマー国内の無電化地域に寄付したり、タイ王国のMFL財団や三井物産のプロジェクトでも、無電化村にパワーサプライステーションを提供したりといったような動きがある。

こうした活動も、パナソニックのブランド認知が高い理由のひとつになっている。

エアコンシェアトップの中国企業に対し巻き返せるか

市場シェアという観点でみれば、普及に加速がつき始めたエアコンでは、中国のチゴが4割強のシェアを獲得しており、パナソニックと三菱電機が、15%以下のシェアで2位と3位を争っている。また、普及率が15%程度まで高まってきた冷蔵庫では、主力となる1ドア冷蔵庫でパナソニックが7割以上という圧倒的シェアを獲得し、冷蔵庫市場全体でも約25%のシェアを獲得しているという。また、電子レンジや洗濯機でもトップシェアを獲得。乾電池市場においても圧倒的シェアを獲得している状況にある。

「エアコンは生活必需品になりつつあるが、国内の普及率はまだ20%程度。巻き返せる余地はある。また、電子レンジではトップシェアを獲得しているが普及率はまだ低い。電子レンジをどうやって活用するのか、これによってどんな調理ができるのかといった啓蒙活動から始めていく必要がある」とする。

マンダレーに本拠を持ち、マンダレーおよびヤンゴンにそれぞれ2店舗ずつを展開する家電量販店のMYO THEIN Electronicsでも、啓蒙活動の必要性を訴える。

MYOは、マンダレーの電気街にある主力店舗の近くに、8階建てのビルを建設。1階~5階までを売り場として、2019年初めには、グランドオープンする予定だ。 

新店舗では、高価格帯の家電製品の展示を行う一方で、売り場を利用して、週に1回のペースで家電の使い方を教える場を用意。さらに、6~8階フロアには、事務所エリアのほか、社員向け研修センターを設置。来店客に対して、家電の使い方やメリットを説明できる店員を増やし、市場に向けた啓蒙活動を行う体制を作ることになる。

「新店舗は、プレミアム家電を中心にした展示を行う。販売の対象になるのは富裕層だが、まだ家電を買うことができない人にも数多く来店してもらい、家電とはどういうものかを知ってもらいたい。その点では、販売店というだけでなく、博物館といえるような役割があるともいえる。それによって家電による憧れの生活を想起してもらうことも大切な要素だと考えている」と、MYO THEIN Electronicsのミョウ・ティンCEOは語る。

MYO THEIN Electronicsのミョウ・ティン(MYO THEIN)氏
MYO THEIN Electronicsが来年初めにオープンする予定の新店舗。高級家電を販売するという

パナソニックの前田支店長も、「ミャンマーでは多くの店舗がダンボールの箱に入ったままで家電を販売しているが、見えたり、触ったりできる商品を買いたいという消費者が増えている。しっかりと説明できるスタッフを育成し、商品を見てもらいながら、機能や使い方を説明できる環境を増やすことで、家電の販売に弾みをつけることができるだろう」とする。

家電の普及に向けた啓蒙活動は、これからますます重視されそうだ。

パナソニックにとっては、VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)+タイが、ASEANおよびアジア、オセアニアにおける重点市場になっており、ここにミャンマーは含まれていない。

だが、前田支店長は「将来の成長性を捉えると、ミャンマーは、次代の重点市場になることは明らかで、パナソニックにとって、いまから力を入れるべき市場のひとつに位置づけられている」とする。

電化地域が遅れているのがどう影響するか

現在、ミャンマーにおける1人あたりのGDPは約1300米ドルであり、経済の中心であるヤンゴンだけでみても2000~2500米ドルという水準だ。だが、2023年~2024年にかけて、1人あたりのGDPは3000米ドルに到達するといわれており、これをきっかけに家電の普及率が高まるとみられる。

前田支店長は「ベトナムでは、1人あたりのGDPが3000米ドルに達した時点で、自動車が一気に普及し、家電ブームが訪れた。それと同じことが起こる可能性がある」と予測する。

だが、ベトナムとミャンマーとの違いは、電化地域の比率だ。

ミャンマーは最も電化が遅れている国で、ヤンゴン管区でも、電気が通っているエリアは75%以下。ミャンマー全土ではわずか35%に留まる。

「家電ブームの到来には、どこまで電化地域が広がるかにかかっている」と前田支店長が語るのもうなずける。

パナソニックでは、2035年には、現在のベトナムと同等規模となる売上高5億米ドル(約560億円)を目指しており、そこにおいては、BtoCの成長が牽引役になるとみている。調査会社によると、2017年のミャンマーの家電市場全体で約1億4000万米ドルの市場規模である。パナソニックは、2035年度の目標とはいえ、それを大きく上回る目標を立てており、数値目標がいかに意欲的なものかがわかる。

パナソニックは、そうした高い成長を遂げると予測される市場において、代理店との連携を強化していく考えだ。

現在、家電製品を取り扱うルートは、一般家電店ルート、スーパーマーケットおよび量販店ルート、ショールームによる販売に分かれる。パナソニック製品の場合、一般家電店ルートが約65%を占め、スーパーマーケットおよび量販店ルートが約30%、ショールームが約5%という構成比だ。

だが、一般家電店ルートでは、ミャンマー支店を通さずに、タイや中国から輸入されたパナソニック製品の販売が主流になっており、正規ルートよりも安く販売されている。

タイや中国から輸入された製品については、国内における保証が受けられないこと、修理費用は正規品の2倍の設定となっているにも関わらず、製品価格の安さで選んでしまう購入者が多いのが実情だ。

前田支店長は、「サービスに価値を感じるユーザーが少しずつ増えているのは明らか。また、パナソニックと手を組んで、ビジネスを拡大したいという代理店が増えてきている。現在、約20社の代理店があるが、カテゴリーによってはまだ増やしていきたい。とくに、スーパーマーケットおよび量販店ルートとの連携を強化したいと考えており、3年後には、この販売比率を5割程度にまで引き上げたい」とする。

正規代理店を通した健全な販売ルートを目指す

ミャンマー最大手の量販店であるWai Yanを展開するTMWグループのカイン・テッ・ルイン(Khine Thit Lwin)エグゼクティブディレクターは、「パナソニックの強みは、テレビから洗濯機、冷蔵庫、小物家電まで、さらに、高価格から低価格まで幅広い製品ラインアップを揃えているのが特徴であり、加えて、認知度も高い。品質が高いというイメージも強く、多くの人が手に入れたいと考えている。家電の購入層が広がっていくのに伴い、パナソニックの家電を取り扱うことは重要な戦略になる」と語る。

TMWグループのカイン・テッ・ルイン(Khine Thit Lwin)エグゼクティブディレクター
WAI YANの店舗内の様子

ただ、その一方で、タイや中国から輸入される低価格のパナソニック製品を減らさなければ、正規販売店において、健全なビジネスが成り立たないとも指摘する。これはパナソニック製品だけに限定した話ではないが、今後、解決していくべき課題のひとつであるのは確かだ。

前田支店長は、これからのパナソニックが連携を強化する代理店の条件として、資金力があること、ミャンマー全土に商品を届けることができるディストリビューション力があること、付加価値を提供できるエンジニアリング力が持つことを挙げているが、「最近になって、経営トップが持つハングリー精神や、ミャンマーを発展させたいという強い意識も重視したいと考えるようになった」とも語る。

さらに、前田支店長は、ブランディングの強化にも取り組む姿勢をみせる。

「いまはブランディングを強化していくフェーズにある。2023年以降に訪れる家電ブームに向けて、販売網の整備と強化、そして、安心して利用できる家電製品として、国内におけるパナソニックの認知度を高めたい」とする。

ミャンマーにおいてパナソニックは、中長期的な視点で地盤を固めることが、今後の爆発的な成長につながるとみており、すでにそれに向けた準備を進めようとしている。まず注目なのは5年後の2023年、パナソニックはミャンマー家電ブームの中心にいるだろうか。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

2018.11.14

VAIOが独自機構の新型モバイルPC「A12」を発表

パソコン事業の成長は数年続き、海外展開も拡充

パソコンのVAIOから、ITブランドのVAIOを目指す

VAIOが業績が好調だ。2017年度は売上、利益ともに2ケタ成長となる増収増益を達成した。PC事業が順調なことに加え、EMS事業も進展したことが奏功したという。11月22日にはオールラウンダーPCというコンセプトを打ち出した新型モバイルパソコン「VAIO A12」を発売する。国内PC事業は合従連衡や海外への売却が続くが、数少ない「純国産」のPCメーカーであるVAIOの今後の戦略とは。

VAIO A12

働き方改革を追い風に地固め、今後は拡大を目指す

VAIOは、ソニーから独立後、法人向けビジネスを中心に据えたことで、早くから黒字化を実現しており、今期も順調な決算となった。売上高は前年同期比10.8%増となる214億8,800万円、営業利益は同13.9%増となる6億4,800万円で、過去最高益を達成した。

PCの法人需要が旺盛で好調な決算となった

法人向けモバイルPCの伸びが前年比30%増と順調だった点が特徴で、その背景にあるのが昨今のトレンドとなっている「働き方改革」だ。テレワークやフリーアドレスなど、それまでの決まったデスクに座ってデスクトップPCを操作するという環境から、ノートPCを持ち歩いて仕事をするという環境に移っていくなかで、VAIOの製品構成がこれに上手くはまった。

VAIO株式会社 代表取締役 吉田秀俊氏

VAIOでは、2017年から11~15インチのモバイルPCでラインアップを構築しており、今年はその後継機種を投入していた。パフォーマンスに特化したVAIO True PerformanceやVAIO Premium Editionといったバリエーションモデルも提供してはいるが、一方でVAIO ZやVAIO Z Canvasといった過去のハイエンドモデルに相当する製品はなく、あくまで「メインターゲットは法人ユーザー」を想定していることが伺える。

同社の吉田秀俊代表取締役は、今後も数年はPC事業が伸長を続けると想定している。働き方改革の拡大を受けて法人需要がさらに伸びることに備え、ラインアップをさらに拡充することで売り上げを伸ばしたい考えだ。

構想3年、開発2年の「VAIO A12」

これを目指して今月発売する新ラインアップが、12.5インチサイズのデタッチャブルWindows PC「VAIO A12」だ。市場にある課題とその解決を徹底的に図ったという製品で、求められているPCはクラムシェルか2in1か、タブレットタイプかコンバーチブルかデタッチャブルか、そういったゼロからの検討を行った結果、「構想3年、開発2年」を費やして仕上げたモバイルPCだという。

VAIO A12は、既存のカテゴライズでは、タブレットとキーボードの着脱機構を備えたいわゆる2in1モバイルPCだ
「膝上で使える」問題の解決や、まともなキーボードの搭載など、クラムシェルPCの使い勝手を求めた

前提とした課題がすべて解決しない限り製品化を見送るという強い意識で開発されたのがA12であり、それには新たな技術的ブレークスルーが必要となった。それが「Stabilizer Flap」と呼ばれる新たなデタッチャブルの機構だ。

「Stabilizer Flap」と呼ばれる独特のデタッチャブル機構が最大の特徴

きっかけは書籍の背の動きだったそうだが、軽量なPCを実現しながら、クラムシェル型と同等の使い勝手を実現した。キーボード部にはVGAやLAN端子を含む多くの端子類を装備して、周辺機器との接続性を求める日本の法人ユーザーのニーズに対応させた。実際、すでにA12導入に向けて動いている法人の中には、「VGAがあるのが選択の決め手」というところもあるそうだ。

機能はとにかくニーズの実現を徹底し、端子が豊富という今では貴重な仕様。手持ちのモバイルバッテリで本体を充電できる5V充電機能もいざというときに役立つ

コンシューマ向けで考えると、端子を減らしてスッキリとしてさらに薄型化、軽量化、低価格化も期待したいところだが、豊富な端子に対する法人ニーズは根強く、その点はVAIOとして譲れない線ということだろう。ただ、薄型軽量であることにはこだわり、タブレットとしては重さ607グラムで薄さ7.4ミリ、キーボードユニットを装着しても重さは1,099グラムまで抑え込んだ。

ソニー時代から同社が得意とする高密度実装技術を活かし、薄型軽量化にもこだわった

海外市場に再挑戦、PCラインアップも早々に増やす

PC事業では、一度は撤退した海外市場に向けて再挑戦にも乗り出している。販売エリアを順次拡大しており、今年は12カ国まで拡大した。今後は北米、中国、欧州での展開を計画している。特に欧州へは「検討中というわけではなく、決めている。来年早々にも展開する」(吉田氏)という。

PC事業の勝算はあるのか。吉田氏は、会社としてのVAIOが240人体制になり、「(ソニー時代に比べ)限られたリソースの中でどう成長戦略を描けるか」が課題であったと振り返る。この1年は「足りているもの、足りていないものを見極める」ことに集中し、独立後1~3年という「短期決戦を乗り切った」と話す。

引き続き、「VAIOはPC事業だけで将来生き残れるのか、という(市場の)問いに答えなければならない」としており、その答えとしては、「ビジネスユーザーにPCは必要なので、PCが大きな核としてVAIOを支えるのは間違いない」とするが、それだけではPC事業としての生き残りには不十分というのが吉田氏の認識だ。

そのため、技術革新や世の中の進化に伴って、ユーザーの生産性をいかに高められるかという観点で新しいPCを打ち出し、生き残りを図っていく考え。その一つの回答が「VAIO A12」となるが、来年以降の新製品でもそうした点を踏まえた新製品を投入していく。「来年度はもう少し違った形で生産性を高める製品を提供していく」という意向を示しており、年明け早々には今までとは異なるタイプの製品を企図しているようだ。

現行のラインアップ。最上部にあるのがVAIO A12で、来年さらなる新ラインアップを展開する

PCはVAIOのコアだが、VAIOはPCブランド脱却目指す

吉田氏は「貪欲な姿をもちながら、VAIOのブランドを伸ばす」と話すが、ここで大きな戦略の柱となるのは、「PCブランド」としての「VAIO」ブランドからの脱却だという。PC事業は順調とは言え、ライバルも多い。MicrosoftのSurfaceだけでなく、レノボとその傘下のNEC、富士通、鴻海傘下のシャープ、東芝、そしてデル、HPといった米国勢もあり、働き方改革の影響で伸びた市場をどこまで獲得できるかは未知数だ。

吉田氏は「次世代ITブランドとしてのVAIOを目指す」としており、単にPC単体を売るのではなく、セキュリティやキッティングといった付加価値サービスも盛り込むことで、トータルソリューションとしてのPC事業を展開する。

これに、EMS事業でのシナジーも追加していきたい考えだ。あわせてPCの周辺機器などを扱うことで、PC事業の強化にも繋げていき、市場全体の活性化も狙える。ハード、ソフトの両面から事業領域を拡大していく。

PC事業は、周辺機器やセキュリティソリューションなどでさらなる拡大を目指す

EMSやパートナーの強化、IoTなどの新規事業など、ビジネス領域の拡大で企業としてのVAIO自体の強化を目指すが、今後も屋台骨となるPC事業で好調を維持できるか。ここまでの短期決戦を乗り切り、ここから一過性の盛り上がりではなく継続した強い事業構造への転換を図る、吉田氏が「フェーズ2」と呼ぶVAIOの新たな成長戦略がはじまったばかりだ。