高校選手権でeスポーツを文化に! ゲーム未経験社員が抱くアツい想い

高校選手権でeスポーツを文化に! ゲーム未経験社員が抱くアツい想い

2018.08.07

「全国高校eスポーツ選手権」を企画したのは、ゲーム未経験の女性だった

仲間と一緒に努力する経験をしてほしいという願いが込められている

新聞社がeスポーツに取り組む意味は、新たな文化として認めてもらうため

いーすぽーつ【eスポーツ】――。

「エレクトロニック・スポーツ」の略で、いわゆる“ゲーム”を競技化したもの。
<例文:2018年7月9日に、毎日新聞は高校生を対象にしたeスポーツ選手権を開催すると発表した>

EVO Japan 2018に足を運び、eスポーツの熱を肌で感じる

待ち合わせ場所に到着すると、2名の社員が出迎えてくれた。1人は取材を依頼した際、窓口を担当してくださった広報の方だ。もう1人の女性も広報のメンバーだろうか? などと考えているうちに、会議室に案内されて、名刺を交換する。受け取った名刺には「毎日新聞社 新規事業グループ eスポーツ担当 田邊真以子」と書かれており、思わず目を見張った。

「ゲームはほとんどやったことがありませんでしたが、いまはeスポーツがおもしろくてしかたないですね」

田邊氏は目を輝かせる。

毎日新聞が「全国高校eスポーツ選手権」を開催すると聞いて取材をお願いをした際、「大会概要についてはまだ発表できない部分が多いので、担当者のアツい想いをお話したい」という連絡がきた。そのときは「ははーん、これはきっと相当コアなゲーマーか、ヘビーな動画勢がeスポーツの大会を企画したに違いない」と踏んでいたのだが、大きく当てが外れたわけだ。

毎日新聞社 新規事業グループ eスポーツ担当の田邊真以子氏

「全国高校eスポーツ選手権」とは、毎日新聞とサードウェーブが主催する高校生を対象としたeスポーツ大会。2018年12月下旬にオンライン予選を開催し、2019年3月にオフラインの決勝を行う予定だ。

しかし、なぜ、ゲームほぼ未経験の女性が、eスポーツ選手権を担当しているのだろうか。

「きっかけはお正月、親族の集まりで、高校生のいとこにeスポーツのことを知っているか興味本位で聞いてみたところ、海外の状況や競技人口について力説されたことです。eスポーツが流行っているとは聞いていましたが、もしかすると私の思っている以上に大きな波が来ているのかもしれないと思うようになりました」

最近は、メディアでeスポーツ関連の話題を目にする機会が増えた。とはいえ、本当に盛り上がっているのか、半信半疑だった田邊氏。いとこの話を聞き、彼女の中で「eスポーツの活況ぶり」が真実味を帯び始めたのだ。

「ただ、それだけだと決め手に欠けるので、1月にあった格闘ゲームイベント『EVO Japan 2018』にボランティアとして参加することにしたのです」

行動力の化身……。正月に聞いたいとこの話からeスポーツの盛り上がりを察知し、1月にすぐ『EVO Japan 2018』に参加する。そのフットワークの軽さは、さすが新聞社といったところだろうか。

ラスベガスで開催される世界最大級の格闘ゲームイベント『EVO』。その日本版である『EVO Japan 2018』は、総来場者数が1万3000人以上、動画配信による視聴者数が世界で1000万を記録したという。選手の延べエントリー数は7119人。ここまで多くの選手が参加するイベントは、そこまで多くないのではないだろうか。

「実際に行ってみて驚いたのが、女性の割合が意外と多かったことです。2~3割は女性だったのではないでしょうか。自分ではゲームをしていなくてもファンとしてプロの応援に来ていたり、好きなゲームのプレイヤーたちの盛り上がりを観に来たりと、まさにスポーツと一緒だと感じました。ちなみにボランティアは100人くらいいたようです。日本だけでなく世界中から、会社を休んでまで参加している人がいたことにも驚かされましたね」

イベントの熱気を肌で感じた田邊氏。その興奮を社内にも広めようと、すぐに同僚をEVO Japanに連れていき、eスポーツを実際に見てもらったのだという。行動力の化身……。

「EVO Japanに行って、すでにeスポーツ界にはすばらしいファンがいて、コミュニティの人たちが育ててきた文化があることがわかりました。ただ、eスポーツと名の付いたオフラインの大会は、そこまで多くはありません。そこで、オフラインの大会をもっと増やしたいと思い、選手権開催に向けて取り組み始めました。『プレイヤーに受け入れてもらえるか』という不安はありますが、いただいたご意見などを参考に、トライアンドエラーを繰り返していければと思います。まだ構想段階ですが、将来的には大会を軸にほかの事業にも展開していきたいですね」

高校生にかけがえのない経験をしてほしい

EVO Japanのプレイヤーや来場者、ボランティアと直接触れ合い、心を打たれた田邊氏は、すぐ事業開始に向けて動き始めた。最近、プロリーグ開催のニュースを耳にすることは増えたが、高校生を対象にしたのはなぜだろうか。

「一般向けの大会はすでに数多く存在します。賞金を出してプロを育てていくよりも、未来ある高校生に、仲間と1つの目標に向かって努力する経験をしてほしいと考えたため、今回、高校生の大会を開催することに決めました。高校生が優勝するために練習して、仲間と一緒に協力し、戦略を立てて試合に臨む。そこにある喜びや涙は、観る人に絶対感動を与えてくれるはずです」

選手権開催が発表されたあとは「いままで部活に入ったことがなかったけれど、大会を機に部活を作って日本一を目指したい」などの声が寄せられた。

また、高校生だけでなく、教師からの声も届いた。たとえば、ある高校の先生からは、「メンバーを集めた生徒から部活を作りたいというリクエストを受けています。生徒の熱意には応えてあげたいのですが、部活を作るのは簡単ではありません。なので、できるだけ早く詳細を教えてほしい」という問い合わせもあったという。

たしかに、学校内の承認だけでなく、専用のパソコンを学校に導入する、インターネットの回線を引くなど、高校でeスポーツ部を創るには多くの壁が立ちはだかる。教師や保護者の理解を得るのも、容易ではないだろう。

「子どもたちが一生懸命動いているのに、大人の事情をクリアできないのは本当に申し訳ないので、我々も全力で協力していきたいと思います」

田邊氏は力強く答えた。

新聞社が取り組むことでeスポーツを新しい“文化”へ

毎日新聞が「全国高校eスポーツ選手権」を開催する意味は、高校生にかけがえのない経験を提供するだけに留まらない。田邊氏は、eスポーツ事業を新聞社が展開することの価値を次のように語る。

「まずはメディアとしてeスポーツの認知度アップに貢献したいです。まだまだゲームに対するネガティブなイメージやプロゲーマーに対する間違った理解があると思うので、それを払拭したいですね」

日本にはまだまだ「ゲーム=子どもの遊び」というイメージが強く、エンターテインメントとしての認知度はそこまで高くないのが実情だ。

「またもう1つ、新聞社が選手権をやることで、eスポーツが文化として認められることを目指します。いままで毎日新聞では、『選抜高等学校野球大会(通称、センバツ)』や囲碁の『本因坊戦』、将棋の『名人戦』などを開催し、応援してきました。eスポーツもそれらと同様に、“文化”として根付かせたいと考えています。そのためにも、すでにeスポーツ事業に乗り出している企業だけでなく、“興味はあるけどeスポーツにまだ参入していない”という企業を積極的に巻き込んでいきたいですね」

たしかに、「毎日新聞主催」というだけで、なにやら畏まったイベントのように感じる。新聞という伝統的なメディアがeスポーツに乗り出すことは、信頼感の醸成につながるのだろう。とはいえ、カタそうなイメージの強い新聞社がeスポーツ事業に乗り出すにあたって、社内の反対などはなかったのだろうか。

「社内の反対はほとんどありませんでした。ほかの部署の社員や、海外在住の記者からも『手伝いたい』と言ってもらえたくらいです」

毎日新聞の海外支局に常駐する記者もeスポーツに注目しており、選手権を開催するという情報はすぐに海外支局にも届いたという。

「協力をお願いする企業の方からも『うちならこういうことでお手伝いできますよ』とおっしゃっていただくことが多く、助けてもらってばかりですね」

開催前から多くの反響が届いている全国高校eスポーツ選手権。今回の目標はあるのだろうか。

「目標は参加100校です! 今回一緒に事業を行うサードウェーブさんが、100校にパソコンをレンタルする予定なので。ただし、たとえ何校だとしても、それは成功だといえるでしょう。高校生がチームを結成して出てくれること自体が、文化のスタートとして重要だと思っています。ゆくゆくは地方予選なども開催して、すでにある部活のように、保護者の方がわが子の活躍をその目で確かめられるようにしていきたいですね。そのためにも、まずは予想やイメージで判断せず、高校生の雄姿を目に焼き付けてください」

およそゲームとは無縁の人生を歩んできたであろう1人の女性は、EVO Japanに足を運び、すぐeスポーツに魅了された。このおもしろさをもっと多くの人に伝えたい――。ゲーム未経験者がここまでアツく語り、大会を開催するまでに至るほどの魅力がeスポーツにはあるのだ。

現在発表されているeスポーツ選手権の概要は、高校生が5人以上のチームを組んで『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』で戦うということのみ。ほかのゲームタイトルなどの詳細は8月下旬の公式HPで発表されるという。

百聞は一見に如かず。ぜひ高校生のアツい戦いを、そしてeスポーツが文化として踏み出す一歩目を、その目で確かめてほしい。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu