インクジェットプリンターの主戦場は大容量インクタンクモデルへ

インクジェットプリンターの主戦場は大容量インクタンクモデルへ

2018.08.06

エプソンのプリンター、大容量インクタンク機の累積販売台数が3,000万台を達成

今後も従来のインクカートリッジから大容量インクタンクモデルへの転換を加速

インクカートリッジで収益を得る構造にかげり? キヤノンにも変化が

セイコーエプソンの大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターの世界累積販売台数が3,000万台に達した。そして同社は、今後も大容量インクタンクモデルの販売をさらに加速させる姿勢をみせる。

2018年度には販売総数の55%が大容量インクタンク機

セイコーエプソンは、2018年度の基本戦略として、従来のインクカートリッジモデルから大容量インクタンクモデルへの転換をさらに加速させる計画を明らかにしており、2018年度の年間販売計画は、前年比20%増の950万台。これは、同社のインクジェットプリンター販売総数の約55%を占めることになる。

2017年度実績は、50%弱としていた構成比は、いよいよ2018年度には過半数を突破。名実ともに、大容量インクタンク搭載プリンターが、エプソンのインクジェットプリンター事業の主軸になるというわけだ。

エプソンのインクジェット事業、ついに大容量インクタンク機が主軸に

セイコーエプソン 取締役 執行役員 経営管理本部長の瀬木達明氏は、「欧米などの先進国においても、2018年度には2割弱を大容量インクタンク搭載プリンターモデルが占めることになる。日本でも、2018年度には2割弱にまで引き上げ、今後、当社インクジェットプリンターの主流に位置づけたい」とする。

セイコーエプソン 取締役 執行役員 経営管理本部長の瀬木達明氏

大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターは、2010年10月に、インドネシアで発売したのを皮切りに、2017年度には、販売エリアを約150の国と地域にまで拡大。低プリントコストに加えて、使い勝手を向上させた製品を投入するなど、ラインアップを強化。大容量インクタンク方式の先駆けともいえるエプソンが、この分野では、圧倒的な世界ナンバーワンシェアを獲得している。

日本でも大容量インクタンク搭載プリンターのラインアップを強化しており、最大の需要期となる昨年の年末商戦でも、テレビCMでの積極的な訴求と、量販店店頭での展示に力を注いでいた。昨年は、日本における大容量インクタンク搭載プリンターの攻勢はわずか数%であり、残りの90%以上を占めるインクカートリッジプリンタの訴求はほとんど行わないという異例のマーケティング手法を用いていた。同社のコメントなどを聞くと、今年も同様の手法が取られるのは明らかだ。

ビジネスモデルを変え、台数減も増収

セイコーエプソン 取締役 専務執行役員 プリンティングソリューションズ事業部の久保田孝一事業部長は、「大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターは、レーザープリンターやインクカートリッジ方式のプリンターと比較して、印刷コストやインク交換の手間がかからず、環境負荷も低いことから、お客様に安心して印刷していただける製品」とし、「エプソンはプリンターのビジネスモデルを変革し、世界中のお客様が豊かな創造性と高い生産性を発揮できる、快適な印刷環境を届けたい」とする。

先頃、セイコーエプソンが発表した2018年度第1四半期決算でも、大容量インクタンク搭載プリンターの好調ぶりが示された。

前述の瀬木氏は、「大容量インクタンク搭載プリンターは、2018年度第1四半期の結果を見ても、好調に推移している。年間950万台の目標に向けて、順調なスタートを切った」とし、「競合他社も、大容量インクタンク搭載プリンターを投入してきたが、エプソンは、40機種以上のラインアップを持っていること、高い耐久性を持つエプソン独自のマイクロピエゾの優位性もあり、製品競争力が高い。レーザープリンターからの置き換えも増えているが、インクジェット同士の戦いに持ち込んでも勝てる」と自信をみせる。

2018年度第1四半期のプリンター事業の実績

同社の第1四半期におけるプリンターの売上高は、前年同期比12億円増の1,163億円。この成長のベースになっているのは、やはり大容量インクタンク搭載プリンターだ。

「ビジネスモデルを変革させる戦略で販売した結果、大容量インクタンク搭載プリンターが、新興国、先進国ともに伸張し、大幅な増収になった」と説明する。

新興国での販売がさらに拡大していることに加えて、すでに、欧州、米国では、2割近い構成比にまで拡大しているという。「今年は先進国での展開を強化していく考えだが、当初の計画よりも進んでいる状況にある」とする。

大容量インクタンク搭載プリンターの好調ぶりは、インクカートリッジモデルでのビジネスにも変化を与えている。

瀬木氏は、「インクカートリッジモデルは、価格維持施策によって販売が減少している」と前置きしながらも、「今年度は、他社のキャンペーンに追随するといった過度なことは行わない」として、インクカートリッジモデルで他社が仕掛ける価格戦略には対抗しない姿勢をみせる。

これが、結果として、プリンター事業の収益性の改善につながっているのだ。

「過度な戦いは避け、価格維持施策を堅持したことで、販売台数は減少しているが、プリンター本体合計では増収になっている」という。

インクカートリッジで収益を得るビジネスモデルに変化

欧米では、現在も、競合他社のインクジェットプリンターのプロモーションが継続しているが、エプソンは、これに対しても過度な対応は行っていないという。

実は、プリンターの最大の商戦期が含まれる2017年度第3四半期(2017年10~12月)に、エプソンは、競合他社のキャンペーンに対抗する形で、価格対応を図った。だが、このときに、低価格でプリンタを購入したユーザーは、大量に印刷するという用途よりも、年賀状印刷などのスポット利用が多く、インクカートリッジの追加購入が少ない傾向があるという。

本体を低価格で販売して、インクカートリッジで収益を得るモデルが、インクカートリッジモデルの収益構造だが、過度な低価格キャンペーンを打っても、本体購入後にはインクカートリッジを購入せず、収益を得にくいユーザーばかりが増えても収益構造を悪化させるだけだ。

エプソンは、大容量インクタンク搭載モデルという新たなビジネスモデルを構築したことで、インクカートリッジモデルでは無理な仕掛けをせずに済むというわけだ。

「第1四半期には、インクカートリッジそのものの販売数量は、前年同期比7%減となっており、とくに西欧では想定以上に落ちている。インクカートリッジモデルで過度な戦いは避けて、無理な仕掛けをしないことと、その一方で、大容量インクタンク搭載プリンターの販売が増加していることが、インクカートリッジそのものの販売数量の減少に影響している」という。

インクカートリッジの販売が減少したため、インク全体では減収となっているが、インクの下振れを、大容量インクタンク搭載プリンターがカバーしている格好だ。

インクカートリッジの販売減を、大容量インクタンクでカバーする格好に

エプソンは第1四半期においては、前年同期に比べて広告宣伝費や販売促進費を増やしているが、これは大容量インクタンク搭載プリンターをはじめとする戦略製品のプロモーション強化のための費用である。

また、在庫の回転日数は、2018年3月には74日間だったものを、2018年6月には83日間に増やしている。これも、大容量インクタンク搭載プリンターの在庫を増やしているのが要因だ。「部材確保が予想以上にスムーズであり、それが在庫の増加にもつながっているが、今後の大容量インクタンク搭載プリンターの販売拡大に向けて貯めているところである」と説明する。

今年の年末商戦、競合にも動きが

では、今年の日本の年末商戦では、どうなるのだろうか。

エプソンは、昨年同様、大容量インクタンク搭載プリンターの訴求を中心にする施策になりそうだ。年末年始に恒例となっているキャッシュバックキャンペーンにも、積極的には追随しない可能性も高い。

だが、対抗するキヤノンも、価格重視のキャンペーンや低価格モデルの販売には慎重な姿勢を、いまからみせている。

キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)が発表した2018年度上期(2018年1~6月)連結業績の会見のなかで、同社の松阪喜幸 取締役 専務執行役員は、「キヤノンは、大容量インクタンク搭載プリンターやビジネスインクジェットプリンターでは出遅れている」と前置きしながら、「ホームプリンターでは、年賀状での利用を含めて、ドキュメントボリュームが減っている。やみくもに台数シェアを追うのではなく、高付加価値モデルへのシフト、大容量インクタンクモデルへのシフトを行っていく」とする。

こうしたコメントを聞く限り、例年通り、各社のキャンペーンが実施されたとしても、その内容は少し変化しそうだ。

そして、今年の年末商戦においては、大容量インクタンク搭載プリンターで先行するセイコーエプソンの手の打ち方が、市場動向に大きな影響を与えることになりそうだ。

果たして、セイコーエプソンは、今年の年末商戦に、どんな手を打ってくるのだろうか。大容量インクタンク搭載プリンターを前面に打ち出したエプソンの戦略が、市場競争にどんな影響を与えるかが注目される。
 

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

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2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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