隈研吾と新国立競技場を歩く - Airbnbならではの「体験」イベントに潜入

隈研吾と新国立競技場を歩く - Airbnbならではの「体験」イベントに潜入

2018.08.06

Airbnbが隈研吾氏と少人数のゲストによる特別ツアーを実施

隈研吾氏が自ら、事務所や新国立競技場などを案内

Airbnbは「体験」サービスの提供範囲を全国へ拡大

着物の着付け、寿司づくり体験、築地市場で食べ歩き、京町家で茶道を学ぶーー。これらは、Airbnbで人気を集めている「体験」サービスの一部だ。

7月31日、その「体験」サービスの一環として、建築家の隈研吾氏がホストとなり、同氏が設計を手掛ける新国立競技場、南青山のサニーヒルズ(微熱山丘)、さらには非公開の事務所内までをも”本人の解説付き”で見学できる、1日限りの特別ツアーが開催された。

隈 研吾氏。1954年、横浜市生まれ。1979年、東京大学工学部建築学科大学院修了。米コロンビア大学客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所を主宰。2009年より、東京大学教授。1997年「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞受賞。同年「水/ガラス」でアメリカ建築家協会ベネディクタス賞受賞。2010年「根津美術館」で毎日芸術賞受賞。2011年「梼原・木橋ミュージアム」で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。著書に『負ける建築』『つなぐ建築』、清野由美との共著に『新・都市論TOKYO』『新・ムラ論TOKYO』など

そもそもAirbnbの「体験」サービスは2016年11月にスタートしたもので、すでに日本の関東、関西、福岡、沖縄を含む世界800以上の都市で1万4000種類もの体験を提供している。特に、日本における体験イベントのゲスト数は多く、世界的にもトップクラスでの人気を誇るという。

隈氏は5人のゲストを事務所に招き入れ、簡単に自己紹介をしたのちに、新国立競技場についての説明を始めた。

建築家を目指すキッカケとなった、国立代々木競技場

「小学生のころ、丹下健三さんが設計した国立代々木競技場を見て感銘を受け、衝撃を受けた。そこから私は建築家を志すようになり、今回、新国立競技場の設計を手掛けることになったことは大変感慨深い」と隈氏は語る。

隈研吾建築都市設計事務所内で、隈氏自ら、国立代々木競技場から得たインスピレーション、新国立競技場に使われている素材や制作プロセスを説明する

「国立代々木競技場のプールに入ったときに見た景色を今でも覚えている」「学生のころ、よく競技場に入っていたサウナで汗を流していた」とかつての競技場での思い出を語る隈氏。5人のゲストは、普段聞くことのできない話に真剣に耳を傾け、時には質問をし、非常に近い距離で同氏と会話を楽しんでいる様子が印象的であった。 

隈氏が新国立競技場への想いやデザインについて語ったのちに、事務所の見学を経て、一同は車で建設途中の新国立競技場へと移動。

建設途中の新国立競技場を前に、ゲストと談話する隈氏
建設途中の新国立競技場。隈氏は、レーザーポインターを使いながら、設計のポイントを説明した

拡大する「体験」サービス。隈氏とのコラボ企画も

Airbnbがこのようなイベントを行うのは、ローカルな体験を通して、その地の文化や魅力を多くの人に提供し、世界に発信するため。今回のイベントは1日限り、ゲストは5人という限られたものであったが、ほかにもさまざまな体験サービスがAirbnbサイト上で予約できる。

またイベント同日(7月31日)より、Airbnbはこれまで日本で、一部の地域(関東、関西、福岡、沖縄)でしか提供していなかった「体験」サービスを全地域に拡大することを発表。同時に、今回の特別ツアーに続く隈氏とのコラボレーション企画として、世界の建築関連の体験キュレーションページも公開した。日本では、同氏が高知県の梼原町で手掛けた建造物を巡る体験も公開された。

「音楽家による梼原町の隈研吾氏の建築物巡り」。隈研吾氏が手掛けた「雲の上のホテル」に集合した後、梼原町の中に点在する同氏の建築物を巡るという体験が出来る(画像は記事執筆時点のもの)。詳細はAirbnbのサイトより

(画像のサイトはこちらから)

新国立競技場の見学を終えると、ツアーの最終地点となる、隈氏が手掛けたサニーヒルズ(微熱山丘)南青山店へ。一同はお茶とケーキを味わいながら自由に会話を楽しんでいた。

サニーヒルズ南青山店は隈研吾氏によって手掛けられており、「地獄組み」と呼ばれる伝統的な組木格子を積み上げて作られている
建物内観。木の隙間から日の光が入り込み、ヒノキ独特の香りがする空間に、心が落ち着く

Airbnbで、その地ならではの「体験」を

体験終了後、Airbnbサイトを見ると「隈さんの普段のお仕事の様子や、新国立競技場にかける想いや、工夫されている点などのお話を聞くことができて、まさに唯一無二の体験でした」「新国立競技場の設計の根底にある隈さんのパーソナルな建築体験(代々木競技場)のお話が大変興味深かったです」などのコメントが記されており、それぞれが有意義な「体験」をした様子を見てとれた。

Airbnb=民泊の会社、というイメージは強いが、同社の事業は総じて「旅をもっと面白くする」ことに繋がっている。今回、「体験」の提供範囲が全国に拡大されたことによって、Airbnbサイト上でさまざまな旅行プランを考えられるようになった。

隈氏が自らの想いを語ったことによって、ゲストが新国立競技場やサニーヒルズを、より深く楽しめたように、一度見たことがあるものでも、ホストと話すことがキッカケとなって新たな視点が付与されることもあるだろう。今回のサービス範囲の拡大を機に、国内での旅行先を決める際には一度Airbnbで「体験」できるイベントを探してみるのもいいかもしれない。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。