民泊新法施行後、逆風の中で見えてきた「チャンス」とは

民泊新法施行後、逆風の中で見えてきた「チャンス」とは

2018.08.09

民泊新法施行後、メインプレイヤーは個人から法人へ

不動産会社、旅館・ホテルが民泊市場へ次々と参入

エボラブルアジアは民泊サポート事業の拠点を全国に広げていく考え

2018年6月15日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された。これを機に、民泊仲介大手Airbnbのサイトから多くの掲載物件が削除され、かつて約6万件あった掲載物件数は一時、約1万数千件にまで減少した。その後徐々に掲載件数を増やしつつあるが、手続きの煩雑が原因となり、既存の民泊ホストの撤退が相次いでいるのが現状だ。

Airbnbの公式パートナーであり、ワンストップでのホストの民泊代行サービス「エアトリステイ」を展開するエボラブルアジアは、民泊新法施行後の民泊業界の動向についてどう捉え、サービスを展開していく予定なのか。

エボラブルアジアが2018年2月に発表した「エアトリステイ」は、民泊を始めたい人・企業に、収益シミュレーションから行政登録を始めとした各種手続き、家具・家電の準備、さらには運営代行までを「ワンストップ」でサポートするサービス。ソフトバンクやビックカメラ、損保ジャパン日本興亜などの関連企業とともに、民泊運営で求められるすべてのサービスを提供できる体制を整えていることが特徴

個人事業者に大打撃。民泊新法が与えた影響

エボラブルアジアの吉村英毅 代表取締役社長は、「民泊新法は思っていた以上に厳しい内容だった」と語る。

エボラブルアジアの吉村英毅 代表取締役社長。東京大学 経済学部経営学科卒業。大学在学中にValcom(2009年10月旅キャピタルに吸収合併)を創業。2007年、旅キャピタルを共同創業し、エボラブルアジア代表取締役社長に就任。2018年、エアトリ(旧:DeNAトラベル)代表取締役社長に就任

ホストが新法に則って民泊サービスを提供するためには、難解な手続きに加え、自治体ごとの独自ルールや高い防災基準に対応する必要がある。加えて「営業日数は180日まで」という制限もあるために、収益化が難しい。特にこれまで個人で民泊を運営していた事業者は、そのほとんどが撤退を余儀なくされているという。

不動産会社にとって「今がチャンス」なワケ

その一方で光明もある。「個人でホストをする方が減少したのとは反対に、不動産会社 や旅館・ホテル業者で新たに民泊に参入を検討するケースが増えている」と吉村氏。民泊新法によって民泊市場に新たな秩序が生まれたことによって、これまで参入を見送っていた事業者からの引き合いが増えているのだという。

例えば、空き部屋を持つ不動産会社 は、借り手が見つかるまでの期間に部屋をAirbnbに掲載することによって収益を生み出すことが出来る。旅館・ホテルにおいても、じゃらんなどのOTA(Online Travel Agent )に掲載するのと同時にAirbnbに掲載することによって、宿泊客の目に止まる機会が増えるというメリットがある。

「日本の民泊市場は、需要が急増している一方で供給が不足している状況にあります。日本政府観光局(JNTO)によると、2017年の訪日外国人の数は、前年比19.3% 増の2869万人で過去最高を更新しました。またそのうちの580万人がAirbnbを利用しており、訪日外国人の数、Airbnbの利用率ともに増加している状況にあります。

また国が『2020年、4000万人の訪日外国客を呼び込む』ことを目標としていることからも、民泊の需要が増えていくことは間違いないでしょう。6月を機にAirbnbへの掲載物件数が減少してしまいましたが、これは見方を変えれば『チャンス』だと言えます。現在Airbnbに新たに物件 を掲載すれば、稼働率は確実に上がることとなりますので」(吉村氏)。

現在の民泊市場を「チャンス」と捉える吉村氏

需給のバランスが崩れている今、新たに不動産会社、旅館・ホテルといったプレイヤーの民泊参入は大きなチャンスであるというわけだ。

「簡易宿所」と「国家戦略特区」での民泊が増加

では、これらの事業者が新規参入するためのハードルをどう乗り越えていくのか? というと、民泊新法の施行から間もない現段階においては、ハードルを”避けて通る”という表現が近い。

「今回民泊法は変わりましたが、Airbnbで宿泊所を提供するためには民泊新法のほかに、旅館業法の『簡易宿所営業』の認可を受けるという方法もあります。この方法では『貸し出し日数は180日まで』という制限に囚われることがないため、簡易宿所として認可を取る企業が多いです。

また自治体の問題に関しては、『国家戦略特区』である大阪府の一部や東京都・大田区などの地域をターゲットとすることによって、こちらも営業日数の制限を避けることが出来ます」(吉村氏)。

現に、マンスリーマンションでの貸し出しを開始する、もしくは戦略特区に新たに物件を建築するといった予定の事業者も出てきているそうだ。ではこのような市場の動向を踏まえてエボラブルアジアは、Airbnb向けのワンストップサービスをどのように展開していく予定であるのか。

メインターゲットは法人事業者。全国展開も視野

そもそもエボラブルアジアが民泊代行サービスを発表したのは2018年2月。同年1月の旅館業法改訂に伴う関係政令、同年3月の建築基準法案が改訂などが民泊への新規参入を後押しし、かつ6月15日の新法施行を控え、民泊市場が順調に拡大している最中のことであった。

その後、Airbnbサイトへの掲載物件数が急激に減少してしまったことから、同サービスは二の足を踏んでいることかと思ったが、同社ではこの状況を前向きに捉えている模様。エアトリステイの西島博文 取締役は今後の展望に関して「法人事業者へ積極的にエアトリステイのセールス展開をしていく」と語る。

西嶋博文氏(エボラブルアジア グローバル展開事業部 民泊事業担当グループ グループ長・兼 エアトリステイ 取締役)

なお同時並行で個人事業者の代行サービスも行っていくが、メインのアプローチ先は法人事業者になるとのこと。

Airbnbに特化した民泊代行サービスを提供する企業は各社あるが、その中でAirbnbの公式パートナーとされているのはエアトリステイのみとなる。そのエアトリステイが法人事業者へのアプローチを増やしていくとなると、民泊市場におけるプレイヤー層が今後変化していくことが予測される。

同社では現在民泊におけるVR内見や、コンビニでの鍵の受け渡しなどといったサービスも各社と連携して提供しており、徐々にゲスト・ホスト側の負担軽減を図っている。このコンソーシアム型の枠組みが、大手企業の民泊市場への参入の一助となっていることは確かだろう。

さらに西島氏は「現在、インバウンド主要6都市(東京・大阪・京都・那覇・福岡・札幌)を拠点として展開しているサービスを、今後は全国に広げていきたいと考えています」と続ける。

民泊に関する法律が整備され、大手企業各社によるサポート体制が整ってきたことで、高まるインバウド需要に対応するための仕組みができてきた。日本を「観光大国」にするための重要な要素である民泊が、今後どのように普及していくのか。まだまだ様子を見る必要がありそうだ。

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

2018.10.23

フィリップ モリスが加熱式たばこの新型「IQOS 3」2機種を発表

ライバルひしめく日本市場で世界初公開、ユーザーの声を活かし改良

本体を小型軽量化し充電時間も短縮、待望の連続吸いにも対応

フィリップ モリス ジャパンは、加熱式たばこ「アイコス」の新型モデルとして、「IQOS 3」と「IQOS 3 MULTI」の2機種を11月15日に発売すると発表した。従来型では1本吸う毎に充電を必要としていたが、新型では連続吸いに対応し、本体も小型軽量化した。商品力を強化した新型を、競争の激しい日本市場へ先行投入することで、シェア獲得を狙う。

新型は正統進化の「IQOS 3」と、一体型の「IQOS 3 MULTI」

新型は2機種で、現行の「IQOS 2.4 Plus」を置き換える「IQOS 3」(価格は10,980円)と、新たにオールイン型へ本体形状を変更し連続吸いに対応した「IQOS 3 MULTI」(価格は8,980円)。ともに11月15日から、全国のIQOSストアおよびIQOSオンラインストアで発売する。

「IQOS 3」は従来のIQOSを踏襲する機種で、たばこを吸うためのIQOSホルダーを、充電バッテリーのIQOSポケットチャージャーに収めて充電し、1本吸う毎に充電が必要。IQOS 2.4 Plusと比較して充電時間を40秒短縮したほか、本体を軽量化し、壊れにくいよう設計と素材も見直した。

「IQOS 3」は従来のIQOSの使い勝手を踏襲した改良版。チャージャーの蓋は横開きになった

「IQOS 3 MULTI」は、IQOSホルダーに充電バッテリーを内蔵したオールインワン型。こちらは1回の充電で加熱式たばこ10本分の連続吸いに対応する。本体はポケットに入るスリムなスティック形状で、重量も約50グラムと軽い。

「IQOS 3 MULTI」はデザイン一新のオールイン型。こちらは連続吸いもできる

シェア争いはさらに激しく、喫煙そのものへの風当たりも課題

日本の加熱たばこ市場においてフィリップモリスは、アイコスを他社に先駆けて全国販売したことで多くのユーザーを獲得していた。同社によれば日本のアイコス利用者は500万人を越えており、国内たばこ市場全体におけるシェアは2018年上半期で15.6%(出荷ベース)だったという。

日本市場では、JT(日本たばこ産業)の「プルームテック」や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」など、ライバル大手も相次いで製品を投入していることから、競争が年々激しくなっている。機能面では特に、1本吸う毎に充電が必要であったアイコスに対し、後発のライバルは連続吸いに対応していたことから、ユーザーの乗り換えも発生していたとみられる。

今後は、加熱式たばこの市場は拡大傾向にあるとはいえ、現在でも紙巻たばこに残り続けるユーザーに対する効果的な訴求や、喫煙そのものへの忌避感が高まる中で、その要因となっている健康面の懸念を払しょくできるかが、各社とも課題になってくるだろう。

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

阿久津良和のITビジネス超前線 第6回

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

2018.10.23

ポストビッグデータ時代に注目したい米Teradata社

Teradataの戦略やソリューションを紹介するイベントを取材

Teradata(テラデータ)という企業をご存じだろうか。1979年に米国で創業し、現在ではクラウドベースのデータおよびアナリティクス(分析)に特化したエンタープライズ企業である。

日本法人は日本テラデータとして活躍しているが、日本マイクロソフトなどグローバルIT企業と比較すると、日本での知名度はさほど高くはない。だが、Teradataが持つ潜在能力は実に高く、ポストビッグデータの時代を迎えた現在こそ注目すべき企業の1つに数えるべきだ。

今回は、米国日時の2018年10月14~18日にラスベガスで開催された「Teradata Analytics Universe 2018」を中心に、同社の戦略やソリューションをご報告したい。

データウェアハウスからデータインテリジェンスへ

イベント初日の基調講演では、50カ国3,000人以上が集まった会場の聴講者に対して、Teradataのビジョンが語られた。現在同社は1,200万ユーザーを抱えつつ、11兆のクエリを通じて840EB(エクサバイト)のデータが使われる状況下にある。そのようななか、講演ではTeradata COO, Oliver Ratzesberger氏が「パーベイシブデータインテリジェンスの新時代を切り開いていく」と述べた。

Teradata COO, Oliver Ratzesberger氏

抄訳すれば『意思決定者のために加工・分析したデータの普及』。これが新たなTeradataを象徴するキーワードだ。同社は従来のDWH(データウェアハウス)企業から、ユビキタスなデータインテリジェンスを届ける企業に生まれ変わるという。イベント開催直前に発表した新たなコーポレートロゴにも同様のメッセージが込められており、その意思は登壇時の発言「アナリティクスを買うのはやめよう」(Ratzesberger氏)にも通じる。

新たなTeradataロゴ

Ratzesberger氏の発言は過去の自社を含めた旧態依然としたアナリティクスツールを否定するものだった。その理由は、パーベイシブデータインテリジェンスを実現するソリューション「Teradata Vantage(以下、Vantage)」の存在が核にあるからだ。Vantageの導入事例として、オーストラリアのQantas Airways Limited(カンタス航空)が成し得た燃料消費率1.5%の改善や、米通信キャリアのVerizon Communications(ベライゾンコミュニケーションズ)の月間解約率を1.2%で抑制したことを紹介。また、米国の非営利民間医療保険の最大手であるKaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)は、Vantageを活用することで、年間に亡くなる12万5,000人の10%を救い、3,000億ドルの経費削減に成功したという。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏は「現在のビジネスで求められるのは、保有するデータを容易に取り出して活用できる仕組み」だと述べる。多くの企業は蓄積したデータを古いシステムで管理し、データアナリストはデータコネクターを通じて分析前の処理を行うだろう。TeradataはVantageについて、「常にすべてのデータを管理するため、分析プロセスや展開先、分析による洞察を容易に得られる」と説明する。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏

Teradata Vantageで何ができるのか

TeradataはVantageのメリットとして「好みの言語やツールが使用できる」「分析関数とエンジンを単一化」「複数のデータセットをサポート」の3要素を得られると語る。「皆さんに適切なツールを使って頂きたい。Vantageは『適切なツールを適切な仕事に使う』という概念が背景にあり、データの形状や分析内容に応じて言語やエンジン、4D Analyticsなどを用いて、広範なビジネス課題を解決できる」(Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏)という。具体的なSQLやPython、Rなどの開発言語、各種BIツールに加えて、SASやJupyter、RStudioといったプラットフォームで、JSONやBSON、AVRO、CSV、XMLといったデータを扱える。

Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏

また、すべてのデータをいつでも活用できるのがVantageが備える特徴の1つ。データをスピンアップし、必要な場面でダイナミックに分析できる場面が増えているが、従来のデータを読み込んで変換する過程はトラブルを引き起こす要因に数えられる。この課題に対してVantageはデータを1つのクエリで取得し、そのまま分析を実行するNative Object Storeの実現を2019年リリース予定の次期Vantageで容易にするという。データサイエンティストやビジネスアナリストはAmazon S3やAzure Blob上のデータをシームレスに処理できる。

Native Object Storeのイメージ図
Teradata President of Teradata Labs, Oliver Ratzesberger氏(左)とMicrosoft General Manager of Azure Media and Entertainment, Azure Storage and Azure Stack, Tad Brockway氏(右)による対談も行い、良好な関係性をアピールした

データ分析の前のデータ準備に課題、全自動化で解決へ

イベントではほかにも著名な登壇者により、企業のデジタル化に向けた施策など多くの話題が語られたが、最後はTeradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏の発言に注目したい。同士は長年スタンフォード大学に在籍していたが、Teradataに席を移した理由の1つとして、「顧客視点でエンタープライズの仕事に携わっている。技術や分析エンジンに取り組み、具体的なソリューションを実現できる」と述べた。

Teradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏

Becla氏は主に研究的視点から技術に携わっているが、「データラングリング(飼育)とスキーマ設計に7割の時間が費やされる」と、分析に至るまでのデータ準備に多様な課題があると指摘した。その上で「速さや最適性といった議論ではなく、すべてを自動化する」(Becla氏)のがVantageの意義であると語る。前述したTwogood氏が述べたようにNative Object Storeの実装は来年以降だが、「単なるビジョンではなく、研究所には試作機もある。1つのクエリにデータを割り当て、PB(ペタバイト)級のクエリを実行できる」(Becla氏)と多様な分析に集中できることを強調した。合わせて機械学習に用いるGPUのマルチスケジューリングについて、解決策を検討しているとして、現在取り組んでいる研究成果もいくつか披露した。

今後の機能については実装後に機会があれば紹介したいが、強いて昨今のバズワードを用いれば、現在は「ポストビッグデータ時代」に突入している。大量のデータを処理するビッグデータプラットフォームは普遍化し、利用する企業側はもちろん分析ソリューションの提供側でも、データの集積方法や更新の容易性、アクセスの最適化が課題として挙げられてきた。これらの諸条件を解決するには我々の意識変革も伴うが、基盤となるデータ・分析プラットフォームの躍進は、課題解決の大きな近道となり得るだろう。

阿久津良和(Cactus)