なぜ今、藻なのか? - ”タンパク質危機”の解決を目指す「タベルモ」の正体

なぜ今、藻なのか? - ”タンパク質危機”の解決を目指す「タベルモ」の正体

2018.08.01

将来の食糧危機を見越し、タンパク質含有量の高い「藻」に注目

独自技術によって”無味無臭”の藻を提供

三菱商事・産業革新機構からの出資を受け、大量生産へつなげる

2018年5月、”食べる藻”の開発を手掛けるバイオベンチャー企業のタベルモが、産業革新機構と三菱商事から、17億円の第三者割当増資を引き受けたという発表があった。一見地味にも思える”藻”のビジネスになぜ今、17億もの出資がなされたのだろうか。

タベルモを生んだ、10年黒字の研究所

今回紹介するタベルモは、バイオ技術の研究機関である「ちとせ研究所」のひとつのプロジェクトが母体となって、2014年に誕生した企業だ。現在は同社のメンバー8人に加えて、三菱商事や産業革新機構のメンバーなど、合計30人のチームで活動している。

ちとせ研究所の代表である藤田朋宏氏は、「我々が目指しているのは、1000年続く事業を創り上げることです。そのために、”論文を出して終わり”の研究ではなく、事業として収益を生み出すことを目指しています。実際にちとせ研究所はこれまで10年間にわたって黒字経営を実現しており、ここで生まれた技術をもとに新たな企業を立ち上げています。現在はちとせ研究所を中心に、全10社で "ちとせグループ" として活動している状況で、タベルモもその内の1社です」と語る。

ちとせ研究所やタベルモなど複数のバイオベンチャーからなる "ちとせグループ" でCEOを務める藤田朋宏氏

ちなみにちとせ研究所ではタベルモのほかに、藻類を用いてジェット燃料を開発するプロジェクトや、東南アジアの藻類資源を生かすプロジェクトなどに取り組んでいるとのことだ。では同研究所でなぜ今、藻を使ったビジネスに注目をしているのだろうか?

なぜ今、”藻”なのか?

ちとせグループの中原剣 取締役は、「藻類のもつ高い産業ポテンシャルが理由」と説明する。

ちとせグループ 中原剣 取締役(兼 最高光合成責任者)

藻は、人類の生活になじみの深い生物だ。地球誕生後、早期に誕生した藻は、現代においても少しジメジメした岩の表面や、古くなったコンクリブロックの上など、いたるところに生息している。しかし、その歴史の長さとは裏腹に、藻が「研究対象」となったのは比較的最近のことだと中原氏は語る。

「約100年前、顕微鏡で藻を観察できるようになり、そこから藻類が人類の研究対象となりました。そして藻はこれまで、1950年代の『第二次世界大戦』時に”食糧難を解決するための食材”として、次いで1970~1980年代の『オイルショック』時に”石油資源の代替源”として、研究が盛んに行われてきました。つまり藻は、人類が危機を迎える度に注目されてきたのです」(中原氏)。

そして3度目、2000年代より懸念されている「将来的な食糧難」「燃料価格の高騰」「二酸化炭素増加による気候変動」などといった複合的な問題が生じ、再び藻の研究が盛んに行われたのだという。

エネルギー機器や食糧危機などといった大きな問題が生じたとき、藻類の研究・ビジネスは注目を浴びてきた

「人類が藻類の本格的な研究を始めて、まだ50年ほどしか経っていません。しかし、光合成によって効率的に生産できる藻の産業ポテンシャルは高く、これからの人口増加や新興国の台頭を考えると、藻類研究の意義は今後、より増していくと考えています」(中原氏)。

そうした状況を受け、ちとせグループではさまざまな産業での活用が見込める藻に注目をし、研究開発を進めているとのこと。そしてタベルモは、今後訪れる「食糧難」を解決するために設立されるに至ったというわけだ。

人類を襲う”タンパク質危機”と、藻

タベルモの事業やビジョンはどのようなものなのだろうか?タベルモの佐々木俊弥 代表取締役は、「当社が目指しているのは、オイルメジャーや穀物メジャーのように、藻類の生産から販売に至るまでの流れを一貫して行うことによって、『タンパク質メジャー』な企業になることです」と語る。

タベルモの佐々木俊弥 代表取締役

世界の人口は増加の一途をたどり、2050年には今の人口が倍になるとまで言われている。科学の進歩によって食糧の生産効率が徐々に上がっているとはいえ、早ければ2025年~2025年には、タンパク質の需要と供給のバランスが取れなくなってしまうのだという。「いつかくる」と言われていた食糧危機が目前に迫りつつあり、本格的に解決すべき問題となっているわけだ。

タンパク質の需要と供給の予測。2025年~2030年にも、食糧生活の共生的な変化が始まると予測されている。この需要と供給のバランスが崩れ、”タンパク質危機(クライシス)”が起こることが懸念されている (C)ちとせ研究所

意外にも”無味無臭”なタベルモ

タベルモとは企業名でもあり、同社が開発・提供する商品の名前でもある。品種はスピルリナという名前で、タンパク質含有量が高く(乾燥重量ベースで60% ほど)、さらにビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含むことから、海外を中心に「スーパーフードの王様」として広く知られている。

このスピルリナを、生きたまま冷凍して提供するものがタベルモである。加熱をせずに提供が可能であることから、スピルリナ本来の栄養素を失うことなく、さらに”生臭さ”がないことも特徴として挙げられる。このタベルモはすでに公式サイトからの購入が可能で、筆者も実際に試食・試飲をさせてもらった。

タベルモは冷凍保存されているため、スピルリナ本来の栄養素を損なわないほか、独特の臭みがないまま食すことができる
冷凍パックのスピルリナ。1袋の内容量は50g
タベルモの水割り(左)とりんごジュース割り(右)

 まず、タベルモを溶かして水で割ったものを飲んでみると、青汁のような臭さはまったくなく、味も無いので”トロっとした水”という印象だった。一方のリンゴジュース割りは、そのドロっとした舌ざわりと本来のりんごジュースの味により”濃厚なリンゴジュース”を飲んだように感じた。

タベルモのアイス(ヨーグルト仕立て)
「少し溶けたタイミングが食べ頃」だそう

次にアイスを食べてみると、凍らせたヨーグルトに近い食感で”チーズケーキ”のような味がして美味しかった。タベルモの 水割り・リンゴジュース割り、アイスともに、想像していた”青汁のような臭さや味”などはまったくなかった。 

出資金17億円の使い先は?

なお、今回出資を受けた17億円の使い先については、東南アジア・ブルネイの新工場設立に活用する予定。ブルネイでの大量生産を始めたのちには、現状の日本・シンガポール以外にも、アメリカやヨーロッパ市場への拡大も視野に入れているという。

「これから私たちの提供するタベルモを、より生活に身近な存在にしていきたいと思っています。昔、日本に海外からパンの文化が入り込み、主食として受け入れられたように、タベルモも日常に当たり前にある食材にしていきたいですね」(佐々木氏)。

タンパク質クライシスによって、私達の食生活が大きく変化する未来が訪れたとしたら。藻はパンや牛乳のように、私達の日々の食事に当たり前の存在となっているのだろうか? もしそうなっていたら、田舎の一面の田園風景のように、農地ではなかった場所に、一面の緑色の藻の農場が拡がっているのかもしれない。

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

2018.10.23

フィリップ モリスが加熱式たばこの新型「IQOS 3」2機種を発表

ライバルひしめく日本市場で世界初公開、ユーザーの声を活かし改良

本体を小型軽量化し充電時間も短縮、待望の連続吸いにも対応

フィリップ モリス ジャパンは、加熱式たばこ「アイコス」の新型モデルとして、「IQOS 3」と「IQOS 3 MULTI」の2機種を11月15日に発売すると発表した。従来型では1本吸う毎に充電を必要としていたが、新型では連続吸いに対応し、本体も小型軽量化した。商品力を強化した新型を、競争の激しい日本市場へ先行投入することで、シェア獲得を狙う。

新型は正統進化の「IQOS 3」と、一体型の「IQOS 3 MULTI」

新型は2機種で、現行の「IQOS 2.4 Plus」を置き換える「IQOS 3」(価格は10,980円)と、新たにオールイン型へ本体形状を変更し連続吸いに対応した「IQOS 3 MULTI」(価格は8,980円)。ともに11月15日から、全国のIQOSストアおよびIQOSオンラインストアで発売する。

「IQOS 3」は従来のIQOSを踏襲する機種で、たばこを吸うためのIQOSホルダーを、充電バッテリーのIQOSポケットチャージャーに収めて充電し、1本吸う毎に充電が必要。IQOS 2.4 Plusと比較して充電時間を40秒短縮したほか、本体を軽量化し、壊れにくいよう設計と素材も見直した。

「IQOS 3」は従来のIQOSの使い勝手を踏襲した改良版。チャージャーの蓋は横開きになった

「IQOS 3 MULTI」は、IQOSホルダーに充電バッテリーを内蔵したオールインワン型。こちらは1回の充電で加熱式たばこ10本分の連続吸いに対応する。本体はポケットに入るスリムなスティック形状で、重量も約50グラムと軽い。

「IQOS 3 MULTI」はデザイン一新のオールイン型。こちらは連続吸いもできる

シェア争いはさらに激しく、喫煙そのものへの風当たりも課題

日本の加熱たばこ市場においてフィリップモリスは、アイコスを他社に先駆けて全国販売したことで多くのユーザーを獲得していた。同社によれば日本のアイコス利用者は500万人を越えており、国内たばこ市場全体におけるシェアは2018年上半期で15.6%(出荷ベース)だったという。

日本市場では、JT(日本たばこ産業)の「プルームテック」や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」など、ライバル大手も相次いで製品を投入していることから、競争が年々激しくなっている。機能面では特に、1本吸う毎に充電が必要であったアイコスに対し、後発のライバルは連続吸いに対応していたことから、ユーザーの乗り換えも発生していたとみられる。

今後は、加熱式たばこの市場は拡大傾向にあるとはいえ、現在でも紙巻たばこに残り続けるユーザーに対する効果的な訴求や、喫煙そのものへの忌避感が高まる中で、その要因となっている健康面の懸念を払しょくできるかが、各社とも課題になってくるだろう。

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

阿久津良和のITビジネス超前線 第6回

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

2018.10.23

ポストビッグデータ時代に注目したい米Teradata社

Teradataの戦略やソリューションを紹介するイベントを取材

Teradata(テラデータ)という企業をご存じだろうか。1979年に米国で創業し、現在ではクラウドベースのデータおよびアナリティクス(分析)に特化したエンタープライズ企業である。

日本法人は日本テラデータとして活躍しているが、日本マイクロソフトなどグローバルIT企業と比較すると、日本での知名度はさほど高くはない。だが、Teradataが持つ潜在能力は実に高く、ポストビッグデータの時代を迎えた現在こそ注目すべき企業の1つに数えるべきだ。

今回は、米国日時の2018年10月14~18日にラスベガスで開催された「Teradata Analytics Universe 2018」を中心に、同社の戦略やソリューションをご報告したい。

データウェアハウスからデータインテリジェンスへ

イベント初日の基調講演では、50カ国3,000人以上が集まった会場の聴講者に対して、Teradataのビジョンが語られた。現在同社は1,200万ユーザーを抱えつつ、11兆のクエリを通じて840EB(エクサバイト)のデータが使われる状況下にある。そのようななか、講演ではTeradata COO, Oliver Ratzesberger氏が「パーベイシブデータインテリジェンスの新時代を切り開いていく」と述べた。

Teradata COO, Oliver Ratzesberger氏

抄訳すれば『意思決定者のために加工・分析したデータの普及』。これが新たなTeradataを象徴するキーワードだ。同社は従来のDWH(データウェアハウス)企業から、ユビキタスなデータインテリジェンスを届ける企業に生まれ変わるという。イベント開催直前に発表した新たなコーポレートロゴにも同様のメッセージが込められており、その意思は登壇時の発言「アナリティクスを買うのはやめよう」(Ratzesberger氏)にも通じる。

新たなTeradataロゴ

Ratzesberger氏の発言は過去の自社を含めた旧態依然としたアナリティクスツールを否定するものだった。その理由は、パーベイシブデータインテリジェンスを実現するソリューション「Teradata Vantage(以下、Vantage)」の存在が核にあるからだ。Vantageの導入事例として、オーストラリアのQantas Airways Limited(カンタス航空)が成し得た燃料消費率1.5%の改善や、米通信キャリアのVerizon Communications(ベライゾンコミュニケーションズ)の月間解約率を1.2%で抑制したことを紹介。また、米国の非営利民間医療保険の最大手であるKaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)は、Vantageを活用することで、年間に亡くなる12万5,000人の10%を救い、3,000億ドルの経費削減に成功したという。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏は「現在のビジネスで求められるのは、保有するデータを容易に取り出して活用できる仕組み」だと述べる。多くの企業は蓄積したデータを古いシステムで管理し、データアナリストはデータコネクターを通じて分析前の処理を行うだろう。TeradataはVantageについて、「常にすべてのデータを管理するため、分析プロセスや展開先、分析による洞察を容易に得られる」と説明する。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏

Teradata Vantageで何ができるのか

TeradataはVantageのメリットとして「好みの言語やツールが使用できる」「分析関数とエンジンを単一化」「複数のデータセットをサポート」の3要素を得られると語る。「皆さんに適切なツールを使って頂きたい。Vantageは『適切なツールを適切な仕事に使う』という概念が背景にあり、データの形状や分析内容に応じて言語やエンジン、4D Analyticsなどを用いて、広範なビジネス課題を解決できる」(Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏)という。具体的なSQLやPython、Rなどの開発言語、各種BIツールに加えて、SASやJupyter、RStudioといったプラットフォームで、JSONやBSON、AVRO、CSV、XMLといったデータを扱える。

Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏

また、すべてのデータをいつでも活用できるのがVantageが備える特徴の1つ。データをスピンアップし、必要な場面でダイナミックに分析できる場面が増えているが、従来のデータを読み込んで変換する過程はトラブルを引き起こす要因に数えられる。この課題に対してVantageはデータを1つのクエリで取得し、そのまま分析を実行するNative Object Storeの実現を2019年リリース予定の次期Vantageで容易にするという。データサイエンティストやビジネスアナリストはAmazon S3やAzure Blob上のデータをシームレスに処理できる。

Native Object Storeのイメージ図
Teradata President of Teradata Labs, Oliver Ratzesberger氏(左)とMicrosoft General Manager of Azure Media and Entertainment, Azure Storage and Azure Stack, Tad Brockway氏(右)による対談も行い、良好な関係性をアピールした

データ分析の前のデータ準備に課題、全自動化で解決へ

イベントではほかにも著名な登壇者により、企業のデジタル化に向けた施策など多くの話題が語られたが、最後はTeradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏の発言に注目したい。同士は長年スタンフォード大学に在籍していたが、Teradataに席を移した理由の1つとして、「顧客視点でエンタープライズの仕事に携わっている。技術や分析エンジンに取り組み、具体的なソリューションを実現できる」と述べた。

Teradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏

Becla氏は主に研究的視点から技術に携わっているが、「データラングリング(飼育)とスキーマ設計に7割の時間が費やされる」と、分析に至るまでのデータ準備に多様な課題があると指摘した。その上で「速さや最適性といった議論ではなく、すべてを自動化する」(Becla氏)のがVantageの意義であると語る。前述したTwogood氏が述べたようにNative Object Storeの実装は来年以降だが、「単なるビジョンではなく、研究所には試作機もある。1つのクエリにデータを割り当て、PB(ペタバイト)級のクエリを実行できる」(Becla氏)と多様な分析に集中できることを強調した。合わせて機械学習に用いるGPUのマルチスケジューリングについて、解決策を検討しているとして、現在取り組んでいる研究成果もいくつか披露した。

今後の機能については実装後に機会があれば紹介したいが、強いて昨今のバズワードを用いれば、現在は「ポストビッグデータ時代」に突入している。大量のデータを処理するビッグデータプラットフォームは普遍化し、利用する企業側はもちろん分析ソリューションの提供側でも、データの集積方法や更新の容易性、アクセスの最適化が課題として挙げられてきた。これらの諸条件を解決するには我々の意識変革も伴うが、基盤となるデータ・分析プラットフォームの躍進は、課題解決の大きな近道となり得るだろう。

阿久津良和(Cactus)