ソフトバンクも参入!<br />駐車場シェアリングで何が変わるのか

ソフトバンクも参入!
駐車場シェアリングで何が変わるのか

2018.08.05

参入企業が増えてきた駐車場シェアリング

サイクルシェアとの連携がソフトバンクの特色

優位性はデータ活用にあり?

ソフトバンクが駐車場シェアリングに参入すると発表した。自動運転や自転車シェアリングなどのモビリティ分野に注力している同社が、駐車場のシェアに乗り出す理由は何か。同じ分野で先行するakippa(あきっぱ)などに対するアドバンテージとは。発表会の内容を交えて報告する。

7月13日に東京で行われた発表会は、まず会場が変わっていた。銀座の新しい名所になりつつある商業施設「GINZA SIX」にあるWeWorkのシェアリングオフィスだったからだ。ニューヨークに本拠を置くWeWorkの日本法人はソフトバンクとの合弁企業だから、グループ会社の1つといえる。説明はソフトバンクのテクノロジーユニットで技術戦略統括グローバル事業戦略本部長を務める北原秀文氏が行った。

ソフトバンクの北原氏

駐車場シェアに名乗りを上げる企業は多い

サービス名は「BLUU Smart Parking」(ブルースマートパーキング、以下:BLUU)という。2018年10月下旬から正式サービス開始となるが、それに先立つ8月20日をめどにベータ版のトライアルを関東圏で開始し、駐車場を利用するドライバー向けに専用アプリケーションを提供していくという。

このサービスはIoTプラットフォームを活用し、企業や個人が所有する空き駐車場と、駐車場を利用したいドライバーをマッチングさせるもの。もちろんBLUUが日本初ではなく、2014年にいち早くサービスを展開した「akippa」(あきっぱ)をはじめ、さまざまな会社が参入している。

ちなみにakippaは、トヨタ自動車のスマートフォンアプリ「TCスマホナビ」での予約が可能になったほか、LINE、首都高速道路サービス、ニッポンレンタカー、京浜急行電鉄など、さまざまなジャンルとつながりを築いており、すでに一大勢力になっている。コインパーキングのパイオニアでタイムズ駐車場を運営するパーク24も、2016年に「B-Times」(ビィ・タイムズ)という名称でパーキングシェアリングを始めた。

そもそも、日本では自動車保有台数に対し駐車場の数が圧倒的に足りていないという

ソフトバンクと同じ携帯電話キャリアでは、NTTドコモが昨年から「Peasy」(ピージー)という名前のアプリ、車の入出庫を感知するIoT機器「スマートパーキングセンサー」、センサーとクラウドをつなぐ「ゲートウェイ」、クラウド上の「駐車場管理サーバー」からなるスマートパーキングシステムの提供を開始している。

ソフトバンクのパークシェア、特徴は?

BLUUを利用するにはアプリでユーザー登録を行う必要がある。実際の利用方法だが、まずは利用したい日時と場所を入力して検索し、地図上に空いている駐車場がアイコンで表示されたら希望の駐車場を画面上でタップして選択、予約内容を確認、確定する。支払いはアプリに登録したクレジットカードやTポイントで精算する。

駐車場を貸し出す側は、専用カメラあるいは磁気センサーを設置すれば、ソフトバンクのクラウドに自動的につながる。カメラは法人向け、センサーは個人向けと考えていて、まずは法人向けから設置を進めていくという。

カメラセンサー

ただ、こうしたインターフェイスの部分も既存のパーキングシェアと似ている。では、BLUUの独自性はどこにあるか。北原氏が最初に挙げたのは、同じソフトバンクグループのアプリである「Yahoo!カーナビ」との連携だ。今年中にはYahoo!カーナビからBLUUの予約ができるようになるという。

磁気センサーは開発中とのこと

サイクルシェアとの連携も

もう1つはサイクルシェアリング「ハローサイクリング」との連携だ。こちらもまた、ソフトバンクグループの一員であるOpenStreetが1年半前から運営しているサービスである。ハローサイクリングはアプリの名称で、東京都府中市の「のりすけ」、関西圏の「CLOVER」など、全国9つのサイクルシェアリングが利用可能となっている。

こちらも具体的な作業は現在進行中とのことだが、BLUUとハローサイクリングでは、双方のアプリで相手のサービスも予約可能となる。自転車置き場が駐車場に併設してあったりすると、利便性は一気に高まるだろう。同じ町内の複数の取引先を仕事で回るような場合などに便利そうだ。

NTTドコモも東京区部や仙台市、広島市など18カ所でサイクルシェアリングを展開しているが、こちらは今のところ、Peasyと連携するとの発表はない。ソフトバンクが一歩進んだ形になる。

サイクルシェアとの組み合わせでラストワンマイルを埋める

データカンパニーとしての優位点

そしてもう1つ、BLUUがアドバンテージとして挙げたのは、ソフトバンクがデータカンパニーであるという点だ。日本の三大携帯電話キャリアの1つであり、Yahoo!カーナビをはじめ開発したアプリも数多く持つソフトバンク。スマートフォンなどの端末を介して得た移動データは膨大だ。

ソフトバンクでは都市部を500mメッシュで区切り、グループのデータを解析して落とし込んでいるという。この場所に駐車場を用意すればこのぐらい使われる、という予想が立てやすくなるそうだ。

BLUUはこの膨大なデータに基づいたサービス展開をしていくとのことで、駐車場の数を競うのではなく、利用率でナンバー1になることを目指すと北原氏は語っていた。

データ解析で駐車場の需要を読む

ところで、今回の発表会で興味深かったのは、「パーキングシェアリングについて」と銘打った会ではなく、「シェアリングビジネスに関する記者発表会」というお題目だったということだ。

確かにBLUUのみならず、ハローサイクリング、WeWorkの全てがシェアリングビジネスである。さらに、北原氏による説明後には、OpenStreet代表取締役の横井晃氏とシステム開発部長の朱凱端氏、WeWorkの日本ゼネラルマネージャー髙橋正巳氏を交えて、シェアリングエコノミーの普及によるライフスタイルの変化というテーマでトークセッションも行っていた。ちなみに髙橋氏は昨年までUber Japanの社長を務めていたが、同氏の退任後、ソフトバンクグループは米国Uberに出資し、現在では筆頭株主になっている。

左からOpenStreetの横井氏、ソフトバンクの北原氏、WeWorkの髙橋氏

たった数年で自転車、自動車、駐車場、そして事務所と多くの分野のシェアリングビジネスに進出したソフトバンク。いよいよ日本でも、所有から使用への転換が始まるのかもしれないと実感した。

歌舞伎との共通点は温故知新? 定番「Cクラス」に6,500カ所の改良を加えるメルセデス

歌舞伎との共通点は温故知新? 定番「Cクラス」に6,500カ所の改良を加えるメルセデス

2018.08.03

「Cクラス」のマイナーチェンジを新橋演舞場で発表

歌舞伎とベンツに共通する“温故知新”

6,500カ所を改良、注目すべきポイントは?

メルセデス・ベンツ日本(MBJ)は最量販車種「Cクラス」のマイナーチェンジに際し、新橋演舞場を使っての大々的な発表会を開催した。挨拶に立った上野金太郎社長によれば、この会場を使ったのは「自動車会社で初」とのこと。なぜ、このような大々的な発表会となったのだろうか。

MBJの上野社長

ベンツと歌舞伎の共通点は「伝統と革新」

発表会で、まず舞台を飾ったのは歌舞伎俳優・尾上右近さんによる歌舞伎舞踊「石橋」であった。舞い終わるとともに舞台が転換し、Cクラスが現れた。こうした演出のあとで、上野社長と尾上右近さんが語ったのは、「伝統と革新」という両者の共通性だった。

派手な衣装をまとった独特の踊りにルーツを持つといわれる歌舞伎は、その草創期から現代にいたるまで、伝統的な部分を継承しつつも常に新しい演出を採り入れ、発展してきた。新橋演舞場は、歌舞伎の斬新な面を象徴する「スーパー歌舞伎」を三代目市川猿之助さんが始めた舞台でもある。最新作「スーパー歌舞伎Ⅱワンピース」には、尾上右近さんも出演している。

歌舞伎舞踊「石橋」を披露した尾上右近さん

メルセデス・ベンツは、ドイツのカール・ベンツが1886年にガソリンエンジン自動車を発明したことにより始まった。その後、同じドイツのゴットリープ・ダイムラーの自動車メーカーと合併し、ダイムラー・ベンツ社が誕生する。ガソリンエンジン車そのものの歴史ともいえるメルセデス・ベンツの歩みだが、伝統を誇るだけでなく、技術革新にも意欲的な挑戦を続けているのが同社の特色でもある。「伝統と革新」は、歌舞伎と共通するキーワードとして納得できるものだった。

この新橋演舞場での発表会には、歌舞伎ファン、尾上右近ファンも招待されていて、集まった記者と共にCクラスの新たな商品性を目の当たりにすることになった。そこに、もう1つの狙いがあったと推測できる。

歌舞伎ファンも改良版「Cクラス」を目にすることとなった

ベンツとの接点を広げる販売戦略

今回の発表会でMBJは、Cクラスそのものの商品性だけでなく、新しい販売戦略も紹介した。その1つが、NTTドコモと一緒に8月10日から開始する期間限定のサービス「Tap! Mercedes!」(タップ! メルセデス!)だ。

同サービスの内容を説明すると、利用者はNTTドコモの総合カーシェアプラットフォーム「dカーシェア」を通じてメルセデス・ベンツの試乗予約ができる。乗れるのはCクラス、「Vクラス」(東京のみ)、「スマート」といった車種で、時間は最大2時間。料金は無料だ。試乗の場所は東京および大阪のブランド情報発信拠点「メルセデス・ミー」に限られる。試乗に係員は同乗しない。

上野社長によれば、「まだまだメルセデス・ベンツを知らなかったり、乗ったことのなかったりするお客様が多くいらっしゃる」とのこと。「Tap! Mercedes!」では必ずしも購入を前提としない気軽なメルセデス・ベンツ体験を提供する。

新車が届くまで現行型に乗れる新サービスも

販売戦略の2つ目は、新車への乗り換えを支援する「サティスファクション・プラス」である。これは最新の車種へ乗り換える際の下取りやファイナンス契約の精算を、担当販売店が支援する内容だ。対象はメルセデス・ベンツとスマートの新車を購入して9~13カ月目となる顧客。上野社長は例として次のように語る。

「新しいCクラスは9月からの納車開始となるため、それまでは現行のCクラスをお求め頂いて乗って頂き、後日、新しいCクラスにスムーズに乗り換えて頂くことも可能になる」

「Cクラス」のマイナーチェンジと同時に新たな販売戦略も明らかになった

先にボルボがはじめた「ブリッジ・スマボ」に似たサービスといえるだろう。短期間での乗り換えを支援することで、納車を待つ間に他のメーカーへ顧客を逃さない戦略とも捉えることができる。

新橋演舞場での発表会に歌舞伎ファンを招待したことをはじめ、「Tap! Mercedes!」や「サティスファクション・プラス」などの取り組みからは、新しい顧客との接点を増やそうとするMBJの考えが見てとれる。それは、メルセデス・ベンツを自由に見て、触れて、そしてカフェやレストランを利用できるメルセデス・ミー(元メルセデス・ベンツ・コネクション)から始まった戦略と一脈を通じる活動でもある。

改良点は6,500カ所!

発表となったCクラスは、モデルチェンジによる新型ではない。マツダであれば「大幅改良車」と表現したところだろう。しかしながら、発表会のために来日したチーフエンジニアのクリスチャン・フリュー氏によれば、使う部品の半分近くにあたる6,500点を刷新したという。

左からフリュー氏、尾上さん、上野社長

外観では、フロントとリアのバンパーを刷新した。ヘッドライトには、ハイビームの照射で前走車や対向車の運転者を眩惑しないよう制御する新機能を搭載。これは「Eクラス」および「Sクラス」と同等の機能だ。室内では、高精細の液晶メーターやSクラスと同じデザインのハンドルなどを採用した。そのハンドルには、運転支援機能「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」(自動再発進機能付)のスイッチなどを設定し、Sクラス同様に操作のしやすさを向上させている。

エンジンとモーター駆動の組み合わせが大きな変更点

最も大きな変更点の1つとなるのはガソリンエンジンだ。排気量1.5Lの直列4気筒エンジンは、先にSクラスで導入した直列6気筒エンジン+ISGと同じように、モーター駆動を用いた48ボルト電気システムを採用している。モーターの扱いはSクラスと異なり、直列4気筒エンジン用にベルト駆動となっているようだが、いずれにしても、高効率と動力性能の向上を両立させる新技術といえる。

メルセデス・ベンツは先進技術をSクラスで先に導入し、順次Cクラスにも展開した格好だ。そのCクラスが449万円から購入できることを知ってもらい、その最先端の機能を体験してもらうには、なにより新規顧客との接点を増やすことが不可欠である。

 

Cクラスの価格設定はご覧の通り

輸入車販売で国内市場トップを維持し続けるメルセデス・ベンツであるとはいえ、国内新車市場の10%に至らない輸入車業界には、まだその魅力が消費者に浸透していないとの意識が強い。そうした中、メルセデス・ベンツの積極的な取り組みは、催しの斬新さを含め、ほかの輸入車に比べ群を抜いているのではないだろうか。

全くの新型ではないCクラスの進化した姿を、あえて新橋演舞場で歌舞伎の舞踊と合体させて演出し、広く話題を提供しようとするメルセデス・ベンツの姿勢は、国内輸入車販売ナンバーワンであり続ける理由を強く印象づけたのである。

マンガ家・赤松健、絶版本から収益を生む実験で「海賊版サイトを叩き潰す」

マンガ家・赤松健、絶版本から収益を生む実験で「海賊版サイトを叩き潰す」

2018.08.02

Jコミックテラスと実業之日本社が共同で本の電子化の実証実験

第三者がデータを提供することが可能で、収益の一部を受け取れる

絶版本から収益を生む仕組みを構築し、海賊版サイト撲滅を目指す

『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』、『UQ HOLDER!』といった作品を生み出しているマンガ家の赤松健氏。日々、ペンを走らせ、物語に命を吹き込んでいる傍らで、Jコミックテラスの取締役会長として、絶版マンガや出版社から許諾を得た作品が無料で読める「マンガ図書館Z」を運営している。

そのJコミックテラスが2018年8月1日、実業之日本社と海賊版サイトに対抗する実証実験を開始すると発表した。本稿ではその様子を紹介する。

第三者が収益を受け取れる絶版本公開の実証実験

「絶版本がほしい場合、あなたはどうしますか?」

発表会の冒頭、赤松氏が問いかける。

「オークションやAmazonマーケットプレイス、新古書店、海賊版サイトなど、いくつか手段はありますが、残念ながらどれも作者の収益にはつながりません。その問題を何とかしたいというのが私の最大の願いです」

読者側としての感覚では、どの方法を使っても「購入さえすれば一緒」だと思いがちだが、収益の仕組みはそう単純なものではない。海賊版ではなくても、一度絶版してしまえば、中古の作品がいかに流通しようと作者の手元には一銭も入ってこないのだ。

マンガ家でJコミックテラス 取締役会長の赤松健氏

今回発表された実証実験は、2000年以前に実業之日本社で発行・掲載された作品の電子データを「作家本人もしくは第三者」から募集し、マンガ図書館Z上で無料閲覧できるようにするというもの。広告による収益が発生した場合、作者と出版社、そして素材提供者に収益が還元されるという。割合は作者が80%で、出版社と素材提供者は10%ずつだ。

作品公開までのフロー。スライドには一部誤りがあり、作者と素材提供者の位置が逆になっている

実験のポイントはなんといっても、第三者がデータをアップロードした場合にインセンティブを受け取れることだろう。電子データを保有していれば、誰でも情報を提供することが可能で、さらにお金まで受け取ることができるのだ。通常収益を生み出さない絶版本から少しでも収入を得ることができるのであれば、作者や出版社にとっても悪い話ではない。

公開はすべて作者の許可を得てから実施

第三者が投稿する場合は、まず実証実験の専用サイトにアクセス。作家一覧が表示されるので、自分の投稿する作家名、作品名をクリックし、データのzipファイルをドラッグ&ドロップするだけでアップロードが完了する。

実証実験のページ

「素材を持つ第三者から投稿があった場合、実業之日本社の作家名簿から著者にコンタクトを取り、必ず電子化の許可を得ます。連絡が取れなかった場合は公開しないので、完全に合法。著作者に無断で公開する動画サイトなどとは異なります。今回はマンガ以外の文芸も対象です」

“完全合法”を謳う赤松氏。実証実験を通じて、将来的にはさまざまな出版社の絶版作品が集まるようなサイトを目指す。

「究極の目標は、トップページに3大少年漫画が掲載され、すべてのマンガを読めるような場所にすること。基本的に海賊版サイトでやっていることは、すべて正当な手段でやっていきたいと考えています。そうすることでようやく海賊版サイトを叩き潰すことができるのです」

「STOP! 海賊版」の特設サイトより。海賊王を目指すルフィも、海賊版サイトを利用しないように訴えている

また偶然にも同日、出版関連9団体で構成される出版広報センターが「STOP! 海賊版」の特設サイトを開設。『ONE PIECE』や『名探偵コナン』、『七つの大罪』といった人気マンガのキャラクターを起用し、各社Twitterアカウントなどで海賊版サイトを利用しないようにと訴えていた。
「漫画村」が閉鎖されたからといって、コンテンツ産業の海賊版問題が解決されたわけではない。すぐに第2、第3の「漫画村」が現れる可能性もあるのだ。出版各社はまだまだ気が抜けないのだろう。

スマホの無料アプリやインターネット上の無料サービスが増えすぎて、現代では「タダで楽しむこと」があたり前になりすぎたのではないだろうか。マンガ図書館Zのような仕組みづくりは大事であるし、成功してほしいとも思うが、作者に順当な利益が行きわたり、作品が長く健全に継続していくためにも、マンガやアニメの分野において利用者は、今一度「ほしい作品を手に入れる楽しみ」を思い出さなければならないのかもしれない。