歌舞伎との共通点は温故知新? 定番「Cクラス」に6,500カ所の改良を加えるメルセデス

歌舞伎との共通点は温故知新? 定番「Cクラス」に6,500カ所の改良を加えるメルセデス

2018.08.03

「Cクラス」のマイナーチェンジを新橋演舞場で発表

歌舞伎とベンツに共通する“温故知新”

6,500カ所を改良、注目すべきポイントは?

メルセデス・ベンツ日本(MBJ)は最量販車種「Cクラス」のマイナーチェンジに際し、新橋演舞場を使っての大々的な発表会を開催した。挨拶に立った上野金太郎社長によれば、この会場を使ったのは「自動車会社で初」とのこと。なぜ、このような大々的な発表会となったのだろうか。

MBJの上野社長

ベンツと歌舞伎の共通点は「伝統と革新」

発表会で、まず舞台を飾ったのは歌舞伎俳優・尾上右近さんによる歌舞伎舞踊「石橋」であった。舞い終わるとともに舞台が転換し、Cクラスが現れた。こうした演出のあとで、上野社長と尾上右近さんが語ったのは、「伝統と革新」という両者の共通性だった。

派手な衣装をまとった独特の踊りにルーツを持つといわれる歌舞伎は、その草創期から現代にいたるまで、伝統的な部分を継承しつつも常に新しい演出を採り入れ、発展してきた。新橋演舞場は、歌舞伎の斬新な面を象徴する「スーパー歌舞伎」を三代目市川猿之助さんが始めた舞台でもある。最新作「スーパー歌舞伎Ⅱワンピース」には、尾上右近さんも出演している。

歌舞伎舞踊「石橋」を披露した尾上右近さん

メルセデス・ベンツは、ドイツのカール・ベンツが1886年にガソリンエンジン自動車を発明したことにより始まった。その後、同じドイツのゴットリープ・ダイムラーの自動車メーカーと合併し、ダイムラー・ベンツ社が誕生する。ガソリンエンジン車そのものの歴史ともいえるメルセデス・ベンツの歩みだが、伝統を誇るだけでなく、技術革新にも意欲的な挑戦を続けているのが同社の特色でもある。「伝統と革新」は、歌舞伎と共通するキーワードとして納得できるものだった。

この新橋演舞場での発表会には、歌舞伎ファン、尾上右近ファンも招待されていて、集まった記者と共にCクラスの新たな商品性を目の当たりにすることになった。そこに、もう1つの狙いがあったと推測できる。

歌舞伎ファンも改良版「Cクラス」を目にすることとなった

ベンツとの接点を広げる販売戦略

今回の発表会でMBJは、Cクラスそのものの商品性だけでなく、新しい販売戦略も紹介した。その1つが、NTTドコモと一緒に8月10日から開始する期間限定のサービス「Tap! Mercedes!」(タップ! メルセデス!)だ。

同サービスの内容を説明すると、利用者はNTTドコモの総合カーシェアプラットフォーム「dカーシェア」を通じてメルセデス・ベンツの試乗予約ができる。乗れるのはCクラス、「Vクラス」(東京のみ)、「スマート」といった車種で、時間は最大2時間。料金は無料だ。試乗の場所は東京および大阪のブランド情報発信拠点「メルセデス・ミー」に限られる。試乗に係員は同乗しない。

上野社長によれば、「まだまだメルセデス・ベンツを知らなかったり、乗ったことのなかったりするお客様が多くいらっしゃる」とのこと。「Tap! Mercedes!」では必ずしも購入を前提としない気軽なメルセデス・ベンツ体験を提供する。

新車が届くまで現行型に乗れる新サービスも

販売戦略の2つ目は、新車への乗り換えを支援する「サティスファクション・プラス」である。これは最新の車種へ乗り換える際の下取りやファイナンス契約の精算を、担当販売店が支援する内容だ。対象はメルセデス・ベンツとスマートの新車を購入して9~13カ月目となる顧客。上野社長は例として次のように語る。

「新しいCクラスは9月からの納車開始となるため、それまでは現行のCクラスをお求め頂いて乗って頂き、後日、新しいCクラスにスムーズに乗り換えて頂くことも可能になる」

「Cクラス」のマイナーチェンジと同時に新たな販売戦略も明らかになった

先にボルボがはじめた「ブリッジ・スマボ」に似たサービスといえるだろう。短期間での乗り換えを支援することで、納車を待つ間に他のメーカーへ顧客を逃さない戦略とも捉えることができる。

新橋演舞場での発表会に歌舞伎ファンを招待したことをはじめ、「Tap! Mercedes!」や「サティスファクション・プラス」などの取り組みからは、新しい顧客との接点を増やそうとするMBJの考えが見てとれる。それは、メルセデス・ベンツを自由に見て、触れて、そしてカフェやレストランを利用できるメルセデス・ミー(元メルセデス・ベンツ・コネクション)から始まった戦略と一脈を通じる活動でもある。

改良点は6,500カ所!

発表となったCクラスは、モデルチェンジによる新型ではない。マツダであれば「大幅改良車」と表現したところだろう。しかしながら、発表会のために来日したチーフエンジニアのクリスチャン・フリュー氏によれば、使う部品の半分近くにあたる6,500点を刷新したという。

左からフリュー氏、尾上さん、上野社長

外観では、フロントとリアのバンパーを刷新した。ヘッドライトには、ハイビームの照射で前走車や対向車の運転者を眩惑しないよう制御する新機能を搭載。これは「Eクラス」および「Sクラス」と同等の機能だ。室内では、高精細の液晶メーターやSクラスと同じデザインのハンドルなどを採用した。そのハンドルには、運転支援機能「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」(自動再発進機能付)のスイッチなどを設定し、Sクラス同様に操作のしやすさを向上させている。

エンジンとモーター駆動の組み合わせが大きな変更点

最も大きな変更点の1つとなるのはガソリンエンジンだ。排気量1.5Lの直列4気筒エンジンは、先にSクラスで導入した直列6気筒エンジン+ISGと同じように、モーター駆動を用いた48ボルト電気システムを採用している。モーターの扱いはSクラスと異なり、直列4気筒エンジン用にベルト駆動となっているようだが、いずれにしても、高効率と動力性能の向上を両立させる新技術といえる。

メルセデス・ベンツは先進技術をSクラスで先に導入し、順次Cクラスにも展開した格好だ。そのCクラスが449万円から購入できることを知ってもらい、その最先端の機能を体験してもらうには、なにより新規顧客との接点を増やすことが不可欠である。

 

Cクラスの価格設定はご覧の通り

輸入車販売で国内市場トップを維持し続けるメルセデス・ベンツであるとはいえ、国内新車市場の10%に至らない輸入車業界には、まだその魅力が消費者に浸透していないとの意識が強い。そうした中、メルセデス・ベンツの積極的な取り組みは、催しの斬新さを含め、ほかの輸入車に比べ群を抜いているのではないだろうか。

全くの新型ではないCクラスの進化した姿を、あえて新橋演舞場で歌舞伎の舞踊と合体させて演出し、広く話題を提供しようとするメルセデス・ベンツの姿勢は、国内輸入車販売ナンバーワンであり続ける理由を強く印象づけたのである。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。