ハッチバック投入で“ザ・カローラ”復活?<br />トヨタの思い切った戦略

ハッチバック投入で“ザ・カローラ”復活?
トヨタの思い切った戦略

2018.08.01

カローラの新作に“ハッチバック”を選択したトヨタ

サニー、ファミリア、ミラージュ……大衆車に興亡の歴史

“ザ・カローラ”復権はトヨタの販売店戦略にも影響?

トヨタ自動車がカローラシリーズに12年ぶりのハッチバックを復活させた「カローラ スポーツ」を発売した。同シリーズ初となる3ナンバーの車体サイズで登場したカローラ スポーツは、TNGA初採用によるデザインと走りにプラスして、コネクティッド機能を含む「クルマ本来の楽しさを追求」(小西良樹チーフエンジニア)することで若者世代の獲得に打って出る。

トヨタの新型車「カローラ スポーツ」

 

世界累計4,600万台! トヨタ最量販車の今

トヨタはカローラ スポーツ投入を先駆けとして、新型カローラシリーズにおけるセダン「アクシオ」、ワゴン「フィールダー」も3ナンバー仕様に変身させて来年、市場投入することにしている。カローラといえば、トヨタ大衆乗用車の代表として日本の最量販車であった。だが近年では、かつてのカローラのイメージが薄れており、12代目となる新型カローラシリーズは、車格をミッドサイズに上げて改めて“ザ・カローラ”の復権を狙う。

カローラ自体は、トヨタが世界戦略車として154の国と地域で累計4,600万台を販売し、世界16拠点工場で生産している。しかし、日本国内では近年、「プリウス」や「アクア」といったハイブリッド車がカローラに代わって量販車となってきている。プリウスやアクアは、国内トヨタ4チャネルでの併売車種だが、カローラはその名のとおり「カローラ店」の専売車種であり、新型カローラシリーズの登場は、トヨタ国内販売チャネルの方向性にも影響することになりそうだ。

トヨタでは「プリウス」(画像)や「アクア」といったハイブリッド車が量販車になっている

 

シリーズ初の3ナンバーに

12代目カローラで最初に登場した「カローラ スポーツ」は、5ドアハッチバックでスポーティーなデザインにこだわった。走りにおいても5大陸で延べ100万キロの走行試験を実施。あらゆる環境下で走る喜びを追求した。

全幅は1,790mmで、カローラシリーズとしては初めて3ナンバー(全幅1,700mm超)の車格となった。パワートレインも1.8Lエンジン+ハイブリッドシステムと1.2L直噴ターボエンジンを用意している。

このクルマ、欧州では「オーリス」の名称で1.8Lハイブリッド車として販売している。ディーゼルエンジンに逆風が吹く欧州だが、トヨタのハイブリッド車は好調だ。日本でも、パワートレインにバリエーションを持たせて若者層にアピールしていくこととした。

12代目で初の3ナンバーとなる「カローラ」

 

初代「カローラ」開発者の思いとは

カローラの初代は1966年に登場したが、当時は日本のモータリゼーションが幕開け期にあり、トヨタが「パブリカ」に続く大衆量販車として開発した。日本の自動車市場が一気に花開く中、カローラはトヨタというよりも、日本の大衆車を代表するクルマとなっていく。1969年から2001年まで、実に33年間にわたって車名別販売で上位をキープし続けたのだ。

初代カローラの開発責任者で、日本自動車殿堂入りを果たしたレジェンドでもある長谷川龍雄開発主査の「80点+α主義」思想は有名だ。これは、その時代の基準から見て80点のものを確保しつつ、魅力的な最新技術を「プラスα」として導入するという考え方だった。筆者はトヨタの専務になっていた長谷川氏に「初代カローラの開発コンセプトの本音はどうだったのですか」と聞いたことがある。長谷川氏は「当時の日本で魅力的な大衆乗用車を開発するには、限りある原価の中で、80点だけでもダメだし、『プラスα』で新しいクルマの魅力を提供したいという思いが凝縮したものだった」と述懐されていた。

カローラは、初代の投入から50年が経過している。その間、日本の乗用車市場も主流はセダンからミニバン、そしてSUVへと需要構造が変化していった。大衆乗用車の代表としてのカローラも、派生車を増やしシリーズとしては生き残ったが、ライバルだった日産自動車「サニー」を筆頭に、マツダ「ファミリア」、三菱自動車工業「ミラージュ」といった大衆乗用車は無くなった。

中央が初代「カローラ」(画像提供:トヨタ自動車)

 

日産「ノート」が2018年上半期に登録車の車名別販売で首位に立ち、日産車としてのトップは1970年のサニー以来、48年ぶりということで話題になった。「プラス100ccの余裕」をキャッチコピーとし、1,000ccエンジンを搭載するサニーに対し、カローラが1,100ccエンジンをアピールすれば、サニーも「隣のクルマが小さく見えまーす」のキャッチでカローラに対抗するなど、当時のカローラ対サニーの争いは激しいものだった。

今回、登録車の上期車名別販売には、「アクア」「プリウス」「ヴォクシー」「シエンタ」「ヴィッツ」と5車種のトヨタ車がトップ10入りを果たしているが、カローラはランク外に落ちている。一方、軽自動車を含めた車名別販売となると、軽自動車が登録車を上回っているのが現状だ。

コンパクトカーからの脱皮

トヨタはカローラ スポーツを先駆けとし、アクシオとフィールダーを来年にもシリーズ12代目の新型車として投入する。新型カローラの開発を担当した小西チーフエンジニアは、「これこそ“ザ・カローラ”の復活でして、若者層をつかんでいきたい」と話す。

1,100ccエンジン搭載車であったことから分かるとおり、50年前のカローラはいわゆるリッターカーの大衆車という位置づけだったが、今回の12代目でカローラは3ナンバー仕様となり、コンパクトカーから脱皮した。

カローラ50年の歴史は、カローラユーザーの高齢化にもつながり、カローラユーザーの主体は、団塊世代の70歳となっている。いかに若者層の買い替えに結びつけるのか。その答えとしてトヨタは、カローラの車格を上げ、スタイリッシュなデザインと走りにこだわり、同時に刷新した「クラウン」とともに、トヨタ初の本格コネクティッドカーに変身させた。

新型「クラウン」(画像)とともに、トヨタ初の本格コネクティッドカーとして登場した「カローラ スポーツ」

 

かつての最量販チャネル「カローラ店」の今後は

トヨタは今年1月、日本国内の営業組織を切り替え、4チャネル販売網ごとの「タテ割り」を地域ごとの「ヨコ割り」とした。また、来年4月には東京地区の4チャネル販売店を統合する。これは、日本国内自動車市場が縮小していく一方で、シェアリングビジネスなど、新しいモビリティ・サービスを提供するビジネスモデルへの転換が求められている今、それに対応していこうとするトヨタの考えを反映したものだ。

ただし、トヨタの全国販売店網は、東京地区を除いて地場有力店で占められている。かつては「1部店」(トヨタ店)、「2部店」(トヨペット店)、「3部店」(カローラ店)、「4部店」(ネッツ店)と呼ばれ、1部店と量販の3部店を中心にして各地域を守ってきたのがトヨタ国内販売の強さである。

トヨタの国内販売は、この4チャネルとレクサスチャネルで計5チャネル体制となっているが、すでに他社は単一チャネルに切り替わった。トヨタでもプリウス、アクアなど、併売車種が増えてチャネルの個性が失われつつあるともいわれる。トヨタ4チャネルの中で唯一、車名が販売店名となっているのが「カローラ店」だ。かつてはトヨタ最量販チャネルだったカローラ店が生き残っていくためにも、12代目となる「ザ・カローラ」の復活は大きな意味を持っている。

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ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出典:M&A online データベース

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