【キリンホールディングス】医薬・バイオケミカル事業が再生の鍵を握る?

【キリンホールディングス】医薬・バイオケミカル事業が再生の鍵を握る?

2016.06.14

【キリンホールディングス】医薬・バイオケミカル事業が再生の鍵を握る?

 キリンホールディングス<2503>(以下キリンHD)は、横浜山手の在留外国人たちにより1885(明治18)年7月に設立された、ドイツ人醸造技師によるドイツ産原料を用いたビール醸造を行うジャパン・ブルワリー・カンパニーを前身としている。株主として、岩崎彌之助(三菱社社長)をはじめ日本人9人が参加した。

 1901(明治34)年に麦酒税法が施行され中小醸造業者が撤退する中、市場シェア70%を超える札幌麦酒・日本麦酒・大阪麦酒の3社合同による大日本麦酒が誕生した(戦後財閥解体により、現アサヒグループホールディングスと現サッポロホールディングスに分割された)。これに対抗すべく、国内一手販売契約を結んでいた明治屋社長米井源治郎は、三菱合資社長の岩崎久彌に支援を懇請し07(明治40)年2月に、岩崎家、三菱合資・明治屋関係者らによって麒麟麦酒が創立された。

 現在のキリンHDは、「国内酒類・飲料」「海外酒類・飲料」「医薬・バイオケミカル」「その他(小岩井乳業、横浜アリーナなど)」の4つの事業セグメントを持ち、『「食と健康」のスタイルを一歩進んで提案し、世界の人々の健康・楽しさ・快適さに貢献』するという理念を追求している。

(2015年12月期 有価証券報告書より引用)

 連結売上高2兆円を超えるグループのM&A戦略の歴史を見てみよう。

キリンHLDが行った主なM&A(資本出資含む)
年月 内容 買収金額 売上高 出資比率
1923.5 東洋醸造を買収
1949.4 ベルギーのオムニケムの全株式取得
1952 鎌倉海浜ホテルを連結子会社とする(13年清算)
1975.4 Indústria Agrícola Tozan S.A.(現・Indústria Agrícola Tozan Ltda.、ブラジル)に資本参加
1976.6 長野トマト(現・ナガノトマト)に資本参加(10年株式譲渡)
1977.5 鶴見倉庫を完全子会社とする(09年株式譲渡)
1981.11 K.B.B. Malting Co., Pty Ltdを完全子会社化K.B.B. Malting Co., Pty Ltdを完全子会社化
1982.2 日本ツーリスト開発を連結子会社とする(05年株式譲渡)
1982.2 KW Inc.を完全子会社化
1982.5 三桜貿易に資本参加
1989.2 RAYMOND VINEYARD & CELLAR, INC.を連結子会社とする(09年株式譲渡)
1989.9 トキタ種苗に資本参加(10年株式譲渡)
1996.11 コスモ食品に資本参加
1998.4 Lion Nathan Limited(ニュージーランド、現・Lion Nathan Pty Limited)に資本参加 1,000億円 45%
2002.3 San Miguel Corp.(フィリピン)に資本参加(09年株式譲渡) 680億円 2,191億円 15%
2002.4 永昌源を連結子会社とする 51億円 99%
2006.12 杭州千島湖啤酒有限公司(中国)に資本参加 45億円 24億円 49%
2006.12 メルシャンを連結子会社とする 247億円 50.89%
2007.12 協和発酵工業に資本参加 1,673億円 3,542億円 50.1%
2007.12 National Foods Limited (オーストラリア、現・Lion-Dairy & Drinks Pty Ltd)を完全子会社化 2,940億円 1,932億円 100%
2008.11 National Foods LimitedがDairy Farmers(オーストラリア)を完全子会社化 840億円 1,116億円 100%
2009.4 San Miguel Brewery(フィリピン)に資本参加 1,268億円 927億円 49%
2009.1 Lion Nathan National Foods Pty Ltd(現・Lion Pty Ltd、オーストラリア)がLion Nathan Limited(オーストラリア)を完全子会社化 2,300億円 1,453億円 100%
2010.12 メルシャンを完全子会社化 805億円 50.89%
→100%
2011.3 Interfood Shareholding Company(ベトナム)を連結子会社化 46億円 100%
2011.10 スキンカリオール・グループ(現・Brasil Kirin Holding S.A.)を連結子会社化 1,988億円 50.45%
2011.11 スキンカリオール・グループを完全子会社化 1,050億円 50.45%
→100%
2015.12 ミャンマー・ブルワリー社の株式取得 697億円 55%

 上記表を見て分かるように、キリンHDは98年からLion Nathan Limited(ニュージーランド、現Lion Nathan Pty Limited)に資本参加するなど、国内の酒類市場の急速な縮小に危機感を持ち、海外に成長を求めた。

 その後も、2007年にNational Foods Limited (オーストラリア、現Lion-Dairy & Drinks Pty Ltd)を完全子会社化(投資額2,940億円)、09年にLion Nathan National Foods Pty Ltd(オーストラリア、現Lion Pty Ltd)がLion Nathan Limited(オーストラリア)を完全子会社化(投資額2,300億円)、11年にスキンカリオール・グループを完全子会社化(投資額3,000億円)するなど、大型投資を次々行っている。

 06年に策定された、15年までの長期経営計画「KV2015」では、10年先を見据えた飛躍的な成長シナリオとして、『酒類・飲料・医薬を主力事業として、アジア・オセアニアのリーディングカンパニーを目指す』を掲げ、国際化を推進することを明言している。

 このシナリオ通り、National Foods Limitedを完全子会社化し、さらに09年には破断はしたもののサントリーホールディングスとの経営統合も模索するなど、アジア・オセアニアのリーディングカンパニーとなるべく、順調に事が運んでいたかのように見えた。

 「KV2015」では同時に到達目標を設定していたが、15年12月期実績と比較してみよう。

 表のとおり、「KV2015」の数値目標は全て未達成となっている。海外投資の成否について財務的側面に目を向けると、10年12月期において、National Foods Limitedに388億円の減損損失を計上、15年12月期において、スキンカリオール・グループに1,412億円の減損を計上するなど、海外M&Aにつまずいているのが現状のようだ。さらに、海外に力点を置き、国内における販促費などを削減し過ぎた結果、アサヒビールやサントリービールに国内におけるシェアを奪われてしまった。

 06年以降の大手5社の国内ビール系飲料の課税済み出荷量推移を見てみよう。

■国内市場シェア

(ビール大手5社発表のビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)の課税出荷数量を参照)

 09年まで、アサヒビールとシェア首位争いをしていたが、14年にはシェアの差を過去最大5%まであけられてしまった。15年には、販促費を大量投下した効果も出て、その差を4.8%まで縮めることができたが、一度あいてしまった差を埋めることは容易ではなさそうである。

 続いて、連結売上高推移および対売上高販促費・広告費率推移を見てみよう。


■対売上高 販促費・広告比率推移


 上記グラフの08年以降を見ても分かるように、販促費・広告費の増減が、売上高の増減と比較的近い動きをしている。こうした結果もあり、国内市場においては、販促費・広告費を1,000億円規模投じる予定である。しかしながら、世界保健機関(WHO)は10年5月の第63回総会で、酒類の販売・広告を規制する指針を採択したこともあり、業界として自主規制の強化の方向にある。現状、WHO加盟国への法的拘束力はないものの、今後世界的な規模での規制が検討されており、酒類の広告規制が、業績に悪影響を及ぼす可能性は否定できない。

 酒類セグメントにおける苦戦が強いられている一方で、医薬・バイオケミカル事業の好調が目立つ。セグメント別売上高割合およびセグメント別営業利益割合を見てみよう。

■セグメント別売上高/営業利益(2014年・15年)

 15年度の、医薬・バイオケミカルセグメントは、キリンHD全体に対する売上高割合こそ16%程度であるが、営業利益割合においては、国内飲料と同様の36%も出しており、稼ぎ頭となっていることが分かる。

 医薬・バイオケミカル事業の発足は、1981年までさかのぼる。当時策定された「長期経営ビジョン」で打ち出された『事業多角化』への積極姿勢において、それまで培った技術を核に、医薬などライフサイエンス分野へ進出した。そして、07年7月に純粋持株会社制に移行する際に、医薬・バイオケミカル事業をキリンファーマとして分社化、同年12月に協和発酵工業の株式50%超を取得することで、医薬・バイオケミカル事業の成長を加速させた。

 16-18年中期経営計画においては、今後承認予定のグローバル戦略3品を欧米市場に販売する施策を立てている。20年には、グローバル・スペシャリティファーマとして、営業利益1,000億円、ROE10%という飛躍的成長を遂げることを目標として掲げている。

 キリンHDは、16-18年中期経営計画で「構造改革による、キリングループの再生」と記載しているように、酒類という本業の現状に対し相当強い危機感を持っているようだ。確かに、酒類関係の海外M&Aにおいて多額の減損を計上するなど、失敗といっても過言ではない経験してきた。

 一方、医薬・バイオケミカル事業のM&Aの結果、利益を生む事業として成長してきていることを鑑みると、『事業多角化』は成功していると言えるだろう。

 将来において、現セグメント内での投資に全力を注ぐのか、それともさらなる『事業多角化』を進め、新しい分野に進出することがあるのか、今後の動向に注目していきたい。


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。