今なぜ“改良”なのか、後輪駆動化の噂もある6年目の「アテンザ」

今なぜ“改良”なのか、後輪駆動化の噂もある6年目の「アテンザ」

2018.06.01

マツダは現行型になって6年目となる「アテンザ」(セダン/ワゴン)に3度目の商品改良を実施した。近い将来、縦置きエンジン後輪駆動ベースに転換するという噂もあるアテンザ。しかしマツダには、このタイミングで進化させる理由があった。

商品改良を受けたマツダ「アテンザ」のワゴン(左)とセダン

同期の「CX-5」はモデルチェンジを遂げたが……

マツダ「アテンザ」が商品改良を実施する。このニュースを聞いた時に「なぜ?」という思いを抱いたのも事実である。

現行アテンザは2012年の発表であり、今年で6年目を迎える。日本車のモデルチェンジのサイクルは長くなりつつあるものの、6年というのはロングセラーの部類に入る。しかも、同じ年に発表となった新世代商品の第一弾「CX-5」は、2016年にモデルチェンジを果たしている。同じサイクルで考えればアテンザも、一昨年にモデルチェンジするのが妥当だったということになる。

しかし今回、マツダは商品改良に留めた。この動きは、もうしばらく現行型が現役を務めるという意思表明と見ることもできる。

改良版「アテンザ」は今後しばらく現役を続けそうだ。後ろに見えるクルマは改良前の「アテンザ」

改良で商品を新鮮に保つマツダ

ちなみにここまで、マイナーチェンジという言葉を使ってこなかったのには理由がある。新世代商品群になって以降、マツダはマイナーチェンジという言葉は使わず「商品改良」という表現で統一しているからだ。2014年のアテンザの商品改良を取材したとき、無意識に「今回のマイナーチェンジは」と切り出したところ、「マイナーチェンジではなく商品改良です!」と指摘されたこともある。

マイナーチェンジは“マイナー”という言葉のイメージから、表面的な手直しと取られることが多い。しかし、マツダの商品改良では、デザインにしてもエンジニアリングにしても、その時点で最新のものをタイムリーに導入する。これにより、常にその車種をフレッシュに保ちつつ、ラインアップ全体に統一感を持たせることができる。

マツダの商品改良では、その時点で最新の技術とデザインを導入し、商品に新鮮さを与える

IT業界のアップデートに近いかもしれないが、これがマイナーチェンジという言葉を使わない理由なのである。

ではなぜ、アテンザはモデルチェンジしなかったのか。理由のひとつとして、次期アテンザはこれまでの横置きエンジン前輪駆動ベースから、縦置きエンジン後輪駆動ベースに切り替わるという噂がある。

「ビジョンクーペ」が示した後輪駆動化の可能性

このサイトでは2017年の東京モーターショーにマツダが出展したコンセプトカー「ビジョン・クーペ」について紹介したことがある。前輪とキャビンが離れたロングノーズのプロポーションは、縦置きエンジン後輪駆動の採用を匂わせた。

マツダが2017年の東京モーターショーで展示したコンセプトカー「ビジョン・クーペ」

また、マツダは新世代商品とともに「魂動(こどう)」と名付けたデザインコンセプトを導入しているが、このビジョン・クーペと、3年前の東京モーターショーで展示したコンセプトカー「RXビジョン」は、次世代の魂動デザインを提示していた。

マツダが2015年の東京モーターショーで展示した「RXビジョン」

この流れで今回のアテンザを見ると、モデルチェンジではないのでボディサイドは変えていないが、次世代につながる造形を取り入れるべく、エクステリアでは前後の造形に手を入れている。

「アテンザ」改良に見る次世代のビジョン

もっとも分かりやすいのはフロントマスクで、「シグネチャーウィング」と呼ばれるグリルからヘッドランプにかけてのライン両端が、ヘットランプの上に伸びるのではなく、下に沿って流れるようになった。

左が改良前、右が改良後。シグネチャーウィングの流れが大きく変わっている

リアもセダンについては同様に、クロームメッキのアクセントがリアコンビランプの上に跳ね上がるのではなく、中を貫くようになった。同時にリアバンパー下部を黒からボディ色にすることで跳ね上がり感を抑えた。

左が改良前、右が改良後。リアバンパー下部の色が変わっているのが確認できる(左側の画像提供:マツダ)

これらの変更により、横から見た時の水平基調のラインが強調された。この新しい横顔は、車体の前から後ろに向けて水平に伸びるラインが印象的だったビジョン・クーペを連想させる。

左が改良前、右が改良後。水平基調を強調している(左側の画像提供:マツダ)

現行アテンザを一貫して担当してきたチーフデザイナーの玉谷聡氏は、「次世代の魂動デザインは、骨格から変えるのが筋」と語った上で、背骨の軸を強調するなど、今できる骨格的な進化は取り入れたと説明していた。

なお、ワゴンのリアはバンパーのお色直しに留めている。跳ね上がったアクセントにワゴンの大きなキャビンを支える役割を持たせているためだ。

ワゴンのリアデザインは、大きなキャビンを支えるという役割を考慮して大きく変えなかった

新素材を東レと開発、新たな内装色は日本建築から

驚いたのはインテリアだ。2014年に続いて2度目の刷新を敢行したからである。ひとつの車種が6年間で2回もインテリアに手を入れるというのはあまり記憶にない。

実は、これも次世代の先取りだった。エクステリアと同じ水平基調であり、インパネからドアトリム、リアへのつながりを強調するために、全面的に変更したとのことだ。エアコンスイッチも横長に仕立て直すというこだわりも見てとれる。

商品改良でインテリアも見直した(画像提供:マツダ)

ビジョン・クーペのインテリアを思い出してみると、たしかに水平基調で、インパネからドアトリムへのつながりを考えた、一体感のある造形だった。その領域へつなげていこうという意思が伝わってきた。

玉谷氏はこのインテリアについて、「生け花」を例に出して説明した。花や葉そのものではなく、空間全体を作っていくという発想で考えていったという。

空間づくりに生け花の考え方が息づく(画像提供:マツダ)

素材については東レの「ウルトラスエード・ヌー」を投入。光沢感がありつつ、スエードの感触も持ち合わせた不思議な素材だ。服飾の分野では数年前から使われているそうだが、自動車用となると耐久性や難燃性などの対策が必要であり、東レとの共同開発で採用にこぎつけた。

カラーも注目だ。近年のマツダ車でおなじみのホワイトに加え、ブラウンを起用したからだ。しかもそれは赤みのある茶色ではなく、古い日本建築の木材をイメージした色味となっている。フラッグシップにふさわしい色という観点での起用だそうだ。

赤みがかったブラウンが多い中、「アテンザ」のそれは日本の古い寺院の木材を思わせるような色合いだ(画像提供:マツダ)

既存メカニズムで次世代の乗り心地を

エンジニアリングについても、新型アテンザは次世代のビークルアーキテクチャーを一部、先取りしている。

マツダは昨年、次世代技術の体験会をテストコースで開催した。その模様もこのサイトで報告しているが、このとき「SKYACTIV-X」と呼ばれる次世代エンジン技術とともに感心したのが、滑らかなハンドリングと乗り心地だった。

新型アテンザでは既存のメカニズムを用いつつ、この領域を目指した。マツダではこれを「エフォートレスドライビング」と呼ぶ。苦労しない、努力を要しないという意味の言葉を用い、意のままのハンドリングと人に優しい乗り心地を表現した。

走りの面で目指したのは「エフォートレスドライビング」だ(画像提供:マツダ)

シートのデザインも改めているが、これも次世代技術を先取りしている。従来より落ち着きのある見た目になっているだけでなく、薄くタイトだった形状を厚みのある包み込み重視のフォルムに換え、座りたくなるデザインを追求したそうだ。

これ以外にエンジンもガソリン、ディーゼルともに手を加えてある。次世代への切り替えが明らかになると、現行型を放置状態にするブランドもある中、マツダはマイナーチェンジとは一線を画す商品改良で、アテンザを更に魅力的な存在とした。このひたむきさが、ブランド高評価の源泉なのだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu