軽商用車の巻き返しなるか? 新需要をにらむダイハツ「ハイゼット キャディー」

軽商用車の巻き返しなるか? 新需要をにらむダイハツ「ハイゼット キャディー」

2016.06.14

流通における4輪車輸送の最小単位は、軽ワンボックスカーや軽トラなどの軽商用車。水道設備や電気設備などの修理・整備業でも使われることが多く、いわば“最小単位の事業所”ともいえる。わりと街で見かけることが多い馴染み深い車体だが、減少傾向が続いている。それを受けて2012年にスバルが軽商用車の生産から撤退し、2013年には三菱自動車も退いた。OEM調達により軽商用車を販売しているメーカーはあるが、生産ということになると、事実上、スズキ、ダイハツ、ホンダの3社に絞られる。

積載量の追求よりも「人の働きやすさ」を

ダイハツ「ハイゼット キャディー」。118万8,000円~

そんな軽商用車に新しいニーズを生み出そうとダイハツが投入したのが「ハイゼット キャディー」だ。同車が狙うニーズとは「人の働きやすさ」。具体的にいうと、これまで積載量ばかりが優先されてきた軽商用車から、静粛性・運転のしやすさといった快適性、未然に事故を防ぐ安全性といった部分に焦点を当てた軽商用車へ、ということだ。

ダイハツによる軽商用車ユーザーへのヒアリングによると、積載量よりも「室内の静かさ」「(運転席の)足もとの広さ」「安全性」を重視する傾向が強かったという。それの表れか、軽商用車よりも居住性・安全性に優れた軽乗用車を購入し、それを商用に充てているケースが目立ってきたことも付け加えた。

さらに、社会変動にともなう就労層の変化も同車を投入した理由だ。女性活躍推進法が施行され、女性が社会で働くシーンの増加が見込まれる。さらには高齢化社会になり、定年後も何かしらの事業を続けるシニア層の増加も容易に予測できる。ハイゼット キャディーは、こうした層のニーズにも応える。

ダイハツ工業 上級執行役員 上田亨氏

発表会でダイハツ工業 上級執行役員 上田亨氏は、「はたらく 楽ラク」という同車のコンセプトを披露し、「新たなニーズに応えるため“6つの楽”を実現した」と語った。

その6つの楽とは「楽ラク ノリオリ」「楽ラク ツミコミ」「楽ラク アンシン」「楽ラク ドライブ」「楽ラク セイケツ」「楽ラク カラフル」というもの。

まず「楽ラク ノリオリ」だが、同車はセミボンネットを備えたFFレイアウトを採用する。エンジンを車体底部に搭載した軽ワンボックスカーに比べ車体を低くでき、そのぶん、乗降が楽というもの。「楽ラク ツミコミ」は、やはり車体が低くなったことを受けて、荷物を高く上げなくても積み込みが楽になるとする。

乗用車並みの安全・安心装備

「楽ラク アンシン」は、衝突回避支援システム「スマートアシストⅡ」を一部グレードで標準搭載し、レーザーレーダーだけでなくカメラとソナーセンサーを軽商用車で初めて採用したという。また、タイヤロックを防ぐABSや「VSC&TRC」など、安定走行をサポートする機能を集約した「アクティブセーフティ」を全車に標準装備する。まさに、軽乗用車並みの安全・安心装備だ。

以下、CVTによる滑らかな走行を実現した「楽ラク ドライブ」、樹脂製のフラットな荷室により掃除がしやすい「楽ラク セイケツ」、標準色ホワイトのほかに5カラーが用意され、軽商用車では異例ともいえる6カラー展開の「楽ラク カラフル」などとなる。

発表会では、ハイゼット キャディーを事前に約1カ月間活用した企業・店舗5社が紹介され、それぞれその使用感について披露した。

左からアート引越センター、ダスキン、ドコモ・バイクシェア、花キューピッド、ほっともっと

それによると「乗用車のように運転しやすく、仕事が楽になった」(アート引越センター)、「スカートを着ることが多く、乗りやすい高さが重宝した」(ダスキン)、「3台の自転車が載る積載能力が魅力。自転車を載せると床が汚れやすいが、簡単に拭き取れた」(ドコモ・バイクシェア)、「商用車というと“白”のイメージが強いが、ピンクがお花屋さんのイメージにピッタリ」(花キューピッド)、「安全機能が充実しているので、安心してドライバーに配達を任せられた」(ほっともっと)と、上々の評判だった。

菊池桃子さん「女性やシニア層の活躍を広げてくれそう」

タレントの菊池桃子さん

また、一億総活躍国民会議 民間議員でタレントの菊池桃子さんも登壇。「商用車というと男性のイメージが強いが、このクルマは“人”全体を考えて開発されたのが伝わってきます。女性やシニア層の活躍を広げてくれそうです。日本を元気にするクルマになってほしい」と語った。

同車は、大分県・中津工場で生産される。九州地方は4月に観測された2度の震度7の地震、そして今も治まらない余震により、甚大な被害を受けた。同車の生産が九州の復興の手助けになればと、前出の上田氏は語る。

さて、会場に着いた際、軽商用車の発表会にしては大規模だなと正直違和感を覚えたが、軽商用車の浮上、新たな就労ニーズへの対応、そして九州復興と、多くの期待がかけられたクルマということがわかった時点で納得できた。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。