日立、IoTプラットフォーム「Lumada」をグロバール展開し成長路線へ

日立、IoTプラットフォーム「Lumada」をグロバール展開し成長路線へ

2018.06.11

日立製作所は、2018年6月8日、アナリストや報道関係者を対象にした事業戦略説明会「Hitachi IR Day 2018」を開催した。

日立製作所 システム&サービス事業 執行役副社長 システム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一氏

そのなかで、日立製作所 システム&サービス事業 執行役副社長 システム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一氏は、システム&サービス事業、ヘルスケアビジネスユニット、ディフェンスビジネスユニットの合計の分野において、「トリプルスリー作戦」を打ち出し、2021年度には、売上収益で3兆円、IoTプラットフォームLumadaコアによるデジタルソリューションが占める売上収益比率を30%、営業利益で3000億円超を目指す方針を明かにした。

「現時点では、これは、私自身の腹づもりであり、次期中期経営計画に反映するものになる」と位置づけながらも、「Lumadaを中核としたデジタルセントリックな事業体を確立し、デジタルの力を最大化。日立全体の社会イノベーション事業を牽引していく役割を担う」などとした。

また、システム&サービス事業部門として、「我々がグローバルトップクラスと定義している調整後営業利益率10%超、年平均成長率5%超であり、これを、2021年度までに達成する。なんとしてでもこのボジションにたどり着きたい」とし、「これまでは営業利益率の向上にこだわり、その成果はあがってきている。だが、世界に目を向けると、利益率および成長率はまだ十分とはいえない。2021年度までに、グローバルトップクラスのシステムベンダーになるためには、現在の収益性を維持、向上させるだけでなく、売上収益を伸ばす必要がある。とくに海外の売上収益を伸ばす必要がある。2021年度には、海外売上収益を1兆円規模に高めたい」とした。現在、海外売上収益は、システム&サービス事業の売上収益2兆円のうち、約2~3割を占めているという。

さらに、海外事業においては、アジアを中心に、1万人規模での人員増強を計画していることを明らかにした。北米およびアジアでの成長を軸にした成長戦略を描くという。

「重要なのは海外におけるデリバリー力。いまはデリバリー力が十分ではない。北米においては、今後、市場成長が見込まれ、事業機会が拡大する。また、アジアでは、日系企業のアジア拠点向けなどで国内事業の強みを活用できる。付加価値が高いソリューションを届けるためには、買収や資本提携によって新たなリソースを獲得し、自社のOTおよびITのノウハウをかけあわせて、シナジーを発揮することを目指す。ここでは、大きな投資も辞さないという覚悟でプランニングをしている」などとした。

情報・通信システムセグメントにおいては、「この3年間は収益性を高め、営業利益を稼ぎだし、手元のキャッシュを厚くすることに徹底的に取り組んできた」とし、2015年度には売上収益が2兆1093億円、調整後営業利益率は6.7%、EBIT率は5.2%であったものが、2017年度には、売上収益2兆89億円、調整後営業利益率9.4%、EBIT率が6.9%に達したことを示しながら、「事業ポートフォリオを変革し、経営基盤を強化し、事業部のリスクをマネージしながら、きちっとリターンにつなげることができる筋肉質な事業体になったと実感している」とこれまでの取り組みを総括。

情報・通信システムセグメントの業績の推移

2018年度見通しでは、売上収益で2.4兆円、営業利益率9%台半ばを目指し、「営業利益率は2桁の直前まで到達してきた。今後は10%を目指すことになる」とコメント。「筋肉質な体質にするために、ソリューションおよびサービスを中心とした事業ポートフォリオに変革してきた。ITサービスのoXyaや、ビックデータアナリティクスのPentahoの買収などにより、新たな事業リソースを獲得したり、シスコシステムズやSAPなどと協業したりといった取り組みに加えて、日立ソリューションズなどのグループ企業の事業統合や新会社の設立を行う一方で、ハードウェア分野においては事業所の閉鎖なども行った。この3年間で約2500億円の事業を遠ざけたが、それでも売上収益を落ち込ませることなく、2兆円規模を維持し、営業利益率を着実に伸ばしてきた。売上収益は伸びていないが、マーケットの変化にあわせて、事業の中身を大きく変えてきた」と述べた。

事業ポートフォリオの変革

さらに、「日々状況が変化する情報・通信分野の構造改革には終わりがないが、この2、3年間で、一定の目処がつき、次の成長に向けた準備が整った」と、これまでに成果に自信をみせた。

さらに、ロスコスト削減や生産性向上の取り組みとしては、プロジェクトライフサイクルを通じたリスク管理や、損益悪化時の早期検知の強化などによる「プロジェクト管理の徹底・強化」、AIやRPAの活用によるアプリケーション開発やSE作業の効率化、Lumadaの活用促進とOSSやDevOpsによる開発環境整備および強化による「デジタル技術を活用した生産性向上」、40カ所に設置したサテライトオフィスの整備による業務効率化やRPAの導入による「働き方改革による生産性向上」の3点に取り組んできたことを説明。「これらに愚直に取り組むことで、生産性を高め、収益性を改善できた」と振り返った。

ロスコスト削減や生産性向上の取り組み

また、ここ数年の体質強化によって、情報・通信システム事業は、2017年度に成長戦略に転換したと述べ、「当社の成長戦略において最も重要な役割を果たしているのがLumadaである。これまで日立が培ってきたOTと先端技術のITを組み合わせて、これをユースケース化することで、素早くソリューションを届けることができ、顧客のデジルトランスフォーメーションを支援してきた」とコメントしながら、Lumadaに向けた具体的な取り組みとして、「グローバル提供体制の構築」、「グローバル横串機能の整備」、「デジタル人財の強化」の3点に取り組んできたことを示した。

成長戦略への転換

「グローバル提供体制の構築」では、2017年9月に設立したHitachi Vantaraや、2018年4月に発足したHitachi Global Digital Holdingsによるグローバルにソリューションをデリバリーする体制の構築や、ファナックやPreferred Networksなどとの協業によるオープンエコシステムの推進に向けたパートナーリングの強化を紹介。KDDIとの協業では、Lumadaと、KDDIの「IoT世界基盤」を連携し、様々な産業において、IoTを活用した新たな価値の創出や、ビジネス変革を支援することを目指すことを紹介した。

「グローバル横串機能の整備」は、フロントビジネスの成長を支える取り組みに位置づけ、「ここでは、グローバルで共通に利用できるLumadaのユースケースやソリューションコアの整備を進めた」とした。

Lumadaのユースケースは現時点で550件に達し、わずか1年で300件以上増加し、倍増以上となったこと、これを2018年度中には1000件を目標にするとしたほか、ソリューションコアの数は、2018年度中には100種類以上に拡大する計画も示した。

「2016年度からの3年間で、Lumada関連投資は、1000億円を計画しており、これまでに毎年300億円ずつ投資してきた。2018年度は、次期中期経営計画に向けた準備の年でもあり、投資額が少し厚くなる」などとした。

「デジタル人財の強化」では、AIやセキュリティの最新デジタル技術を持った人材の獲得と育成強化を開始することに触れ、「ものすごいスピードで変化している日立グループの事業環境にあわせて、人材の厚みを増すことは欠かせない取り組みだ」と述べた。

日立製作所 産業・流通事業 執行役常務 産業・流通ビジネスユニット CEOの阿部淳氏

なお、Lumadaの売上収益は、2017年度実績で1兆60億円のうち43%が産業・流通事業によるものであり、「日立の大みか事業所の高効率生産モデルをソリューションコア化するとともに、協創を通じた新規顧客の開拓や新たなサービスを創生などにより、Lumadaを活用したデジタルソリューション事業を拡大した」(日立製作所 産業・流通事業 執行役常務 産業・流通ビジネスユニット CEOの阿部淳氏)という。

大みか工場には、年間で300社の見学に訪れている実績があり、スマートファクトリーに対する関心が高まっていることも示した。

また、産業、流通分野では、SAP S/4 HANAをコアに高付加価値化を図っていく考えを示し、保守期限が2025年に迫っていることを背景にした置き換え需要を取り込む考えを見せた。

「SAP S/4 HANAは好調であり、日立のOTの強みを生かして、経営から現場までのソリューションを提供していく。だが、SI事業全体では受注前の時点で、ロスコストが発生しており、プロジェクトマネジメントの強化や人材育成により、SI事業の収益性を高めたい」(日立製作所の阿部執行役常務)とした。

日立グループは、SAP関連ビジネスで国内トップクラスの構築実績を持つほか、日立グループ内においても32カ国400社612拠点にSAPを活用している実績があるという。

日立製作所 産業・流通・水分野 インダストリアルプロダクツビジネスユニット執行役副社長 産業機器統括本部長兼日立産機システム 取締役会長の青木優和氏

また、日立製作所 産業・流通・水分野 インダストリアルプロダクツビジネスユニット執行役副社長 産業機器統括本部長兼日立産機システム 取締役会長の青木優和氏は、「産業・流通分野では、プロダクトの強化、デジタルソリューションの拡大、SALLAIRの買収による北米を中心とした顧客基盤の獲得の3点に取り組んでいる。このなかでは、製造業を中心とした顧客との協創推進を進める。産業系の顧客に対して、ベストソリューションパートナーになることを目指す」と述べた。

日立製作所の塩塚副社長は、「Lumada事業は順調に拡大しており、この勢いを2018年度も継続したい」と語る一方で、「2018年度は、中期経営計画で掲げた目標数値を達成することに加えて、次なるステージに向けたステップアップの年と位置づけて、次期2021中期経営計画の準備に入りたい」と宣言。「そのために、Society 5.0の実現に向けたデジタルソリューションによって社会イノベーション事業をさらに加速させるとともに、事業をより強化するために、買収や資本提携なども視野に入れて、グローバルでのさらなる成長を目指す」と語った。

一方、日立製作所の東原敏昭執行役社長兼CEOは、「4月27日の決算発表以降、多くの投資家と話をしたが、『日立はだいぶ変わった』、『ようやく有言実行の会社になった』という声をいただく一方で、『改革をもっとスピードをあげなくてはいけない』といった指摘もあった。

日立製作所 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏

日立は、2016年4月に、情報・通信カンパニーや社会インフラカンパニーなどの大きな括りであった社内カンパニー制をやめて、管理がしやすく、直接、ビジネスユニットのCEOと会話をしながら改革を進めることができるスモールビジネスユニット制に変えた。ビジネスユニットにおいても、ソリューションを顧客と一緒に考えるフロントビジネスユニット、Lumadaを中核に日立グループ全体で活用するプラットフォームビジネスユニット、製品を担当するプロダクトビジネスユニットの3階層に変えて、組織の特徴づけをした」などとし、「この結果、収益性が高まってきた。そこで、成長へのギアチェンジを図った。2017年4月には、電力・エネルギー、産業、アーバン、金融・公共の4つのグループに分け、それぞれに副社長をアサインし、成長戦略を考えるというミッションを与えた」と、2017年度までの取り組みを振り返った。

さらに、「2018年度を最終年度としている2018中期経営計画では、営業利益率8%を超えこと、当期純利益4000億円を目指している。これを達成することは達成することはもちろんだが、2021年度に向けた日立グループの形を示すことがもっと大切である。日立はデジタル技術を用いて、高度な社会インフラをグローバルに提供し、人々のよりよい暮らしを実現する会社でありたい。この目標は、SDGsやSociety 5.0の動きにも合致するものになり、2021年度に向けて、社会イノベーション事業を推進する。一方で、世界で戦えるためには2桁の営業利益率が必要であると考えている。そのためには、コスト構造を意識したトランスフォーメーションを推進していくことになる。日立のこれからは大きく変わる」などとした。

2021年度までに達成したい目標氏

また、Lumadaについては、「2016年5月に発表して以来、ユースケースも集まり、認知度もあがってきた。日立グループ内の工場や営業部門でもさらに活用できると考え、各ビジネスユニットに、CLO(Chief Lumada Officer)を配置し、Lumadaを活用する動きが出てきた。多品種少量生産や大量生産など、様々な工場で導入し、その成果が出たときには、顧客に公開するようにした。さらに、顧客の課題を解決するために、リードタイムの短縮や品質向上といった課題を見える化し、ビジネスモデルを変革する提案を推進。顧客協創方法論のNEXPERIENCEを用いて、顧客とのコラボレーションによってプロセスを明確化。このソリューションが有効であれば、Lumada上に乗せるといった取り組みを行っており、すでに500件以上のユースケースを蓄えることができている」などと述べた。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu