日立、IoTプラットフォーム「Lumada」をグロバール展開し成長路線へ

日立、IoTプラットフォーム「Lumada」をグロバール展開し成長路線へ

2018.06.11

日立製作所は、2018年6月8日、アナリストや報道関係者を対象にした事業戦略説明会「Hitachi IR Day 2018」を開催した。

日立製作所 システム&サービス事業 執行役副社長 システム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一氏

そのなかで、日立製作所 システム&サービス事業 執行役副社長 システム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者の塩塚啓一氏は、システム&サービス事業、ヘルスケアビジネスユニット、ディフェンスビジネスユニットの合計の分野において、「トリプルスリー作戦」を打ち出し、2021年度には、売上収益で3兆円、IoTプラットフォームLumadaコアによるデジタルソリューションが占める売上収益比率を30%、営業利益で3000億円超を目指す方針を明かにした。

「現時点では、これは、私自身の腹づもりであり、次期中期経営計画に反映するものになる」と位置づけながらも、「Lumadaを中核としたデジタルセントリックな事業体を確立し、デジタルの力を最大化。日立全体の社会イノベーション事業を牽引していく役割を担う」などとした。

また、システム&サービス事業部門として、「我々がグローバルトップクラスと定義している調整後営業利益率10%超、年平均成長率5%超であり、これを、2021年度までに達成する。なんとしてでもこのボジションにたどり着きたい」とし、「これまでは営業利益率の向上にこだわり、その成果はあがってきている。だが、世界に目を向けると、利益率および成長率はまだ十分とはいえない。2021年度までに、グローバルトップクラスのシステムベンダーになるためには、現在の収益性を維持、向上させるだけでなく、売上収益を伸ばす必要がある。とくに海外の売上収益を伸ばす必要がある。2021年度には、海外売上収益を1兆円規模に高めたい」とした。現在、海外売上収益は、システム&サービス事業の売上収益2兆円のうち、約2~3割を占めているという。

さらに、海外事業においては、アジアを中心に、1万人規模での人員増強を計画していることを明らかにした。北米およびアジアでの成長を軸にした成長戦略を描くという。

「重要なのは海外におけるデリバリー力。いまはデリバリー力が十分ではない。北米においては、今後、市場成長が見込まれ、事業機会が拡大する。また、アジアでは、日系企業のアジア拠点向けなどで国内事業の強みを活用できる。付加価値が高いソリューションを届けるためには、買収や資本提携によって新たなリソースを獲得し、自社のOTおよびITのノウハウをかけあわせて、シナジーを発揮することを目指す。ここでは、大きな投資も辞さないという覚悟でプランニングをしている」などとした。

情報・通信システムセグメントにおいては、「この3年間は収益性を高め、営業利益を稼ぎだし、手元のキャッシュを厚くすることに徹底的に取り組んできた」とし、2015年度には売上収益が2兆1093億円、調整後営業利益率は6.7%、EBIT率は5.2%であったものが、2017年度には、売上収益2兆89億円、調整後営業利益率9.4%、EBIT率が6.9%に達したことを示しながら、「事業ポートフォリオを変革し、経営基盤を強化し、事業部のリスクをマネージしながら、きちっとリターンにつなげることができる筋肉質な事業体になったと実感している」とこれまでの取り組みを総括。

情報・通信システムセグメントの業績の推移

2018年度見通しでは、売上収益で2.4兆円、営業利益率9%台半ばを目指し、「営業利益率は2桁の直前まで到達してきた。今後は10%を目指すことになる」とコメント。「筋肉質な体質にするために、ソリューションおよびサービスを中心とした事業ポートフォリオに変革してきた。ITサービスのoXyaや、ビックデータアナリティクスのPentahoの買収などにより、新たな事業リソースを獲得したり、シスコシステムズやSAPなどと協業したりといった取り組みに加えて、日立ソリューションズなどのグループ企業の事業統合や新会社の設立を行う一方で、ハードウェア分野においては事業所の閉鎖なども行った。この3年間で約2500億円の事業を遠ざけたが、それでも売上収益を落ち込ませることなく、2兆円規模を維持し、営業利益率を着実に伸ばしてきた。売上収益は伸びていないが、マーケットの変化にあわせて、事業の中身を大きく変えてきた」と述べた。

事業ポートフォリオの変革

さらに、「日々状況が変化する情報・通信分野の構造改革には終わりがないが、この2、3年間で、一定の目処がつき、次の成長に向けた準備が整った」と、これまでに成果に自信をみせた。

さらに、ロスコスト削減や生産性向上の取り組みとしては、プロジェクトライフサイクルを通じたリスク管理や、損益悪化時の早期検知の強化などによる「プロジェクト管理の徹底・強化」、AIやRPAの活用によるアプリケーション開発やSE作業の効率化、Lumadaの活用促進とOSSやDevOpsによる開発環境整備および強化による「デジタル技術を活用した生産性向上」、40カ所に設置したサテライトオフィスの整備による業務効率化やRPAの導入による「働き方改革による生産性向上」の3点に取り組んできたことを説明。「これらに愚直に取り組むことで、生産性を高め、収益性を改善できた」と振り返った。

ロスコスト削減や生産性向上の取り組み

また、ここ数年の体質強化によって、情報・通信システム事業は、2017年度に成長戦略に転換したと述べ、「当社の成長戦略において最も重要な役割を果たしているのがLumadaである。これまで日立が培ってきたOTと先端技術のITを組み合わせて、これをユースケース化することで、素早くソリューションを届けることができ、顧客のデジルトランスフォーメーションを支援してきた」とコメントしながら、Lumadaに向けた具体的な取り組みとして、「グローバル提供体制の構築」、「グローバル横串機能の整備」、「デジタル人財の強化」の3点に取り組んできたことを示した。

成長戦略への転換

「グローバル提供体制の構築」では、2017年9月に設立したHitachi Vantaraや、2018年4月に発足したHitachi Global Digital Holdingsによるグローバルにソリューションをデリバリーする体制の構築や、ファナックやPreferred Networksなどとの協業によるオープンエコシステムの推進に向けたパートナーリングの強化を紹介。KDDIとの協業では、Lumadaと、KDDIの「IoT世界基盤」を連携し、様々な産業において、IoTを活用した新たな価値の創出や、ビジネス変革を支援することを目指すことを紹介した。

「グローバル横串機能の整備」は、フロントビジネスの成長を支える取り組みに位置づけ、「ここでは、グローバルで共通に利用できるLumadaのユースケースやソリューションコアの整備を進めた」とした。

Lumadaのユースケースは現時点で550件に達し、わずか1年で300件以上増加し、倍増以上となったこと、これを2018年度中には1000件を目標にするとしたほか、ソリューションコアの数は、2018年度中には100種類以上に拡大する計画も示した。

「2016年度からの3年間で、Lumada関連投資は、1000億円を計画しており、これまでに毎年300億円ずつ投資してきた。2018年度は、次期中期経営計画に向けた準備の年でもあり、投資額が少し厚くなる」などとした。

「デジタル人財の強化」では、AIやセキュリティの最新デジタル技術を持った人材の獲得と育成強化を開始することに触れ、「ものすごいスピードで変化している日立グループの事業環境にあわせて、人材の厚みを増すことは欠かせない取り組みだ」と述べた。

日立製作所 産業・流通事業 執行役常務 産業・流通ビジネスユニット CEOの阿部淳氏

なお、Lumadaの売上収益は、2017年度実績で1兆60億円のうち43%が産業・流通事業によるものであり、「日立の大みか事業所の高効率生産モデルをソリューションコア化するとともに、協創を通じた新規顧客の開拓や新たなサービスを創生などにより、Lumadaを活用したデジタルソリューション事業を拡大した」(日立製作所 産業・流通事業 執行役常務 産業・流通ビジネスユニット CEOの阿部淳氏)という。

大みか工場には、年間で300社の見学に訪れている実績があり、スマートファクトリーに対する関心が高まっていることも示した。

また、産業、流通分野では、SAP S/4 HANAをコアに高付加価値化を図っていく考えを示し、保守期限が2025年に迫っていることを背景にした置き換え需要を取り込む考えを見せた。

「SAP S/4 HANAは好調であり、日立のOTの強みを生かして、経営から現場までのソリューションを提供していく。だが、SI事業全体では受注前の時点で、ロスコストが発生しており、プロジェクトマネジメントの強化や人材育成により、SI事業の収益性を高めたい」(日立製作所の阿部執行役常務)とした。

日立グループは、SAP関連ビジネスで国内トップクラスの構築実績を持つほか、日立グループ内においても32カ国400社612拠点にSAPを活用している実績があるという。

日立製作所 産業・流通・水分野 インダストリアルプロダクツビジネスユニット執行役副社長 産業機器統括本部長兼日立産機システム 取締役会長の青木優和氏

また、日立製作所 産業・流通・水分野 インダストリアルプロダクツビジネスユニット執行役副社長 産業機器統括本部長兼日立産機システム 取締役会長の青木優和氏は、「産業・流通分野では、プロダクトの強化、デジタルソリューションの拡大、SALLAIRの買収による北米を中心とした顧客基盤の獲得の3点に取り組んでいる。このなかでは、製造業を中心とした顧客との協創推進を進める。産業系の顧客に対して、ベストソリューションパートナーになることを目指す」と述べた。

日立製作所の塩塚副社長は、「Lumada事業は順調に拡大しており、この勢いを2018年度も継続したい」と語る一方で、「2018年度は、中期経営計画で掲げた目標数値を達成することに加えて、次なるステージに向けたステップアップの年と位置づけて、次期2021中期経営計画の準備に入りたい」と宣言。「そのために、Society 5.0の実現に向けたデジタルソリューションによって社会イノベーション事業をさらに加速させるとともに、事業をより強化するために、買収や資本提携なども視野に入れて、グローバルでのさらなる成長を目指す」と語った。

一方、日立製作所の東原敏昭執行役社長兼CEOは、「4月27日の決算発表以降、多くの投資家と話をしたが、『日立はだいぶ変わった』、『ようやく有言実行の会社になった』という声をいただく一方で、『改革をもっとスピードをあげなくてはいけない』といった指摘もあった。

日立製作所 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏

日立は、2016年4月に、情報・通信カンパニーや社会インフラカンパニーなどの大きな括りであった社内カンパニー制をやめて、管理がしやすく、直接、ビジネスユニットのCEOと会話をしながら改革を進めることができるスモールビジネスユニット制に変えた。ビジネスユニットにおいても、ソリューションを顧客と一緒に考えるフロントビジネスユニット、Lumadaを中核に日立グループ全体で活用するプラットフォームビジネスユニット、製品を担当するプロダクトビジネスユニットの3階層に変えて、組織の特徴づけをした」などとし、「この結果、収益性が高まってきた。そこで、成長へのギアチェンジを図った。2017年4月には、電力・エネルギー、産業、アーバン、金融・公共の4つのグループに分け、それぞれに副社長をアサインし、成長戦略を考えるというミッションを与えた」と、2017年度までの取り組みを振り返った。

さらに、「2018年度を最終年度としている2018中期経営計画では、営業利益率8%を超えこと、当期純利益4000億円を目指している。これを達成することは達成することはもちろんだが、2021年度に向けた日立グループの形を示すことがもっと大切である。日立はデジタル技術を用いて、高度な社会インフラをグローバルに提供し、人々のよりよい暮らしを実現する会社でありたい。この目標は、SDGsやSociety 5.0の動きにも合致するものになり、2021年度に向けて、社会イノベーション事業を推進する。一方で、世界で戦えるためには2桁の営業利益率が必要であると考えている。そのためには、コスト構造を意識したトランスフォーメーションを推進していくことになる。日立のこれからは大きく変わる」などとした。

2021年度までに達成したい目標氏

また、Lumadaについては、「2016年5月に発表して以来、ユースケースも集まり、認知度もあがってきた。日立グループ内の工場や営業部門でもさらに活用できると考え、各ビジネスユニットに、CLO(Chief Lumada Officer)を配置し、Lumadaを活用する動きが出てきた。多品種少量生産や大量生産など、様々な工場で導入し、その成果が出たときには、顧客に公開するようにした。さらに、顧客の課題を解決するために、リードタイムの短縮や品質向上といった課題を見える化し、ビジネスモデルを変革する提案を推進。顧客協創方法論のNEXPERIENCEを用いて、顧客とのコラボレーションによってプロセスを明確化。このソリューションが有効であれば、Lumada上に乗せるといった取り組みを行っており、すでに500件以上のユースケースを蓄えることができている」などと述べた。

大変革の新型「カローラ」に試乗! 激戦のハッチバックに挑むトヨタの事情

大変革の新型「カローラ」に試乗! 激戦のハッチバックに挑むトヨタの事情

2018.08.22

ハッチバックとなった背景に2つの理由

TNGA導入効果で走りは変わったか

コネクティッド機能は充実もスマホ連携に改善の余地

トヨタの「カローラ スポーツ」が発売となった。新型モデルにはさまざまな大変革が見られる。まず、先代モデルはセダンボディの「アクシオ」とワゴンボディの「フィールダー」という車種構成だったのに対し、今回の新型カローラシリーズで先陣を切ったのはハッチバックモデルであった。カローラの歴史を紐解くと、このボディタイプは2006年まで販売された「カローラランクス」以来、実に12年ぶりの復活となる。なぜ今、ハッチバックなのか。その理由は大きく2つ挙げられる。

ハッチバックを選んだ2つの理由

1つ目の理由は「若返り」だ。現在、カローラユーザーの平均年齢は70代で、ワゴンモデルのフィールダーでも60代だという。一昨年に50周年を迎えたカローラは、トヨタの基幹車種として愛され続けてきた反面、ロイヤルティの高いユーザーは高齢化していたのだ。そこで新型車には、次の50年に向けて若い人たちに乗ってもらえるクルマにしたい、という思いを込めた。

2つ目の理由としては「グローバル化」を挙げることができる。カローラは1966年の初代誕生以来、150以上の国と地域で累計4,600万台を販売してきた。世界16拠点の生産工場を持ち、10秒に1台を販売するグローバル商品だ。しかし、「カローラ」の名はつくものの、ボディタイプやプラットフォーム、搭載するエンジンなど、その中身は国や地域により作り分けていた。それを今回は、名実ともに、基本は世界ワンスペックのクルマとして作った。そして、グローバルで見ると、ハッチバックは人気が高い車種なのだ。

中国や米国などのビッグマーケットでも、ハッチバックの販売が伸びている。一足先に発売となったライバルのホンダ「シビック」も、セダンに加えハッチバックモデルをラインナップしているが、米国ではハッチバックが約3割を占めているそうだ。

このような理由から、まずはハッチバックの「カローラスポーツ」が登場することとなった。

新型車「カローラ スポーツ」のボディタイプはハッチバックだった(全ての画像提供:トヨタ自動車)

サーキットで感じた第一印象

カローラ スポーツと最初に出会ったのは、ショートサーキットだった。一言でいうと、存在感はあるけど強烈なクセはない、すんなり受け入れられるデザイン、というのが第一印象だ。切れ長でシャープな眼、ワイド&ローのプロポーションで、特にデザイナーがこだわったというリヤは“カタマリ感”、踏ん張り感で安定性をアピールしながらも、全体的にはスポーティーなシルエットとなっている。

ディテールを見ると、サイドのプレスラインはかなりエッジが効いている。つまり、作る際には鋭角的に鉄板を折り曲げる必要があり、実はこれもかなりチャレンジングだ。先に述べたように、トヨタは今回、グローバルで作るため、各工場の作り手の技術を安定させるという「工場の開発」にまで挑んでいるのだ。

エッジの効いたサイドのプレスライン

走ってみると、クルマの基本性能である「走る・曲がる・止まる」の性能が飛躍的に向上していた。実に気持ち良く走る。しっかりしたシャシーとボディに包まれ、足元のサスペンションはしなやかに動く。ステアリングはしっかり感があって、切れば素直に曲がっていく。従来のクルマと比べ、ドライバーの操作の伝達スピードと確度が格段に上がった印象だ。

サーキットの路面はフラットなので、そもそも安定感が高い。なので、意地悪く縁石を踏んでみたりもしたが、乗り越えの際にも尖った突き上げ感はなく、常にタイヤの接地を失うことなくスマートにいなした。また、限界域まで追い込んでみても、旋回中にブレーキを踏んでも、リヤが破綻することなく安定性を保っていた。DSC(ダイナミックスタビリティコントロール、クルマが曲がりすぎたり、逆に曲がらなかったり、横滑りしたりするのを防ぐ機能)を解除して電子制御なしで走っても唐突な動きはなかったので、トヨタが基本的な素性から作り込んでいることが確認できた。

後日、一般道と高速道路でも試乗した。ハンドリングの良さは納得だが、やはり、荒れた路面やアンジュレーションのある”生きた道”を走ってみないと乗り心地や静粛性といった「快適性」の側面はわからないからだ。しかし、サーキットで受けた印象が覆されることはなく、快適に、気持ち良く走ることができた。エンジンは1.8Lハイブリッドと1.2Lターボのガソリンがある。燃費志向の方にはハイブリッド、気持ち良さや瞬発力を求める方にはガソリンエンジンをオススメしたい。

「HYBRID G」というグレードの内装(色はサドルタン)

「TNGA」導入の効果は明らか

「走り」の進化は、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームの導入によるところが大きい。TNGAは「もっといいクルマをつくろう」という豊田章男社長の号令の下、トヨタが推し進めた開発コンセプト。現行「プリウス」で初採用し、人気の高いコンパクトSUV「C-HR」で走りを磨いたが、第3弾となるカローラ スポーツでは、その能力をさらにブラッシュアップしている。

具体的には、C-HRよりさらにステアリングの剛性がアップしたことで、リニアな操縦性が実現している。摩擦が低く滑らかに動く新開発ダンパーの投入により、動き始めからしなやかさを発揮する。さらには電子制御が良くなっているし、静粛性も向上している。

先代カローラを国内専用モデルとして開発したトヨタだが、プラットフォームはBセグメントの「ヴィッツ」と共用していた。それに対して今回は、Cセグメントで使う新規プラットフォームを採用しているので、動的性能の向上幅が大きい。

スポーティでありながら、スポーツカーほど尖った性格ではないし、パワーに対して高いシャシー性能があるので、初心者でも安心して乗れる。この後、セダンやワゴンも登場するとのことだが、ワゴンよりカッコよく、リヤシートを倒して使えるなどセダンよりフレキシビリティのあるハッチバックは、若い人たちにも受け入れられるのではないだろうか。

6月26日の発売から1カ月で「カローラ スポーツ」の受注台数は約9,200台に達したとのこと。月販目標は2,300台だ

コネクティッド機能が充実、スマホ連携は少し残念

ところで今回、クルマ本来の楽しさに加えて、トヨタが開発に注力したのが「コネクティッド」機能だ。「クラウン」と「カローラ」という基幹車種の同時フルモデルチェンジにも関わらず、メディア向け発表会は開かず、ユーザーを対象とした「コネクティッドデイ」なるイベントを大々的に開催したことからも、その力の入れようは容易にうかがえる。

カローラの全グレードに標準装備となるコネクティッド機能を使えば、例えばオペレーターを介してナビの目的地設定を行ったり、インジケーター点灯時に対処法のアドバイスを受けることができたりするし、エアバッグ作動時には自動でオペレーターに接続し、ドクターヘリの出動判断を行う「D-Call Net」にも対応していたりする。さらに、LINEにマイカーを「友だち」として追加すると、乗車前に目的地登録やガソリン残量の確認などを行うことができる。

安心・安全が格段に上昇するが、一方で、ちょっと残念なのは、スマホアプリを車載ディスプレイで操作する機能が搭載されていない点だ。というのも、トヨタはAppleやGoogleと手を組まず、独自のプラットフォーム「SDL」(スマートデバイスリンク)を介してスマートフォンとナビゲーションシステムを連携させ、スマホアプリを車載ディスプレイで操作する機能を開発しているからだ。

なので現状、Wi-fiがつながる環境は整っているのだが、「Apple CarPlay」や「Android Auto」は使えない。もっとも、これにも理由がある。彼らと提携すればことは簡単なのだが、そのシステムはブラックボックス化されていて、トヨタには管理できない。より安全なものを提供したい、というこだわりがあるゆえの選択なのだ。

とはいえ、若者にとって(いや、若者に限らずかも)スマホはマストアイテムであり、運転中も”つながっていたい”というニーズは高そう。また、スマホと車載ディスプレイの連動は「ながら運転」を抑止するための重要な機能でもある。なので、早急な対応を望みたいところだ。

コネクティッドは面白い機能だが、やはりスマホ連携も充実させて欲しいところだ

カローラ スポーツが位置するCセグメントのハッチバックモデルは、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、メルセデス・ベンツ「Aクラス」をはじめ、競合車がひしめく大激戦区だ。しかしながら、グローバルを見据えてトヨタが大きた革新を施した新型カローラ スポーツは、その土俵でも十分に戦える戦闘力があると思わせるクルマに仕上がっていた。
 

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第22回

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

2018.08.22

MVNOの通信速度が遅いのはどうしてか

データの通り道が細いMVNO特有の問題

フルMVNOとなって帯域幅を広げる企業

大手キャリアから料金が安いMVNOのサービスに乗り換えた人が不満を抱くのが、昼休みなど多くの人がスマートフォンを利用する時間帯を中心に、劇的に通信速度が遅くなることではないだろうか。同じ大手キャリアのネットワークを使っているのに、なぜMVNOの通信速度だけが遅くなりやすいのだろうか。

MVNOのネットワークは“道”が狭い

大手キャリアでスマートフォンを利用していると、月々の通信料が6~7千円から1万円はかかるのが一般的だ。それゆえ毎月のスマートフォンの通信料金を節約するために、“格安”をうたうMVNOに乗り換えたという人も、多くいることだろう。

確かにMVNOのサービスは、同じ通信容量であれば毎月の通信料金が大手キャリアの半分から3分の1と、大幅に抑えられるので、料金面でのメリットが非常に大きいのは事実だろう。だが一方で、MVNOのサービスを利用している人から多くの不満の声が聞かれるのが通信速度だ。

というのも、特に昼休みや朝夕の通勤時間帯など、多くの人がスマートフォンを利用する時間帯になると、MVNOのサービスは軒並み通信速度が劇的に遅くなってしまうのだ。MVNOの状況にもよるが、その通信速度は動画視聴はおろか、Webサイトの閲覧やSNSの利用などであっても、まともに利用できないほど遅くなるケースもあり、深刻な状況が続いている。

こうした事象は大手キャリアのサービスではほとんど起きることはなく、MVNO特有の問題となっている。ではなぜ、MVNOの通信速度が遅くなりやすいのかといえば、それはネットワークの帯域幅、要するにデータの“通り道”が狭いからである。

MVNOは、お金を払って大手キャリアから借りたネットワーク帯域を使い、通信サービスを提供している。このことは、鉄塔を建てるなど莫大なインフラ投資をする必要がなくなるため設備投資が少なくて済み、MVNOが安価にサービスを提供できる一因となっている。

だが一方で、帯域幅を増やすにはより多くのお金をキャリアに支払う必要があり、無尽蔵に増やせる訳ではない。それゆえMVNOの帯域幅は大手キャリアよりも狭い、つまり道幅が狭いのである。狭い道路にたくさんの車が通れば渋滞が起こるのと同じように、帯域幅が狭いネットワークに、多くのデータが流れ込めば混雑が起きやすくなる訳だ。

2018年7月1日に実施されたLINEモバイルの発表会より。ネガティブイメージとしてネットワークと通信速度に対する不安が挙げられるなど、MVNOは通信速度の問題に大きな影響を受けている様子が見える

解決に特効薬がない頭の痛い問題

もう1つ、キャリアがMVNOに対して、時間帯に関係なく一定の帯域幅で貸し出していることも、MVNOが簡単に帯域幅を増やせない要因となっている。というのも、ユーザーのデータ通信利用は24時間常に一定という訳ではなく、確かに昼休みや朝夕などはスマートフォンの利用者が増えて混雑が起きやすいのだが、深夜・早朝などはスマートフォン利用者が大幅に減り、帯域が空いている状態になる。

帯域が空いているということは、お金を払ってネットワークを借りているMVNOにとって“無駄”が生じていることでもある。混雑している時間帯に合わせた幅の帯域幅を借りると、空いている時間帯に多くの無駄が発生してしまうことから、MVNOはコストの無駄を抑えるため、混雑時にユーザーが不満を抱かない範囲の帯域幅を借りてサービスを提供しているのだが、ユーザーとともに増えるデータ通信量に耐え切れず、混雑時に通信速度が大幅に落ちてしまうのである。

この問題を解消するにはいくつかの方法がある。1つはキャリアにより多くのお金を支払って、混雑する時間帯に合わせた帯域幅を借りること。KDDI傘下のUQコミュニケーションズが提供している「UQ mobile」は、帯域幅を自らWiMAX 2+のネットワークを提供することで得ていることに加え、他のMVNOより高めの料金設定にすることによって、KDDIからより広い帯域幅を借り、高速な通信速度を維持している。

UQ mobileは他のMVNOより通信料を高く設定することで、売上を増やしより多くの帯域幅を借りることで、通信速度の低下を抑えている

2つ目は、自らキャリアになってしまう方法だ。そうすれば他社にお金を支払う必要はなく、自身のネットワークの帯域幅が使い放題になるため、問題は一気に解消する。この手法を取ろうとしているのが楽天で、同社は2019年に携帯電話事業に参入することを発表している。

そして3つ目は、空いている時間帯の帯域幅を有効活用することで、帯域の無駄を減らし底上げを図る方法だ。実際、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は、自らSIMを発行できる「フルMVNO」となり、法人向けのデータ通信サービスに力を入れることで、深夜などの時間帯にもネットワークを活用してもらう取り組みを進めている。

IIJは個人のスマートフォン向けサービスだけでなく、IoTを中心とした法人向けのサービスにも力を入れることで、深夜のネットワーク稼働率を高め無駄を減らそうとしている

より直接的な施策を打ち出しているのが、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」が提供する「時間プラン」の「深夜割」だ。これは深夜1時から早朝6時の5時間だけ、高速通信を使い放題にするいうもの(それ以外の通信速度は200kbps)。空きのある深夜の帯域を有効活用してもらうことで、利用効率を高めようとしている訳だ。

だが、1つ目、2つ目の方法を取ることができるMVNOは相当限定されるし、3つ目の方法は劇的な効果には結び付きにくい弱点がある。それだけにMVNOにとって、通信速度の問題は頭の痛い問題として残り続けることとなりそうだ。