「カリナン」日本上陸で考えるロールス・ロイス製SUVの存在理由

「カリナン」日本上陸で考えるロールス・ロイス製SUVの存在理由

2018.06.12

ロールス・ロイスは同社初のSUV「カリナン」を日本で発表した。SUVの人気は世界的に高まっていて、自動車メーカー各社がラインアップの拡充を急いでいるというのが昨今の状況だが、ついにロールス・ロイスまでが参戦を果たした格好だ。SUVはロールスのイメージにそぐわない感じもするのだが、これは販売台数を追求した動きなのだろうか、それとも別の動機から進めた同社の戦略なのだろうか。

ロールス・ロイス初のSUV「カリナン」(Cullinan)。その名前は、100年以上も前に南アフリカで発掘された世界最大のダイヤモンドの原石から取ったそうだ

「大量生産するつもりは一切ない」

SUVといえば、基本的には荒れた路面や道路が整備されていないような場所を走るオフロード性能が高いクルマという認識がある。もっとも、最近は乗用車の要素を取り込んだ「クロスオーバー」と呼ばれるSUVが主流になってはいるが、やはり、希少なラグジュアリー・カーを作るロールス・ロイスからSUVが出ることには、少し違和感を覚える。

サイズは全長5,340mm、全幅2,000mm、全高(空荷時)1,835mm、ホイールベース(前輪と後輪の間)3,295mm。6.75リッターのV12ツインターボエンジンを搭載する。日本での価格は税込み3,800万円から。同社のフラッグシップ「ファントム」の「エクステンデッド・ホイールベース」に比べれば2,700万円以上も安い

ロールス・ロイスも販売台数を伸ばしたくてSUVを作ったのか。こんな疑問が浮かんだが、ロールス・ロイスの言い分は違う。

「ロールス・ロイスにとってカリナンとは、従来の基準から大きく脱却したクルマであり、ロールス・ロイスにしか実現できない方法で、新しい世代の顧客の要望にこたえるクルマだ。新モデルの登場が相次ぐSUV市場に進出はするが、価値の面で妥協したり、平凡なラグジュアリーを提供して、大量生産したりするつもりは一切ない」。これは、カリナンの日本発表会に登壇したロールス・ロイス・モーター・カーズのポール・ハリス氏の言葉だ。

5人乗り仕様は後席がベンチシートになっている。ロールス・ロイスで初めて後席を前に倒せるようにしたそうだ。長い荷物も積めるということだから、「カリナン」でスキー場に出掛けるのも一興だろう

ロールス・ロイスがSUVを作る歴史的背景

「“アラビアのロレンス”に思いを馳せてください」。意外な人物に言及したのは、ロールス・ロイス・モーター・カーズ本社から来日したカリナン商品企画マネージャーのジョン・シアーズ氏だ。“アラビアのロレンス”とは「砂漠の反乱」で有名なトーマス・エドワード・ロレンスのことだが、彼がアラブの砂漠を旅するときに使ったクルマは、ロールス・ロイス「シルバーゴースト」の装甲車だったという。この装甲車がSUVだったわけではないが、ロールス・ロイスがオフロード性能の高いクルマを作ることには、歴史的背景がある。おそらく、それを伝えたくてシアーズ氏はロレンスに触れたのだろう。

ロールス・ロイス・モーターカーズでカリナン商品企画マネージャーを務めるジョン・シアーズ氏(左)とアジア太平洋 リージョナル・ディレクターのポール・ハリス氏

数あるSUVの中で、「カリナン」が他のモデルに差をつけられるポイントを問われたハリス氏は、「オンロードでもオフロードでもラグジュアリーな乗り心地が得られるところ」と答えた。カリナンはオールアルミ構造のアーキテクチャーと最新のエアサスペンションを採用しており、ロールス・ロイス車を特徴づける「魔法のじゅうたんのような乗り心地」をオン/オフの双方で実現しているそうだ。こういうクルマであるカリナンならば、「砂の道、雪道、砂利道なども、六本木に買い物に行ったり、銀座に歌舞伎を観に行ったりするのと変わらない、エフォートレスな(苦労を要さない、楽な)感覚で」運転できるとシアーズ氏は話す。

これらの話を総合すると、ロールス・ロイスとしては、SUVを用意しなければ自動車市場の潮流から取り残される、というような理由からカリナンを出すのではなく、ロールス・ロイスらしいSUVが作れると確信したからカリナンを開発した、と言いたいようだ。

「ビューイング・スイート」という使い方。景色を眺めつつ、「カリナン」後席に備え付けの冷蔵庫で冷やしたシャンパンを楽しむ、といったような趣向だ

とはいえ、従来とは異なるクルマなので、カリナンでは新しい顧客にも出会いたいというのがロールス・ロイスの思いだ。ハリス氏は想定する顧客のイメージとして、「目立ちたくて、若くて、多忙で活発で、社交的であり、アウトドアが好きで、冒険を好み、家族を大切にし、現代的な生活をしつつ、フットワークが軽く、スポーツが好きな人」とキーワードを羅列した。ここには出てきていないが、3,800万円からのクルマを買って、維持できるだけの経済力が前提条件になることはいうまでもない。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu