新型「クラウン」試作車に試乗、悩める高級セダンが63年目の大変革

新型「クラウン」試作車に試乗、悩める高級セダンが63年目の大変革

2018.06.18

トヨタ自動車の「クラウン」がまもなく15代目に進化する。日本の高級セダンの代表格でありながら、近年はユーザーの高齢化や保有台数の減少など悩みも多いという。その状況を払拭すべく、デザインもメカニズムも大胆に刷新した新型のプロトタイプをテストコースで試した。

新型「クラウン」のプロトタイプに試乗した

豊田喜一郎の思いをよみがえらせる新型「クラウン」

クラウンが誕生したのは1955年1月1日。当時、多くの自動車メーカーが欧米車のノックダウン生産に従事していた中、純国産の高級乗用車として送り出された。日本人の頭と体で、世界に誇れる高級車を作るというトヨタ自動車創業者、豊田喜一郎氏の思いが形になったクルマだ。

それ以来、クラウンは常に革新に挑戦しながら60年以上の歳月を重ねてきた。例えば現行の14代目では、ピンクや空色など斬新なボディカラーを登場させた。

しかし、トヨタによれば、従来からのユーザーはついてきてくれるものの、新しいユーザーを取り込めないのが悩みだという。平均年齢は約65歳だといい、保有台数は「ゼロクラウン」と呼ばれた12代目の半分ぐらいになっているそうだ。

「クラウン」の歴史

もう一度、豊田喜一郎氏の思いをよみがえらせ、世界を驚かせるぐらいのクルマを作らなければいけないという危機感をトヨタは抱いた。そんな中から、新型クラウンは生まれたという。

シリーズ展開は見直し、商品を一本化

トヨタはまず、従来のイメージから脱却するため、ロイヤル/アスリート/マジェスタという3つのシリーズを1つにまとめた。同じくユーザーの高齢化に悩む「カローラ」が、ハッチバックを復活させたのとは対照的だ。

新型では商品を一本化する

その上で、スポーティモデルとして「RS」を設定した。もちろん“レーシングスポーツ”の略ではない。クラウンは伝統的に形式名に「S」を使っており、初代はR型エンジンを積んでいたので「RS系」と呼ばれた。意味は違えど、その名を現在によみがえらせたわけである。

「RS」のフロントグリルにはバッジがつく

新たな方向性を持たせたことも特徴だ。コネクティッド性能を盛り込んだこともそのひとつ。ただし、これについては全車にDCM(車載専用通信機)を搭載するという以外に情報は公開されなかった。

静岡県のテストコースで対面した新型クラウンのプロトタイプは、昨年秋の東京モーターショーで「クラウンコンセプト」としてお披露目されているものと基本的に同じだったけれど、屋外で見るとやっぱり新鮮だった。

「クラウン」で初めて採用した「6ライト」

なによりも、クラウンの歴史上初めて、前後ドアとリアウインドーの間にも窓がある「6ライト」を採用したことが大きい。真横から見ると、リアまでほぼ水平にすっと伸びたキャラクターラインの上に、ゆったりした弧を描くルーフラインが重なって、かなりエレガントになったという印象だ。

「6ライト」というデザインが新たに採用となった

現行型で話題になった大きなフロントグリルは上下に薄くなり、シャープになったヘッドランプとの一体感が増した印象。リアコンビランプがこのヘッドランプと同じモチーフになっていることも気付いた。欧州車ではおなじみのデザインテクニックで、クルマ全体としての統一感が高まった。

左が現行型「クラウン アスリート」、右が新型「クラウン」のプロトタイプ

ただし、ボディサイズは意外にも全長が少し伸びただけで、全幅は従来どおり1,800mmとしている。小回り性能を示す最小回転半径は5.3mでプリウスと同等だ。この点では日本の道と日本のユーザーのことを大事に考えていた。

幅は現行型と全く同じ1,800mmだ

高級セダンとして作りこんだインテリア

インテリアはまず、アクセスからこだわったという。ドアハンドルは日本人の体格でも握り心地の良い形状と角度に仕立て、重厚感のあるドアの閉まり音を表現するため低音を増幅し、高音を抑える構造にしたそうだ。

インパネは低く、クラウンとしてはかなり開放的だ。ドアトリムとのつながりも重視しており、包まれ感もある。スイッチが整理されているのも気付いた点で、センターの上下2段のディスプレイは見やすかった。

インパネは低くて開放的(画像提供:トヨタ自動車)

センターのエアコンのルーバーが左右に首を振る、クラウンらしい仕掛けは健在。カップホルダーは使わないときはリッドがせり上がる凝った作りで、1.9秒という作動時間も実験を繰り返して決めたという。しかもリッドには滑り止め加工が施してあり、片手でキャップを開け閉めできる。日本製高級車ならではのおもてなしだ。

センターのエアコンは首振り機能つき

インテリアのカラーコーディネートが豊富に用意されていることにも感心した。エクステリアを含め、色で楽しめるクルマになりそうだ。後席は身長170cmの筆者であればゆったり過ごせる。スロープしたルーフラインで懸念された頭上空間も問題なかった。

多彩なパワートレイン、2Lターボが好印象

パワーユニットは3種類。2代目から受け継がれてきた6気筒ガソリンエンジンが消え、レクサスの「LC」や「LS」に積まれているものと基本的に同じ3.5LのV型6気筒ハイブリッド、「カムリ」にも積まれる2.5L直列4気筒ハイブリッド、現行型の途中で追加した2Lガソリンターボエンジンとなる。

試乗したコースは、アップダウンとコーナーが連続する、クラウンとしてはハードなもの。よって、販売の主力になりそうな2.5Lハイブリッドは、登り坂での4気筒の唸りが耳に届きがちだった。その点、3.5Lハイブリッドは6気筒だけあって滑らか。ただし、こちらはコーナーで前の重さが気になった。

動画提供:トヨタ自動車

ということで、個人的なお気に入りは2Lターボのガソリン車。これも4気筒だが高回転までスムーズに回り、力も十分で、良い意味でクラウンらしからぬリズミカルな走りが上質感とともに堪能できた。

最大のウリは何か

シャシーはひと足先にモデルチェンジしたレクサスLS用をベースに幅を狭めたもので、トヨタの縦置きエンジンでは初のTNGAプラットフォームとなる。

新型「クラウン」の開発を担当したトヨタの秋山晃チーフエンジニアが好きなのは斜め後からのアングルだそう

正確でシャープなステアリングを狙ったという言葉は、すべての試乗車で体感できた。途中で乗り換えた現行型のおっとり感に驚くほどだった。もうひとつの目標として掲げていた、あらゆる速度域で目線が動かない乗り心地は、RSはややゴツゴツ感があったものの、標準型はクラウンらしいまろやかさと2018年のセダンらしい安定感が同居していた。

安全装備ではトヨタセーフティセンスの第2世代を標準装備し、駐車場では壁だけでなく歩行者や他車も感知して自動ブレーキなどが作動するパーキングブレーキサポートも搭載した。でも、新型の最大のウリは6ライトによるエレガントなフォルムだと思う。このフォルムで新たなユーザーを惹きつけられるかに注目したい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。