高齢化社会をにらんだ「サービス介助基礎検定」とは?

高齢化社会をにらんだ「サービス介助基礎検定」とは?

2018.06.21

日本は空前の高齢化社会となっている。もちろん、高齢者が健康でいるのが一番だが、介護・介助が必要になる方も増えるだろう。また、障がい者や傷病を負った人にも手助けは必要となる。

そうした状況に対して、介護福祉士は足りない。介護士は国家資格であり、この資格を取るためには相応の実務経験や福祉系の学校に通う必要がある。また、資格取得後は本職として福祉施設などで働くことが多い。

ただ、これでは増加する高齢者や手助けが必要な障がい者、傷病者を社会で支えるのは難しい。施設には入所していなくても、公共交通機関などで、手助けを必要とする方は意外と多い。そうした方々に対し、コミュニケーションを取りながら手助けをするサービス介助士が注目され始めている。

資格が取得しやすいサービス介助士

サービス介助士の最大の利点は、誰でもなりやすいこと。介護士と異なり国家資格というのではなく、座学と実技、そして検定を受ければサービス介助士となれる。そして、本職や学業を続けながらサービス介助士として活動できる。いいかえると、サービス介助士で収入が生じるわけではないが、困っている方や手助けを必要としている方に対して、コミュニケーションする知識が得られる。いわば“ボランティア”だが、これからの超高齢化社会には必要な存在だ。

バリアフリーでないと移動が困難になる車いす

また、職能のひとつとして役に立つ。たとえば鉄道の職員。多くの乗客がある鉄道では、手助けを必要とされる方が少なくない。そうした方々をサポートできる駅員や車掌がいれば心強い。また、空港でも需要があるだろう。空港はターミナルが広い。もちろん主要空港には動く歩道やバリアフリーが充実しているが、地方空港のなかにはそうした設備が乏しいところもある。

サービス介助士は、そうした場面をヒューマンパワーでサポートするというものだ。そんなサービス介助士の講習を見学してきた。

講習の舞台は飯田橋・市ヶ谷付近にある法政大学。なぜ法政大学なのかというと、キャンパス最寄りの飯田橋駅でサービス介助士の活動を6月中旬以降に行う予定だからだ。そのため、サービス介助基礎検定を同大学で実施。なお、法政大学だけではなく、東京メトロも協力する。メトロとしては、駅ホームでの安全性の向上、地下鉄利用者の利便性向上がねらいだ。また、サービス介助士は、公益財団法人日本ケアフィット共育機構の資格で、同財団法人が講習や基礎検定を実施する。ここで生徒が資格を得てから、飯田橋駅での活動となる。

飯田橋駅と聞いて合点がいった。飯田橋は東西線、有楽町線、南北線、そしてJRが乗り入れる公共交通の要衝で、複雑な駅構内となっている。しかも、飯田橋で地下鉄を利用したことがある人ならわかると思うが、地下通路がかなり長い。たとえば東西線飯田橋駅から南北線、有楽町線の飯田橋駅に向かうにはかなりの距離がある。健脚ならば特に問題はないが、高齢者や体が不自由な人には負担になる。それをサービス介助士がサポートしようというのだ。

ボランティアに意欲をみせる学生

まず座学でサービス介助士のことを学ぶ

講習当日は20人弱の生徒が受講していた。彼ら彼女らは法政大学の学生で皆若い。こうした若い世代がボランティアのために講習に参加しているのをみると、素直に感動した。自分が彼らの世代だった頃、ボランティアに参加しようと思っただろうか……。

さて、講習は座学と車いすの実技。「車いすなんて誰もが押せる」と思う方もいらっしゃるだろうが、見学していてそうではないことがわかった。車いすのブレーキの位置など知らなかったし、そもそもどうやって人を乗せるのかわからない。基礎知識がなければ正しく使えないのだ。

まずは講師によるお手本。終始、車いすに座った方に威圧感を与えない高さでコミュニケーションしている

実技講習では二人一組になって、車いすを押す人、乗る人を交代しながら体験していた。約10cmほどの段差が設けられ、人を乗せたままそれを乗り越え、そして段差から安全に降りる練習が繰り返された。街中には歩道など、10cmほどの段差は至るところにある。それを考えると実践的な練習といえる。

印象的だったのは、段差を乗り越えたり降りたりする際に、乗っている生徒から「コワイ」という声が聞こえてきたこと。講師いわく「コワイと思わせないように車いすを押すのが大切」とのことだ。このほかにも、視覚障害者を想定し目隠しをした生徒をイスに座らせたり、階段を上り下りする訓練が行われた。

左上:まずは二人一組になり交互に車いすに乗る。右上:車いすで段差を越える練習。太もも部分で押すのがコツらしい。左下:目隠しした生徒を安全に段差から下ろす。右下:目隠しした生徒をイスに座らせる。まず、手で触ってもらい、触覚で台座や背もたれを確認してもらう

なぜ車いすの講習に参加したのか

お話をうかがった学生。男の子は大学1年、女の子は大学2年と若い

講習後、学生にお話をうかがう機会を得た。今回、この活動に参加した理由を問うと、大学1年生の男の子は「大学のボランティア団体に入会していますが、ペットボトル集めやゴミ拾いがメイン。人に接することのできるボランティアを体験したかったです」と話す。大学2年生の女の子は「公務員や鉄道会社といった公共の仕事を目指しています。ボランティアを体験しておけば、そうした仕事に就きやすくなるかもしれないと思いました」と笑みをみせた。

就職に有利になるかもという打算もみえたが、筆者はそれでいいと思う。現行では50人以上の民間企業は2.0%の割合で障がい者を雇用しなくてはならない。国や地方公共団体は2.3%だ。それが段階的に引き上げられ、平成33年にはそれぞれ2.3%、2.6%に引き上げられる。

こうした方々が安心して社会で活躍するために、サービス介助士の存在は心強く、介助士が企業に身近にいるのといないのとでは、安心感が異なってくるだろう。就職に有利になるかもというのが動機であっても、いざ車いすを動かしたり、困っている方に適切なコミュニケーションが行えたりするスキルは身につけておくべきだと思う。

今後も、こうした学生が増えていくことに期待したい。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。