ユーザー平均は70歳? 若返りが急務の「カローラ」に新型車が登場

ユーザー平均は70歳? 若返りが急務の「カローラ」に新型車が登場

2018.06.26

トヨタ自動車が新型車「カローラ スポーツ」を発売した。誕生から52年を経たカローラだが、ハッチバックという新たなスタイルで登場する新型車が背負う使命は、ずばりユーザーの若返りだ。自動車業界共通の命題に挑む新型カローラとは、一体どんなクルマなのだろうか。事前説明会でチーフエンジニアに聞いた話も交えつつお伝えしたい。

トヨタが発売した新型車「カローラ スポーツ」

トヨタが若者に提案する新しい「カローラ」

カローラは1966年に誕生し、今度の新型で12代目となる。これまでの累計販売台数は4,600万台以上。現在は世界の16の工場で生産し、150カ国以上の国と地域で販売しているグローバルな大衆車だ。新型カローラの開発を担当したトヨタの小西良樹チーフエンジニア(CE)は、カローラの販売状況を「10秒に1台、お客様の手元に届く計算」(以下、発言は小西CE)と表現する。

「全ての人に移動の喜びを」をコンセプトとして1966年に誕生した初代「カローラ」

「『アクシオ』というセダンは70歳、ワゴンの『フィールダー』は60歳――」。説明会で会場がどよめいたのは、小西CEがカローラオーナーの平均年齢に言及した時だった。この数字は、長くカローラに乗り続けている人がいる証明だと考えれば立派だが、当然ながら若いユーザーを取り込めなければ販売台数は先細る一方だ。

ユーザーの平均年齢は、セダンタイプの「カローラ アクシオ」(左)が70歳、ワゴンタイプの「カローラ フィールダー」が60歳だという

新型カローラ開発にかける思いを「カローラを若い人たちに」とした小西CEは、カローラ スポーツを「次の50年に向けて最初に打ち出すクルマ。今のお客様も大事だが、次の50年に向けて若い人にも響く商品にしたい」と力を込めた。ターゲットユーザーは20~30代の男女、カップルなどの「新世代ベーシック層」と設定。そういった顧客に届くよう、「2つの軸」によるクルマづくりを行ったそうだ。その軸とは、「コネクティッド」と「クルマ本来の楽しさであるデザイン・走り」だとする。

フロントマスクに「C」のマーク

まずデザインについてだが、小西CEは「ワイド&ロー、スポーティーなクルマ」を目指したと話す。特徴として、フロントはボンネットをラウンディッシュな造形とし、ヘッドランプは薄型でシャープにしたとのこと。グリルには大型の台形を用いて低重心感を出したそうだ。フロントマスクで目を引くのは、新たに採用したという「C」のマーク。もちろんモチーフは車名の頭文字だ。リアからの見え方では、「ラグビーボールのようなカタマリ感」のある意匠を狙ったという。

「カローラ スポーツ」(左)には「C」マークが初採用となった。右は新型「クラウン」

室内は「シンプルで上質、開放的な空間を目指した」とのこと。例えばドアトリムからインパネにかけては、水平基調の造形を採用することで開放感を演出している。シートには「スポーツシート」と「スポーティーシート」があり、「スポーツ」の方はカローラ スポーツで新規開発し、初めて導入したものだ。「しっかりホールドして気持ちよく走れる、疲れないシートになっている」というのが小西CEの説明だ。

エクステリアカラーは8色

100万キロの走行試験を行ったグローバルカー

デザインと同じく軸となるのが走りの部分だが、小西CEが開発当初からチームで共有した理想は「ずっと走っていたくなるような気持ちの良い走り」というもの。世界5大陸で延べ100万キロの走行試験を実施し、走りを熟成させたという。8月にはマニュアルトランスミッションを搭載したモデルも発売する計画だ。

パワートレインは1.2Lターボと1.8Lハイブリッドから選べる

そしてコネクティッド機能だが、新型カローラおよび同時発売の新型「クラウン」は、トヨタにとってコネクティッドカーの「ファーストバッターとなる」とのこと。車載通信機「DCM」を全車で搭載し、例えば故障のときに警告灯が点灯したら自動的にコールセンターに接続し、故障の程度や走行可否についてアドバイスを受けられる「eケア走行アドバイス」であったり、AIを用いた音声対話サービス「エージェント」などの機能を使える。スマートフォンのアプリ「LINE」でクルマ自体を“友だち”登録し、マイカーと会話するような趣向のサービスも用意しているそうだ。

ハイブリッドであれば最高でリッター34.2キロの燃費(JC08モード)が得られる

こういった特徴を持つカローラ スポーツだが、説明会の後、小西CEと話をする機会があったので、気になることを質問してみた。

実は伸びているハッチバック市場

まず、カローラ店で販売するカローラ スポーツが、トヨタにとってどのような立ち位置になるかについては、「(カローラ店には)『アクア』『プリウス』があるが、その間を埋めるのがカローラのポジショニングだ。価格的にも、間を埋めるような商品になっていく」とする。ハッチバックなのでアクアとポジションが重なりそうだが、「アクアとはセグメントで立ち位置が違う。カローラはCセグメント、アクアはBセグメントだ。装備や使っている材料、タイヤの大きさなどにも違いがある」とのことだった。

「アクア」(画像)と「カローラ」はセグメントが違う

次に、ユーザーの若返りを図りたいというトヨタの願いが前面に出ているカローラ スポーツだが、既存の顧客層に対する気配りはどうなのか。この問いに対して小西CEは、このクルマが搭載している安全装備の充実ぶりに触れつつ、「自動ブレーキがちゃんと効く、長距離走行時にステアリングのサポートが受けられる」などのポイントを挙げ、年配のドライバーでも安心なクルマに仕立ててあることを強調した。ハッチバックに続いては、既存モデルと同じセダン、ワゴンの発売も計画しているという。

新型「カローラ」の開発を担当したトヨタ自動車 Mid-size Vehicle Company MS製品企画 ZE チーフエンジニアの小西良樹氏

そもそも、なぜハッチバックにしたのかについては、「ハッチバックというクルマの市場が少しずつ伸びている」ことも背景にあるとする。「顕著なのが米国。これまでの米国のイメージにはないクルマだが、ホンダさんの『シビック』はハッチバックがすごく売れていると聞く。国内でも例えば『アクセラ』(マツダ)などがある。流行のSUVよりはコンパクトだが、荷物がしっかり入って、取り回しがしやすく、価格も低いというクルマのニーズが出てきている」というのが小西CEの市場分析だ。もちろん、若々しいイメージを押し出すべく、あえてハッチバックから新型カローラをスタートさせた側面もある。

「次の50年」発言の真意は

最後に、小西CEのプレゼンテーションで気になった「次の50年」という言葉についても、真意を聞いてみた。豊田章男トヨタ社長が言っていたことだが、自動車業界では100年に一度の大変革が起きている。自動化や電動化が、どのくらいの早さで進むかは誰にも分からない中で、次の50年を見越した新車を開発することなど可能なのだろうか。

「正直、クルマが50年先にどうなっているかは私にも分からないが、カローラはこれまで、安全・安心、信頼性が高い、使い勝手がよいという、『ベースのところ』をどの時代にもキープしてきた。そのベースをキープした上で、お客様と社会が求める、その時代にあった価値を、姿かたちを変えつつ提供してきたのがカローラの歴史だ。モビリティである以上、50年後も信頼性などの大切さは変わらない。その時代にニーズのあるものを、将来のチーフエンジニアが付与していくことになる」

安全・安心、信頼性、使い勝手という初代以来の伝統を引き継ぐ新型「カローラ スポーツ」

つまり、時代に即した変化を遂げつつも、ベースの部分は不変というのがカローラの本質ということだ。そういうクルマであるだけに、10年後のカローラが自動運転になっていたり、次のカローラが電気自動車になっていたりしても不思議ではない。実際のところトヨタは、中国でカローラのプラグインハイブリッド車(PHV)を発表していたりする。

「トレノ」と「レビン」のベースとなったクルマと聞けば、若々しさやスポーティーといった印象とは無縁でないと思われるカローラだが、今では「カローラという名前自体を知らない人も20~30代には多い」と小西CEは率直に認める。今回のハッチバックで、次の50年も乗り継いでくれるような新しい顧客と出会えるかどうかは見ものだ。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。