なぜスマートフォンの購入は「割賦払い」なのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第20回

なぜスマートフォンの購入は「割賦払い」なのか

2018.06.29

スマートフォンを購入する際、多くの人は24回、48回などの割賦を組んで購入していることだろう。携帯電話の購入はかつて一括払いが主流だったのだが、なぜ割賦払いが主流となっていったのだろうか。そこには2つの要素が大きく影響している。

メリットもデメリットもある割賦払い

大手キャリアやMVNOなどでスマートフォンを購入する際、多くの人は一括払いではなく、2年間の割賦を組んで購入しているのではないだろうか。実際大手キャリアは、NTTドコモの「月々サポート」やソフトバンクの「月月割」など、24ヵ月以上という長期間の割賦払いで端末を購入してもらい、毎月の割賦料金から一定額を値引きするという仕組みを導入している。

大手キャリアからサブブランド、MVNOに至るまで、スマートフォンの販売は一括ではなく、割賦を組むことが一般的となっている

また最近では、KDDI(au)の「アップグレードプログラムEX」のように、4年間の割賦契約をする代わりに、2年経過後に端末を買い替えた際に割賦残債をゼロにするという仕組みを導入するキャリアも増加。一層長期間の割賦を組む必要が出てきている。

最近ではauの「アップグレードプログラム」のように、48カ月の割賦を組む代わりに25カ月目以降に買い替えた際に残債の支払いが不要になる仕組みも増えている

なぜ割賦を組むのかといえば、最近では10万円を超える高額なスマートフォンも多く、高額なスマートフォンを購入しやすくするためである。実際キャリアの割賦払いは購入当初の料金負担が軽減されるし、利子が付くどころか値引きまで受けられてしまうなど、ユーザーにとって一定のメリットがあるのは事実だろう。

しかしながらこの割賦が問題となるのは、キャリアを解約する時である。当然のことながら割賦は全ての支払いが終わるまで残債があるし、キャリアを解約すると毎月の端末代にかかる割引も適用されなくなる。それゆえ残債がある状態でそのキャリアの契約を解除してしまうと、値引きなしで残債を一括払いする必要が出てきてしまうのだ。高額な端末を購入し、短期間で解約してしまった場合、携帯電話の解除料よりもはるかに高い料金を支払う必要があることから、キャリアが顧客を“縛る”要因として問題視する向きもある。 実は2000年代半ば頃まで、割賦を組んで携帯電話を購入するという発想はなかった。というのもかつては、毎月の通信料金の一部を、端末料金を値引く「販売奨励金」として活用し、端末価格を0円、1円といったように大幅に値引いて販売するのが一般的だったため。タダ同然で携帯電話が買えてしまうため、割賦を組む理由が存在しなかった訳だが、それが一転して現在のように端末価格が高くなり、割賦払いが主流になったのかというと、大きく2つの要因が影響している。

普及に影響したソフトバンクと総務省

1つはソフトバンクである。現在は総合通信会社として知られるソフトバンクだが、その前身は2006年に、現在のソフトバンクグループである旧ソフトバンクが、ボーダフォンの日本法人を買収して設立したソフトバンクモバイルである。

現在のソフトバンクは、ボーダフォンの日本法人を買収して設立したソフトバンクモバイルが前身。買収当初は業績不振が続き他社のようにお金をかけることができなかった

実は旧ソフトバンクは、この買収に際して1兆7500億円もの金額を費やし、膨大な借金を背負うこととなった。しかも当時、ボーダフォンの日本法人は不振が続き赤字経営。それゆえソフトバンクモバイルは資金が潤沢ではなく、従来のように販売奨励金による値引きという施策を取るのは難しかったのである。

そこで生まれたのが、現在の月月割にもつながる独自の端末購入プログラム「スーパーボーナス」である。これは端末を24ヵ月の割賦払いをする代わりに、頭金の支払いを不要にしたり、毎月の割賦料金から一定額を割り引いたりするなどの特典を提供するというもの。販売奨励金の代わりに長期間の割賦を組んでもらうというリースに近い仕組みを導入して端末を購入しやすくした訳で、ある意味苦肉の策だったともいえる。

その販売手法が一転して主流になったのには、もう1つの要因となる総務省だ。総務省は以前より、キャリアの販売奨励金による販売手法が、端末を頻繁に買い替える人だけが得をし、買い替えない人は損をする仕組みであるため、不公平だと問題視していたのだ。

そこで2007年に総務省が実施した有識者会議「モバイルビジネス研究会」で、端末代と携帯電話代は明確に分離すべきだとの見解がなされた。その結果、キャリアは従来のような販売奨励金による端末価格の大幅値引きが難しくなってしまった。そうしたことからソフトバンクモバイル以外のキャリアも、販売奨励金なしで端末を購入しやすくするべく、割賦払いを採用するに至ったのである。

通信料金と端末価格の問題はその後、スマートフォンが登場し、市場競争が激化したことで境界線が再び曖昧になり、その度総務省が有識者会議を開いてキャリアへの指導を加えていく……といういたちごっこが続いている。だが割賦払いは、値引きなしでも高額な端末を購入しやすくなるユーザーメリットがあること、そしてキャリアにとっても、ユーザーの長期契約に結びつくメリットがあることから、大手キャリアだけでなくMVNOやサブブランドにも広がり、定着しているようだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。