「ものづくり」を愚直に貫く衛生陶器メーカー「TOTO」

「ものづくり」を愚直に貫く衛生陶器メーカー「TOTO」

2018.07.05

1970~80年頃から、ファクトリーオートメーションが加速した。ファクトリーオートメーションは、ICに組み込まれたプログラムで産業用ロボットなどを制御。作業効率を向上させ、人間の労働力を軽減させるものだ。

人間から労働機会を奪うという批判もあるが、工場での人間の安全性を向上させるというメリットもある。特に2000年以降、IoTやAIの進化により、ファクトリーオートメーションがますます浸透してきた。ただ、ファクトリーオートメーションだけでは、どうにもならない分野もある。意外と思うかもしれないが、大小便器や洗面台といった衛生陶器がそれにあたる。

そこで、衛生陶器で圧倒的な国内シェアを誇るTOTOの工場を見学してきた。ちなみにTOTOは創設から100年が経つ企業で、日本ガイシやノリタケカンパニーリミテドなどと同じ森村グループの企業だ。

さて、滋賀県などにも生産拠点があるが、原点ともいえるのは福岡県・北九州市・小倉で、1917年に創立した同社の象徴的な場所といえる。門司港に近く、アジア地域への輸出がしやすいこと、原材料の産地が近いことなどからこの地が選ばれた。

広大な敷地を持つ小倉工場

まず正門をくぐってから、製品づくりを行っている建家まで結構な距離がある。正直、炎天下の中、この距離を歩くのは大変だなと思った。仮に猛暑の日に遅刻しそうなときに走ったら、筆者ならあきらめてしまいそうだ。

左:TOTO工場に掲げられたおなじみのロゴ。右:工場敷地内は45,900平方メートル。大分県中津工場よりかは狭いがTOTOのルーツともいえる工場だ

ところが、工場内に入ってみると、従業員には杞憂なのかなと思った。というのも、工場内は高温・多湿な環境が多かったからだ。これは、陶器を焼く窯​、および乾燥室​などの影響だという。こうした場所で作業しているスタッフならば、屋外の暑さなど問題にならないかもしれない。

さて今回、TOTOの小倉工場を訪れた最大の目的は、同地で開催されるある取り組みを取材するためだ。それは「衛陶技能選手権」というもの。これは、TOTOグループのものづくりのDNAを継承し、人材を育成していくというのが主なねらいだ。

中国、台湾、タイ、ベトナム、インド、アメリカ、メキシコ、インドネシア、日本にある計15拠点から、技能の優秀なスタッフを1~3名ずつ小倉に招聘。ここで、それぞれの技能を披露し、競い合うことになる。

まず、その国際色の豊かさに驚いた。TOTOは紛れもなく国内での優良企業だが、その知見と経験、そして技術を世界中に伝えようとしているのがわかる。海外の生産拠点からスタッフを集め、こうした選手権が行われるのは、今回で12回目だそうだ。ファクトリーオートメーションが当たり前となった産業とは異なり、いわゆる“職人”が世界中におり、そして技能を競い合うというのは大企業ではあまり聞いたことがない。

左:選手権開会式の様子。福岡のRKBも取材に訪れていた。余談だが、この取材のあとに泊まったホテルで、夕方のニュースを観たところ、早速放映されていた。右:選手権参加者の国旗を集めたディスプレイ。中心にトロフィーがある

意外と難しい「施釉」作業

選手権の前に、施釉(せゆう)体験をする機会がメディアにもうけられた。施釉とは釉薬(ゆうやく)を便器や洗面台に塗布する作業。こうした衛生陶器は土から作られているが、多くの方がそうは感じないだろう。それは、施釉によって白くピカピカと輝き、ツルツルとした質感になるからだ。

この作業を体験させていただいたが、これがかなり難しい。タイル状の衛生陶器と同じ素材にスプレーガンで釉薬を塗布するのだが、噴射力がかなり高く、均一に塗布することができない。しかも、塗りの厚さは0.6mmとのことだ。筆者が塗布したタイルを割って、塗りの厚さを確認していただいたところ、0.3mmほどだった(苦笑)。

しかもスタッフは、釉薬の厚さを目視で確認できるようにならないといけない。選手権では、施釉されたタイル断面を見て、0.05mm単位で判定する競技も行われた。0.05mm単位を目視で判断するとはまさに職人技だ。

左:施釉に使われるスプレーガン。右:施釉の練習に使われたタイル

メディアは塗布に失敗してもダメージのないタイルだったが、選手権参加者はタンクの塗りで競った。かなり重量があるはずなのに、女性でも自分で動かして塗布面をスプレーガンの方向に向けなくてはならない。しかも、前述したとおり高温・多湿だ。にも関わらず、選手の皆さんは涼しい顔で作業していたのが印象的だった。

左:塗布量の異なる破片から0.6mm施釉されているサンプルを探す。すべて目視だ。右:面積の大きなタンクを施釉する競技参加者
捺染により刻まれたTOTOロゴ。左下は筆者の手によるもの

施釉のあと、捺染(なっせん)体験もさせてもらった。捺染も聞き慣れない言葉だが、これはTOTOのロゴを表面に染める作業。TOTOロゴをかたどったフィルムを置き、その上からインクを塗り込む。原理は単純だが、これも失敗するとムラになってしまう。幸い筆者はうまく捺染することができた。

さて、この選手権の目的は、世界各国のスタッフの技能向上が第一義だが、もうひとつ隠れたねらいがある。それは、日本を楽しんでもらうこと。事実、選手権に参加したベトナムのグエン・ドゥック・アンさんに話をうかがえたが、「技能向上も大切ですが、何よりも日本に来られるというのが最大の楽しみでした」と笑みをこぼす。

各国の成績優秀者がこの選手権に招待されると前述したが、つまりそういうことだ。研修だけでなく、がんばったスタッフに対して報いるという意味合いもある。こうすることで、選にもれたスタッフのモチベーションは上がるし、選手権に参加した各国のスタッフは、TOTOグループの一員として結束を深められる。選手権のあと、多くのタクシーが工場の玄関口にズラッと並んでいたが、皆で懇親会に向かうそうだ。各国から集まった彼ら彼女らにとって、きっと有意義な一晩になったことだろう。

不思議なカタチのミュージアム

選手権の翌日、本社・小倉第一工場の敷地南端に位置する、TOTOミュージアム見学に案内された。正門から入ったときに気になっていたのだが、なんとも奇抜な建物だ。宇宙船のよう、と表現すればよいのか……。担当者によると、ある意味、ランドマーク的な存在になっているという。

展示物に関してはあまり詳報しないが、なぜこのようなミュージアムを建てたのか考えてみた。それは地域貢献にあると思う。たとえば地元学校の生徒たちによる工場見学。工場で、どのように衛生陶器が作られるのか理解を深めたあと、このミュージアムで歴史や科学を学ぶ。もちろん、地元だけではなく、遠方からの工場見学もありだろう。何よりも、ものづくりの大切さを感じ取ってもうらうことができる。

左上:奇抜なカタチをしたTOTOミュージアム。右上:国産初の水洗便器。こうした歴史的なものも展示されている。左下:東京オリンピックのエンブレムのデザイナーがデザインした便器。右下:便器がシートになった3輪バイク。もし、街で遭遇したら、笑顔がこぼれるだろう。もちろん、非売品

何十年か前、衛生陶器のテレビCMは局に断られていたと聞いたことがある。だが、今や人の生活に欠かせないものとして、テレビCMの放映はもちろん、各地にショールームもできている。今でも憶えているが「おしりだって、洗ってほしい」のセリフのCMのインパクトが、転機になったのではないかと思う。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
関連記事
Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

関連記事