見た目の変化は小幅だが……試乗で感じた新型フォレスターの実力

見た目の変化は小幅だが……試乗で感じた新型フォレスターの実力

2018.07.14

通算5代目に進化したSUBARU(スバル)のSUV「フォレスター」。見た目はあまり代わり映えしないという声もあるが、ひと足先にテストコースで乗ると、パワートレインから安全装備までいろいろな部分が進化していた。商品企画担当者の声を交えて紹介していこう。

通算5代目となる新型「フォレスター」に試乗した

ライバルひしめく日本市場

今年6月に第5世代となる新型が発表されたスバルのSUV「フォレスター」。米国では昨年、モデル末期にもかかわらず17.7万台を売っているヒット車種になっている。そのためだろう、新型の世界初公開の場は米国ニューヨークのモーターショーだった。

一方の日本では、同じクラスのSUVとして、一昨年はトヨタ自動車「C-HR」、今年は三菱自動車工業「エクリプス クロス」が登場し、今後もホンダ「CR-V」が復活するなど、激戦のマーケットになりつつある。

新型「フォレスター」が乗り込むのは激戦区だ

デザイナーは大変だった?

そんな中でフォレスターはどう攻めるのか。商品企画本部で新型のプロジェクトシニアマネージャーを務めた只木克郎氏に話を聞いた。まず、旧型とあまり変わっていないという声もある、パッケージングやスタイリングからだ。

「フォレスターは3代目でSUVらしさを強調し、4代目でグローバルで通用するサイズにしました。いずれも満足しているお客様が多かったので、大きく変える必要はないと思いました。なので、デザイナーは苦しんだかもしれません。スバルにとっては視界も外せないポイントなので、見た目重視で窓を強く傾けたりすることもできませんので」(以下、発言は只木氏)

新型「フォレスター」の商品企画を担当したプロジェクトシニアマネージャーの只木克郎氏

その中で、前後フェンダーの厚みを出し、エンジンフードは車両感覚が掴みやすいよう両端を持ち上げた。サイドウィンドウを囲むようなキャラクターラインも特徴だ。ボディとキャビンを分けることで、フェンダーラインが強調できたのではないかと只木氏は語っていた。前後とも「コ」の字型に光るランプは、リアについては足回りとキャビンをしっかり見せるべく、高い位置に掲げたという。

エンジンフードの両端がせり上がっている

インテリアはゆったり乗ってもらうことを心がけ、ソフトな形と素材にこだわったとのこと。ドアトリムの上、センターコンソール両脇までをソフトな素材で覆っている。着飾るのではなく包まれ感を意識した。センターコンソールを高くして、骨格を感じさせるとともに包まれ感を表現した点もポイントだ。

2つのパワーユニットを体験

新型フォレスターは日本では6月20日に発表されたが、発売はニューヨークでお披露目された2.5Lガソリン車が7月19日、「e-BOXER」(eボクサー)という名称が与えられた2Lモーターアシスト仕様が9月14日となる。そこで試乗会は、量産前の車両をクローズドコースでテストするという形になった。

今回のフォレスターには上記2つのパワーユニットがあり、どちらもリニアトロニックと呼ばれるCVTを介して4輪を駆動する。1997年に初代がデビューして以来、存在し続けてきたターボ車はひとまず姿を消すこととなった。

eボクサーが登場し、ターボ車が姿を消したことは、今回の新型登場で「フォレスター」に起こった大きな変化だ

最初に乗ったのは2.5L。こちらは「インプレッサ」や「XV」に積まれている2Lに続いて直噴化された。これまで、2Lが主力だったフォレスターということもあって、2.5Lの余裕あるパワーとトルクは、あらゆる速度域で必要な加速をリニアに味わうことが可能だった。なおかつ、自然吸気ならではの回す楽しさも堪能できた。

「フォレスター」で電動走行が味わえる!

しかし、個人的に印象に残ったのはe-BOXERのほうだ。基本構造は旧型「XVハイブリッド」に積まれていたユニットと同様だが、走行用バッテリーをニッケル水素からリチウムイオンに変更することなどにより、軽量化を果たしつつ効率を高めたという。

eボクサーの走りは印象に残った(画像提供:スバル)

効果は明確で、旧型XVハイブリッドではほとんど体感できなかった電動走行が、さまざまなシーンで味わえた。加速時のモーターアシストも力強く、低中速では2.5Lと同等の加速が味わえた。比較のために乗った旧型2L自然吸気エンジン車との余裕の差は段違いだった。

「e-BOXERの基本はXVハイブリッドと同じですが、バッテリーを変更しただけでなく、コンポーネンツを作り直すことで電動効率を上げました。9割は一新しています。モーターの使い方を変えたことも特徴です。名前を改めたのもそのためです。モーターはレスポンスが良く、超低回転から力が出せます。その点を生かして、環境対応だけではなく扱いやすさや軽快感も目指しました」

eボクサー導入は環境面だけでなく、新型「フォレスター」の走りにも効いてくると只木氏

只木氏によれば、2.5Lとe-BOXERは上下関係ではなく、並列のラインアップだという。主に市街地で乗る人はe-BOXER、高速メインの人は2.5Lというすみ分けを考えているそうだ。ターボは環境性能を考えると難しいし、販売台数では1割に満たなかったので、デメリットを克服するとともに扱いやすいスポーティさを目指した。それがe-BOXERとのことだった。

新世代プラットフォーム採用の効果は

新型フォレスターのメカニズムでもうひとつのポイントは、「インプレッサ」「XV」に続いて新世代プラットフォームを採用したことだ。結果は走りはじめてすぐに分かった。車体全体の剛性が上がり、小刻みな上下動がなくなったからだ。

また、旧型はモデルライフ途中でステアリングの反応を鋭くしており、コーナーでゆったり傾くサスペンションに対して違和感があった。新型では切っていくにつれギア比が早くなるバリアブルレシオを採用する一方、コーナーでの傾きを抑えるスタビライザーを太くすることでバランスを取っていた。

コーナリングでも新型「フォレスター」の進化を実感(画像提供:スバル)

只木氏によれば、従来は足回りとボディの動きがバラバラで、足回りがコーナーに入ったあとボディが付いてくるようだった。それを直し、走りの一体感を出したという。

2.5Lでは特設のオフロードコースも走った。まず感じたのはこのクラスの平均値を大きく上回る220mmの最低地上高で、オーバーハングやフロアをぶつける気配さえない。走行モードを選べる「Xモード」でスノー・ダートを選ぶと、アクセルペダルを踏み込んだままでもスリップする車輪だけに弱くブレーキをかけるなど、きめ細かい制御を行うことで、泥道を着実に進んでいった。

特設のオフロードも着実にこなしてみせた新型「フォレスター」(画像提供:スバル)

アイサイトのスバルは車内にも目を向けはじめた

スバルが以前から重視していた安全性の面では今回、新たに採用となった「ドライバーモニタリングシステム」が特筆できる。インパネ中央に内蔵したカメラがドライバーの顔を認識し、居眠りや脇見運転などを警告することで安全運転を支援するだけでなく、「おもてなし」を提供する機能だ。おもてなし機能とは、ドライバーが乗車するとシートの位置やドアミラー角度、エアコン設定、メーター表示などを自動的に再現するというもの。最大5人まで識別可能だという。

「アイサイトで車体の外を見てきたので、今度は中も見ようという発想で研究開発を進めました。当初は予防安全のみでしたが、おもてなし機能も間に合ったので入れました。大きな会社では安全装備とおもてなし装備は別々の部署が担当するかもしれません。スバルの規模なので2つの機能を両立できたといえるでしょう」

登録済みの顔をすばやく見分け、各人の好みに合わせたセッティングを行う「ドライバーモニタリングシステム」も新型「フォレスター」の特徴だ

大きな進化はしていないように見えて、実はパワートレインから予防安全装備まで、あらゆる部分がレベルアップしているのが新型フォレスターだ。しかも、そこにはスバルらしい「安心と愉しさ」が込められている。ライバルが多くなったSUVの中でも、着実に支持を集めていくのではないかと思った。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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