止まらない“ビール離れ”の中で気を吐く真っ赤な缶

止まらない“ビール離れ”の中で気を吐く真っ赤な缶

2018.07.19

ビールの消費が低迷している。先日ビール大手5社が発表した1~6月(上半期)の出荷量は、6年連続で減少。上半期でピークだった2001年に比べると、3割減となっている。これはビール、発泡酒、第3のビール全体の傾向だ。

その最大の理由が若者のビール離れといわれている。正確には若者のビール離れというよりも、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)へ需要が傾いているためだ。RTDとは聞き慣れない言葉だが、「すぐに飲める状態」ということ。ビール以外のチューハイやハイボールといったアルコール類が缶で出荷され、コンビニで購入した直後に飲めるというものだ。

こうしたRTDが出てくるまでは、お酒をビンで購入し、コップに移してから炭酸水といった割材や氷を入れてかき混ぜていた。ところが1980年代に「タカラcanチューハイ」が登場してから、各社がRTDを展開。それがビールの苦戦につながったといわれている。

工場への休日出勤まで強いられた好調ぶり

3カ月で1億本を突破した本麒麟

そんな中、ある第3のビールが好調だという。今年3月に発売されたキリンビールの「本麒麟」だ。どう好調かというと、登場から3カ月ほどで1億本を突破。本来、年間販売目標が510万ケースだったのに対し、この3カ月でその7割にあたる360万ケースを出荷したという。出荷が間に合わず、休日出勤での生産を強いられた時期もあった。

キリンは「氷結」シリーズといったRTDにも力を注いでいるが、同社にとって原点はビール。その意味で、本麒麟の好調ぶりは、同社にとって本意といえるのではないだろうか。 では、なぜこれほどまでの売れ行きとなったのであろうか。ここ最近のビール離れを考えると、明確な理由が思い当たらない。

そこで、キリンビール マーケティング部 永井勝也氏に話をうかがった。まず、筆者が着目したのは深紅を採用した缶デザイン。永井氏によると、やはり秘密が隠されていた。

「赤はキリンのコーポレートカラーなので、キリンブランドと一目で認識してもらえるデザインにしたかった。ただ、単純に赤で染めてしまうとトマトジュースっぽくなりかねません(笑)。そこで深みのある赤を使い、実はグラデーションになっているのです」(永井氏)。

社内でも相当に缶デザインについて意見交換したそうだ。ラガーといった定番商品にも赤は使われているが、一部分だ。それを全体的に赤にするには、結構な勇気が必要だったに違いない。ビールといえば清涼感を演出する、シルバーやホワイトといった缶デザインが定番だ。全面真っ赤だと“のどが焼けそう”というイメージにつながりかねない。

キリンビール マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当 永井勝也氏。刺繍ではなくプリントだが、まるでスカジャンを彷彿させる気合いの入ったジャケット

一方で、缶デザインが没個性化してしまった感のあるビールにおいて、これほどインパクトのあるカラーはない。コンビニの冷蔵庫での視認性も高い。そこに伝統の麒麟エンブレムをあしらい、安っぽくならないようにしている。

ネーミングにもこだわり

本麒麟のネーミングロゴもねらったものだそうだ。実は、このわりと難しめの漢字を使うのには、ヒットの確信があった。やはりヒット商品「グリーンラベル 淡麗」の成功だ。淡麗という漢字も難しめだ。さらに、もうひとつ隠れたねらいがある。

「本麒麟のターゲットは40~60代。こうした世代の方々は“麒麟”という文字を見慣れており、瞬時にキリンの製品と判断してくれます。ある意味、キリンの姿勢を伝えるのにこれほどの漢字はありません」(永井氏)。

若い世代の中には、この漢字を読めないかもしれないという危惧を感じたが、ターゲットが40代以上ならば、確かになじみ深いだろう。ただ、永井氏によると、20代といった若い世代のリアクションは薄いそうで、テレビCMなどでこうした世代にリーチしていく考えだそうだ。

最後に、本麒麟というネーミングは“本気リン”にかけてあるのか聞いてみたところ、永井氏は真意は語らなかったが、「そう捉えるユーザーの方はかなりいらっしゃいます」と笑みをみせた。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu