クリーンエネルギーの代表格「水力発電」の現場を見学

クリーンエネルギーの代表格「水力発電」の現場を見学

2018.07.21

EV「BMW i3」で丸沼ダムを目指す

尾瀬探索に隠されていた東京電力のねらい

尾瀬人気の低迷も大きな課題

MINIのショールームが併設されたBMW GROUP Tokyo Bay

7月中旬。東京・お台場にある「BMW GROUP Tokyo Bay」に数人のメディア、BMWジャパンのスタッフ、東京電力の職員らが集まった。総勢10名強。なぜBMWと東京電力の組み合わせなのか不思議に感じる方もいらっしゃるだろうが、両社はある取り組みにおいて同じベクトルを向いている。

ちなみに、BMW GROUP Tokyo Bayは、BMWグループのフラッグシップ・ショールーム。BMWはもちろんのこと、同グループのカーブランドMINIのクルマも展示されている。付近にはトヨタの多目的型ショールーム「MEGA WEB」もあり、クルマ好きにはたまらない地区だ。

さて、なぜBMWと東京電力が同じベクトルを向いているのか。まず、東京電力だが、知ってのとおり福島原発において大きな事故が起こった。以前から再生可能エネルギーの活用を模索していた同社だが、この事故以降、その姿勢は一層加速した。一方、BMWは電気自動車(EV)の普及に積極的だ。つまり、水力発電によるクリーンな再生可能エネルギーと、クリーンなEVの組み合わせを意識づけるために、今回メディアが招待されたのだ。

そして、この招待のもうひとつの理由が「アクアエナジー100」という電気料金プランをローンチしたこと。これは、水力発電100%のプランで、自宅のクルマがEVならば、このプランによりCO2排出が限りなくゼロに近くなる。料金は通常プランよりも約2割増しになるが、その分、環境保全に生かされる。今回は、そのプランのプロモーションも兼ねたメディアツアーでもある。

目的地は丸沼ダム

目指す場所は群馬県・丸沼発電所(以下、丸沼ダム)、そして移動手段は「BMW i3」。当日は数台のi3が用意され、メディアやBMWスタッフ、東京電力職員が分乗し、関越自動車道を北上した。

コンパクトな「BMW i3」。テールの形状がカワイイ

実は筆者は、EVに乗るのは初めてだった。そのためEVに対して誤った固定観念を持っていた。「高速道路を走行する性能はないのではないか」「山道を登坂するパワーはないのではないか」「航続距離が短く実用的ではないのでは」といったことだ。だが、この日、i3に乗ってみて、そのすべてが間違いだったことを思い知った。高速道路では、追い越し時にグイグイ加速するし、登坂時もスムーズ。むしろガソリン車よりも速いのではないかと感じるほどだ。給電も往路で1回のみ。サービスエリアで30分の急速充電が可能なので、昼食を食べているあいだに完了する。

SAの急速充電器。プラグを差し込んで充電する

EVの実用性は十分だし、そしてクリーンなことを考えれば、もっと日本で普及してもよいのではないかと思った。ただ、今回乗せていただいたi3は、諸経費を含めると600万円ほど。国から補助金が出るとはいえ、やはり価格で躊躇している方も多いのだろう。ただ、ガソリンが高騰している折、ランニングコストを考えれば、もとは取れそうな気もするのだが……。

丸沼ダム見学に戻ろう。今回は一泊二日の旅程だったが、ダム見学は2日目で、まずは宿泊宿のある尾瀬ヶ原に向かう。尾瀬にはクルマが乗り入れられないので、途中の駐車場にi3を駐車。あとは乗り合いバス(ワンボックスの乗り合いタクシー)で、尾瀬入り口まで進んだ。

そこから約1時間ほど、ブナ林の中に設けられた遊歩道を歩く。基本的には緩やかな下りなのであまり苦ではなかったが、帰りに今度は登りになることが頭をよぎった。だが、ブナ林ならではの木漏れ日や吹き抜ける風、そして東京では味わえないさわやかな気温が、そんなことを忘れさせてくれた。

そして到着した宿は「尾瀬ロッジ」。いかにも山間の宿といった風情の外観だが、内装は清潔で旅館などと遜色はない。食事も品数豊富で満腹感が得られる。ちなみに夕食のメインディッシュはお肉の陶板焼きで、ビールやワインも飲むことができた。クルマが通行できないところで、お肉やお酒が楽しめるのは「ボッカさん」と呼ばれる運搬係の貢献があるからだ。食事のハナシのあとで申し訳ないが、トイレの一部がオシリ洗浄機能付きだったのを付け加えておく。

いかにもな雰囲気の尾瀬ロッジ。食事は陶板焼きがメインで、ポン酢を付けて食べる

何もみえない漆黒の闇

さて、ロッジでの印象的な体験を2つ。ひとつは、夜間外に出てみると、まったくもって漆黒の闇だったこと。視界は皆無といってよい。星空が見えればよかったのだが、どうやら空は雲で覆われているらしい。何十年も生きてきたが、これほどの闇は初めての経験で逆に新鮮だった。できれば、その闇をお目にかけたいのだが、カメラで撮っても仕方がない。フラッシュをたいてしまうと、そもそも闇ではなくなる。

そしてもうひとつがロッジの水。ミネラルウォーターを買うためにフロントに行ったのだが、置いてないという。「洗面台の水を飲んでください」といわれ、そのとおりにしたのだが、冷たくてウマイ! こんな水が蛇口から飲めるのならば、ペットボトルの水など確かに不要だろう。

そして20:30ぐらいに消灯。やはり山の夜は早い。

翌朝、朝食のあと、尾瀬探索に向かった。メディアはもちろん、BMWスタッフ、東京電力職員も一緒だ。

今回は丸沼ダム見学が主目的だったが、東京電力のねらいが尾瀬探索に隠されていた。実は尾瀬の約4割が東京電力の土地。もともと水力発電のために用地を取得したのだが、観光客の増加、住民の反対(最初は一人だけが反対運動)などがあり、計画を断念した。以降、保全という立場に回り、尾瀬の土地を守っている。ある意味、CSRといえるだろう。さらに国立公園特別保護地区にも指定され、開発は不可能になっている。

そして今回、尾瀬探索にメディアを招待したのは、尾瀬人気の復活のため。最盛期には約70万人が訪れていたが、現在は30万人ほどまで減ってしまったそうだ。これには、ある仮説がある。尾瀬人気が高かったころ、「夏の思い出」という歌がヒットし、小学校や中学校の合唱では、定番の曲となっていた。

尾瀬人気が低下している理由は?

ところがだ。現在はこの曲を歌う学校が激減しているという。それにともない、尾瀬の知名度が低下した。実際、筆者がよく行く居酒屋のアルバイトに「明日から尾瀬に行く」と伝えたところ、「それどこですか?」という返事が返ってきた。

さて、尾瀬ヶ原はまさに写真などでみる景観と一緒だった。広大な湿原の中に木道が延び、燧ケ岳(ひうちがだけ)や至仏山(しぶつさん)がみえ、白樺も点在している。実はこの木道、東京電力や群馬県、福島県、新潟県などによって設置されたものだ。もし、尾瀬を訪れることがあれば、木道の板を確認してほしい。設置した企業や自治体、いつ造られたのかといった刻印が押されている。

左上:木道がどこまでも延びる、尾瀬おなじみの光景。右上:沼に燧岳が映る「逆さ燧」。残念ながら山頂部は雲に覆われていたが、これはこれで風情がある。左下:白樺林が点在し、高原の雰囲気を演出。右下:木道に刻まれた、TEPCOのマークと設置時期

ただ、それは気づいたときでいい。やはりみるべきは広大な湿原と点在する沼、そして豊かな植生だ。残念ながら尾瀬のシンボルともいえる水芭蕉のシーズンは終わっていたが、「ニッコウキスゲ」や「ヒオウギアヤメ」など、数々の花が咲いていた。本来、取材できたのだが、花の図鑑でも作るのかというくらい、さまざまな花を夢中で撮った。

尾瀬の花々。左上:ニッコウキスゲ、右上:ヒオウギアヤメ、左下:オゼヌマアザミ、右下:コオニユリ

尾瀬探索のあと、本来の目的である丸沼ダムを目指す。ブナ林の復路で駐車場に向かった際「オヤッ!?」と思ったのは、国際色が豊かだったこと。ハイキングではすれ違うハイカーに挨拶するのが基本だが、私の「おはようございます」の言葉に、「ニーハオ!」「グッドモーニング」という言葉が返ってきた。尾瀬人気は低下しているが、インバウンドの知名度は高いのかもしれない。

さて、いよいよ丸沼ダムだ。このダムは昭和3年から建設され昭和6年に完成。コンクリートが少なくて済む「パットレスダム」となっている。当時、マンパワーはあったが、コンクリートが高価だったのでこの方式が採られたという。日本には8カ所しかなく(うち2カ所は廃止・現在6カ所)、貴重な存在なのだそうだ。

その証拠に、「ぐんまの土木遺産」、そして国の重要文化財に指定されている。そのダムの上を歩かせていただいた。普段は関係者しか通れないので、柵は低めだが、景観がすばらしかった。丸沼を東西に分けるように堰堤が延び、ダムの上流と下流でかなりの高低差がある。

重要文化財を示す石碑と重要文化財指定書。下段は堰堤の上から上流側と下流側を撮った写真。同じところから撮ったが、上流(左)と下流の水面の高さがかなり異なる

美しい景観の丸沼ダム

ただ、丸沼は美しく、エメラルドグリーンの水が印象的だった。多くのダムは川をせき止めるため、大雨が降ると土砂が流入しやすい。ところが、丸沼には小川しか注いでなく、大雨が降っても濁りにくいのだそうだ。上流にも下流にもボートが浮かび、フライフィッシングなどを楽しむ釣り客も多かった。水面をみると、40cmぐらいのニジマス? が悠々と泳いでいるのが確認でき、しかも人の目の前でライズ(水面の虫を補食すること)を繰り返していた。あまりの警戒心のなさに、少し驚いた。

そしていよいよダムの中へ。70段以上の階段を降りると、堰堤の最下部に出る。ここからダムの全景が見わたせる。高さ約32m、長さ約88mの堰堤は圧巻だ。ただ、瀑布のように水を流し発電タービンを回すのではない。沼上流から水を取り込み、それを下流の沼底から排水する仕組みだ。なので、ボート客に与える恐怖は少ない。

ダムの最下部に向かうには、秘密基地のような階段を降りていく。丸沼ダムの全景。この堰堤の向こう側が上流側

こうして、丸沼ダム見学は終了した。BMW i3に分乗し、復路を走った。残念だったのは、あのロッジの水をもう一度飲みたかったこと。ところが、片品村で訪れた建設中の道の駅「尾瀬かたしな」で、尾瀬の水を引いた水くみ場があった。飲むのは自己責任とのことだが、躊躇なく飲んだ。もちろん、おいしかった。

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第18回

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

2019.03.27

ルノーの5ドアハッチバック「メガーヌ R.S.」に試乗

やっぱりMT車が好き! 高性能モデルの登場に高まる期待

もしも(好きなように)クルマが買えたなら…安東さんの人生設計

安東弘樹さんに同行した日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会も、いよいよ最後の1台となった。残すはルノーの「メガーヌ R.S.」だ。愛車のポルシェ「911 カレラ 4S」から乗り換える候補の1台として、「ある程度は本気で」購入を検討しているというこのクルマを、安東さんはどう評価するのか。

MT車の日本導入を待って購入を検討?

「メガーヌ R.S.」は5ドアハッチバック「メガーヌ」の高性能モデル。「R.S.」はルノーのモータースポーツ活動を担う「ルノー・スポール」の頭文字だ。このクルマについては以前、モータージャーナリストの塩見智さんに試乗してもらったので、詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

「メガーヌ R.S.」に乗り込んだ安東さん

安東さん(以下、安):(乗り込んですぐ)ドアヒンジは多くの日本車と同じでプレスですね、開ける時に軽い感じがします()。(しばらく走って、高速道路に入りつつ)さすがはFF(前輪駆動車)、急加速すると暴れますね(笑)。

【編集部注】ドアヒンジとはドアとクルマをくっつけている部品のこと。ここの作りによってドア開閉時の重厚感、ひいてはクルマの上質感に差が出ると安東さんは語る。細かいポイントのようだが、ドアヒンジについてはマツダミニの取材でも話題になった。

編集部(以下、編):今回、メガーヌ R.S.に試乗してみたいと思ったのはなぜですか?

:すごく気になっていたクルマなのですが、まだ乗ったことがなかったので、どうしても今回、運転してみたかったんです。今回のクルマはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)ですが、MT(マニュアルトランスミッション)車を今、待っている状態です。ただ、急加速した時の“暴れん坊感”を体験してみて、いくら電子的に制御しても、FFには限界があるなとも感じました。じゃじゃ馬を乗りこなす、というところにカタルシスを感じる人もいるとは思いますけど。

「メガーヌ R.S.」のボディサイズは全長4,410mm、全幅1,875mm、全高1,435mm。価格は440万円だ

:MTだったら欲しいクルマですか?

:はい。もうすぐ、MTが日本に導入されるらしいのですが、欲をいえば、「メガーヌ R.S. トロフィー」というグレードを待ちたいです。R.S.は279馬力ですが、トロフィーは300馬力なんで。

:「待ちたい」っていうのは、真剣に購入を検討していて、待ち構えているという感じですか?

:うーん、ある程度は本気で考えているっていう感じでしょうか(笑)。次もポルシェ「911 カレラ 4S」に乗るのが理想ではあるんですけど、それこそ、私の稼ぎ次第というか、買えない可能性もあるので……。今の911は、乗り始めてから10年になりますし、乗り換えたいタイミングではあります。

:その乗り換え候補の1つが、「メガーヌ R.S. トロフィー」だというわけですね。ただ、素人なので分からないんですけど、最近の安東さんの露出ぶりを見ている限り、次もポルシェで大丈夫なんじゃないですか?

:どうでしょうねー、想像もできません(笑)。今回の確定申告で、どのくらいの税金を払わなきゃいけないのかにもよりますし。フリーになって初めての確定申告なので、正直、怖いです。

:この間の「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中のテレビ番組、安東さんは火曜レギュラー)で、「これから、税理士さんと話をする」っておっしゃってましたもんね(笑)

:いくらくらいの税金になるのか、それによっても変わってきます。ただ、フリーランスになってもうすぐ1年経ちますが、この収入では、新しい911には手が届きません(笑)

:本当ですか?

:今の911と同じように長期ローンを組めば、あるいは……。とは思いたいですが、新しい「911 カレラ 4S」を自分が乗りたい仕様で買うと、税金なども含めた乗り出し価格が2,200万円弱になってしまいます。日々忙しいのですが、薄利多売でやっているので、くどいようですが、本当に現状、購入は難しいです(苦笑)

1台はスポーツカーを所有しておきたいという安東さんだが、次に何を買うのかは将来の収入次第だそう。「メガーヌ R.S.」もMT車が気に入れば候補に入るようだ

:(メガーヌの走行モードを変更して)「レースモード」に設定すると、ESC(横滑り防止装置)がカットになるんだ……。自動ブレーキもオフになりますが、それは当然ですよね。サーキットを走っていて、前走車に近付くたびにブレーキが掛かったら、たまったものではないですから(笑)。このモードに入れても、そんなに乗り心地が硬くならないというか、不快感はないです。

法定速度で走っている限り、レースモードにする意味はあまりないでしょうけど、腕と環境が許せば、滑らせながら走ってみたいですね! MTだったら楽しいだろうなー。あと、パドルシフトは下まで伸びていて欲しいです。乗り始めてから、5~6回は空振りしてますから。

パドルシフトとは、指による操作でクルマのギアを上げ下げできる装置のこと。画像では分かりにくいかもしれないが、ステアリングの後ろに付いている
一般的にパドルシフトの操作部分は縦に長いが、「メガーヌ R.S.」のパドル(赤い十字マークが付いているところ)は上方向に長く、下方向に短い造形になっている。そのため、パドルの下の方を指で操作しようとして、何度か空振りしてしまったと安東さんは話しているのだ

:パドルシフトがステアリング連動式なので、コーナーを曲がっているときの操作も、少しやりにくいですね()。

【編集部注】パドルシフトには、ステアリングに連動して動くものと、ステアリングコラムに固定されているものがある。

:ステアリングと一緒にパドルシフトが動くのと、固定してあるのだと、どちらがいいんですか?

:メルセデスもそうですけど、ドイツ車はステアリングに連動して動く方が主流ですよね。ただ、ステアリングを切って(左右が)逆さまになっている時、パドルシフトの位置も逆になるので、どちらがプラス(ギアを上げる方)だか分からなくなることがあるんですよ。そこが難しいところで、だから「GT-R」(日産自動車)とかも固定式ですし、基本的にラリー用のクルマもコラム固定式ですね。

:ステアリングを切りまくるからですか?

:そうです。だけど、F1などのフォーミュラカーだと、ステアリングにシフトパドルが付いていて連動しますね。なぜなら、ステアリングを切っても最大で半回転ですから、左右の手を持ち替えないので、当然、その方が好都合です。

だから、このクルマ(試乗中のメガーヌ)は、ステアリングを大きく切っている時でも、シフト操作に迷わない事を優先させたんでしょうね。

:山道でヘアピンを抜ける時とかですか?

:そうですね。これ、好みは分かれると思います。

「メガーヌ R.S.」は1.8L直列4気筒16バルブ直噴ターボエンジンに電子制御6速ATのトランスミッションを組み合わせる

:このクルマ、小さいように見えて、幅が1,875mmもあるんですね。

:そう、結構あるんですよ。「Eクラス」(メルセデス・ベンツ)より幅が広い。

:メガーヌって、前のモデルまで3ドア(ハッチバック)が中心だったみたいですね。5ドアになって、見た目とかどうでしょう?

:このデザイン、僕は好きですね。先代よりも好きです。絶妙な“カタマリ感”があって、色もいい。シンプルなのに存在感があるという嬉しいデザインです。

:歴代のメガーヌ R.S.は、ニュルブルクリンクで素晴らしいタイムをたたき出してきたそうですが、そのあたりには惹かれますか?

:そこは、そんなに重視しません。ただ、メーカー同士が競い合ってくれる分にはいいんですけどね。ましてやFFですし、ちゃんと手なずけて走って、技術の革新というか、そういうところでメーカー同士が競い合ってくれているのは悪いことではないと思います。

:ただ、安東さんとしては、走りについては自分で確かめたい?

:そうですね。だから、こっちの方が数字が上だから買う、という感覚はありません。

:安東さんの頭の中にはクルマのスペックがたくさん入っていますけど、数字で比べて買おうというのではなく、ただ、好きだから頭に入っているだけなんですか?

:覚えようとしているんじゃなくて、スペック(諸元)表を見てると、自然に覚えちゃうんですよ。これ(試乗中のメガーヌ)だと、最大出力が279馬力ですよね?

:合ってます。

:それで、205kWじゃなかったでしたっけ?

:ごめんなさい、手元の資料にキロワットまでは書いてきてないです。

:206kWだと、280馬力になるんですけどね。

:……。

「メガーヌ R.S.」の最大出力は279ps(205kW)、最大トルクは390Nmだ。車両重量は1,480キロ

:数字的には見劣りしても、自分がいいと思えば買うというのが、安東さんのクルマ選びということですね。もし、次の911が何らかの理由で買えなかった場合は、メガーヌもアリだと思いましたか?

:MT車に乗ってみないと、何とも言えませんねー。急加速した時の暴れぶりを体験して、FFの限界は感じましたけど、MTなら、もう少し自分で制御できるかもしません。ただ、やっぱり楽しいクルマだなとは思いましたね!

:今回、たくさんの輸入車に乗っていただきましたけど、総評として、心に残ったのは?

:やっぱり、あの加速感も含め、テスラですね。何でも電気で動くので、後席のファルコンドアなんかが壊れたら目も当てられないとは思うんですけど、ただ、インパクトとしては「モデルX」になりますね。

もしも収入が激増したらどんなクルマに乗りたい?

購入を決めたメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」には、何年乗る予定ですか?

:今の「F-PACE」よりも早いペースで走行距離が伸びる可能性があるので、2年で7万キロあたりが見えてくると、乗り換えを考えるかもしれません(※)。まあ、2年後に私の収入がどのくらいになっているかにもよりますけど……。

【編集部注】ジャガーのSUV「F-PACE」とポルシェ「911 カレラ 4S」の2台を所有している安東さんだが、通勤に使っているF-PACEは走行距離が伸びてきている上、大柄なサイズの問題で駐車場を見つけるのが大変なので、これをメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」に乗り換える。サイズ的に駐車場が見つけやすい分、オールテレインの稼働率はF-PACEよりも高くなることが予想されるので、代替サイクルは早まるかもしれない。オールテレインが納車されるのは2019年5月の予定。その時点で、F-PACEには2年8カ月乗ったことになる。

:もし、収入がものすごく増えたら、所有するクルマの構成はどうしたいんですか?

:やっぱり「911」と、あとは「ヴェラール」(レンジローバー)のディーゼルエンジン車を買って、もう1台は小さいディーゼルエンジンのクルマで、それは「デミオ」(マツダ)なのか「ミニ」なのか分からないんですけど、そんな感じですかね。それか、プジョーの「308 アリュール」か……。

「308 アリュール」って、今までは税制的に中途半端な1.6リッターのディーゼルエンジンを搭載してたんですけど、それが1.5リッターになって、しかも、パワーアップしたんですよ。それに、何が嬉しいって、パドルシフトが付いたんですよ! 今までは上級グレードにしか付いてなかったんですけど。

プジョー「308 Allure」(アリュール)

:なるほど、収入が大幅に増えたら、クルマを2台にしておく必要もないですもんね。駐車場を借りて、3台持ってもいいわけで……。

:駐車場を借りるというか、3台のクルマを入れられる車庫が付いた家に建て替えるのが夢ですね。

:その可能性も、フリーになった今だと、高まってますよね。会社員でいるより、大きく稼げるチャンスがあるわけですから。

:そうですね、可能性は“ゼロ”ではないですね(笑)

:これも「バラいろダンディ」で聞いたような気がするんですけど、ある程度の金額を稼いだら、お仕事はやめるっておっしゃってましたよね? 好きなクルマに乗り続けられて、ご家族も安泰というような金額が貯まったとしたら。

:そうですね(笑)。3億円ほど貯まったら、やめると思います。家族を養えて、子供たちを学校に行かせられて、あとはクルマも、「ヴェイロン」とか「シロン」()が欲しいとは思わないので……。ポルシェのMTと、ヴェラールと、ミニか何かを所有して、スポーツ走行する時はポルシェ。長距離移動の時はヴェラール。そして、都内での仕事や移動の時は、コンパクトなディーゼルモデルか、電気自動車(EV)でもいいかもしれません。

【編集部注】どちらもブガッティのクルマ。1台で何億円もする。

:私の人生として、あと20年は責任があると思うんですよね。ただ、テレビ関係の仕事が続けられるとは思っていません。やっぱり、テレビの仕事って緊張するし、疲れますから(笑)。何より、ずっと私への需要があるとは思えません。

立て続けにクルマに乗った今回の取材も、かなりお疲れになったはずだと思っていたのだが……

他媒体が用意したクルマも含め、計11台の輸入車に立て続けに乗り、JAIA試乗会の取材を終えた安東さん。「仕事は疲れる」と言いつつも、メガーヌから降りるとすぐ、「ばらいろダンディ」の生放送に出演するため、試乗会の拠点となった大磯プリンスホテル(神奈川県)を愛車「F-PACE」で飛び出していった。

安東さんのコラムによれば、今回の取材はさすがにくたびれたものの、愛車を運転して帰ったおかげ(?)で、半蔵門(正確には東京都千代田区麹町)にあるTOKYO MXに到着する頃には、すっかり疲労感がなくなっていたというから驚きだ。

とにかく、多くのクルマに限られた時間で乗ってもらったので、時間配分がうまくいかず、弊紙では紹介しきれなかったクルマもある。具体的にはポルシェ「パナメーラ 4 E ハイブリッド」とBMW「X3 M40d」の2台なのだが、これらも安東さんが試乗を希望したクルマだったことに変わりはない。特に「X3 M40d」については、短時間の試乗ではあったものの、「もっと乗ってみたくなるいいクルマだった」とのコメントがあったことは、ここでお伝えしておきたい。

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メルセデス・ベンツ初の市販電気自動車(EV)「EQC」が今年、いよいよ登場する。2019年半ば頃の日本導入が噂されているが、一体、どんなクルマに仕上がっているのか。モータージャーナリストの清水和夫さんは以下のように解説する。

メルセデス・ベンツのEV「EQC」

メルセデスの電動化を包括する「EQ」ブランド

メルセデス・ベンツは2018年9月、スウェーデンのストックホルムにおいて、バッテリーだけで走る電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)「EQC」を正式に発表した。それまでも、各国の国際的なイベントでは、同社の電動モビリティを包括する「EQ」(イーキュー)というサブ・ブランドを発信してはいたが、いよいよ、本格的なメルセデスの電動車両がEQCから始まるのだ。

ここでは混乱を避けるため、電動車両の定義とメルセデスが採用する「EQ」というサブ・ブランドについて説明しておく。

「EQ」とは「電動化」にフォーカスしたメルセデスのサブ・ブランドであり、バッテリーだけで走るBEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグイン・ハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と呼ぶ。

このように、電動車両といっても、バッテリーとモーターだけで走るBEV、エンジン/バッテリー/モーターを組み合わせるプラグイン・ハイブリッド(PHVあるいはPHEVと略す)、あるいは、48Vを使う車両に見られるマイルド・ハイブリッドなど、クルマの在り方は多様化している。「〇〇社は20XX年までに全てのクルマを電動化する」というヘッドラインのニュースが世界中を駆け巡っているが、電動化の中身をきちっと理解する必要があるだろう。メルセデスの場合は「EQ」「EQ Power」「EQ Boost」の名前で整理している。

「EQ」ブランドのクルマたち

EQCは「GLC」相当のSUVをベースとするクルマだ。「Aクラス」相当のセグメントでBEVが登場すれば、「EQA」と呼ぶことになるだろう。

内燃機関はベンツの代名詞、EVはどう作る?

EQCの日本初公開となったイベントは、桜が咲く前の3月初め、メルセデス・ベンツのブランド発信拠点「Mercedes me」(東京・六本木)にて開催された。注目すべきは、メルセデス・ベンツ日本(MBJ)がEQCと家の電気をつなげる「EQハウス」という斬新なコンセプトで同車を発表したこと。EQCは自宅でも充電できるので、家との相性がよい。そこでMBJは、竹中工務店と組んで「EQハウス」という新しいアイディアを提案したのだ。クルマと家が電気でつながることを「V2H」(Vehicle to Home)と呼ぶ。日本では以前から取り組んできたシステムだ。

MBJと竹中工務店は、モビリティとリビングの未来の姿を具現化すべく、六本木の「Mercedes me」に体験施設「EQハウス」を設置した。ちなみに、「EQC」の展示はすでに終了している

ところで、EQCのカットモデルを見た時、面白いことに気がついた。EQCは「Cクラス」ベースのSUV「GLC」をベースとするが、BEVなのでエンジンとギアボックスが存在しない。そのスペースには、パイプ製のケージが設置されているのだ。パイプの内側にはフロントモーターとデフ(デファレンシャルギア)が置かれ、上部にはインバーターが配置されている。リアも同様にモーターとデフでリアアクスルが構成される。

エンジンがなくなる代わりに、「EQC」にはモーターとデフを納めたパイプ製のケージが入っている

バッテリーは床下のフロア内に格納することで重心を低く設定できる。と、ここまでは常識的なパッケージなのだが、衝突安全の剛体として、このパイプ製ケージにはエンジンと同じ強度を持たせてある。つまり、エンジン車と同じく、モジュールでデザインできるモデルベース開発(MBD)を取り入れているのだ。自動車業界で流行の手法は、EQCにも採用されていた。

EQCのボディサイズは全長4,761mm、全幅1,884mm、全高1,624mm、ホイールベース2,873mmとGLCに近いから、シミュレーションしやすい。性能を見ると、前後2つのモーターは合計で最大出力408PS、最大トルク765Nmを発生する。加速性能はV8ターボのエンジン車並みで、停止状態から時速100キロまでの加速は5.1秒と俊足だ。リチウムイオン・バッテリーの容量は80kWh。気になる航続距離は450キロとのアナウンスがあった。

「EQC」のボディサイズは「GLC」に近い。加速はV8ターボエンジン並みだ

EQCの試乗会は2019年5月に開催されるので、それまでは詳細なインプレッションをお届けできないが、スポーツカー並みの加速性能を誇るEQCは単なるBEVではなさそうだ。何か、もっとすごい仕掛けがありそうに思える。試乗会が楽しみになってきた。

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