たぶん、日本一わかりやすい資本政策の基礎

現役社長が語る!ベンチャーの資金調達 第4回

たぶん、日本一わかりやすい資本政策の基礎

2017.06.12

自ら会社を立ち上げ、これまでに8社のベンチャーキャピタルと事業会社2社の合計10社から、総額3億円を超える資金を調達してきた伊藤一彦氏。自社の経営だけではなく、中小企業診断士として企業支援やベンチャーキャピタルの資金調達にまつわる執筆もされています。

本連載では、現役経営者である伊藤氏が、これまでの経験をもとに、ベンチャーキャピタルからの資金調達についてリアルな現実を語ります。

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みなさんは、「資本政策(しほんせいさく)」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

ベンチャー企業で有名な楽天は、資本金が約2000億円で、その株式の約37%を創業者の三木谷社長の関連で保有している(2016年末)。つまり、三木谷社長は2000億円×37%=740億円も投資をしてきたのか??すごいな。どれだけ役員報酬をもらえば740億円も投資ができるのだろう・・・。

そんな疑問が「資本政策」を知る前の、私の頭には浮かんでいた。

もし、この意味がわからなければ「資本政策」を学んでおいた方が良いだろう。経営者にとって自社の株式はとても重要であり、失敗すれば取り返しがつかないのが「資本政策」だからである。しかし、未上場企業の「資本政策」を理解している人は少なく、学ぶ機会もあまり多くはない。

そこで今回は、資本政策の基礎の基礎をなるべく簡単に解説することを試みる。今回もまたリンゴを使って解説する。

(1)リンゴのタネを植えて一生懸命に育てた。ある年、そのリンゴの木には10個の実がなり、1つ100円で佐藤さんに売れた。

佐藤さん=100円×10個=1000円

(2)次の年、同じ木にリンゴが10個なった。去年よりも大きな実がなったので、鈴木さんに1つ200円で売れた。つまり、このリンゴの木は、佐藤さんから1000円と鈴木さんから2000円の合計3000円の価値を生んでいる。

佐藤さん=100円×10個=1000円
鈴木さん=200円×10個=2000円
―――――――――――――――――
合計金額     20個=3000円

リンゴを持っている数は、佐藤さんも鈴木さんも同じ10個である。しかし、同じ木からできた同じ個数のリンゴを手に入れるのに佐藤さんは1000円、鈴木さんは2000円かかっている。

まさに、これが資本政策なのである。リンゴの値段が株価、合計金額が資本金と考えると良い。

続いて、企業の事例で同じように考えてみる。

(1)社長が株価1万円で1000株の会社を設立すると
株価1万円×1000株=1000万円の資本金となる。

(2)ベンチャーキャピタルから株価2万円で1000株の投資を受けると
株価2万円×1000株=2000万円の資本金が増える。

このとき、この会社は、資本金3000万円で発行株式数2000株になる。持ち株比率は、社長:ベンチャーキャピタル=1000株:1000株で50%ずつである。同じ会社の株式を社長は1000万円でベンチャーキャピタルは2000万円で手に入れたことになる。

このようにして、_株価をあげてベンチャーキャピタルからの投資を受けることで社長の持ち株比率を保ちながら、必要な資金を確保することができる。

これが資本政策の基礎である。

つまり、冒頭の楽天の三木谷社長も役員報酬でたくさんの資本金を会社に投資していったのではなく、高い株価で外部から資本を調達できた結果として、設立当初に投資した株価があがっていったのである。

では、どのようにして株価は決まるのか?

それは、すでに上場している企業の株価と比較して、自社の株価も決めていくことになる。上場している企業は利益も株価も公開されている。それと比較して、自社の利益にそって株価を決めていくのである。しかし、それは単純な比較ではなく、未来にどれだけの利益があがるのかという期待なども考慮されて決まっていく。またベンチャーキャピタルとの交渉によっても株価は変わるのだ。

同じような業種で、同じ利益をあげていても株価が全く異なることがある。同じ品種のリンゴが、近所のスーパーで買うのと、高級百貨店で買うので全く値段が異なるように。

近年では、私が講演で「当社は資本金1000万円からスタートして、2005年と2007年に合計1億4000万円の出資を受けて、資本金1億5000万円の会社になった」というと、「そんなにたくさん投資を受けて会社をのっとられたりしないのか?」という質問を受けることがある。しかし、実際には、当社の株式のうち70%近くを経営陣で保有しており会社がのっとられることなどありえないのである。

これらを理解していくことが資本政策の最初の第一歩であり、最も重要なことである。

伊藤一彦

1974年大阪生まれ。1998年大阪市立大学を卒業後、日本電気(NEC)入社。ベンチャー企業を経て、2002年営業創造を設立。2012年スマイル・プラスをグループに迎える。2016年にグループ全社を統合し、BCC株式会社代表取締役社長に就任。経営の傍ら中小企業診断士として公的機関での中小企業支援をおこなう。著書「【新訂3版】バランス・スコアカードの創り方(同友館、共著)」「ベンチャーキャピタルからの資金調達〈第3版〉(中央経済社、共著)」

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。