自ら会社を立ち上げ、これまでに8社のベンチャーキャピタルと事業会社2社の合計10社から、総額3億円を超える資金を調達してきた伊藤一彦氏。自社の経営だけではなく、中小企業診断士として企業支援やベンチャーキャピタルの資金調達にまつわる執筆もされています。

本連載では、現役経営者である伊藤氏が、これまでの経験をもとに、ベンチャーキャピタルからの資金調達についてリアルな現実を語ります。

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企業にも値段がある。

この企業を買うならば、いくらになるのだろうか?それが企業の値段であり、時価総額と言われる。時価総額=株価×株数となり、株価があがるほど、企業の値段もあがる。

日本で最も高い会社は、トヨタ自動車で時価総額は約20兆円となる。では、世界で最も高い会社はどこだろうか?答えは文末にて。

さて、本題に戻ると、最終回では、ベンチャーキャピタルから投資を受けると何が変わるかを具体的に伝えていきたい。

まず、投資を受けることで、大きく3つのメリットを受けることができた。

(1) お金が増える
(2)信用力が増す
(3)人脈が増える

簡単に補足していくと、

(1) お金が増える:まず、投資を受けた金額のお金が会社に増える。さらに資本金が増えることで財務体質が良くなり、銀行からの融資なども受けやすくなる。少なくとも明日の資金に困るようなことは無くなるだろう。

(2) 信用力が増す:外部の株主が入ることで取引先や金融機関からの信用力が増す。特に大手企業の関連会社であるベンチャーキャピタルから出資を受けることができると、その大手企業の信用力が自社の信用力を補完してくれることになる。今まで取引できなかったような大手企業や銀行とも取引できるようになる。

(3) 人脈が増える:投資を受けると上場をするために必要な証券会社や監査法人などとの出会いの機会が増える。さらにベンチャーキャピタルから出資先を紹介してもらえることも多い。しかも出資先は投資のために我々のことを十分な審査をしているし事業内容も熟知しているため、紹介してもらった先と商売になる確率は高い。

続いて、デメリットについても考えてみる。

正直、当社では創業のときから公私の区別をしっかりしてきたので、あまりデメリットに感じることはなかった。でも、もし会社の経費で買った車をプライベートでも使う、個人的な会食を会社の経費にする、節税対策のために役員報酬をあげる。みたいな公私混同をしていると、それはできなくなる。正確にいうと、これらはやってはならない。ただ、これらは全て投資を受ける以前に当たり前のことだと考えている。会社は社長の私有物ではない。汗水流して働いている従業員のことを考えると投資を受けていなくても公私混同はすべきではないからである。そもそも公私混同をしたい社長はベンチャーキャピタルからの出資を受けるべきではないとも言える。

また、ベンチャーキャピタルの担当者が取締役会などに出席することに抵抗を感じる社長もいる。しかし、当社では積極的に出席してもらっている。なぜなら、多数のベンチャー企業に関わっている経験豊富なベンチャーキャピタルの担当者に客観的なアドバイスをもらえて、さらに必要に応じて、取引先も紹介してもらえたりするからである。

したがって、ベンチャーキャピタルからの投資を受けるメリットは多く、デメリットは少ないと当社の経験からは言える。

しかし、以前にも書いたように、投資を受ける時に約束した期限内に、株式上場、他社への売却、経営陣で買い戻すなどの手段で現金化(出口=イグジット)しなければならないことは常に忘れてはならない。

共通の目的をもった心強いパートナーにも期限はある。

最後に、ベンチャーキャピタルと良き関係を保つための秘訣を伝える。それは、たった1つである。「良きことも悪きことも正直に話す」ただ、これだけである。良いときに報告するのは簡単である。大事なことは悪いときにも報告できるかどうかだ。悪いことは話しづらい。しかし隠していても、いつかはバレるのだ。当社では悪いことこそ、なるべく早く、正確に報告し、相談することを心がけてきた。それが信頼につながり、今の当社があると信じている。

「かっこつけず、品良く」

恩師に教わった言葉である。この言葉を心に刻み、これまで支援を受けてきた全ての方々のためにも、必ず、株式上場を実現したい。

この記事が少しでもみなさんの役に立つことを心から願っている。 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

連載「現役社長が語る!ベンチャーの資金調達」をご愛読いただき、ありがとうございます。本連載は、今回をもちまして終了となります。

ご執筆頂いた伊藤一彦さま、執筆関係者さま、そして読者のみなさま、本当にありがとうございました。

■追伸
冒頭の回答であるが、世界で最も高い会社は、この連載で何度も例に出したAppleである。

伊藤一彦

1974年大阪生まれ。1998年大阪市立大学を卒業後、日本電気(NEC)入社。ベンチャー企業を経て、2002年営業創造を設立。2012年スマイル・プラスをグループに迎える。2016年にグループ全社を統合し、BCC株式会社代表取締役社長に就任。経営の傍ら中小企業診断士として公的機関での中小企業支援をおこなう。著書「【新訂3版】バランス・スコアカードの創り方(同友館、共著)」「ベンチャーキャピタルからの資金調達〈第3版〉(中央経済社、共著)」

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。