企業ができる具体的なソーシャルリスク対策とは?

企業に刻々と忍び寄る「炎上」ダメージ 第3回

企業ができる具体的なソーシャルリスク対策とは?

2017.03.08

これまでは、「炎上の定義」や「2016年の炎上の傾向」について述べさせていただいた。今回は、弊社が考える具体的なソーシャルリスク対策の手法についてご紹介したい。

炎上した後の対応ではもう遅い!?

実際にSNS上で企業絡みの「炎上」事象が発生した場合、ユーザーや世間は、企業側の対応のスピードや内容、さらに誠意に着目する。それらの対応によって、その後の炎上の広がり方、企業イメージや、経営のインパクトなどに影響を与えると言っても過言ではない。対応次第で、企業評価は大幅に左右されることになる。「炎上」発生から、その解決に至るまでの対応が重要になってくるのだ。

より的確な対応をするには、炎上が発生してからの事後対応では遅い。企業側は、「炎上」事象が発生することを前提とした企業対策を講じておかなければならない。

2つのソーシャルリスク対策とは?

「炎上」事象発生前に取れる対策はどのようなものがあるのか。ここからは、その手法について、具体的に述べていきたい。

弊社では、大きく2つのソーシャルリスク対策があると考える。1つは、「自社」を知ることである。これは、自社がSNSユーザーや、世間からどのようなイメージで捉えられているかを把握することだ。2つ目は、体制構築と準備である。「炎上」事象が発生した際に即対応できる社内体制を構築しておくことだ。

これらは、「炎上」事象の「事後対応」であってはならない。あくまでも「事前」に対応・実施できているかが重要だと考える。今回は、1つ目の「自社」を知ることについて、具体的な対策例をあげていきたい。

蓄積があるからこそ変化に気づく!?

まずは、口コミのパトロールである。口コミのパトロールは、炎上事象の早期発見という目的が主ではあるものの、それ以上に企業側がSNSユーザーや世間に「どのような評価を得られているか」を見出すことができる。

企業のイメージや評価を可視化させることは重要である。口コミを追うことで、企業イメージの評価水準を知ることができ、さらには変化も迅速に察知することができる。今現在、ユーザー様や世間から企業側がどのような評価を得られているのか、日々の変化を追うことは重要であると考える。

以前の連載で記載した通り、「炎上」事象には「ネガティブ」・「ポジティブ」の様々な意見が飛び交うバイラル型が多くなっている。さまざまなユーザーの意見が飛び交う中で、「ネガティブ」な口コミや意見だけを重視し対応することは、危険である。「ポジティブ」な意見を寄せてくれているユーザーを軽視した判断になりかねないからだ。

口コミの中に点在する「ネガティブ」「ポジティブ」を重要度順に配分することで、自社の評価水準を知ることができる。評価水準に変化が起きた際、今までとどのように違うのか、どんな口コミにより変化が起きたのかを比べなくてはならない。その変化にどう対応すればいいのか、次の対策の検証開始することができる。

例えば、口コミの中に自社のパワハラ体質と捉えられるような投稿があったとする。もし、このような投稿があれば企業側が、人事部門と連携し社内調査を開始すべきである。投稿が事実であれば、即座に社内の体制を整理する必要があるのだ。

「炎上」事象発生!即謝罪。それでいいのか?

「炎上」事象が発生した場合、ソーシャルリスク対策をおこなっている以上、企業側は「謝罪」「謝罪しない」の2者選択しかないという結論に至ることが多い。炎上コンサルの1つの手法ではあるものの、謝罪する、しないで解決に至るという安易な考えは捨てなければならない。

「ネガティブ」な口コミの件数が多いと言ってもそれは1つの要素でしかない。件数だけを見て「謝罪」「謝罪しない」の判断自体をすべきではないのである。企業の口コミが拡散された、されないに関わらず、1つの口コミがどのような影響を与えているのか見極める必要がある。その口コミが誰にどのような影響を与えているのかを冷静に捉え、その後の企業アクションの方法を検討していかなければならない。

口コミパトロールにはこんな役割も!

「ポジティブ」な口コミに対しても、パトロールは大きな役割を果たすこともある。例えば、自社製品に対する「価格」に対しては「ネガティブ」だけれども「機能性」に対しては「ポジティブ」など、口コミの「ネガティブ」「ポジティブ」の区別である。データが可視化されれば、そこからのクロス分析も可能になる。

口コミのパトロールは、「価格帯」「デザイン」「機能性」など口コミベースで自社製品の弱みや強みを可視化することができるというメリットがある。さらに、口コミのパトロールを継続させれば、テレビCMなど、顧客の意見を取り入れた有効な広告展開を期待できると言える。マーケティングの改善、リスクの回避にも効果的なのだ。

口コミのパトロールは、単純なリスク調査と思われがちである。しかし、さまざまな口コミを知ることは、企業側としてより多くの情報を集約でき、結果的に自社を守ることに繋がるのだ。

次回は、ソーシャルリスク対策2つ目の「体制構築と準備」について具体的に触れていきたい。

佐伯朋嗣

大手IT広告代理店にて100名規模のSEM部署、特にSEO領域の責任者やジョイントベンチャーによる子会社の営業統轄を歴任。その後クラウド業界を経て2011年イーガーディアン入社、2015年に取締役就任。 現在はイーガーディアングループ全体の営業責任者として、監視、SNS、広告BPOなど数多くの大型案件に関わる。 企業のSNS使用方法や炎上のメカニズム、その対策などのソーシャル対応や分析を得意とする。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。