自動運転レベル3の時代へ待ったなし、ホンダの現在地は

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第8回

自動運転レベル3の時代へ待ったなし、ホンダの現在地は

2017.07.29

ホンダは2017年6月初めに「Honda Meeting 2017」を栃木研究所で開催し、2020年から2025年ごろに実用化する自動運転のコンセプトを明らかにした。その一部の機能をデモンストレーションで体験することができたのでレポートする。

ホンダの自動運転を体験(画像提供:ホンダ)

レベル4は2025年ごろまでの実用化を目指す

発表した技術は2つある。その1つはAIを使う一般道路のレベル4だ。紹介すると、この技術は2025年ごろまでに実用化を目指しているが、一般道路を想定した研究所の連絡路でデモ走行が体験できた。このデモ走行は、あえて高度な詳細地図を使わずに、カメラの画像情報だけでどこまで走ることができるのかという研究課題の実証だった。

カメラで得られたデータは、深層学習(ディープラーニング)で正しく認識する。車線がない状態で、どこまでが道路の幅なのかを認識する研究だ。高速道路と違って、歩行者や自転車などのさまざまなターゲットが現れるので、検知するデータは膨大な量となる。

ここで使われるコンピューターのアルゴリズムは、従来の「If(条件)-Then(命令)-Else(あるいは別の命令)」という文脈ではなく、人間の脳と同じニューラルネットワークを使うのが特徴だ。一般道路のレベル4は、過疎地の高齢者に移動手段を提供したり、ロジスティクスの労働人口減少の対策となったりするものとして期待されている。

レベル3は2020年ごろ、道交法への配慮も

もう1つの技術は、アウディと同じ考えのトラフィックジャム(渋滞)のレベル3だ。厳密には、ホンダはレベル3という言葉を避けており、サブタスクをしていてもドライバー責任という日本の道路交通法を遵守する表現に留めている。

それでは、どんなシステムなのか説明しよう。スイッチを入れると、クルマは決められた速度で自動で加減速する。前を走るクルマに遭遇するとACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)で追従し、同時にカメラで車線を認識しながら、一定の距離を保って走行する。もし、前を走るクルマのスピードが低下すると、隣のレーンに自動的に車線変更する。そして渋滞に遭遇すると、時速60キロ以下のスピードでレベル3の自動運転が可能となるのだ。

先行車を追い越すデモもあった(画像提供:ホンダ)

インパネ中央部のTVモニターを見ることも可能だ。このモニターの脇にはドライバーを見張るカメラが備わっており、顔認識することで、ドライバーを監視し、いつでもドライバーに運転を戻せることを確認している。もしドライバーが居眠りすると、警報音や振動で危険な状態を知らせてくれる機能も搭載されている。

アウディはレベル3と呼ぶが、ホンダは「あくまでドライバー責任」という表現だ。アウディのケースでは、「ドライバーの安全運転責任」を規定している国連決議のジュネーブ条約(1949年)を、ドイツ国内法に限定して「免責」する法律が制定されている。日本ではまだその法律は整備されていないので、ホンダはレベル3という表現を控えたのであろう。ホンダは「レベル3は2020年ごろまでに実用化したい」と考えているが、アウディが開いたレベル3の扉に他のドイツメーカーも追従する可能性が高いので、実用化はもっと早まるかもしれない。

システムの信頼性やロバスト性という技術的な課題も重要だが、レベル3に関しては、道交法の改正がいつ頃、どこまで進むのか、冷静に見守る必要があると思っている。

著者略歴

清水和夫(しみず・かずお)
1954年、東京都生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活動を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通。著書は日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』、ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。内閣府SIP自動走行推進委員の構成員でもある
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu