なぜ日本ではiPhoneのシェアが圧倒的に高いのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第17回

なぜ日本ではiPhoneのシェアが圧倒的に高いのか

2018.03.31

意外と知らない、ケータイ業界の疑問を解説!

第17回は、「高すぎるiPhoneのシェア率」について

1番の理由は、各国との販売価格の差にあり?

日本で最も人気のスマートフォンといえばアップルの「iPhone」シリーズであることに疑いの余地はない。だが世界中でそのような国は他に存在しないというのもまた事実である。なぜ日本では、これほどまでにiPhoneのシェアが高くなったのだろうか。

世界市場とは全く異なるiPhoneのシェア

今や多くの人にとって欠かせない存在となったスマートフォン。その中でも、日本で最も人気が高いスマートフォンといえば、アップルの「iPhone」シリーズだということに間違いないだろう。実際いくつかの調査を見ると、日本におけるiPhoneのシェアは5~7割に達しているとされており、日本ではiPhone、ひいてはiOSが多数派となっているのだ。

アップルのiPhoneシリーズは、日本で圧倒的なシェアを獲得するに至っている。写真は現在の主力機種である「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」

確かにiPhoneは、ハード的に見ても強いこだわりと洗練されたデザインで常に注目されているし、iOSと一体で開発がなされていることから、ハードとソフトとで統一感のある快適な使い心地が体感できる。他社のスマートフォンと比べても優れている点が多く存在するのは事実だろう。

そうしたことから現在も、iPhoneがスマートフォンの進化をけん引する存在となっているようだ。例えば昨年発売された「iPhone X」に導入された、画面上部に切り欠きのあるデザインや、顔認証による素早いロック解除、さらにホームボタンを排した独自のインターフェースなどは、他社のAndroidスマートフォンが積極的にフォローしており、iPhoneの動向を強く意識している様子がうかがえる。

エイスーステック・コンピューター(ASUS)が2月に発表した新機種「ZenFone 5」は、ディスプレイ上部に切り欠きがあるなどiPhone Xそっくりのデザインで話題となった

だが一方で、iPhoneは価格が非常に高いことでも知られている。実際、iPhone Xは10万円を超える価格が大きな話題となり、価格の高さや新規性の強さが裏目に出て販売の不振が伝えられているほどだ。

世界的に見ればAndroidがスマートフォン向けOSで8割以上のシェアを獲得しているとされているし、アップルのお膝元である米国でさえ、スマートフォン市場におけるアップルのシェアは30%程度。高額なiPhoneが飛ぶように売れ、5割を超えるシェアを獲得しているのは日本以外に存在しないのである。

ではいったいなぜ、日本ではiPhoneがここまで高いシェアを獲得するに至ったのだろうか。そのきっかけとなったのは、やはり「価格」にあるといえるだろう。

高額なはずのiPhoneが日本ではとても安い

初代iPhoneは2007年に発売されたが、日本のネットワークに対応していなかったことから、日本で最初に発売されたiPhoneは2008年の「iPhone 3G」からとなる。当時、iPhoneは非常に画期的な携帯電話として大きな注目を集めていたことから、日本でもアップルストアや、当時iPhoneの独占販売権を獲得していたソフトバンクモバイル(現在のソフトバンク)のショップには、数百人から1000人を超す大行列ができ、大きな注目を集めることとなった。

だが実は、その後iPhoneの販売は急速に落ち込んでしまったのだ。理由の1つは、当時iPhoneに強い興味や関心を示していたのが、ITやテクノロジーに興味がある30代以上の男性層であったため、市場が大きく広がらなかったこと。彼らがiPhoneを一通り入手したところで、iPhoneの販売がぱたりと止まってしまったわけだ。

そしてもう1つは価格だ。当時のiPhoneは世界的に人気が高く、あまり値引き販売がなされていなかった。それゆえ多くの消費者の目には、実質価格が安いフィーチャーフォンと比べ、iPhoneは高額に映ってしまったことから、興味があっても手を出すことができなかったわけだ。

そうした状況を大きく変えたのが、2009年にソフトバンクが打ち出した「iPhone for Everybody」キャンペーンである。このキャンペーンを適用すると、最も安価なモデルであればiPhoneを実質価格0円で購入できたことから、iPhoneに興味はあるけれど、価格面で手を出せなかった人達がiPhoneを購入するきっかけとなり、それがiPhoneの急速な販売拡大へとつながっていったのである。

その後、iPhone効果でソフトバンクに加入者が大量に流出した他のキャリアが危機感を覚え、iPhoneの販売をするようになった。2011年にはauが「iPhone 4S」の販売を開始したことで、一社独占体制が崩れた。これを機としてソフトバンクモバイルとauによる激しいiPhoneの値引き販売合戦が起き、その影響をもろに受けたNTTドコモが、毎月番号ポータビリティで10万を超える顧客が流出するなど不振を極めることとなったのである。

その結果、2013年にはNTTドコモが「iPhone 5s」「iPhone 5c」でiPhoneを取り扱うようになり、一層iPhoneを巡る競争が加速。高額であるはずのiPhoneが、キャリアの優遇措置によって一時はスマートフォンの中で最も安く買えるようになったことが、国内での圧倒的なiPhone人気へとつながっていったのである。

2013年の「iPhone 5s」「iPhone 5c」でNTTドコモがiPhoneの扱いを始めたことにより、大手3キャリアが競い合ってiPhoneの値引き合戦を繰り広げるようになった

現在では総務省の指導などもあって、iPhoneの過剰な値引きはできなくなっている。だがそれでも3キャリアが、他のスマートフォンよりiPhoneを優遇して販売する傾向は現在も続いているため、iPhoneの優位性は崩れていない。iPhoneを扱っていないMVNOが高いシェアを獲得するなど、この状況を大きく覆す何らかの出来事が起きない限り、iPhoneが圧倒的優位であるという現在の状況が劇的に変わることはないだろう。

【知って納得、ケータイ業界の"なぜ"】 連載バックナンバーはコチラ

関連記事
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu