かつてはたくさんあった携帯会社、3社まで減った理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第15回

かつてはたくさんあった携帯会社、3社まで減った理由

2018.02.27

楽天が「第4のキャリア」として携帯電話事業に参入を表明したことが、大きな話題となっている。だが過去をさかのぼれば、第4どころか、PHSも含めれば地域によっては7つもの企業が、自社でモバイル通信のインフラを構築してサービスを提供し、競争を繰り広げていた時代があった。それがどのようにして、現在の大手3社体制となったのかを振り返ってみよう。

PHSも含めればかつては7社以上存在していた

昨年末、「楽天モバイル」を展開している楽天が、他社からインフラを借りるMVNOではなく、自ら通信インフラを持つ携帯電話事業者になることを表明したことが、大きな話題となった。楽天は今年3月にも総務省が実施すると見られている、4G用の1.7GHz帯と3.4GHz帯の追加割り当てを申請し、割り当てがなされた際には2019年の携帯電話事業参入を目指して準備を進めるとしている。

楽天は、個人向けのMVNOサービスとして好調な「楽天モバイル」の実績をバネに、自らインフラを敷設する携帯電話事業にも参入することを明らかにしている

無論、既にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が全国津々浦々に充実したインフラを整えているだけに、楽天が今から携帯電話事業に参入して順調に成長できるのか、という点には多くの疑問符が突きつけられている。それだけに、楽天が今後携帯電話事業参入に向けてどのような動きを見せるのかというのは、今年の業界動向を見据える上でも大きな見どころとなるだろう。

だがよくよく考えてみると、何年か前まで携帯電話会社は3社以上存在していたし、PHSも含めればもっと多くの数が存在した時代もあった。それがなぜ、現在の大手3社体制に集約されていったのかを、改めて振り返ってみたい。

一般消費者向けにサービスを提供する携帯電話会社はかつてNTTの携帯電話事業、その後独立したNTTドコモのみであったのだが、1988~1989年にかけてKDDIの前身となる、京セラ系の第二電電(DDI)が展開するDDIセルラーグループとトヨタ系の日本移動通信(IDO)の2社が参入。さらに1994年には現在のソフトバンクの前身となるJR系のデジタルホングループ、そして日産系のツーカーグループと、5社が同時に存在していた時期がある。

沖縄でauブランドの携帯電話事業を展開するKDDIの子会社「沖縄セルラー」は、かつて存在したDDIセルラーグループの名残りでもある

だがこれらの会社が、現在のように全国で同じように競争をしていたわけではない。かつては同じ地域に参入できる携帯電話会社の数が限られていたため、IDOは関東・中部エリア、DDIセルラーグループはそれ以外のエリアで事業展開をしていたし、ツーカーはDDIと関東・中部で「ツーカーセルラー」、デジタルホングループとツーカーグループは東名阪以外で「デジタルツーカー」として共同事業展開していた。ゆえに実際には東名阪で4社、それ以外では3社、しかも同じ会社に複数のグループが入り混じるという、非常に複雑な競争環境となっていたのである。

加えて1995年には、DDI系のDDIポケット、NTT系のNTTパーソナル、電力系のアステルグループと、3グループのPHS事業者が参入。特に1990年代後半から2000年代初頭にかけては、携帯電話の普及率が急速に高まっていた時期だけあって、携帯・PHSを合わせると、最も多い東名阪エリアでは7社が激しい競争を繰り広げるという状況だったのだ。

ウィルコム、イー・アクセスに足りなかったのは?

だが携帯電話の普及率が高まり市場が成熟していくとともに、各社の競争環境は大きく変化していくこととなる。PHS事業者は「つながらない」イメージの定着によって軒並み不振となり、NTTパーソナルはNTTに吸収され、アステルグループは解散。携帯電話事業者に対しても、KDDIの誕生によるDDIセルラーグループとIDOの統合、日産の経営危機によるツーカーグループの解体、そしてデジタルホングループの親会社である日本テレコムが英ボーダフォンに買収されるなど、再編の波が次々と押し寄せてきたのである。

その結果、携帯電話事業者はNTTドコモ、KDDI、そしてボーダフォンの日本法人の大手3社へと集約されていくのだが、そのことを快く思っていなかったのが、事業者の減少による市場寡占を懸念した総務省である。そこで総務省は2005年に、新規携帯電話事業者の参入に向けた周波数帯割り当てを実施。イー・アクセスが設立したイー・モバイル(後に統合)と、現在のソフトバンクグループに当たる旧ソフトバンクが設立した「BBモバイル」、そして独立系のアイピー・モバイルが免許を獲得することとなった。

だが旧ソフトバンクはボーダフォンの日本法人買収による参入へと方針を切り替え、アイピー・モバイルは資金不足や社内の混乱などによって事業開始前に破産。イー・モバイルだけが純粋な新規事業者として参入を果たす結果となった。また同じ2005年には、KDDI傘下となったものの、auに注力するというKDDIの方針からノンコア事業に位置付けられたDDIポケットが、ファンドの力を借りて「ウィルコム」として独立。その結果、大手3社に独立系の2社を加えた5社による競争がしばらく続くこととなったのである。

イー・モバイルは2005年に電波の割り当てを受けて携帯電話事業に参入。独立系の携帯電話会社としてWi-Fiルーターに力を入れるなど、独自のサービスを打ち出していた

そうした状況が大きく変化したのは2010年前後のこと。2009年にリーマン・ショックの影響を受けてウィルコムが経営破たんし、再建のため旧ソフトバンク傘下となった。また2012年には、資金繰りに窮していたとされるイー・アクセスの買収を、iPhone向けの周波数帯を欲していた旧ソフトバンクが、KDDIとの水面下での争いの末に買収を勝ち取った。その結果、現在の大手3社体制が確立されたのである。

ウィルコムは経営破たん後に旧ソフトバンク子会社となり、その後旧ソフトバンク傘下となったイー・アクセスと合併。ワイモバイルが誕生するきっかけとなった

独立系の2社がサービス継続に至らなかった背景には、携帯電話のインフラが通話が主体の2Gから3G、そしてデータが主体の4Gへと高度化し、高速データ通信を実現するためより多くの基地局を設置する必要が出てきたことで、従来より一層大規模なインフラ投資が必要になったことが挙げられるだろう。独立系の2社は資金面での基盤がぜい弱だったため、資金繰りでつまづき旧ソフトバンクへと吸収されたわけだ。

こうした歴史を振り返ると、楽天が第4のキャリアとして新規参入し、生き残り続けるためには十分なインフラ投資ができる豊富な資金力と、そのインフラ投資継続できるだけの顧客基盤をいかに構築できるかが、強く求められるといえる。ある程度企業体力のある楽天とはいえど、ゼロからインフラを整備するのに必要な投資はけた違いなものとなるだけに、この難題をいかにクリアできるかが楽天の成否を決めることとなりそうだ。

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メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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