フォルクスワーゲンの自動運転戦略とは? 研究部門トップに聞く

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第11回

フォルクスワーゲンの自動運転戦略とは? 研究部門トップに聞く

2017.12.14

「CASE」というコンセプトが世界のデファクトに

2016年のパリサロン・モーターショーでメルセデス・ベンツのトップが示した「CASE」(コネクト・自動運転・シェア・電動化)というコンセプトは、世界中の自動車メーカーが納得する次世代車の課題である。メルセデスは生産台数(規模)で見ればあまり大きくないが、ガソリン自動車を考案したメーカーだけあって、常に未来社会を考えながら自動車技術を進化させてきた。それだけに、CASEというコンセプトでは非常に重いテーマを掲げている。

一方、10のブランドを束ねるフォルクスワーゲン(VW)は、規模ではトヨタ自動車と並ぶ世界のトップメーカーだ。2015年にディーゼル不正問題が発覚し、現在は立ち直れるかどうかの重要なターニングポイントにいる。

VWはグループ全体で考えると、1リッターの「up!」(画像)から「MAN」や「スカニア」のような大型トラックまでを手掛ける巨大なグループ企業だ。ダイムラーも「スマート」からトラックまでを持つが、VWに規模で及ばない。VWと同レベルの企業体といえば、トヨタグループだけではないだろうか

すでに電動車両では、中国市場を見据えた大胆なEV(電気自動車)化を進めるVWだが、自動運転やコネクトといった分野では、どのような技術革新を考えているのだろうか。VWグループの中核を成すアウディは、新型「A8」で自動運転技術をリードしようとしている。ライバルのメルセデスやBMW、あるいはレクサスやキャデラックとの技術競争も始まっている。

そんな中、2017年11月にVWグループで自動運転領域の研究部門トップを務めるヘルゲ・ノイナー博士(Dr.Helge Neuner)が来日し、同グループの自動運転への考え方を明らかにした。

VWグループ自動運転領域の研究部門トップに聞く

ノイナー博士は2002年から電子電動化領域の技術を担当し、その後はインフォテインメント(コネクト)やHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)などを手掛けてきた。そして2017年には、本格的に自動運転の責任者となっている。まさに、自動運転には最適なキャリアを持つ人物だ。さらにノイナー博士は、日本の内閣府が主宰する政府間パネルにも出席し、「SIP-adus」(府省連携の自動運転推進会議)が主宰する自動運転の国際会議でもスピーチしている。

ノイナー博士はプレゼンテーションで、VWの包括的なビジョンはメルセデスが打ち出した「CASE」と同じコンセプトだと語った。もはや、このCASEという言葉に代表されるイノベーションは世界のデファクトになったのだ。つまり、単なるクルマだけでの進化ではなく、クルマ社会全体でイノベーションが起こり、モビリティがサービス業(Mobility as service)となることを示唆している。

東京モーターショー2017には2022年の生産開始が決定している電気自動車「I.D BUZZ」を出展したフォルクスワーゲン

キーワードは冗長性

そのVWは、自動運転にどのような姿勢で取り組もうとしているのか。早速、ノイナー博士の話の核心をレポートすることにしよう。

まず、話題となっているアウディ「A8」の自動運転レベル3だが、実際のところ、レベル3の実現にはもう少し時間がかかるようだ。アウディA8の場合、「トラフィックジャム・アシスト」と呼ばれる時速60キロ以下の限定的なレベル3でも、ドライバーを監視するシステムが必要となる。一見、中途半端に思えるアウディA8のレベル3だが、ノイナー博士は次のような考えを示す。

「自動運転システムについて、人間よりも運転が優れている、ということを検証することが重要なので、市販されたA8を通じて世界中の色々なデータを取ることで、システムの冗長性(Redundancy)を高めることが大切です」

アウディ「A8」

人間も色々で運転がうまい人もいるので、必ずしも自動運転システムの方が優れたドライバーであるとは限らない。しかし、人間にできないことがシステムでは可能となるので、シミュレーションを駆使し、システムの精度を高めることが重要になるとノイナー博士は考えているのだ。

しかし、このレベル3に関しては、日本の関係者(メーカーやアカデミー)の間でも侃侃諤諤の議論がかわされている。レベル3は責任問題がシステムと自然人(法律的表現)の間で行き来するので、どう考えても難しいという意見も多い。レベル2を高度化し、システムの冗長性や信頼性が十分に高まった段階で、レベル4にジャンプアップすべきという考え方もある。自動運転領域で「ガーディアン・エンジェル」(守護天使)というコンセプトを打ち出すトヨタは、この考えを明らかにしている。

HMIがカギを握る

システムのどの機能がダウンしたのか、ドライバーが直感的に分かるような対応を取らなければいけないのではと尋ねると、ノイナー博士は「そのためにシステムそのものを簡素化し、ドライバーにとって分かりやすくすることが大事です。200ページのマニュアルを読むなんてナンセンス」とし、HMIがカギを握るとの考えを示した。

ノイナー博士は、システムに対してドライバーがどう反応するのかを示す例として、「ドライバーは、そのシステムに慣れて信頼を深めると、かえって異常時には、システムからテイクオーバーの要請があってもすぐに対応せず、時間をかける傾向にあります」という面白い研究結果も教えてくれた。

日本では2017年10月に発売となったフォルクスワーゲンのフラッグシップモデル「アルテオン」

こういった話を聞くと、システム側(クルマ側)の努力も重要である一方、ドライバー側の理解も大事になりそうだと感じる。あらかじめ「知っておくべき情報」を、ドライバーは認識しておく必要が出てくるだろう。

自動運転には、レベル1から順番にレベル5へ進んで行くプロセス(Evolution)と、レベル2からレベル4へジャンプアップするプロセス(Revolution)の両方のパス(道)があるが、VWグループは、両方のパスに並行してチャレンジしていく考えを示す。電動化とモビリティサービスに関しては色々なアプローチがあり、VWもグローバルに注力していく考えを示しているが、どうやら自動運転に関する考え方に、世界のメジャーメーカー間の違いは少ないようだ。

著者プロフィール


清水和夫(しみず・かずお)
1954年、東京都生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活動を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通。著書は日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』、ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。
内閣府SIP自動走行推進委員の構成員でもある

日本のEC市場を変える? アマゾン「YouTuber」起用でライブコマース参入

日本のEC市場を変える? アマゾン「YouTuber」起用でライブコマース参入

2018.11.22

アマゾンが年末セール「サイバーマンデー」を実施すると発表

今年の目玉は特大おせちと“急がない便”?

「YouTuber」「試着サービス」で新規ユーザー獲得狙う

アマゾンジャパンは12月7日18時~11日午前1時59分まで、年末セール「サイバーマンデー」を開催すると発表した。これは毎年の恒例行事となっており、7月の「プライムデー」に匹敵する大規模なセールだ。

今年は新たに「試着サービスやライブコマース」に取り組むとのこと。さらなるEC事業の拡大に向け、特に新規ユーザーの掘り起こしを強化したいという狙いがあるようだ。

アマゾンが毎年恒例の年末セール「サイバーマンデー」を開催

今年の目玉は特大おせちと「急がない」便?

米国におけるサイバーマンデーとは、感謝祭(11月の第4木曜日)の次の月曜日から始まるオンラインのセールを意味する。日本ではあまり馴染みがないものの、感謝祭翌日の金曜日「ブラックフライデー」とともに、現地では1年で最大の商戦期として定着している。アマゾンジャパンは12月のセールにこの名称を使ってきた。

2018年のサイバーマンデーも数十万点の商品を用意しており、カスタマーレビューが4つ星以上の商品が豊富に用意される「特選タイムセール」を始め、「数量限定タイムセール」や、限定商品も複数用意する。

限定商品の例としては、「ル・クルーゼの鍋と料理教室」「レゴのロボットとプログラミング体験」のように、今年の時流もあってか商品と体験をセットにしたものが目立つ。また、お正月に向けた目玉商品として、約30人前で税込39万円の「林裕人監修 スーパー超特大おせち」をはじめ、大小さまざまなサイズのおせち販売にも力を入れる。

30人前で39万円の超特大おせち

大幅な値引きや限定商品でセールを盛り上げる一方、懸念されるのが配送だ。人手不足が社会問題化する中で、アマゾンのセールは年末年始の混雑に拍車をかける形になる。

これに対してアマゾンは今年、無料でお急ぎ便を利用できるプライム会員が、あえて「通常配送」を選んだ際、引き換えにAmazonポイントを還元するポイントバック施策の導入を決めた。「急がない」メリットを選択肢として加えることで、出荷を平準化する狙いだ。

プライム会員が「通常配送」を選ぶことで30ポイントをバックする

「YouTuber」「試着サービス」で新規ユーザー獲得へ

日本でも年々、セールの規模を拡大させているアマゾンだが、国内のEC市場は約16.5兆円規模で、物販分野のEC化率は約5.8%にとどまっている(経済産業省調べ、2017年)。中国では今年11月11日の「独身の日」に、アリババがたった1日で約3兆4000億円を売り上げたと話題となったが、日本市場はEC化率が低い分、まだまだ成長余地はあるとみられる。

そもそもネットで買い物をする習慣がないなど、アマゾンを使ったことがない人は意外と多い。新規ユーザーの取り込みが成長の鍵となってくるのだ。

そこで同社は、サイバーマンデーをきっかけに、アマゾンでの買い物に慣れ親しんでもらうことを狙う。コンビニやATM払いにも対応する決済の便利さや、不慣れな人向けに買い物の方法を説明するコンテンツを用意して強くアピールする方針だ。

また、ファッションに特化した新サービスとして、10月からは「プライム・ワードローブ」も始まっている。これは、好みの服やシューズを取り寄せて自宅で試着できるサービスで、一定の条件下で7日以内なら返品できることが特徴だ。返品せず、手元に残すことを決めた時点で初めて代金が請求される仕組みで、気軽に試着できる。

服やシューズを試着できる「プライム・ワードローブ」

ネット通販でありがちなのが、実際に試着しないと色合いや質感、サイズが分からないという問題だ。プライム・ワードローブなら、欲しいシューズがあれば3つのサイズを一度に取り寄せ、合わなかった2つを返送するといった使い方ができる。

海外を中心に盛り上がりを見せる「ライブコマース」にもアマゾンジャパンとして初めて取り組む。動画のライブ配信とECを組み合わせた販売手法で、動画クリエイターと組んでアマゾンの商品を紹介する。発表会場には「MasuoTV」(チャンネル登録者数約109万人)で知られるYouTuberのマスオさんが登壇し、動画撮影を実演した。

超特大おせちの紹介動画を撮影するYouTuberのマスオさん

動画はアマゾンの公式YouTubeやTwitterアカウントだけでなく、動画クリエイターのアカウントでも閲覧できるようにする。影響力のあるインフルエンサーに独自の視点や語り口で紹介してもらうことで、視聴者をアマゾンに呼び込むのが狙いだ。まずはサイバーマンデーのセール商品に対象を絞って展開するが、反響次第ではECのあり方を大きく変える可能性も秘めている。

実は20代に選ばれるクルマだった! 「シボレー カマロ」に新型登場

実は20代に選ばれるクルマだった! 「シボレー カマロ」に新型登場

2018.11.22

GMジャパンが第6世代「カマロ」の新型を発売

購入者を年代別に見ると驚きの事実が

「競合車」の概念が変わる? クルマ選びの実態とは

ゼネラルモーターズ・ジャパン(GMジャパン)が開催した新型「シボレー カマロ」の発表会で、驚きのデータが判明した。アメリカを象徴するマッスルカー「カマロ」を買っているのは、多くが20代の若者だというのだ。なぜ若者に「カマロ」が受けているのだろうか。

伝統のV8エンジンを積む「シボレー カマロ SS」。総排気量は6,153cc、最高出力は453馬力だ

6世代目「シボレー カマロ」がマイナーチェンジ

「シボレー カマロ」は1967年に発売となったアメリカンクーペで、現行モデルは6世代目だ。GMジャパンは2016年末に6代目カマロの予約受付を開始し、2017年に発売した。今回の新型モデルは、6世代目カマロがマイナーチェンジを受けたものだ。

オープンカーになる「シボレー カマロ コンバーチブル」。2リッターターボエンジンを積む。パワートレインは「LT RS」というグレードと一緒だ

6代目カマロには伝統のV8エンジンを積む「シボレー カマロ SS」のほか、直列4気筒ターボエンジンを搭載する軽量モデル「シボレー カマロ LT RS」とオープンカーになる「シボレー カマロ コンバーチブル」がある。今回のマイナーチェンジでは、全てのクルマがフロントとリアのデザインを刷新。「SS」は新開発のパドルシフト付き10速オートマチックトランスミッションを搭載した。価格は税込みで「SS」が680万4,000円、「コンバーチブル」が615万6,000円、「LT RS」が529万2,000円だ。

画像は新型の誕生を記念した限定モデル「シボレー カマロ LAUNCH EDITION」。「LT RS」は限定20台で税込み561万6,000円、「SS」は30台限定で同712万8,000円だ

購入者の7割超が新規、そのうち3割近くが20代!?

発表会でGMジャパンの若松格(わかまつ・ただし)社長は、6代目カマロの販売状況に関する興味深いデータを示した。このクルマを購入した人のうち、74%が新規顧客(GMのクルマを買うのは初めてという人)であり、その新規顧客の内訳を年齢別で見ると、割合としては20代が28%で最多だったというのだ。

6代目「シボレー カマロ」の顧客分布。74%が新規顧客で、そのうち28%が20代だったという

もちろん、カマロは年間数万台を販売するクルマではないし、この6代目も数百台というボリュームだとは思うのだが、「若者のクルマ離れ」といわれて久しい中で、こういう内訳となっているのは意外だった。アメリカ車を買う人といえば、「若い頃に映画などでアメリカ文化にしびれた」世代、年齢でいえば40~60代あたりが中心だろうと思っていたからだ。

6代目「カマロ」の購入者は初代「カマロ」(画像)に憧れた世代が多いのかと思ったら、そうでもないらしい

なぜ、6代目カマロは若者に受けたのか。若松社長によれば、このクルマの販売ではSNSなどを用いたデジタルマーケティングに注力したので、それが響いたのかもとのことだったが、この結果については、社長も喜びつつ驚いていた。

GMジャパンの広報からは、現代のクルマ選びに関する示唆に富む話も聞けた。カマロを実際に購入した人の多くは、必ずしもアメリカのクルマを対抗馬(競合車)として検討していなかったというのだ。日本車とカマロで悩む人もいれば、アメリカの文化が好きだということで、バイクのハーレーとカマロを比べる人すらいたという。フォードが日本から撤退したので事情が変わったのかもしれないが、「カマロ」と比べるなら「マスタング」(フォード)とか、何かマッスルなクルマだろうと思っていたのだが、その想像は間違っていた。

若者が何をきっかけに「カマロ」の購入を検討し始めたのかは気になるところ。6代目の発売時期から考えると、ロックスター・ゲームスの「グランド・セフト・オートV」をプレイして、マッスルカーが欲しくなったという人がいてもおかしくない

新しいクルマが登場すると、「このクルマの競合車は何だろう?」という視点で考えがちな自分にとって、カマロ購入者のクルマ選びに関する話は目からウロコだった。ひょっとすると、クルマについて既成概念や先入観を持たない若者がクルマを買う場合には、同クラスの似たような車種を比べて決めるのではなく、「これが欲しい!」という“指名買い”が多くなるのかもしれない。そんな風に感じた新型カマロの発表会だった。