なぜKDDIは一体化が進むUQコミュニケーションズを吸収しないのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第12回

なぜKDDIは一体化が進むUQコミュニケーションズを吸収しないのか

2017.12.18

最近では「UQ mobile」が注目される、KDDI傘下のUQコミュニケーションズ。元々はWiMAX2+方式によるインフラを自社で敷設し、自社で通信サービス「UQ WiMAX」を展開するキャリアなのだが、実は同社のネットワークはKDDIのauブランドでも活用されており、両社の一体化が進んでいるように見える。にもかかわらず、KDDIとUQコミュニケーションズが合併せず、別会社のままなのはなぜなのだろうか。

KDDI系列内で事業の一体化が進むも、あくまで別会社

KDDI傘下の通信会社であるUQコミュニケーションズは、最近ではKDDIのMVNOとして展開している低価格のモバイル通信サービス「UQ mobile」が大きな注目を集めていることで知られる。だが同社はMVNOだけでなく、自社でインフラを敷設するキャリアの顔も持ち合わせている。

同社は総務省から割り当てられた2.5GHz帯の周波数帯域を用い、WiMAX方式によるネットワークを全国に敷設して、2009年からモバイルブロードバンドサービス「UQ WiMAX」を提供開始。その後の世界的なLTE方式の拡大に伴い、2013年にはLTEの方式の1つ「TD-LTE」と高い互換性を持つ「WiMAX 2+」方式を採用するなどしているが、一貫して主にパソコンやWi-Fiルーター向けを主体にしたサービスを展開するなど、自社のネットワークを用いてスマートフォンとは異なる市場開拓を進めてきたのだ。

それゆえ同社がUQ mobileのサービスを開始したのは、MVNO事業を展開していたKDDIの子会社と合併した2015年から。2007年に設立した同社の歴史から見ると、UQ mobileのサービスというのはかなり新しいものなのである。

だが実は、同社のWiMAX 2+ネットワークは、親となるKDDI自身が展開している、auのサービスにも積極的に活用されている。auは2014年より、自社で敷設したLTEのネットワークだけでなく、WiMAX 2+ネットワークにも対応したスマートフォンを提供しているが、これはKDDIがUQコミュニケーションズからネットワークを借りることで実現しているものだ。

auでは2014年より、LTEに加えWiMAX 2+にも対応したスマートフォンを提供しているが、WiMAX 2+のネットワークはUQコミュニケーションズから借りて提供しているものだ

さらにその逆として、UQコミュニケーションズ側がKDDIのネットワークを借りて提供しているサービスもある。それはUQ WiMAXの1機能となっている、より広いエリアでの利用が可能になる「ハイスピードプラスエリアモード」だ。この機能に対応したWi-FiルーターはKDDIのLTEネットワークにも対応していることから、通信量に制限はあるものの、WiMAX 2+より広いエリアでの通信が可能になる。

UQ WiMAX対応ルーターのいくつかは、広いエリアで利用できる「ハイスピードプラスエリアモード」に対応しているが、こちらはauからLTEのネットワークを借りて実現しているサービスになる

こうして見ると、KDDIとUQコミュニケーションズは、互いのネットワークを貸し借りしながらサービスを展開していることがよく分かるだろう。なのであれば、KDDIがUQコミュニケーションズを吸収し、一体となってインフラ整備や事業展開した方が効率がいいようにも思えるのだが、なぜ両社は合併しないのだろうか。

合併できない理由は周波数帯獲得時の条件にあり

その理由は、2.5GHz帯の電波を取得する際、総務省から指定された条件にある。この周波数帯の割り当てが実施されたのは、携帯電話の通信方式が現在の1世代前となる「3G」が主流であった2007年だが、総務省はその割り当てを受ける企業に対し、ある条件を付けたのだ。

それは、既存の3G事業者は直接割り当てが受けられないというもの。総務省はこの時期、3Gによるサービスを展開していた企業による携帯電話市場の寡占を嫌い、競争促進のためにも新周波数帯の割り当てによって新規参入事業者を増やすことに力を入れていた。そうしたことから総務省は、2.5GHz帯の割り当てを受ける企業に対し、3Gのサービスを提供している企業やそのグループは直接参入ができず、参入企業への出資も3分の1以上してはいけないという条件を付けたのだ。

そこで携帯大手各社は、出資比率を抑えながらも自社の影響力を残す形で2.5GHz帯を獲得するべく、複数の企業と手を組みグループでの参入を図ったのである。実際、KDDIとJR東日本らによるグループ、NTTドコモとアッカ・ネットワークス(後にイー・アクセスと合併)らによるグループ、ソフトバンクとイー・アクセスらによるグループ、そして3Gのサービスを展開していなかったウィルコムの4陣営が、当時2.5GHz帯獲得に名乗りを上げている。

3Gを提供するキャリアが直接参入できない2.5GHz帯を巡っては、旧ソフトバンクとイー・アクセスが提携するなど、キャリア同士が手を組んで獲得に乗り出すなどの事例も見られた

その結果、この帯域の割り当てを受けたのはKDDIらのグループとウィルコムで、KDDIらのグループが設立した企業がUQコミュニケーションズに名前を変え、2.5GHz帯を用いたサービスの提供に至っている。そうした経緯があることから、KDDIはUQコミュニケーションズを吸収したくても、総務省が制限を解かない限り出資比率を上げられないのだ。

同様の事例として挙げられるのが、ソフトバンクグループ傘下のWireless City Planningである。同社は2010年にウィルコムが経営破綻した際、現在のソフトバンクグループである旧ソフトバンクが、ウィルコムの2.5GHz帯を用いた通信サービスの資産を継承するべく設立した会社である。同社のネットワークは、その後やはりTD-LTEと互換性のある「AXGP」方式に変更され、ソフトバンクが「Softbank 4G」として活用している。

旧ソフトバンクがウィルコムの2.5GHz帯の資産を継承して設立したWireless City Planningも、UQコミュニケーションズと同様の出資制限が設けられている

だが同社もやはり、2.5GHz帯の割り当て条件の影響を受けているため、ソフトバンクグループやその傘下企業であるソフトバンクは、同社への出資比率を3分の1以上に上げることができない。それゆえ同社は、後にソフトバンクグループ傘下となり、その後ソフトバンクと合併したイー・アクセスやウィルコムとは異なり、現在も独立したままとなっているのである。

既にUQコミュニケーションズもWireless City Planningも、実質的にはそれぞれKDDIとソフトバンクグループの系列企業という認識がなされており、なし崩し的に一体化が進んでいるように見える。だがこの状態は、制限を設けた側の総務省にとって、決して面白い状況ではない。総務省は現在も大手3社の寡占に厳しい目を光らせているだけに、我々の芽からすれば不自然な形で会社が独立している状況は、今後も続くことになりそうだ。

高すぎるiPhoneは売れる? 奔走するキャリアと余裕のApple

高すぎるiPhoneは売れる? 奔走するキャリアと余裕のApple

2018.09.21

iPhone Xs、Xs Maxが発売。価格は最大17万円越えと高価

キャリア各社による、これまでとこれからのiPhoneの売り方は?

Appleの強気の価格設定の裏に「型落ち機」の存在感

9月21日、いよいよ新型iPhoneが発売となった。iPhone XSは昨年発売されたiPhone Xの後継モデルで、iPhone XS Maxは6.5インチの大画面が特徴だ。

性能とは別に、話題となっているのが本体価格だろう。今回、いずれも64GB、256GB、512GBの3つの容量が用意されているが、64GBモデルでも12万円を超え、512GBモデルとなれば17万円を超える値付けとなっている。もはや、スマホとは思えない価格設定だ。

ついに発売された「iPhone Xs」と「iPhone Xs Max」

他国に比べ圧倒的にiPhoneのシェアが高い日本だが、そんな状況が生まれた理由の1つとして、これまでは「安価に買えた」というポイントは無視できない。

「安いiPhone」が日本普及の鍵だった

かつてソフトバンクはiPhoneを販売するにあたり、「Everybodyキャンペーン」と銘打ち、端末代が実質ゼロ円となる施策を実施。ガラケーに使い慣れていたユーザーに、iPhoneをお試し的に使えるキャンペーンがハマった。また、KDDIとNTTドコモが相次いでiPhoneの取り扱いを始めたことで、同じ機種を3キャリアが同時に扱うという競争環境が生まれ、各社でキャッシュバックや実質ゼロ円での販売が横行。結果として「Andoridスマホを買うより安い」という状況が生まれた。

さらにiPhone人気に拍車をかけたのが「下取り」だ。iPhoneを販売する際、各キャリアが持ち込まれた”使用済み”iPhoneを高値で買い取ったため、「iPhoneはリセールバリューが高い」という認識が広まったのだ。

分離プラン、4年縛り……奔走するキャリア各社

しかし、ここ数年は総務省がキャッシュバックや実質ゼロ円販売に歯止めをかけた。これにより、過剰な端末割引は表向きは鳴りを潜めた。

総務省としては、端末の割引をやめることで、余った原資を通信料金の値下げに回すべきという考えを持っている。その意向に賛同したのが、KDDIが昨年始めた「ピタットプラン」だ。ピタットプランは、端末の割引をやめ、ユーザーが使った分だけ料金を請求するという、いわゆる分離プランになっている。

データ利用量に応じて支払い金額が変動する「ピタットプラン」

しかし、端末の割引がなくなってしまうと、10万円以上するiPhoneを購入するのはかなり心理的な負担が大きい。ユーザーの負担を抑えつつ高価なiPhoneを売るため、KDDIが始めたのが4年割賦、いわゆる4年縛りだ。iPhoneの本体価格を4年、48回払いにすることで、月々の負担額を下げた。

ただ、これでは機種変更が4年に1回になってしまいかねないだけに、メーカーが痛手を被る可能性がある。そこで、同じ機種を2年間使い続けたら、残債の負担なしに機種変更できるという決まりを作った。ただし、機種変更する際には、今使っている端末を回収するという条件となっている。

そういったユーザーとメーカーに配慮した売り方に対して、待ったをかけたのが公正取引委員会だ。

4年割賦で購入した場合、2年後に機種変更すると、さらに同じプログラムに加入しなくてはならず、さらに4年の割賦が発生する。そうなると結局、半永久的に縛られることになるため「それはよろしくない」ということで、KDDIとソフトバンクに改善を求めたのだ。そこで両社は、機種変更時に、同じプログラムの加入を強制しないと改めた。

ただ、これで4年割賦がなくなるかと思いきや、今年のKDDIとソフトバンクのiPhone商戦は、やはり4年割賦がメインの売り方となっている。

本体価格を見ると、「実質価格」として、2年間で支払う金額が強調してある。まるで、半額でiPhoneが買えてしまうような見せ方だ。機種変更時に端末の回収が必須だということは、本当に小さくしか書かれていない。

SoftBank 「iPhone Xs」「iPhone Xs Max」料金ページ

KDDI「iPhone Xs」「iPhone Xs Max」料金ページ

とはいえ、総務省に端末割引に対して厳しいメスが入れられたことで、4年縛り以外売る方法がないというのが実情だ。高価なスマホを購入するために、4年も拘束されることが本当にユーザーのためになっているのかは、改めて検証する必要があるだろう。

「売れ行き不調」でも強いApple、型落ちiPhoneが暗躍

ここまで高価な値付けをしてくるAppleの自信は一体どこから来るのか。

Appleとしては、iPhone XS、iPhone XS Maxをフラグシップモデルと位置づけているが、必ずしも「主力商品」とは考えていないのかも知れない。最新バージョンとなるiOS12は6年前の機種となるiPhone 5sから利用可能だ。Appleは、iPhone XS、iPhone XS Maxを売るにあたって、iPhone 7やiPhone 8を1万円ほど値下げしている。

日本では、サブブランドのワイモバイルや、KDDI子会社のUQモバイルがiPhone 6sを販売。また、NTTドコモも毎月1500円、通信料金が割引される「docomo with」でiPhone 6sの取り扱いを開始した。

docomo withの対象機器に追加された「iPhon 6s」。最新iOSへのアップデートが可能であるため、そこまで高い性能を求めなければ、十分に使える

関連記事:分離プラン普及の試金石"docomo with"に「iPhone 6s」追加のワケhttps://biz.news.mynavi.jp/articles/-/1950

Appleはこうした型落ち端末で、ガラケーユーザーからiPhoneへの乗り換えを促し、新規ユーザーを獲得しつつ、iPhoneから離れられなくなったユーザーに高価な最新機種を売っていくという戦略なのだろう。

実際、海外市場では型落ちiPhoneや中古iPhoneがよく売れている。iPhone 6sなどの型落ち機種でも、iOS12をインストールするとサクサクと動くという声も多く、意外と評判がいい。

今後、iPhone XS、iPhone XS Maxが「高くて売れていないようだ」といった報道が出てくるかもしれない。しかし、それだけでAppleの勢いが落ちていると見るのは早計だ。じわじわと売れ続ける型落ちiPhoneこそが、Appleの本当の実力を表しているといえるだろう。

新Apple Watchは「医療」で成功する、Appleは本気だ

新Apple Watchは「医療」で成功する、Appleは本気だ

2018.09.21

9月21日、「Apple Watch Series4」が発売

最新機はフィットネスの成功を土台に、より健康志向に

心電図機能の追加で、医療業界に影響をもたらす存在となる

9月12日に行われたAppleの発表会で、新iPhone「XS/XRシリーズ」と、新Apple Watch「Series 4」が登場した。iPhoneの市場の大きさから、発表会後の話題はiPhone一色になっているところがある。

新しいApple Watchである「Series4」。日本では9月21日より発売

しかし、発表会に参加し、現場を取材した筆者の感触でいえば、Apple Watchの発表は、iPhoneと同等、いやそれ以上に戦略的な意味合いをもっていたように思える。ではそれはなんなのか? 解説してみよう。

Apple WatchはAppleの「ヒット製品」に返り咲く

Appleのティム・クックCEOは、「Apple Watchは、世界で一番人気のある時計になった」と発表会で語った。人気とは売り上げ金額なのか数なのか、集計期間はいつからいつまでなのかなど、まあ、いろいろ突っ込みたい部分はある。

Appleのティム・クックCEO

だが、Apple Watchが当初の「過大な期待と持ち上げの時期」を過ぎ、Appleの中でも「重要な、売れるプロダクト」になったのは間違いない。ヒット製品の少ないウェアラブル機器の中で、Apple Watchは累計では数千万本が売れ、iPhone・Mac・iPad「以外」のApple製品の中では、圧倒的な稼ぎ頭に成長している。

Apple Watchが登場した時、市場は「ポストスマホ」的な期待を抱いた部分がある。だが、実際のスマートウォッチはそうしたものではなく、スマホの周辺機器の域を出ていない。そのことを「期待外れ」と考える人はまだ多いようだ。

だが、結果的に言えば、Appleはじっくり取り組むことで、この市場でも成功を収めつつある。ポイントは「フィットネス」だ。iPhoneからの通知を表示する、というもっとも基本的だが誰もが使う機能に加え、フィットネスの状況を可視化し、より楽しく効率的に体を動かすことに役立つ機器としてApple Watchに磨きをかけることで、非常に底堅いニーズを生み出し、顧客を掴んだ。

「スマホがあるし、普通の腕時計でいいからApple Watchはいらない」という方もいるだろう。それも真実だ。だからこそ「スマホだけでも、普通の腕時計だけでもダメな部分」を見極めることで、Apple Watchは成功に近づきつつある。

フィットネスの成功を土台に「より健康志向」へ

では、今年のApple Watchはどこを狙うのか?

昨年まで、Apple Watchの発表は「フィットネスの発表会」のようだった。だが、今回の製品ではその要素は見えない。フィットネスへの対応はすでに「基本機能」だし、Apple WatchのOSである「WatchOS」のアップデートにより、機能の洗練は進んでいる。

次にAppleが狙ったのは、より広い層だ。「腕時計の代わりに、なぜApple Watchを身につけるのか」という問いに対する答えを、Appleはついに示しつつある。

それは「万一のためのアシスタント」という考え方だ。普段はiPhoneからの通知を受けたり、音楽を聴いたり、フィットネスの情報を知ったりするのに使いつつ、「いざという時の助け」のために、自分の生体データを記録しておいてくれるデバイスとしても働いている……。これが、Appleが見つけた答えなのではないか。

Apple Watchのように腕につける機器は、体が発する情報をより多く取得することができる。これまでは歩行や心拍数などのデータが中心だったが、Apple Watch Series 4はモーションセンサが強化された結果、「転倒」も把握できるようになった。心拍の異常低下を検知し、心房細動の徴候を掴むことも可能になっている。

なによりインパクトが大きかったのは、「心電図」を計れるようになったことだろう。竜頭型のデジタルクラウンに指をあてると、内蔵の電極を使って心電図をチェックできる。

「デジタルクラウン」にセンサを埋め込むことで「心電図」の記録に対応。ただし日本では当面利用できない

心拍にしろ転倒にしろ心電図にしろ、専門の機器に比べると精度は劣るかもしれない。出番はそれこそ「一生に一度」かもしれない。

だがそれでもいいのだ。なにもなければ通報が遅れたり、医師が適切な判断を下すのが難しくなったりする。精度が劣ったとしても「いままでは見過ごされてきた徴候や状況に対応できる」ことで、誰かの命が救われるかもしれない。そうした部分を持つことが、「より良いスマートフォン・コンパニオン」である、とAppleは判断したのではないだろうか。

こうした要素は、ハードウェアの進化なしには実現できない。AppleはiPhone同様、Apple Watch用の半導体(SoC)も自社で設計し、いっきに量産する戦略を採っている。SoCの内容だけでいえば、Qualcommも同じようなことを考えているようだ。だが、「同じスペックのものをいっきに量産し市場にばらまく」という観点でいえば、Appleのように人気のあるメーカーが独自に展開する方が有利である。

医療機関との関係を強化、「医師に必要とされる」製品へ

一方、医療の世界に足を踏み込むなら、厳密かつ責任あるハードウェア作りが必要になる。関係法令を守り、審査と査読を経て、医療業界から認められる必要があるのだ。

今回Apple Watch Series 4は、アメリカの担当省庁であるFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を得た、と説明された。そこには相応の時間とコストがかかったことだろう。

だが、日本を含む他国での認可はこれから行われる。いつ認可され、心電図の機能が使えるようになるのか? 法令対応が終わったアメリカですら「年末以降」とのみアナウンスされている状況で、日本は目処すら立っていない。日本でApple Watch Series 4が医療機器として認定されるのは非常に困難である、との専門家の指摘もある。

ただどちらにしろ、こうしたことは必要だ。フィットネスとは話が違う。心電図機能にしても、消費者がそれを見て「自分で健康になる」ことを目的としているわけではない。あくまで医療機器として「医師が判断する情報」として、「医師のすすめとともに」使うものだ。そうした部分を勘違いしてはいけない。

特にアメリカの場合、日本と違い、「国民皆保険」制度にはなっていない。健康を保つために自ら機器を使って管理することは、コストを削減する面でも、健康そのものの面でも「望ましい」とされている。Apple Watchはフィットネスを切り口に、そうした流れの先頭にいた。今後はさらに「医師との窓口」としての役割を果たし、医療費削減の切り札として使われていくだろう。

日本においては、医療機器は専業メーカーの領分であり、機器メーカーが医療機関や関係省庁と話す量が少ないように思う。Apple Watchは、そうした変化の先駆けになる製品だ。

日本で心電図を含めたすべての機能が使えるようになるには、年単位での時間が必要である可能性が高い。だが数年以内に、「保険を割り引く条件として、Apple Watchをつけることと、そのデータを保険会社が管理すること」といった条件の健康保険が増えて来る可能性は高い。

垂直統合によってそうした未来を自らの力で引き寄せる……。これこそが、Appleが描いている「スマートウォッチ戦略」なのだ。