先端技術からビジネスシーンへ移った「HoloLensの今」--小柳建設社長インタビュー

阿久津良和のITビジネス超前線 第4回

先端技術からビジネスシーンへ移った「HoloLensの今」--小柳建設社長インタビュー

2017.11.16

日本マイクロソフトのMR(複合現実)デバイス「Microsoft HoloLens(以下、HoloLens)」が、ビジネスシーンを塗り替えようとしている。同デバイスは2016年12月2日から予約受付を開始し、2017年1月18日より順次提供を開始し、そろそろ1年を迎えつつあるHoloLensの歴史を振り返ってみたい。

先端技術として注目を集めたHoloLens

日本国内でHoloLensを披露したのは2016年4月18日に開催した日本航空(JAL)の発表会だった。同社はMicrosoftと提携し、ボーイング787型用エンジン整備士訓練生向けツール、そしてボーイング737-800型機運航乗務員訓練生用トレーニングツールを発表。VR(仮想現実)デバイスではなくMRデバイスを選択した理由として、日本マイクロソフトの関係者は「パイロットの訓練は視覚だけはなく触覚で覚えることが必要。さらに目の前に自身の手が動く様が大事。エンジンの内部構造を目の前にすると、(環境情報を遮断する)VRデバイスでは移動時に恐怖を覚えてしまう」と説明している。

また、別の発表会ではMRデバイス及びアプリケーションの導入背景として、航空機が安定することで修理機会は減り、保守点検期間も広がる傾向があると述べていた。もちろん経営観点から見れば望ましい結果だが、整備士は目の前の航空機に触れて知識が血肉となる。訓練用航空機の確保も困難になるため、アプリケーションの開発に至ったと言う。「航空機・エンジン企業の協力を得ないまま、撮影した写真を3D化して開発に至った」(日本航空 整備本部部長 兼 JALエンジニアリング 人財開発部長 海老名巌氏)と関係者は当時の苦労を吐露していた。

日本マイクロソフトで開催した日本航空の発表会。HoloLensを手にするJALの現役パイロットと整備士、中央はMicrosoft HoloLens担当General ManagerのScott Erickson氏

HoloLensの存在は、2015年4月末から米国で開催した開発者向けカンファレンス「Build 2015」で明らかにしていたが、前述の発表会が日本初上陸と相まって、多くの報道関係者が会見場に詰め寄っていった。筆者もHoloLensを始めて体験した際は、エアタップ(人差し指を立てて、まっすぐ下に倒すジェスチャー)で3Dホログラム化したエンジンを、あらゆる角度から見て回った感動は今でも思い出せる。

前述のように日本マイクロソフトは2016年12月から予約受付を開始しているが、その前に世界各国にある海外拠点のグローバルセールス及びマーケティングサービスを統括するMicrosoft EVP兼President Global Sales Marketing&OperatioのJean-Philippe Courtois氏を招いて、HoloLensを中核とした展開について説明した。「航空機を(デジタル空間に)持ち込むコンセプト」と、JALとの協業結果を説明し、Courtois氏は日本マイクロソフトを含めたグローバルで支援することを表明している。

HoloLensを手にするMicrosoft EVP兼President Global Sales Marketing&OperatioのJean-Philippe Courtois氏

日本マイクロソフトのHoloLensに対する注力具合は、これまでの製品・サービスの中でも群を抜くものだった。HoloLens出荷日に合わせて開催した2017年度下期の方向性を説明する記者説明会では、同社代表取締役 社長 平野拓也氏が、「デジタルトランスフォーメーション(変革)を推進する上で(HoloLernsは)鍵となる技術。初動実績も他国(西欧など6カ国)の合計数を3倍にあたる予約を頂き、驚いている。建設業界や製造業、ヘルスケア、そして教育現場。この4分野での展開に注力したい」と説明した。なお、HoloLernsは法人向けのCommercial Suite(税込み参考価格55万5,800円)と開発者向けのDevelopment Edition(税込み参考価格33万3,800円)の2種類を用意しているが、圧倒的に開発者向けが多く、「日本人がデジタルに対する親和性の高さや、ビジネスモデルの可能性に対する期待値、関心の高さを感じられる」(平野氏)好例と言えよう。

日本マイクロソフト品川本社ロビーでは、出荷開始日に合わせてHoloLensを披露していた

平野氏の説明どおり2017年4月20日には、建設業界におけるHoloLernsの展開として日本マイクロソフトは、小柳建設とHoloLernsを活用した連携を行うことを発表した。小柳建設はHoloLensを用いて業務の透明化や、近未来のBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)/CIM(コンストラクションインフォメーションモデリング)データの活用、建設現場や施工主を含めたコミュニケーションを実現する「Holostruction」プロジェクトを推進している。HoloLensを採用した理由として、小柳建設は「政府のデジタル化推進(国土交通省が推進するi-Constructionなど)や建設業界の迷いに一石投じたいという思いがあり、HoloLensが直感的に『来る』と感じた」(小柳建設 代表取締役社長 小柳卓蔵氏)と説明し、小柳建設もMicrosoft及び日本マイクロソフトの3社連携で取り組むと説明した。

日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏(左)と、小柳建設 代表取締役社長 小柳卓蔵氏(右)

拡充するHoloLensのB2B/B2Cビジネス

このように増加傾向にあるHoloLensのビジネス利用だが、日本マイクロソフトの普及活動が実を結び、同社が音頭を取らなくてもビジネスとして成立しつつあると感じたのが、2017年11月8日に開催した「Tech Summit Japan 2017」では、「Microsoft Mixed Realityパートナープログラム」参加企業によるHoloLensアプリケーションの体験コーナーを設けていたが、前述した建設業に留まらず、新築マンション販売コンテンツや仮想マネキンよる試着体験、脊椎病院向けに開発したCTスキャンビューアーなど多くのコンテンツを用意していた。

2017年5月23日に開催した「de:code 2017」の基調講演には、HoloLensの父であるMicrosoft Windows and Devices Group Technical Fellow, Alex Kipman氏も登壇した

例えば「ホログラフィック・マンションビューアー」を展開するネクストスケープは、「デベロッパー所有のデータを3Dデータ化し、HoloLensで閲覧できるように加工している。室内まで見えるとさらに価値は高まるが、HoloLensを装着した状態で歩くことは空間スペース的に難しく、ジェスチャー操作で仮想空間内を移動しても体験的に面白くなかった」(ネクストスケープ クラウド事業本部 クラウドレンダリング事業開発部 部長 岩本義智氏)と語る。業界初を目指すため2017年4月上旬に着手し、ほぼ1カ月で基本システムを完成させた同社だが、背景には「都庁周辺のビル群を3Dモデル化するテストモデルを事前に作成し、実空間に投影しても正しく設置できることを検証してから、本プロジェクトに取り組んだ」(同氏)経緯があるため、アジャイル的な取り組みを実現できた。

「Tech Summit 2017」に設けたHoloLens体験コーナー。写真だけでは分かりにくいが、ディスプレイの先には3Dモデルが現実世界と融合し、さまざまな世界を実現している

試着体験をHoloLensで変えると意気込むハニカムラボは、未来の試着環境を作り上げようとしている。取り組みを始めた理由として同社は、DMM.makeと共同事業を行い、「バーチャルフィッティング事業に対する最新プロトタイプで、オンラインショッピングの可能性を広げるのが目的。当初は『オンラインだと洋服が自分に似合うのかなど(実店舗と比べると)不明確な点が多い』という意見が多く、既にある3Dモデル化の技術を使って取り組んだ」(ハニカムラボ 代表取締役/ソフトウェアエンジニア/クリエイティブディレクター 河原田清和氏)と理由を説明した。現時点では具体的なビジネスモデルに至っていないが、現在いくつかの案件が稼働中だと言う。当初は先端技術に位置していたMRだが、気付けば我々のビジネスシーンにも点在し、既存のソリューションを変えようとしている。

脊椎病院向けに開発したCTスキャンビューアーと、共有可能な音声アノテーションコンテンツに取り組むホロラボは、既に稲波脊椎・関節病院と共同開発を続けてきた。「(遠隔地から会議などに参加し、距離を問わずに共同作業を行う)機能にいち早く実装した」(ホロラボ 創業者兼CEO 中村薫氏)ことで、他局や別の病院にいる医療関係者が知見を述べるなど、これまでの治療と一線を画するソリューションを実現する。また、同社はHoloLensに限らず、Windows Mixed Realityデバイスや同モーションコントローラーを利用するソリューションも合わせて用意した。「細かい操作を行う際は(HoloLensの視点移動やジェスチャー操作だけでは)不慣れな方は使いづらい。(今後実装予定の)編集機能でもWindows Mixed Realityモーションコントローラーの方が使いやすく、視野角も広い」(同氏)と言う。

一連のアプリケーションで注目すべきは、一般消費者がMRの恩恵を得られるという点だ。新築マンションや仮想試着は説明するまでもなく、CTスキャンビューアーも医療現場に導入されれば、患者がHoloLensを装着して視覚的に自身の患部を把握しやすくなるだろう。

会場裏側に設置したホロラボのリモートシステム。遠隔地にいる医療関係者の視点をシミュレーションし、音声による相互コミュニケーションも実現する

そして、2017年11月14日にエアバスは、JAL及びJALエンジニアリングの協力によって、HoloLensを用いたA350 XWB向け訓練アプリケーションの試作品を開発したと発表した。「アプリケーションの実現には、航空機の3DデータとIT技術の進化に対応する人材」(海老名氏)という2つの課題があった。JAL及びJALエンジニアリングが独自に人材を抱えるのは現実的ではないため、今回はオブザーバーとしてエアバスの開発に参画し、エアバス本社はプロジェクトチームや社内トレーニング専門部署を設け、本アプリケーションの開発に取り組んでいる。

こちらのアプリケーションも体験する機会を得たが、コックピットや航空機のデータを持つ企業自身が開発しているため、その現実感は非常に高い。筆者はコックピットでエンジンを作動させるまでの手順トレースを10分ほど試してみたが、操作もしくは確認すべき計器やスイッチに視点を合わせるだけで操作でき、1年前のJAL製アプリケーションと比べて、ユーザー体験的も大きく向上しているように感じた。

エアバスによるA350 XWB向け訓練アプリケーションの試作品。今後改良を重ねつつ、実稼働を目指す

エアバスの発表会に参加していた日本マイクロソフト関係者は、「我々は技術支援を行う立場で、エアバスさんとJALさんによるビジネスソリューション」だと今回のアプリケーションを説明している。つまり、HoloLensは日本マイクロソフトが注力してきた市場開拓に成功し、MRの可能性に気付いた他企業同士が意思決定の迅速化や生産性能の改善など既存ビジネスソリューションを書き換えようとしているのが現在の状況だ。

IT技術で建設業界を牽引する存在を目指す小柳建設

さて、小柳建設は早期からMicrosoft及び日本マイクロソフトと連携しながら、建設業における計画・工事・検査の効率化と、アフターメンテナンスの履歴管理を可視化する「Holostruction」プロジェクトを続けてきた。現在の進捗として遠隔地からの建設情報の確認や、問題の共有などが現実化しつつある。このように建設業界の変革にチャレンジする小柳建設だが、同社代表取締役社長 小柳卓蔵氏に話を伺う機会を得たので、その内容をお届けしたい。

小柳建設 代表取締役社長 小柳卓蔵氏

--2017年4月からの現在までの進捗状況は

リモートコミュニケーションの実装です。事前の実証実験としてシアトル・日本間で同機能を検証しましたが、感動の一言に尽きます。アバターのデザインは(日本マイクロソフトに)お任せしましたが、相手が前かがみして首を動かすなど、さまざまな動きが再現されます。

また、音響効果も現実性を高める要素でした。例えば相手が左から話しかければ、(HoloLensのスピーカーを通じて)左方向から声が聞こえてきます。まるで相手が存在するかのような臨場感がありました。確かにコミュニケーション自体はSkypeのビデオ通話でも可能です。しかし、(HoloLensは)相手の顔こそ見えませんが、「直感的に五感で相手を認識できる」体験を得られます。

このリモートコミュニケーションを実装することで、遠隔地の作業員や関係者がアバターとして仮想空間に参加し、同じ物体を見ながらコミュニケーションを実現するアバターの視点や動作、物理的距離を超えて同じ空間を共有することを実現できたのは、(Holostructionをビジネスソリューション化する上で)もっとも大切なことでした。

--次に実装する機能は予定済みか

その点は私(日本マイクロソフト エンタープライズサービス部門 エンタープライズサービス営業統括本部 ソリューションスペシャリスト 鈴木保夫氏)からお答えします。2017年4月の時点でHolostructionの開発に必要な課題項目を列挙しており、日本マイクロソフトは継続的支援を行ってきました。現在取り組んでいるのは、橋梁などホログラフィックデータを建設現場に投入する際に必要な施工図をインポートする機能です。これにより、3Dモデルなど対象物の自由度が大きく高まります。

HoloLens体験コーナーでは、遠隔地にいる関係者と会話を交わしながら工程表の問題点を話し合うなど、リモート会議を経験できた

--Holostructionは現場で稼働しているのか

2017年9月から1件稼働させています。まだデータ入力を開始したところですが、鈴木さんのご説明にもあったように、どのような建設物でも、すべてホログラフィックに投影できる状態を目指しています。現状では今後1年に3~4現場で(Holostructionの利用に)チャレンジする予定です。

「Holostruction」のイメージ図。実際にHoloLensを装着すると、工程表を元に音声でコミュニケーションを取りながら、進捗状況を複数の参加者で確認し合うことが可能だった

--2Dの施工図を3D化する苦労は

大手建設企業などは施工図の3D CAD化に取り組んでいますが、地方の中小建設企業では未着手というのが現状です。その要因の1つは「難しそう」というイメージと、「3Dで書いて何の意味がある?」という意見が少なくなりません。年配の熟練技術者は頭の中で施工図から立体的なイメージを作り出すため、(3D CADの)必要性を感じていません。「2Dの図面を見て3D化できれば、ようやく一人前になった証し」と、建設業界に入る若者に対しても同じプロセスを提示するため、障壁となっています。ベトナムなど東南アジアでは、日本人が現地でBIMデザイナーを育てるという企業も出てきました。人材不足については海外からの流入に頼る部分も今後は出てくるかも知れません。

--HoloLens活用で他社の追従を感じるか

他の建設企業が我々にライバル心を持って頂かなければ、業界自体がデジタル変革を起こせません。新潟という地方の中堅中小企業である我々が、IT技術を活用した建設ソリューションを作り上げようとしています。だからこそ危機感ではなく、むしろ我々が「(IT技術+建設業界を)牽引する存在」を目指したいと考えています。

大手総合建設企業さんが取り組んだVR(仮想現実)ビューアーなどを目にしても、施工プロセスの部分的なところを切り出しているように見受けられます。さらに開発しているのがシステム部門と思われるため、現場の整合性や利便性を考慮していないものもありました。あくまでも推察の域を超えませんが、Goサインを出す上層部の方々が年配層でIT技術に理解がなく、食い違いや取り組みの遅延が発生しているように感じます。

ただ、我々がHolostructionに取り組めたのもタイミングによるところが大きいです。3年前に金融業界にいた自分が社長となりましたが、先端技術の重要性に気付ける若さと、チャレンジ精神を備えていたこと。そして鈴木さんを始めとする日本マイクロソフトさんとの出会いも重なって、始めて構築できました。価値に気付くのは年齢だけではありませんが、足の遅さが障壁となっているように見受けられます。

--Holostructionのロードマップは何合目

5合目に達していないか、という状態です。政府関係者にはHolostructionのデモンストレーションをご覧になって頂き、大変興味を持ってもらいましたが、いまだに建設業界全体は変化していません。皆がパラダイムシフトを起こして変革するタイミングを5合目と捉えています。この5合目は断崖絶壁と言えるほど厳しい部分ですが、垂直登攀(とうはん)で5合目を越え、業界関係者がHolostructionを使うようになれば、頂上に達したと初めて言えます。

--本日はありがとうございました。

阿久津良和(Cactus)

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。