けん玉がITと出会って、想像以上にスゴかった話

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第5回

けん玉がITと出会って、想像以上にスゴかった話

対戦やシューティングゲームまでできる「けん玉」

モノとインターネットをつなぐ“IoT“が、いよいよ本気を出してきた。「スマートスピーカーに語りかければ、好みの動画や音楽が再生できる」「外にいながらスマホで、エアコンなどの家電がカンタンに操作できる」といったIot製品やサービスが数多く登場。人々の利便性と期待感を、ぐぐっと押し上げはじめているからだ。

もっとも「電玉」が、今春発売したIoT機器には、そうした“利便性”はあまりない。ただ、その分、ワクワクするような“期待感“は、ほかのIot製品よりずっとありそうだ。

株式会社電玉の大谷宣央代表。1983年生まれ。某大手メーカーを経て独立。けん玉をIoT化した「電玉」で、世界に挑む。「僕自身もけん玉は昔からやっていましたが、最近、デモをやる機会が増えて、ずっとうまくなりましたね(笑)」

何せ、同社がIoT化したのは、日本の伝統おもちゃ「けん玉」。そう。電子×けん玉で「電玉」というわけだ。

「見た目はよくあるけん玉ですが、3つの受け皿と尖った剣先の内側には、それぞれコイル状のセンサーがついているんですよ」と、開発者で同社代表の大谷宣央さんは言う。

仕組みはこうだ。「電玉」のボディに、金属のメッキが施された玉が近づくと、周波数が変化する。それによってボディから玉の距離を即座に認識。さらにボディの内部にはジャイロセンサーや加速度センサーも内蔵されているため、「大皿にどんなタイミングでのったか」「大皿にのせたあと、剣先にうまく刺さったか」といった玉の動きはもちろん、けん玉の細かな角度まで、データとしてリアルタイムで分かるわけだ。

ようするに、「とめけん」や「日本一周」などのけん玉でどんなワザを繰り出して成功したか否かまでを、センシング技術で正確に瞬時に判別してくれるのである。

「この電玉の動きが通信モジュールでタブレットやスマホのアプリと連動させられる。だから、ネットを介して世界中のプレイヤーとワザを競い合う“対戦プレイ”ができたり、電玉をコントローラー代わりにした“けん玉のワザでマトを倒していくシューティングゲーム”などもできる。またAPIを公開して、いろんな個人や企業が電玉を使ったアプリを開発してもらうことを考えています」(大谷さん・以下同)。

そもそも、派手なトリックがいろいろできるけん玉が「KENDAMA」として、海外でも「クールな遊び」として今や世界大会が開かれるほどポピュラーになっているのは周知のとおりだ。けん玉の遊び方を拡張する「電玉」の登場が、この流れがさらに加速していくに違いない。

「もっとも……最初は、けん玉をIoT化しよう、なんていう発想はまったくなかった。『老人用の杖をIoTで作れないか』と考えていたんですよ(笑)」

公園のおじいちゃんへのヒアリングから生まれた。

1983年生まれの大谷さんは、小学生の頃からプログラミングで遊ぶようなエンジニア体質。複雑系ネットワークを学んだ後は、開発や企画などの仕事をしていた。

「ユニークな開発や企画などをさせてもらっていました。ただ一方で、会社の判断は常に慎重。なかなか手がけたプロジェクトがカタチにならないフラストレーションは、いつもありましたね」。

薄い紙も積み重ねれば、うず高くなるものだ。大谷さんは2015年、31歳で会社を退職。「自ら手がけたものを製品化して世に問いたい」というモチベーションを胸にあるハッカソンに参加した。時代は「IoT」という言葉がポピュラーになり始めた頃。そこに「高齢化」というマーケットのニーズを練り込もうとした。

「そこでハッカソンでは高齢者向けのITデバイスを考えた。『勝手に外に連れ出してくれる杖』のようなものを提案したんです」

最初のプレゼン、評判は想像以上に良くなかった。「危ないでしょ?」「実現性がないのでは?」「そもそもおもしろくないよね」。しかし、ITで高齢者の課題を何か解決したい…というコンセプトは間違ってないという声もあった。「それなら、実際のニーズを聞いてみよう!」。そう考えた大谷さんは、公園へ向かった。え、公園?

「上野にあるシニアがよく集まっている公園があって、でそこへ。『すいません…こんなものがあったらいいな、みたいなものあります?』と直球でヒアリングというか、世間話ですね(笑)」。

ここで聞こえてきた声がヒントになる。「孫たちともっと遊びたいけれど、今のゲームは難しい」「昔のおもちゃみたいなものだったら遊べるんだけれど…」。IT×伝統的なおもちゃの着想が、生まれた瞬間だった。

「シニア層も自然に楽しめて、子供たちもゲーム感覚で嬉々と遊べる。世代を超えて皆が楽しめるものがIT×伝統おもちゃでできそうだなと思いついた。コマや竹馬なんかもあるけれど、サイズ的にも気軽さからも『けん玉』がいいだろうなとそこまでは早かったですね。ただ…」

日本人ならほぼ誰しも一度は触ったことがあるようなおもちゃ。「すでにIoT化したけん玉を誰かが手がけているに違いない…」という危惧をいだいた。

これが「電玉」。一見、普通のけん玉に見えるが、中には加速度、ジャイロなどのセンサーとLEDや振動モーターなどがはいったIoT機器だ

「結論からいうと、ラッキーなことに誰も手がけていなかったんですけどね。そこで一気に企画を作り上げた。それを2回めのハッカソンで発表すると前回とは全く違う手応えを得ましたしね。これはイケる、とさらに確信しました」

しかし、走り始めると、“誰も手がけてなかった”理由が見えてきた。

ヒントになったのは空港にもあるアレだった。

ハッカソンでの提案に前後して、実はKDDIが支援するスタートアップ支援を受けられることになった。またハッカソンではプログラマーやデザイナーなどのスタッフとも出会うことにもなった。さらにクラウドファンディングで130万円ほどの資金を集められた。

順風満帆なまま、大谷さんは、2016年に株式会社電玉を創設。しかし、いよいよ「もの」をつくる段になり、悪戦苦闘がはじまった。

「考えてみたら当たり前なんですけどね。まず小さなボディにセンサーとバッテリーや回路をのせるのは極めて困難だった。そのうえガンガンと球をあてる遊びなので、衝撃に強い必要もある。そのうえで複雑なけん玉のワザを、しっかりと精緻にセンシングできるようにしなければならない……。とまあ、ようは『ああ、面倒だから誰も手がけられなかったんだな』と(笑)」。

例えば最初の頃は、フォトリフレクターという光を検知するしくみでセンシングする方法を社内メンバーで考えた。皿や剣先に球がのったり、刺さったりすれば、暗くなるので、その明暗の差で「のった」「刺さった」と検知できるからだ。

「ところが、当たり前ですがそれだと明るい場所じゃないと検知できない。しかもけん玉って、いろんな持ち方をして、皿の部分を思いっきりもって繰り出すワザもある。そもそも皿に乗せずに皿と皿の間の部分でとめるワザなどもある。光によるセンシングそのものが、もう使えないと考えた」。

電玉」と連動して遊べるアプリ画面。対戦やシューティングなどのゲーム要素はもちろん、着実に技を習得できる練習ツールによってアナログではできなかった「ワザの習得の見える化」を実現。けん玉プレイヤーの裾野のレベルアップにも貢献しそうだ

ただ、こうした技術的なハードルに即座に早めに気づき、次の一手を受けたことは電玉がうまくローンチできた大きな要因だった。後押ししたのは、得意の“ヒアリング”だった。試作段階で、「グローバルけん玉ネットワーク」というけん玉団体と知り合い、彼らからけん玉の様々なワザを教えてもらった。その結果、「皿をもってもワザが検知できる仕組みが不可欠」「けん玉の角度が測れないと意味がない」など、よりリアルな競技者の声を製品に落とし込めたからだ。

「彼らの声を聞くまでは、もっとメカ的なギミック。たとえば、対戦システムで相手がけん玉のワザに成功したら、相手のけん玉の大皿に磁石がついていて、皿にのらなくなる…とか。逆に何かアクションをしたら、ビタッ! と磁石で皿に球がすいつくような普通のけん玉ではありえないようなワザができたらおもしろい、という発想でいた。けれど、けん玉のプレイヤーにきくと『いや。そうではなく、今のけん玉のワザをまずしっかりとセンシングしてくれるほうが市場がひろがる』『すでにいる世界中のけん玉プレイヤーに響く』と。それはそうですよね」。

もっとも、当初の「磁石」の発想も、今に活きている。けん玉の皿に磁石のようなギミックをいれるため、皿の部分に電磁コイルを備え付ける発想は早くからあった。これそのものをセンサーとして利用できるのではないか、と繋がったからだ。

「空港にある『金属探知機』と同じです。金属が近づくと、電磁コイルが周波数が変化して分かる。『そうか、玉に金属をメッキすれば、できるな』って」

しっかりセンシングするほど玉の金属メッキができず時間がかかったり、センシングが温度に左右されて回路的な調整が必要であったり。あるいは大量生産のための工場を中国で見つけるも、最終的に品質面で折り合えず、急遽、国内生産に切り替えたり――と右往左往しながらも、2017年3月には正式リリースにこぎつけた。

クラウドファンディングに参加した方に配布は約束より数カ月遅れたが、けん玉は難度の高い技をクリアしたときこそ盛り上がるものだ。現在はアマゾンや家電量販店などを販路に、人気を博している。

「来年は世界大会を開催する予定。海外のプレイヤーからの注目は高いので、ここでブレイクしたらいいなと考えています」。

それだけじゃない。アプリのプログラム、電子部品の組み立て、3Dプリンタによる筐体づくり、さらには体を動かすゲームからの学び…など、電玉にはIoTや、これからのものづくりを学ぶための要素が凝縮されている。格好の教材だ。

「小中学校などの教育用途での展開も考えています。ついでに体も動かしますからね。フィットネスの分野でも楽しみながら体を鍛えるプログラムとして活用できるはず。シニアと子供たちのコミュニケーションがひろがれば…というアイデアからたどり着いた電玉。想像以上に可能性をひろげそうです」。

高齢者を外に連れ出すための杖――。そこから始めった発想が、“魔法の杖“のように世界を広げていく。電玉がワクワクさせるのは、きっともっとこれからだ。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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Googleがゲーム本格参入の衝撃、2019年中にゲーム基盤「STADIA」を投入

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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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