レクサスLSで感じた高度運転支援の粋

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第10回

レクサスLSで感じた高度運転支援の粋

2017.09.28

自動運転について、やや静観の構えを見せていた国産勢(日産自動車を除く)だが、ついにレクサスが動き出した。2017年1月、デトロイト・ショーで華々しくワールドプレミアされ、日本では6月に正式発表されたレクサス「LS」に、満を持して最新のシステムが搭載された。市販を前にして、プロトタイプの試乗会がデンソーのテストコース(北海道)で開催されたのでレポートする。

最新のシステムを搭載するレクサスの新型「LS」

自動ステアリングで歩行者回避

さすがにレクサスのフラッグシップであるLSということで、新システムは7つの代表的な機能を有している。すでに実用化済みの技術を合わせると多岐に渡るが、実際にさまざまなドライバーアシストを経験して感じるのは、「安心できて安全なこと」と「便利で快適なこと」に分類できると思うのだ。

まず安心・安全を高める機能として注目したいのは、歩行者を検知して、自動的にステアリング操作を介入させながら、緊急時に自動停止する対歩行者のプリクラッシュ・セーフティ(PCS)だ。これは日本だけでなく、米国でも増加している歩行者の巻き込み事故に対処するもので、先日発表されたばかりのメルセデス・ベンツ「Sクラス」にも同様のシステムが搭載されており、同時期にレクサスとメルセデスが採用したことは興味深い。

歩行者を自動的なステアリング操作で回避(動画提供:Lexus International)

システムはこうだ。カメラで歩行者を認識すると、同一車線内に限定されるが、自動的なステアリング操作で回避して停止する。北海道の網走で開催された試乗会では、時速60キロで車線の左側を走行し、左前方にいる歩行者を検知するという、両者の位置条件を絞った状況でテストしたが、公道では様々なケースが想定されるだろう。その効果は未知数だが、死亡事故を減らすきっかけとなれば幸いだし、仮に歩行者と接触しても車速が低ければ被害(傷害)も低減できる。

同一車線に限定している理由の1つとしては、「R79」という自動操舵に関するEU法規が存在する。日本もこの基準の緩和を段階的に取り決めているのでまだ条件が厳しいものの、周囲の安全を確保した環境下で、より大胆に回避できるようになる日も近いかもしれない。

ドライバーの緊急時には自動で停止、周囲への配慮も

さらに、運転中のドライバーに、病気などの異常が発生した場合に停車支援を行う本格的なデッドマンシステム(レーントレーシングアシスト=LTA連動)が搭載された。ドライバーの意識喪失で起こるクルマの暴走問題を解決するため、国土交通省の車両安全対策委員会では、数年前からデッドマンシステムの導入を推進してきたが、その念願が叶ってLSで実用化されたわけだ。

例えば、高速道路をレーダークルーズコントロールとレーントレースアシストを併用して走行していれば、もしドライバーの意識がなくなったとしても、①まず時速70キロ前後までゆっくりと減速し、②さらに速度を落とし時速45キロまで減速すると、③クラクションとハザードで異常事態を周囲に知らせて停止する。そして、④電動パーキングブレーキを作動させてドアロックを解除し、レスキューを受け入れやすくすると同時に、⑤「ヘルプネット」に救助を依頼する。

ドライバー異常時はシステムがクルマを停止(動画提供:Lexus International)

すぐに緊急停止させずに、後続車に衝突の危険回避させる時間的な余裕を与えていることがもっとも重要なことだが、それをクルマ側がすべて行ってくれるのだ。

また、ドライバーのうっかりミスに対して安心感を高めてくれるシステムとして、見通しの悪い交差点などで他車が接近すると、レーダー検知してヘッドアップディスプレイ(HUD)で注意喚起するフロントクロストラフィックアラートや、駐車時に車体後方の歩行者を検知して停止してくれるパーキングサポートブレーキなど、日常に起こり得る問題に対し、きめ細かに対処してくれる機能が整えられている。

レーンチェンジには進化の余地

一方、便利快適の分野では、すでにメルセデス・ベンツのSクラスが欧州で実現したように、地図からコーナーのRを予見し、速度を自動調整するレーントレースアシスト(LTA)が挙げられる。従来のアダプティブクルーズコントロールでは設定速度を上限とし、前車がいればその車間を維持して走ることしかできなかったが、LTAが備わったことで、単独走行でもコーナーを安全に曲がれる速度に調整してくれる。

実走行テストでは、時速90キロを超えても高速コーナーが近づくと、わずかながら減速し、コーナーの出口が近づくと、スムースに再加速した。丁寧なドライビングは、メルセデスSクラスと同じようにハイレベルな制御だった。ちなみに、HUDには自車の実勢速度と設定速度が表示され、実状況がとても把握しやすかった。

LTAはハイレベルな制御を実現(動画提供:Lexus International)

すでにテスラやメルセデス、BMWが実用化している、自動で車線変更するレーンチェンジアシスト(LCA)は、どこまで存在意義があるのか疑問の余地はあるものの、LSのそれはドライバーの意思を明確にシステムに伝えるため、ウィンカーレバーを半分押してから機能するように工夫されている。

ブラインドスポットで隣のレーンが安全であることを確認してから自動操舵で車線変更すると、自動的にウィンカーは消えるのだが、レーンチェンジ可能であると判断すると、青く太い矢印がHUDに表示されるため、とてもわかりやすく可視化されている。ただし、安全を優先したシステムゆえに、車線変更の動作はゆっくりで、せっかちな私には耐えられないかもしれない。

だが課題はそこではなく、自動操舵の基準が今後、どのように制定されるのかによってシステムの機能に影響が出てくるということ。自動操舵はまだ始まったばかりだから、現状のLCAに大きな期待は寄せられないのが現状だ。近い将来、自動運転レベル3を実用化したいと考えているアウディは、LCAにはまだ懐疑的な考えを示している。アウトバーンでは時速200キロ以上のスピードで接近するクルマもいるため、現状のセンサーでは性能が不十分だという見解だ。とはいえ、いろいろなケーススタディを考慮して開発された機能だけに、安心できるシステムとして進化する日も遠くないだろう。

今回、レクサスLSで採用された新機能は、あくまで高度なドライバー支援システムである。レベル3(半自動運転)よりも成熟した運転支援は、インフラを加味しても実際の公道走行では快適で安心感が増す。自動化ばかりが先行して話題となっているが、高度に洗練された運転支援の価値は、さらに高まっていくだろう。その意味では、LSに与えられた高度なレベル2の価値を十分に感じることができた。

著者略歴

清水和夫(しみず・かずお)
1954年、東京都生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして活動を始める。自動車の運動理論や安全性能を専門とするが、環境問題、都市交通問題についても精通。著書は日本放送出版協会『クルマ安全学のすすめ』『ITSの思想』『燃料電池とは何か』、ダイヤモンド社『ディーゼルこそが地球を救う』など多数。内閣府SIP自動走行推進委員の構成員でもある
拡大するオンライン動画市場、Crevoが目指す「デファクトスタンダード」

拡大するオンライン動画市場、Crevoが目指す「デファクトスタンダード」

2017.09.27

動画制作の受託業務などを行うCrevoが今月から、動画制作プラットフォーム「Collet」をオープン化する。Colletは、Crevoが自社で動画制作する際に利用していた制作進行管理ツール。制作進行管理にあわせて、「ジョブボード」と呼ばれるクリエイターとのマッチング機能も用意することで、発注から動画のファイル共有、修正依頼など、一気通貫で動画制作のオンライン操作が可能になる。

同社の利用実績ベースでは実に制作関連業務にかかる時間が1/5程度にまで圧縮できたという。これまで自社の制作管理にColletを利用していたものの、クリエイターやクライアントからも好評だったことから、社外への開放を決めた。当初は30社の限定公開(クローズドβ版)で、利用料は月額のサブスクリプション契約となる。

またサービスリリースと同時に、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど4社から総額3.1億円の第三者割当増資を実施している。動画制作市場の見通しや同社の戦略など、Crevo 代表取締役の柴田 憲佑氏に話を聞いた。

クリエイティブな動画を誰もが広告に使える時代へ

視聴率の低下などからテレビ動画制作のニーズが伸び悩む一方で、オンライン動画広告市場はスケールし続けている。オンラインビデオ総研/デジタルインファクトの調査によれば、同市場は2016年に842億円であったものが、2022年には2918億円まで拡大する見込みだ。また、Crevoの調査では動画制作市場全体の市場規模がおよそ5000億円であり、テレビCMが1/3、そしてオンライン動画オンライン動画も同等にまで成長する見込みだという。

その一方で、動画制作会社の多くは「自社にクリエイターを抱えており、安定的な動画制作ができる反面、自社人材に閉じてしまうため作り上げる動画表現に限りがある」(柴田氏)。方やCrevoは、約100カ国、3000名のクリエイターが登録しており、「およそ半数が海外のクリエイター」と柴田氏は語る。

「創業当時から『日本を元気にしていきたい』という想いがあるが、その一つに『世界中の人材をどう有効活用していくか』に取り組みたいと考えていた。Colletは当初、国内クリエイター限定だが、将来的には自社受注以外の海外リソースとのマッチングも検討していきたい」(柴田氏)

ジョブボードでは、フリーランスなどのクリエイターを直接、過去の作品データベースなどを閲覧しながら探すこともできる

もちろん、高品質な動画制作には一定のコストがかかる。Web動画コンテンツが多い同社の制作実績ベースでも、安価なもので数十万円、高いもので数百万円となる。ただ柴田氏は、「(Colletで)オペレーションコストを低減すれば、高品質な動画の低価格化、大量制作が可能になる」と自信を見せる。

700社のクライアント実績は大手企業が数多く並ぶが、柴田氏は広告・宣伝費による動画制作ではなく事業部の予算による動画制作が多いと話す。つまり大企業であっても、事業部予算で投下できるコストは限られるため、より中小規模の企業における予算感に近い。そこに動画市場の裾野が拡大する下地があると柴田氏は読む。

「漫画の動画化からブランディング、イベント動画など、限られた予算で高品質な動画を提供してきた。通信環境の変化やデバイスの進化によって、スマートフォンからサイネージまで、さまざまなシーンで動画が求められるようになった。大手プロダクションのハイエンドな動画コンテンツに対して、私たちはミドルレンジの動画を広くカバーできると考えている」(柴田氏)

これまではキャプチャしたシーンに赤入れしていたが、Colletでは動画自体に赤入れできるため、認識の齟齬が起きづらく、なおかつクラウドサービスのメリットを活かした制作スピードの向上が期待できる
ジョブボードはクリエイターが掲載案件に対して応募することも可能。登録クリエイターの競争によって、コストとクオリティをリバランスできる

当初はWeb広告代理店を中心にサービスを広げ、2018年度までに150社程度の契約を目指す。現時点ではWeb版のみで、ディレクターなどが撮影現場などで使いやすいアプリ版の開発などが現状の課題だという。また柴田氏は今後、ジョブボードにおけるクリエイターとのマッチング強化を進め、登録ユーザーの過去作品の見える化、AIによる依頼内容とクリエイターのレコメンデーションを実装したいと話す。

「Webの動画市場は、Webサイト構築の世界が辿ってきた道と似ていると思う。2003年頃に開発会社が乱立し、その後2010年頃にWordpressやDreamweaverなどの制作ツールによって市場環境が整った。ここまで簡単にWebサイトが作れるようになったように、フレームワークが整えば動画制作でも同じことが起こりうると感じている。その市場を、制作管理というポイントでデファクトスタンダードになりたい」(柴田氏)

iPhone商戦、台風の目になるのは型落ちの「6s」か

iPhone商戦、台風の目になるのは型落ちの「6s」か

2017.09.26

「iPhone 8」の発売日となった9月22日の朝には、国内大手3キャリアが発売イベントを開催。上位機種「iPhone X」の発売を11月に控え、ファンの間では様子見ムードも漂う中、少しでも盛り上げようと各キャリアが気勢を上げた。

大手3キャリアがiPhone 8の発売日にイベントを開催

だが週明けの9月25日には、ワイモバイルとUQモバイルが相次いで「iPhone 6s」を10月に発売することを発表。2年前の型落ち機種が、iPhone商戦で台風の目になる可能性がある。

格安スマホでシェア3割のワイモバイル

スマホ市場におけるワイモバイルとUQモバイルの存在について、簡単に振り返ってみよう。ワイモバイルはソフトバンクが運営する別ブランドで、UQモバイルはKDDIグループのUQコミュニケーションズが展開するMVNO事業だ。立ち位置は異なるものの、いずれも大手キャリア系列のサブブランドと位置付けられることが多い。

ワイモバイルは人気が高く、MMD研究所による2017年3月の調査ではサブブランドとMVNOを合算した格安スマホ市場で3割のシェアを占める。特徴は、料金が安いにも関わらず、全国に約1000店舗を展開するなど大手キャリアに匹敵するサービスを受けられることだ。

格安スマホ市場でワイモバイルのシェアは3割

その背中を追うUQモバイルも、店舗数は2017年8月に100店に到達。ワイモバイル同様、積極的なテレビCMを展開するなど猛追する。さらに、他の格安スマホ事業者と大きく異なるのがiPhoneを取り扱うという点だ。

他の事業者でも整備品のiPhoneを海外から仕入れるなど独自の動きはあるものの、日本でiPhoneを販売するキャリアは大手3キャリアとワイモバイル、そしてUQモバイルにほぼ限られている。

サブブランドが取り扱うiPhoneは、毎月の料金を節約しながらiPhoneを持ちたい人にとって魅力的な存在だ。さらに最近では、子どものスマホデビューに買い与えたところ、大人でも十分に使えることが分かり、家族まるごとサブブランドに移行する動きが大手キャリアを脅かしている。

型落ちだが見劣りしないiPhone 6s

こうして「庶民の味方」として人気を博してきたサブブランドのiPhoneだが、ひとつ弱点があった。それは、取り扱いモデルが「iPhone 5s」か「iPhone SE」という4インチの小型画面モデルしかなかったことだ。

これまでサブブランドで販売していたiPhone 5sとSEはいずれも小型画面モデルだ

4インチのiPhoneは片手で使いやすく根強い人気があるものの、一般に売れ筋なのは4.7インチのiPhoneだ。画面が小さいことを理由にサブブランドを敬遠していた人も少なくないだろう。

これに対して今回発表された「iPhone 6s」は、サブブランドとして初めての4.7インチモデルになる。価格はiPhone SEよりは高いものの、月額割引により端末代を含めて毎月4000円強でiPhone 6sを持てる計算になり、インパクトは大きい。

ただ、iPhone 6sの発売は2015年9月で2年の型落ちになる。果たして大丈夫なのだろうか。たしかに最新のiPhoneではプロセッサーの性能や画面の見やすさ、カメラ性能が大きく向上した。Suicaなどが使える「FeliCa」も、iPhone 7以降の機能になる。

また、かつてのiPhoneではiOSを最新版にアップデートすると途端に動作が重くなり、性能的な限界を感じることも多かった。だがiPhone 6sは基本性能も高く、最新の「iOS 11」を入れても操作感は大きく変わらない。手に取ってみると、まだまだ現役で使えると感じる人が多いはずだ。

外観という点で、iPhone 6sのデザインは7や8と基本的に変わっておらず、見劣りするところはない。8では背面がガラスに変わったものの、正面から見れば見分けがつかないほどだ。

2年型落ちのiPhone 6s(左)だが、外観はiPhone 8(右)と大きく変わらない

さらにiPhone 6sは、7から廃止された3.5mmのイヤホンジャックを備えており、従来のヘッドフォンをそのまま使えるというメリットもある。買い換えがいらず経済的で、変換アダプターを使う不便さもない。

常に最新のスマホ体験を求める人にとって、iPhone 8を買うか、それともXを待つべきかは悩ましい選択肢だ。だが、毎月の料金を抑えたい人にとって、サブブランドが発売するiPhone 6sはこの秋もっとも魅力的なiPhoneになりそうだ。