コンビニのレイアウトはなぜ例の感じなの?

夏目幸明の"スッキリする"カイシャの話 第10回

コンビニのレイアウトはなぜ例の感じなの?

2017.08.04

経済ジャーナリスト夏目幸明がおくる連載。巷で気になるあの商品、サービスなどの裏側には、企業のどんな事情があるのか。そんな「気になる」に応え、かつタメになる話をお届けしていきます。

コンビニは立ち読み客を「利用」していた!?

道路に面したコンビニの雑誌・書籍コーナー

コンビニの雑誌・書籍売場って、必ず道路に面していませんか? これじつは、立ち読みにきたお客さんを上手く「活用」していたんです。誰もいないお店って、心理的にちょっと入りにくいですよね? 逆に強盗にとっては狙い目かも。一方、雑誌や書籍を立ち読みするお客さんは、売場の滞在時間が長め。そこで「長居するお客さんには外から見える場所にいてもらおう」と、あのレイアウトになっているんです。

そう、コンビニのレイアウトって、なるべくたくさん買ってもらうため改良に改良を重ね、こうなっているんですね。ところが最近、このレイアウトを変えようという動きも……。そんなわけで今回は「現状なぜこのレイアウトなのか」、さらには「なぜ変わろうとしているか」をお伝えします。

きっと、コンビニ業界の頭の良さに舌を巻くと思いますよ!

レジ横の和菓子が重要な責務を担っていた!

まず、既存のレイアウトについて解説させてください。どのコンビニでも、飲料やお弁当ってわりと奥にありますよね、理由は簡単です。皆さんはコンビニに何を買いに行きますか? 多いのはサンドイッチ、おにぎり、飲料あたり。じゃあお客さんは目的の品だけ買って帰るかといえばそんなことはなく、スイーツを手にとったり、「あ、洗剤なかった」と日用品を買ったりします。一方、お店の売上げは、客数×客単価で求められるもの。すなわち一人お客さんがきたら、お店側はなるべく「ついで買い」「衝動買い」してもらいたいのです。とすると、飲料やお弁当をなるべく奥に置けば、商品を手にとってレジに並ぶまで、いろんな商品を見てもらえるじゃないですか! というわけで、飲料やお弁当はなるべく奥に、がコンビニの鉄則なんです。

実をいうと、コンビニのレイアウトの工夫はほぼこの感じ。例えばビールを買うと、そのすぐ隣か、振り返ったところあたりにおつまみが置いてないですか? これは「お隣の法則」「振り返りの法則」といわれます。近くに置いておくと、ついで買いしてもらいやすいのです。

レジ横にある定番商品

さらには「レジ横」や「レジ近くのエンド(=棚の端)」は衝動買いをしてもらいやすい場所。ここには価格帯が低いお菓子が並ぶことが多いようです。なぜって、レジに並んでいるとき、レジ横のチロルチョコや和菓子、レジ近くのエンドにあるガムを見て「あ、これも」と思ったことありませんか? また「レジ前のジャンブル陳列」も、商品を思わず手にとってしまう仕掛けのひとつ。ゴンドラを出して、わざわざちょっと大雑把に並べると「値引き」「投げ売り」の暗示になるのです。そこで「安いならこれも」と手にとるわけ。

また「ゴールデンラインの法則」も使われます。商品が陳列されている棚を眺めるとき、人は少し伏し目がちに眺めます。だから棚のなかで目立たせたい商品は、人の目の位置より少し下、具体的には床から135センチくらいの場所に置かれます。

さらには「いい場所」にどんな商品があるかで、そのコンビニがどこに力を入れたいかわかりますよ。「コンビニはどこでも同じでしょ?」と思ったら大間違い。仮に女子大の近くならスイーツや女性向けのお弁当を充実させますし、例えば「六本木のコンビニはストッキング売場が充実している」という都市伝説もあります(遊びに行く女性が買っているわけですね)。また、レジ横の和菓子にもお客さんへのメッセージが込められているんですよ。和菓子は比較的高齢のお客さんに好まれます。そこで「コンビニには“若者向け”のイメージがあるかもしれませんが、高齢の方も大切にしてますよ」というメッセージを込め、和菓子を目立たせている場合があるのです。

セブン-イレブン社長が話す店舗レイアウト刷新の理由

しかし、この計算され尽くされたレイアウトが、最近、変わろうとしています。2017年、セブン-イレブンは、店舗レイアウトを刷新する戦略を打ち出しました。ざっくり言えば、レジカウンターが少し長くなり、冷凍食品、チルドケースのスペースも増え、逆に雑誌・書籍のコーナーは縮小されています。そこそこ大きなニュースになったので、ご存じの方も多いかもしれません。

なぜなんでしょう?

答えは「変化への対応」です。コンビニが一気に増えた時代に比べ、雑誌の売上げは下がっています。非公式ですが、コンビニ業界の雑誌系の売上は10年前に比べても半減、逆に冷凍食品系の売上は4倍になった、というデータもあります。また、コーヒーやドーナツなどレジカウンターで扱う商品が増えたから。たしかに、ちょっとむりやり感が出ちゃっている店舗もありますね。

ちなみにセブン-イレブンの井阪隆一社長は、以前、筆者のインタビューに答え「コンビニは変化対応業です」と話したことがあります。そして、この新レイアウトこそ、井阪氏が話した「時代の変化を反映」するもの、というわけ。

余談ですが、筆者の本業は経営者への取材で、企業のトップはまず間違いなく「変化への対応こそが企業経営の要」といいます。そう、すべては過渡期。当たり前だと思っていた「コンビニのいつもの感じの店舗レイアウト」も変化し続け、いつか、現在のコンビニを見た未来の若者が「なんかこのコンビニ、懐かしい感じだね」なんて話す日が来るのかもしれませんね。ちなみに、セブン-イレブンでは、先行テストを行ったお店の売り上げはきっちり増加したそうです。

著者略歴

夏目幸明(なつめ・ゆきあき)
'72年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、経済ジャーナリストに。現在は業務提携コンサルタントとして異業種の企業を結びつけ、新商品/新サービスの開発も行う。著書は「ニッポン「もの物語」--なぜ回転寿司は右からやってくるのか」など多数。
新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。