なぜ、携帯キャリアのスマホに余分なアプリが多く入っているのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第1回

なぜ、携帯キャリアのスマホに余分なアプリが多く入っているのか

2017.08.22

大手キャリアのスマートフォンを購入すると、iOSやAndroid標準のアプリだけでなく、非常に多くのアプリがインストールされていることが多い。スマートフォンに詳しい人にとっては邪魔なもののように見えるこれらのアプリだが、なぜ標準インストールされているのだろうか。

キャリアのネットサービスを利用しやすくしてもらう施策

大手キャリアのスマートフォンを購入すると、必ずといっていいほどプリインストールされているアプリの数々。その中にはAndroidやiOSなど、スマートフォンのOSに標準搭載のものや、スマートフォンメーカーが用意したアプリもあるのだが、それと同等、あるいは上回る数のキャリア独自のアプリが多数入っていることが多い。

大手キャリアのスマートフォンにはOS標準のアプリだけでなく、キャリアが用意したアプリが多数プリインストールされていることが多い

しかもこうしたプリインストールのアプリのいくつかは、端末にもよるが削除できない場合もあるようだ。なぜ自分にとって必要ないと感じるアプリがそんなにたくさん入っているのか? と疑問に思う人も多いことだろう。

だがキャリアのビジネスにとって、アプリのプリインストールは重要な意味を持っている。最近ではキャリアもさまざまなネットサービスを提供するようになっており、例えばNTTドコモは総合マーケットサービス「dマーケット」を提供。中でも「dTV」「dマガジン」などは、多くの利用者を抱える人気サービスとなっている。

NTTドコモは総合ネットサービス「dマーケット」に力を入れており、既に18ものサービスを提供しているほか、「dマガジン」などの人気サービスも輩出している

KDDI(au)であれば、月額372円で割引クーポンやアプリ、修理代金のサポートなどが利用できる「auスマートパス」がよく知られている。ソフトバンクも「スポナビライブ」など独自サービスのほか、最近では「Yahoo! Japan」のプレミアム会員相当のサービスが利用できるなど、グループ会社のヤフーと連携したサービスを強化している。

これらのサービスを利用してもらうためには、別途アプリをダウンロードしてもらうよりも、最初から端末にそのサービスのアプリが入っていた方が便利だ。しかもキャリアのサービスは多数存在するため、キャリア側がユーザーがどのサービスを利用するか、事前に把握してアプリの数を調節するというのは難しい。それゆえキャリアは最初から、多くのユーザーが使いそうなアプリを一通りプリインストールしているのである。

もちろん、ネットサービスをWebブラウザ上で提供するのであれば、せいぜいブックマークの数が増えるだけの話であり、ここまでユーザーに不満を抱かせることはなかったかもしれない。だが現在、多くの人達はさまざまなネットサービスをアプリから利用する傾向が強く、Webブラウザよりもアプリを利用している時間の方が長い人も多い。そうしたことからキャリア側も、自社サービスを利用しやすくするためには、アプリでサービスを提供する必要があったわけだ。

ユーザー増加が見込めない状況では必要不可欠な策に

そして現在、キャリアにとってこのネットサービスの利用を広げることが、ビジネス面でも非常に重要なテーマとなっている。その理由は、国内では携帯電話の契約者数が、現在以上に増える見込みがほとんどないためだ。

実際、電気通信事業者協会の公表資料によると、携帯電話の契約数は現在、約1.6兆にも達しており、既に日本の人口を超えている。今後見込める純粋な携帯電話の新規契約者は、現在の小学生以下の世代くらいだが、その子供世代も少子高齢化によって年々減少傾向にあり、大きな伸びはもう期待できないのである。

そうしたことからキャリアは2、3年前まで、番号ポータビリティ(MNP)で他社から乗り換えるユーザーに対してスマートフォンを「実質0円」など非常に安い価格で販売することにより、他社からユーザーを奪うことに力を入れてきた。だがこの販売手法が、料金の分かりにくさや端末を買い替えない人への不公平感を生むなどの理由から、2016年に総務省が事実上禁止。他社からユーザーを奪うのも難しくなってしまったのだ。

2015年末に総務省が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」によって、スマートフォンの実質0円販売に大きなメスが入り、競争環境が激変した

しかも最近では、キャリアからネットワークを借り、コストを徹底的に削って安価な料金でスマートフォンを利用できるサービスを提供する、「格安SIM」「格安スマホ」などで注目される仮想移動体通信事業者(MVNO)が急速に台頭。キャリアは現在新たなユーザーを確保できない上にMVNOにユーザーを奪われ続けるという状況に追い込まれており、今後通信事業だけでは売上を伸ばせないことが明確となりつつある。

そこでキャリアは、既存の顧客に向けさまざまなサービスを提供して、残った顧客の1人当たりの売上を高めるべく、ネットサービスの充実に力を入れるようになったのである。実際NTTドコモは、「dマーケット」などのネットサービスを含む「スマートライフ領域」の売上が、全体の売上の約2割に達するまでに成長している。

NTTドコモのスマートライフ領域は年々拡大を続けており、事業全体の売上で2割、利益でも1割近くに達する規模となっている

特にスマートフォンの利用に慣れ、自分の好きなアプリだけを利用したい人からしてみれば、キャリアのプリインストールアプリは不要なものにしか映らないかもしれない。だが今後通信事業の拡大が見込めないキャリアにとって、自社ネットサービスの利用拡大は必要不可欠であり、幅広い人にサービスを知ってもらうためにも、最もユーザーの目につきやすく、利用がしやすいアプリのプリインストール施策が不可欠となっている。それだけに、大手キャリアのスマートフォンから不要なアプリアイコンがなくなる日は、おそらく「来ない」と言っても過言ではないだろう。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。